そこで考えた。

そうだ。僕らは確かに・・・。
この病院そのものに時間を置きすぎて、それが世界になってしまった。世界の中では僕らが主役で、それが患者を守れると思っていた。

僕らが思うことが正義で、沿わないのは敵。

なんて考えだったんだ。

そうではない。僕ら数人で、何年もこの病院は守れるわけがない。

僕ら自身も、キンキらにはもっと素直に接するべきだった。
そうすれば、彼らももう少し早く心を開いてくれたのかもしれない。

これからはもっと忙しくなるだろう。途方もないくらい。
残った人間でやるには、それ相応の忍耐、それと団結が必要だ。

それには事務長。君の存在が必要なんだ。

「ユウキ先生・・」
ミチルが後ろに立っている。声だけが聞こえる。
「彼はたぶん、先生らを・・・ほんとに愛しているのだと思います」
「ホモ、じゃなくて?」
「冗談言わないで。友情という言葉以上の表現がありませんけど・・正直あたしはうらやましいです」
「僕は彼に謝りたいんだが・・許してくれるかな」
「それは彼しだい」
「そうかい?」
「本当は言葉など必要ない。でも伝えてあげて。人間で生まれてきた以上、言葉でないと伝わらない」
「・・・・・・」
「あなたに欠けてるのが、その気持ちを伝えてないこと」

言葉がブスブスと刺さっていく。
「患者さんを治す技術が発達しても、肝心なことが治せないわ」
「・・・・どうせそんな医者だよ」
「さ。行ってあげて!」
「あいつは君といるときも・・悩んでいたのか?」
「彼は孤独よ。あたしといても、それは無理・・」
「一見ああでもな・・・よし!行って来る!」
「先生!」
「なに?」
「あとで、指示などもろもろが多数」
「わかってるわかってる!」

彼女は僕を見送った。
「先生。どうか大人になって・・・!」

僕はドアの重たいノブを回した。

まぶしい光が射してくる。

2000年。病院戦国時代のドアが開かれた。


シローの思い出に・・・・・・・・・・・・・・・・

         <   完   >

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