※文体は映画雑誌風。ゲストは僕だが表現はトム・クルーズ風。

 スタジオ内には円形に100名ほどの客。

「アメリカ西海岸ネットワークにようこそ。司会は私。今日のゲストは・・」
「(全員 拍手)」
「こんばんは。ユウキです」

「オッケー、ミスター。肩の力を抜いて」
「はいはい」
「ミスター。返事は1回でいいんだよ」
「はいはい」
「オーケー。では早速、番組を進めよう。多少辛口な司会だが勘弁を。
打腱器で叩かないように」
「場合によるな」

ざわめく会場。

「<レジデント・サーガ>の連載が始まって1年と半年になるね。ミスター」
「イエス」
「このストーリーを連載することになったキッカケは?」
「きっかけ?そうだな・・」

ワクワクして見上げる女性たち。

「イエス。医学ものはいろいろやってる。テレビ、マンガ・・」
「テレビドラマと、医学に関するマンガだね?最近はマンガのテレビ化も多い」
「内容は確かに面白くないとは言わない。しかしこういう職業の自分にとって、
我慢ならない部分があった」
「それは何だろう?詳しく聞きたい」

僕はテレビカメラに一瞬、視線。
「やっぱ、やめとこう」

会場からブーイング。

「サー。それはあまりにもここのお客に対して失礼と違うかい?」
「イエス。じゃあ話そう」
「みんなよく聞いてくれ。彼がメディアについて語る」
「そんな大げさな・・」
「アメリカ西海岸が、君の動向に注目してる!」
「あんた、口がうまいな・・」
「さあ!」

僕はため息をついて、語り始めた。

「まず、登場する医者がヒーローなのが間違いだ。確かにヒーローのような
医者は望まれているとは思うがね。そう見える医者がいないこともない」
「ヒーローたることがいけない?」
「いや。いけないとは言ってない。美化しすぎているってことだよ」
「美化か。医者は美しくあってはいけない?」
「女医なら別だけどね」

また会場からブーイング。

「ソーリーソーリー。冗談だよ。描写の問題だよ。こういうドラマでの医者の描き方が
許せないだけだ。つまり・・その・・・人間らしく描くべきなんだよ。もっと日常的に」
「人間?ドラマの医者も優しかったり怒ったりで、十分人間らしいと思うが」
「ノーだ。その人間らしさじゃない。<弱さ>なんだよ」
「泣く描写が必要なのか?」
「そうではない。お茶の間を泣かせるような、同情すべき弱さではない。それは
昼ドラで十分だ」

会場の中から同調する声。

「センキュ。描かれるべき弱さってのは・・・恐れであり、臆病であり・・疑念であり・・
裏切りもそうなんだ」
「裏切りは悪では?」
「今のドラマの世界ならね。だが、仕方なく出てくる裏切りだってある」
「話が崇高な気が・・」
「ノー。そんなことはない。みんな生活を守ったり、自分の身を守るっていうのは基本的な
本能だ」
「確かに。続けて」
「だからみんな金が欲しいし、社会的な欲求も満たさなくちゃいけない。家族も守りたい。
人間だからさ」
「アーハン。カメラ、彼を!」
「そんなただの人間が、白衣を着て特別扱いの仕事につく。彼の仕事は患者を診て、
病気を治し、社会へ復帰させることだ。しかし彼も人間。機械的にすべてうまくやれるわけではない」
「アーハン。会場のみんな、聞いてるかい?」
「ヘイ!リッスントゥミー!オーケイ?」

会場は静まった。

「様々な問題にぶちあたるのが現実だ。物理的にこなせるわけのない仕事、山のように
あふれた患者、組織からの圧力・・」
「オーケー。私もだんだん理解できてきた。そこでだユウキ、ミスター。そろそろ連載小説の
話にでも移らないか?」
「い・・イエス。ちょっと熱くなったな」

会場が笑顔でどよめく。

「CM!」

<レジデント・サーガ特集。次は各シーズンに関してのコメントです>

「こんばんは。司会は私。ゲストにドクターユウキを迎えています。彼の連載小説・・
だったよね」
「イエス」
「まず、記念すべき第一回シーズンである・・・<レジデント・ファースト>」

(会場から拍手)

「ドクターユウキ。君はよその大学から、この関西の病院に就職することになったわけだ」
「イエス」
「あまり下調べはしなかったのかい?」
「冒頭で僕がコメントしているように、学生のときによほど下調べしないと、就職する
医局の内部は分からない」
「君は調べたほう?」
「(笑顔)」

ほほえむ会場。

「胸部内科は中でも忙しい科のようだね?」
「イエス。内科は大きく、胸部内科と腹部内科に分けられる。前者が理系なら後者は
文系」
「君は理系を?」
「イエッサー。確率統計の問題はよしてくれよ」

会場が爆笑でわく。

「そこで君は恐ろしいオーベンに当たる」
「イエス」
「オーベンは講師?」
「イエス。大学病院の講師だ。講師は授業もしないといけないので忙しい」
「内容からすると、あまり面倒を・・」
「正直、こっちはかなり気を使ったよ。他のドクターは院生が相手だった」
「自分のオーベンには満足を?」
「イエス。なんだかんだいってオペのあと待ってくれたりと、根は優しい人物だった。
ラストの場面で明白だ」
「現在はスーパーローテーションで、オーベンの役割は果たしにくいね」
「そのようだ。ローテ中は情報収集に徹して、オーベンコベン関係は次の
就職先から始めるので結構だろう」
「研修医以外のドクターは、スーパーローテに賛成を?」
「誰もしてない。早く廃止して欲しいよ」

会場が拍手でわく。

「同級にもツワモノがいたね」
「イエスだ。ノナキーは妥協を許さない人間だった」
「完全無欠?」
「それに近い。男前で、女にもモてる」
「女性が離さない?結婚するには・・」
「オーガッド!その話題はやめてくれ!」

司会は両手を拡げ、自分の首を絞めるしぐさ。会場は大爆笑。彼は話題を変える。

「そういえば冒頭がストレンジな出だしだ。酒場で事務長とトークを?」
「イエス。あれは今から2年前。民間病院で働いてる僕を、釣りにやってきたんだ」
「スカウトでは?」
「ノー。そんな華やかなものじゃない」
「メガネジムチョウの目的は?」
「自分の病院に、僕を招き入れることさ」
「人手プアー(不足)だから?」
「イエス。それと彼の自己利益だ」

会場がオオ、と一瞬反応。

「ミスター。話を分かりやすく。君をスカウトして病院へ連れて行って・・
それで彼に利益が?」
「関西では珍しいことじゃない。事務関連の職員たち(一部)は、ドクター1人引っ張ってきて
10〜15万円のキャッシュを受け取るのに必死だ」
「仲介料?」
「そうだ。親切心からじゃない」

会場がさらにざわめく。片手を口にあてる中年女性。

「大学病院から離れると、そういうトラブルがあって大変だね」
「イエス。彼らの口車にも気をつけないと」
「その関連の話はまた。で、小説に戻ろう。君は腸閉塞の症例を持つ」
「イエス」
「小腸病変とは意外だったね」
「オペの結果がオーマイ!ジーザス!だったよ」
「でも君は<小腸病変>かもとオーベンに」
「イエス。言ったとは思う。でも小腸の病気自体珍しいからね。確信はなかった」
「オーベンを負かした気分は?」

僕は両手で顔を押さえた。

「ノーノー。打ち負かしてなどない。彼はあまりにも多忙で、つきっきりで意見などできないさ」
「(突然)オーベンに拍手!」

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