2NDLINE  49  

2005年7月1日
1週間後・・・。通常業務が始まったその日。



僕とトシキは事務長室に呼ばれた。反省会という名目だ。

「座って」
事務長は背を向けて、窓の外を見ていた。

「結局、2000年問題だったのか、単に機械の故障かは闇のまま」
「そのようだな」
僕はドカッと腰掛けた。
「で。新年会はいつにする?」
僕はテーブルの上のお茶をいただいた。

「新年会な・・・」
「ああ」
「残念だが。もうそんな余裕がない」
調子を外したその言葉に、僕らは驚いた。

事務長の表情も違う。
「確かに、2000年は無事に迎えた。そのように思われた。何も変わってないと」

彼はダン!と手を机についた。

「ユウキ。トシキ。これからは大変だ」
「これまでもだよ」
僕はふんぞりかえった。

「いや。それ以上だ」
事務長は振り向いた。顔のあちこちにバンドエイドがしてある。
しかし彼の表情は硬かった。

「経営者の命令により、キンキの2人は、昨日限りで懲戒解雇となった」
「ええ?」
僕ら2人は目が点になった。

「仕方がない。<経営者>の意向だ。だがそれは・・君らの意向でもある」
彼は僕らを責めるように、デスクに座った。

僕は立ち上がった。
「待てよ品川。やっと俺たちは、気持ちが通じはじめるようになったんだ」
トシキも息を荒げた。
「その経営者ってヤツに説明させてくれよ」

「それはできない。雲の上の人間は、こういう現場には現れない」
「今までキンキらを悪く評価してきた、俺の責任なんだろ?」
僕はムキになって問いかけた。

「うん。彼らを敵視していたのは紛れもない・・・君たちだからな!」
事務長は僕らを見据えた。

「そのため、その方向で話は進んでいた。半年前からな」
「その方向って・・」
僕は何か話さずにはいられなかった。

「お前、陰でそんな話を進めてたのかよ?見損なうぞ」
「オレの立場だって微妙なんだ。仕方がない。だがな。これまで苦労したんだぞ!」
事務長は足を組んだ。敬語はいっさいみられない。

「胸部内科の君らに消化器の技術を急いでつけさせたのも、その経営者の意向があってのことだ」
「経営者・・・」
僕はつぶやく。
「経営者、けいえいしゃ、か。そんな顔も出さない人間に判断する能力があるのか?お前は意見しないのか?」
「意見?」
「そ、そうだよ!」

事務長は立ち上がり、僕のほうへやってきた。

いったん間があり、彼の脚は僕の脚を見えない速さで蹴った。
「いてえええ!」
僕はうずくまった。

「俺が経営者との板ばさみでやってきて・・どれだけ苦労してきたか」
「・・・・・」
「お前らには分からない!」
「いてて・・・お前は犬か?」
「俺が犬?じゃあお前らは?」

僕は目を逸らした。
「俺らは・・ドクターだ」
「だろ?だったら、経営方針に口を出すな!だが俺だって!」
以後、彼は口をつぐんだ。

「おい。どこへ・・・?」
事務長はそのまま部屋を出て行った。

「おい待てよ!」
僕は追いかけた。
「来るな!」
「待て!ダーリン!」
「やめろって!」

彼は本気で怒っている。

僕は蹴られた足にまた激痛が走り、階段を踏み外した。
「ふんげえ!」
そのままズルズル5段ほど落ちた。

彼は斜め上、屋上入り口まで走り、ドアがバンと閉まった。
僕は痛みに耐えられず、そのままうずくまった。

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