サンダル先生 ? アジなマネを・・・!
2005年9月3日昼1時半に外来を切り上げ、学生と医局へ戻る。
ガリベンタイプの医局秘書が書類などを渡してくれる。
「ありがとう、マネーペニー。なんつって」
「外人なんですか?」
学生はいちいちしつこかった。
「昼は職員食堂だな・・・行くか!」
「自分は・・」
学生も白衣を脱いだ。
「学生さんも職員食堂でどうぞ」
<マネーペニー>はきちんと段取りしてくれていた。
いや、段取りなど必要ない。なぜならうちの食堂は・・・。
「ほらほら!大盛りの方はおっしゃってよ!」
職員食堂のおっさんは相変わらず気前がいい。ただし形式は
セルフサービスだ。長い列が並び、みなトレイを持っている。
「職員食堂は、病院の景気を知る1つのバロメーターだ」
「えっ?そうなんですか?」
学生は驚いてばかりだ。
「うちのは最近ひどくなった。たぶん・・・安い業者に代わったんだ」
僕はトレイを差し出した。
「アジはいらん。サラダは少なめ、ソバは大盛り」
「ハンバーグは?」
「もちろんスーパーサイズさ!ちょっと!」
「は?」
高齢のバアサン職員がとぼけた。
「なにアジ入れてんだよ?」
「はあ・・・体にええからと思って」
「しかも頭だけ入れやがって・・・」
「若いからいけるいける」
「アジなマネ(死語)を・・・!」
僕らは空いてるとこに腰掛けた。
「北野、くん。外来はまあ、あんな調子だよ」
「外来診療だけに専念したらいいのかと思ったら、救急でも呼ばれるんですね」
「救急はフタを開けてみないと分からない。軽症だと思っても重症だったりする」
「それでみなさん、いっせいに駆けつけられたんですね」
僕は魚の頭以外、5分で食べ終わった。
「ユウキ先生、速いですね」
「速いでそうろう」
「医学のテレビ見てたら、早食いは肥満傾向を招くと・・」
「って言うよな。でも、心理的にゆっくりは食べられないんだ」
「いつ呼ばれるか、分からないからですか」
「そう。ほかの医者にも聞いてみろ。ラーメンだって、お湯入れてこれから食うって
ときに呼ばれる」
「そんなものなんですね」
「だからお湯入れて、所要時間が少ないのがいい。やっぱり腰抜けラーメンだ」
「腰抜け・・?」
「チキンラーメン」
「でも・・お湯入れてすぐ食べれるのもありますよね」
「こんぶと、とかか?あれは高い」
お互い、小市民だな・・・。
「楽しそうですね」
トシキがつまようじで歯をつついている。
「トシキおはよう」
「昼過ぎましたけど」
「こんにちは。今日は腹部エコー、どうも」
「いえいえ。今日のカテは3時頃ですかね?」
「たぶん狭窄は大してないと思うな。すぐ終わるだろ」
「1枝病変のほうに賭けます」
「じゃあオレは・・・」
僕は立ち上がった。学生が続いた。
「はらたいらさんに、全部!」
「患者さんの名前ですか?」
学生がいちいちうっとうしい。面白くない。
「勉強ばっかりしてたんだろな。お前・・・」
PHSが鳴った。番号では病棟からだ。
「そら来た。速く食べて正解だ!」
電話に出ぬまま、僕らは病棟へ速攻で走った。
詰所は誰も居ない。
「呼んでおいて、いないというのは・・」
学生は周囲を見回した。
僕は廊下へ出た。
「ってことは、誰かが急変したってことだ!」
「あ!」
学生が呼び止めた。
「なんだよ?」
「奥にみなさん、おられます!」
カーテンで仕切られた詰所の奥で、ナースらは集まっていた。
「先生。お願いします」
ナースの1人が礼をした。
「はあ?なにを?」
「勉強会。予定の時間はとっくに過ぎてまして」
そうだった。実は勉強会の講師役をつとめる予定だった。
それを延ばして延ばして・・・今日にまたツケが回ってきた。
「勉強会の内容、何だっけな?」
「ほら先生。モニターの読みかた」
「そ、そうだったな・・・」
「お願いします。深夜明けの方々もお待ちしてます」
深夜帯のナースまで。本当は昼前には帰ってるだろうに。
だだ・・・誰か呼んでくれ。誰か。
「僕も聞いてよろしいでしょうか?」
学生が追い討ちをかける。
「困ったな。プリントは用意してない。黒板があればな」
「黒板はありませんが」
ナースは平然と答えた。
「・・ですが、白板ならあります。ホワイトボード」
「へ?」
なんと知らぬ間にホワイトボードが部屋の隅に!
「(一同)よろしくお願いしまーす!」
「オーガッ!オー!オーガッ!(メルギブ泣き)」
※ メルギブ泣き→メル・ギブソンが「マッドマックス」「身代金」「ブレイブハート」「パトリオット」などで見せる、しわくちゃ顔のパニクった泣き顔演技。
♪ファン・ワン・ワン(続・夕陽のガンマン)・・・。
「こやつら!アジなマネを!」
なんて言えなかった。
どあるう・・・。
ガリベンタイプの医局秘書が書類などを渡してくれる。
「ありがとう、マネーペニー。なんつって」
「外人なんですか?」
学生はいちいちしつこかった。
「昼は職員食堂だな・・・行くか!」
「自分は・・」
学生も白衣を脱いだ。
「学生さんも職員食堂でどうぞ」
<マネーペニー>はきちんと段取りしてくれていた。
いや、段取りなど必要ない。なぜならうちの食堂は・・・。
「ほらほら!大盛りの方はおっしゃってよ!」
職員食堂のおっさんは相変わらず気前がいい。ただし形式は
セルフサービスだ。長い列が並び、みなトレイを持っている。
「職員食堂は、病院の景気を知る1つのバロメーターだ」
「えっ?そうなんですか?」
学生は驚いてばかりだ。
「うちのは最近ひどくなった。たぶん・・・安い業者に代わったんだ」
僕はトレイを差し出した。
「アジはいらん。サラダは少なめ、ソバは大盛り」
「ハンバーグは?」
「もちろんスーパーサイズさ!ちょっと!」
「は?」
高齢のバアサン職員がとぼけた。
「なにアジ入れてんだよ?」
「はあ・・・体にええからと思って」
「しかも頭だけ入れやがって・・・」
「若いからいけるいける」
「アジなマネ(死語)を・・・!」
僕らは空いてるとこに腰掛けた。
「北野、くん。外来はまあ、あんな調子だよ」
「外来診療だけに専念したらいいのかと思ったら、救急でも呼ばれるんですね」
「救急はフタを開けてみないと分からない。軽症だと思っても重症だったりする」
「それでみなさん、いっせいに駆けつけられたんですね」
僕は魚の頭以外、5分で食べ終わった。
「ユウキ先生、速いですね」
「速いでそうろう」
「医学のテレビ見てたら、早食いは肥満傾向を招くと・・」
「って言うよな。でも、心理的にゆっくりは食べられないんだ」
「いつ呼ばれるか、分からないからですか」
「そう。ほかの医者にも聞いてみろ。ラーメンだって、お湯入れてこれから食うって
ときに呼ばれる」
「そんなものなんですね」
「だからお湯入れて、所要時間が少ないのがいい。やっぱり腰抜けラーメンだ」
「腰抜け・・?」
「チキンラーメン」
「でも・・お湯入れてすぐ食べれるのもありますよね」
「こんぶと、とかか?あれは高い」
お互い、小市民だな・・・。
「楽しそうですね」
トシキがつまようじで歯をつついている。
「トシキおはよう」
「昼過ぎましたけど」
「こんにちは。今日は腹部エコー、どうも」
「いえいえ。今日のカテは3時頃ですかね?」
「たぶん狭窄は大してないと思うな。すぐ終わるだろ」
「1枝病変のほうに賭けます」
「じゃあオレは・・・」
僕は立ち上がった。学生が続いた。
「はらたいらさんに、全部!」
「患者さんの名前ですか?」
学生がいちいちうっとうしい。面白くない。
「勉強ばっかりしてたんだろな。お前・・・」
PHSが鳴った。番号では病棟からだ。
「そら来た。速く食べて正解だ!」
電話に出ぬまま、僕らは病棟へ速攻で走った。
詰所は誰も居ない。
「呼んでおいて、いないというのは・・」
学生は周囲を見回した。
僕は廊下へ出た。
「ってことは、誰かが急変したってことだ!」
「あ!」
学生が呼び止めた。
「なんだよ?」
「奥にみなさん、おられます!」
カーテンで仕切られた詰所の奥で、ナースらは集まっていた。
「先生。お願いします」
ナースの1人が礼をした。
「はあ?なにを?」
「勉強会。予定の時間はとっくに過ぎてまして」
そうだった。実は勉強会の講師役をつとめる予定だった。
それを延ばして延ばして・・・今日にまたツケが回ってきた。
「勉強会の内容、何だっけな?」
「ほら先生。モニターの読みかた」
「そ、そうだったな・・・」
「お願いします。深夜明けの方々もお待ちしてます」
深夜帯のナースまで。本当は昼前には帰ってるだろうに。
だだ・・・誰か呼んでくれ。誰か。
「僕も聞いてよろしいでしょうか?」
学生が追い討ちをかける。
「困ったな。プリントは用意してない。黒板があればな」
「黒板はありませんが」
ナースは平然と答えた。
「・・ですが、白板ならあります。ホワイトボード」
「へ?」
なんと知らぬ間にホワイトボードが部屋の隅に!
「(一同)よろしくお願いしまーす!」
「オーガッ!オー!オーガッ!(メルギブ泣き)」
※ メルギブ泣き→メル・ギブソンが「マッドマックス」「身代金」「ブレイブハート」「パトリオット」などで見せる、しわくちゃ顔のパニクった泣き顔演技。
♪ファン・ワン・ワン(続・夕陽のガンマン)・・・。
「こやつら!アジなマネを!」
なんて言えなかった。
どあるう・・・。
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