サンダル先生 ? なぜ、気づかない。
2005年9月2日外来。66歳男性COPD。肺気腫+喘息。
「息切れがひどいですよね」
「ま、ましなほうやがな。ヒュー・・・ヒュー・・・」
「ヒュー」は彼の声ではなく、気道が狭窄してそこを通る空気の音だ。喘息様(ぜんそくよう)の音。すなわち<喘鳴(ぜいめい)>だ。
「呼吸機能検査では1秒率が著しい低下。喘息日誌は・・?」
「つけとらん。目も悪いし」
「頓服のスプレーは1日に何回・・?」
「7〜8回やろか。わからん」
沈黙。
「ねえ。天羽さん。在宅酸素療法のことですけど」
「もう少し見合すわ」
「今でも酸素が足りない状況なんです。動いたらもっと苦しい」
「酸素って、管を鼻から耳にかけるやつやろ?」
「ええ」
「酸素ボンベとつながれるんやろ?」
そんな言い方、嫌いです。
「肺のため、自分のためです」
「ま、もうちょっと考えるわ」
「タバコをはやくやめて」
「わしにとっては死ぬに等しい問題ですわ」
ポケットにタバコの箱が堂々と入っている。
今後もこういう人が増えてきそうな気がする。
時代とともに、QOLを重視する傾向が出てきた。
治療による束縛と、患者自身の自由とをはかりにかけ、
患者の意思で選択する時代も間もなく来るだろう。
しかしそうすると必ず安易な方向に走ってしまい、目前に
あるものしか見えなくなってしまう。はるか先を見通してまで
治療しなきゃいけない僕らの身にもなれよ。
患者、患者と見下すわけではないが、もっと賢くならなきゃいけない。賢くなれるはずだからだ。
だが今のメディアではダメだ。なぜか。医療の問題点は指摘するが、その背景、解決策については一切言及できてない。問題だけ投げかけ、視聴者を突き放しておしまいだ。で、民間療法や女性週刊誌、暴露本などが売れる。一部の人間が得をし、その他99%は利用されているだけだ。
なぜ、気づかない。
当初、僕は社会の仕組みがいろいろと分かりかけ、失望している面も
持ち合わせていた。
シローから電話。
『ユウキ先生。何もなかったです』
「胃カメラ、正常所見か。よかった」
『とりあえず胃薬は処方しました』
「ありがとう。もうこっちへ回さなくていいよ」
70歳女性。エラスターゼ?上昇のため、膵臓癌精査で腹部CT造影と超音波。検査は終了し説明。11時も過ぎてくると終了した検査の説明に回ることが多い。
「うーん・・・」
膵臓は横に細長い臓器だが、横にまっすぐというわけではない。なのでCTでは数
枚にわたって分割されている。周囲との位置関係も大事にしながら読影。
「造影の写真も、特には・・・」
超音波の所見を確認。担当のトシキが撮ったものだ。
「なになに。ガスが多いため、よく見えず、かよ・・・」
CTで膵臓癌を確認していくが、否定するほどの自信は正直ない。
結局は・・・
「MRCPで確認しましょう」
30歳男性。風邪。
「喉はかなり腫れてますねー」
「先生。なんかこう、1発で治るやつ注射してくれませんか!」
「(あったら欲しいよ・・・)ま。点滴しましょう」
「う。あ」
あれよという間にナースに連れて行かれた。
別のナースが呼んできた。
「不整脈の患者さんです。横になってます」
「ああ」
時々発作で来院している患者。27歳男性。
「PSVTだ・・・アデホスを」
急速注射で即、軽快。
「うっ・・」
起き上がったとき、少し吐き気を感じたようだ。副作用だ。
横のベッドでは喘息発作30代男性。内服を自己中断して2ヶ月。
案の定、発作で受診だ。横になると苦しく、起座呼吸。
「やれやれ。ソルメド125mgを点滴。脈がかなり速いのでテオフィリン系はやめとこう」
学生が入ってきて、聴診する。
「うわ!すごい音だ!ビュービューいってる」
「いちいち口にすんな・・退場!」
ナースは北野をつまみ出した。
学生は喘息を調べている。
「僕も喘息があるんです」
「発作が?」
「ステロイドの吸入だけしてます」
「コントロールはできてる?」
「はい。うがいもやってます」
「風邪をひかんことだな・・」
「はい。発作の引き金になりますしね」
今の会話をジャッキー映画の日本語字幕(戸田奈津子)風に。
「持病で喘息が」
「苦しい?」
「吸入がよく効く」
「調子は良好?」
「モチだ」
「風邪には注意しろよ」
「発作を招くしな。バイバイ!」
分かる人には分かる。ゴールドブレンド。
さて。
実際持病を抱えていて、その関心もあってその専門の道に進む医学生も多い。
12時はとうに回った。
「お疲れ様でした」
学生はメモをたたんだ。
「午後は再び病棟に行って、カテーテル検査に行って・・・他科から依頼の重症患者の回診。
で、落ちついてる患者の回診」
「大変ですね」
「そういう仕事を選んでしまったんだから、仕方がない」
「頭を使いっぱなしですね」
「頭でなく、体。体力しだいだよ」
「でも頭が働かないと・・」
「頭といっても、問題を解くわけじゃない。誰も正解なんか教えないし、分からないことが多い」
「受験のときとは違う脳の使い方ですか」
「う。ま、ある意味当たってるな。でも体力はぞれ以上に重要だ」
「鍛えておくべきでしょうか?」
「そうだな。精神的にも鍛えられそうなスポーツがいいだろな」
「マラソンとかですか?」
「それと、どこでも寝れること。川口探検隊並みのスタミナが必要だ」
「かわぐちたんけん・・・?」
彼は再びメモろうとした。
「ふん!じゃあ書いておけ!」
「また調べます!カワグチタンケンタイ!」
変な奴だな・・・。
何か言いたいな、なんだろう・・・。
そうだ。ジョン・ウーの爆発シーンのように、両手を挙げて飛び上がって・・・。
どぁるぅ(<だる>のスローモーション形)・・。
「息切れがひどいですよね」
「ま、ましなほうやがな。ヒュー・・・ヒュー・・・」
「ヒュー」は彼の声ではなく、気道が狭窄してそこを通る空気の音だ。喘息様(ぜんそくよう)の音。すなわち<喘鳴(ぜいめい)>だ。
「呼吸機能検査では1秒率が著しい低下。喘息日誌は・・?」
「つけとらん。目も悪いし」
「頓服のスプレーは1日に何回・・?」
「7〜8回やろか。わからん」
沈黙。
「ねえ。天羽さん。在宅酸素療法のことですけど」
「もう少し見合すわ」
「今でも酸素が足りない状況なんです。動いたらもっと苦しい」
「酸素って、管を鼻から耳にかけるやつやろ?」
「ええ」
「酸素ボンベとつながれるんやろ?」
そんな言い方、嫌いです。
「肺のため、自分のためです」
「ま、もうちょっと考えるわ」
「タバコをはやくやめて」
「わしにとっては死ぬに等しい問題ですわ」
ポケットにタバコの箱が堂々と入っている。
今後もこういう人が増えてきそうな気がする。
時代とともに、QOLを重視する傾向が出てきた。
治療による束縛と、患者自身の自由とをはかりにかけ、
患者の意思で選択する時代も間もなく来るだろう。
しかしそうすると必ず安易な方向に走ってしまい、目前に
あるものしか見えなくなってしまう。はるか先を見通してまで
治療しなきゃいけない僕らの身にもなれよ。
患者、患者と見下すわけではないが、もっと賢くならなきゃいけない。賢くなれるはずだからだ。
だが今のメディアではダメだ。なぜか。医療の問題点は指摘するが、その背景、解決策については一切言及できてない。問題だけ投げかけ、視聴者を突き放しておしまいだ。で、民間療法や女性週刊誌、暴露本などが売れる。一部の人間が得をし、その他99%は利用されているだけだ。
なぜ、気づかない。
当初、僕は社会の仕組みがいろいろと分かりかけ、失望している面も
持ち合わせていた。
シローから電話。
『ユウキ先生。何もなかったです』
「胃カメラ、正常所見か。よかった」
『とりあえず胃薬は処方しました』
「ありがとう。もうこっちへ回さなくていいよ」
70歳女性。エラスターゼ?上昇のため、膵臓癌精査で腹部CT造影と超音波。検査は終了し説明。11時も過ぎてくると終了した検査の説明に回ることが多い。
「うーん・・・」
膵臓は横に細長い臓器だが、横にまっすぐというわけではない。なのでCTでは数
枚にわたって分割されている。周囲との位置関係も大事にしながら読影。
「造影の写真も、特には・・・」
超音波の所見を確認。担当のトシキが撮ったものだ。
「なになに。ガスが多いため、よく見えず、かよ・・・」
CTで膵臓癌を確認していくが、否定するほどの自信は正直ない。
結局は・・・
「MRCPで確認しましょう」
30歳男性。風邪。
「喉はかなり腫れてますねー」
「先生。なんかこう、1発で治るやつ注射してくれませんか!」
「(あったら欲しいよ・・・)ま。点滴しましょう」
「う。あ」
あれよという間にナースに連れて行かれた。
別のナースが呼んできた。
「不整脈の患者さんです。横になってます」
「ああ」
時々発作で来院している患者。27歳男性。
「PSVTだ・・・アデホスを」
急速注射で即、軽快。
「うっ・・」
起き上がったとき、少し吐き気を感じたようだ。副作用だ。
横のベッドでは喘息発作30代男性。内服を自己中断して2ヶ月。
案の定、発作で受診だ。横になると苦しく、起座呼吸。
「やれやれ。ソルメド125mgを点滴。脈がかなり速いのでテオフィリン系はやめとこう」
学生が入ってきて、聴診する。
「うわ!すごい音だ!ビュービューいってる」
「いちいち口にすんな・・退場!」
ナースは北野をつまみ出した。
学生は喘息を調べている。
「僕も喘息があるんです」
「発作が?」
「ステロイドの吸入だけしてます」
「コントロールはできてる?」
「はい。うがいもやってます」
「風邪をひかんことだな・・」
「はい。発作の引き金になりますしね」
今の会話をジャッキー映画の日本語字幕(戸田奈津子)風に。
「持病で喘息が」
「苦しい?」
「吸入がよく効く」
「調子は良好?」
「モチだ」
「風邪には注意しろよ」
「発作を招くしな。バイバイ!」
分かる人には分かる。ゴールドブレンド。
さて。
実際持病を抱えていて、その関心もあってその専門の道に進む医学生も多い。
12時はとうに回った。
「お疲れ様でした」
学生はメモをたたんだ。
「午後は再び病棟に行って、カテーテル検査に行って・・・他科から依頼の重症患者の回診。
で、落ちついてる患者の回診」
「大変ですね」
「そういう仕事を選んでしまったんだから、仕方がない」
「頭を使いっぱなしですね」
「頭でなく、体。体力しだいだよ」
「でも頭が働かないと・・」
「頭といっても、問題を解くわけじゃない。誰も正解なんか教えないし、分からないことが多い」
「受験のときとは違う脳の使い方ですか」
「う。ま、ある意味当たってるな。でも体力はぞれ以上に重要だ」
「鍛えておくべきでしょうか?」
「そうだな。精神的にも鍛えられそうなスポーツがいいだろな」
「マラソンとかですか?」
「それと、どこでも寝れること。川口探検隊並みのスタミナが必要だ」
「かわぐちたんけん・・・?」
彼は再びメモろうとした。
「ふん!じゃあ書いておけ!」
「また調べます!カワグチタンケンタイ!」
変な奴だな・・・。
何か言いたいな、なんだろう・・・。
そうだ。ジョン・ウーの爆発シーンのように、両手を挙げて飛び上がって・・・。
どぁるぅ(<だる>のスローモーション形)・・。
コメント