サンダル2 ? 社会の縮図
2005年9月27日 人工呼吸器のついたザッキーの患者は顔を左右に動かしている。呼吸も機械とうまく
かみ合っていない。いわゆる<ファイティング>だ。
各ドクターのカルテは医長が確認しているということだが・・。ザッキーのカルテを確認。
?
1日数行しか書いてない。検査所見をポツポツ程度。これでは主治医が何をどう考えているのか
わからない。ナースらの記入する「重症板」をみる。1時間ごとにバイタルがチェックされているものだ。
ここには病名が・・『呼吸不全』。それだけ?どうやら・・漫然とやってる感じだな。
病名や病勢をとりあえず確認だ。68歳男性、脳幹部出血でかなり重篤な後遺症を来たした。
脳外科からの紹介で主治医がザッキー。人工呼吸器がついて3週間。長いな。
気管切開せんとな・・。
炎症所見、胸部レントゲンなどすべて確認。肺炎と尿路感染の合併。中心静脈栄養管理で抗生剤はカルバペネムが2週間。炎症反応の横ばいが続いている。採血は週に1回程度。
救う気、あるのか・・・?
鎮静剤ドルミカムを静脈注射、持続でつないだ。人工呼吸器のパネルを何度も押し、呼吸回数が減っていくのを確認。気道内圧も下がってきた。
やれやれだ。これで1時間過ぎた。
「なにか?」
トシキ医長が重症部屋に入ってきた。
「医長先生。ザッキーはちゃんと診てるのか?」
「診てるでしょう」
「でしょう?午後は顔を出してないらしいぞ」
「今は他の病棟にいるようです。終わったら戻るはずです」
「うん。まあ、いいんだけどな・・いやいや、よくない」
医長は呼吸器のパネルを押し、設定を確認した。
「トシキ医長。さっき設定変えたばかりだ」
「わかってます」
不機嫌だな。この男・・・。
「医長先生。カルテはこんなんだぜ。大丈夫か?」
「明日の総回診で注意します」
彼もわかっているようだった。
「重症を当てるのも考え物だな・・・」
「当てないと、先輩方も大変でしょうし」
あのな・・。
「大学病院とか教育病院だったら、オーベンありカンファありで監視の目があっていいが、民間ではあまり目が離せないな」
僕はつい皮肉った。
「目は離してません」
「だから注意は毎日でも・・」
「離してません、って言うのに」
医長は聴診し、カルテもたたんだ。
「ユウキ先生。あくまでも医長は僕なんで」
「ああ。知ってる」
「指導はやってるつもりです。僕のせいでは・・」
「うん。だろな。ちょっと心配したんだよ」
「・・・・・・・」
医長がきちんと指導してるのは分かるが、それが反映されてないのはやはり問題だ。
人手の少ない大学病院ではとても不可能な数の<(研修医や学生、同僚などへの)指導>を要求される。時間的にそんな余裕はなく、結局は形だけの指導を行い、<指導しました>の上への報告だけになってしまう。指導された側は確かに指導は受けたものの、実は何も吸収してなかった、ということもザラだ。そんな確認をする時間もない。
カリキュラムという名のもとに時間だけが浪費され、お互いが自己満足しているだけなのだ。
最悪なのは問題が起こったとき、指導する立場の中堅にしわ寄せがいくことだ。上層部は<指導したと聞いていた>、末端は<十分指導を受けていない>。
すべてがそうだと言わないが、今の社会そのものに当てはまらないか?
もしNHKなどマスコミが特集を組むなら、こういう問題にどう取り組むか徹底すべきだ。
・・・こういう光景をよく見ていた自分には、気になる点だった。自分が医長になったらまず変えたい部分だ。少なくともうちの病院でそういう流れは作りたくない。
さてと尿道バルーンを挿入し、また詰所へ。モニター音だけが鳴っている。重症部屋からガラス越しに詰所内を見ていたが、ザッキーはとうとう現れなかった。
「ふう・・・結局、今日も遅いな。8時」
毎度のことだ。
すると学生が入ってきた。
「こんばんは!呼び出しですか?」
「ま、いろいろ」
「どのようなことが、あったのですか?」
「だる・・」
「さきほど医長先生が、詳細はユウキ先生に聞けと」
「はあ・・・?」
「よろしくお願いいたします!」
彼はメモを取る体制でやる気満々だ。
「わかった。でもその前に一言」
「ええ!どうぞ!」
「だる・・・」
明日、ザッキーに一言・・・言ってやろう。
かみ合っていない。いわゆる<ファイティング>だ。
各ドクターのカルテは医長が確認しているということだが・・。ザッキーのカルテを確認。
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1日数行しか書いてない。検査所見をポツポツ程度。これでは主治医が何をどう考えているのか
わからない。ナースらの記入する「重症板」をみる。1時間ごとにバイタルがチェックされているものだ。
ここには病名が・・『呼吸不全』。それだけ?どうやら・・漫然とやってる感じだな。
病名や病勢をとりあえず確認だ。68歳男性、脳幹部出血でかなり重篤な後遺症を来たした。
脳外科からの紹介で主治医がザッキー。人工呼吸器がついて3週間。長いな。
気管切開せんとな・・。
炎症所見、胸部レントゲンなどすべて確認。肺炎と尿路感染の合併。中心静脈栄養管理で抗生剤はカルバペネムが2週間。炎症反応の横ばいが続いている。採血は週に1回程度。
救う気、あるのか・・・?
鎮静剤ドルミカムを静脈注射、持続でつないだ。人工呼吸器のパネルを何度も押し、呼吸回数が減っていくのを確認。気道内圧も下がってきた。
やれやれだ。これで1時間過ぎた。
「なにか?」
トシキ医長が重症部屋に入ってきた。
「医長先生。ザッキーはちゃんと診てるのか?」
「診てるでしょう」
「でしょう?午後は顔を出してないらしいぞ」
「今は他の病棟にいるようです。終わったら戻るはずです」
「うん。まあ、いいんだけどな・・いやいや、よくない」
医長は呼吸器のパネルを押し、設定を確認した。
「トシキ医長。さっき設定変えたばかりだ」
「わかってます」
不機嫌だな。この男・・・。
「医長先生。カルテはこんなんだぜ。大丈夫か?」
「明日の総回診で注意します」
彼もわかっているようだった。
「重症を当てるのも考え物だな・・・」
「当てないと、先輩方も大変でしょうし」
あのな・・。
「大学病院とか教育病院だったら、オーベンありカンファありで監視の目があっていいが、民間ではあまり目が離せないな」
僕はつい皮肉った。
「目は離してません」
「だから注意は毎日でも・・」
「離してません、って言うのに」
医長は聴診し、カルテもたたんだ。
「ユウキ先生。あくまでも医長は僕なんで」
「ああ。知ってる」
「指導はやってるつもりです。僕のせいでは・・」
「うん。だろな。ちょっと心配したんだよ」
「・・・・・・・」
医長がきちんと指導してるのは分かるが、それが反映されてないのはやはり問題だ。
人手の少ない大学病院ではとても不可能な数の<(研修医や学生、同僚などへの)指導>を要求される。時間的にそんな余裕はなく、結局は形だけの指導を行い、<指導しました>の上への報告だけになってしまう。指導された側は確かに指導は受けたものの、実は何も吸収してなかった、ということもザラだ。そんな確認をする時間もない。
カリキュラムという名のもとに時間だけが浪費され、お互いが自己満足しているだけなのだ。
最悪なのは問題が起こったとき、指導する立場の中堅にしわ寄せがいくことだ。上層部は<指導したと聞いていた>、末端は<十分指導を受けていない>。
すべてがそうだと言わないが、今の社会そのものに当てはまらないか?
もしNHKなどマスコミが特集を組むなら、こういう問題にどう取り組むか徹底すべきだ。
・・・こういう光景をよく見ていた自分には、気になる点だった。自分が医長になったらまず変えたい部分だ。少なくともうちの病院でそういう流れは作りたくない。
さてと尿道バルーンを挿入し、また詰所へ。モニター音だけが鳴っている。重症部屋からガラス越しに詰所内を見ていたが、ザッキーはとうとう現れなかった。
「ふう・・・結局、今日も遅いな。8時」
毎度のことだ。
すると学生が入ってきた。
「こんばんは!呼び出しですか?」
「ま、いろいろ」
「どのようなことが、あったのですか?」
「だる・・」
「さきほど医長先生が、詳細はユウキ先生に聞けと」
「はあ・・・?」
「よろしくお願いいたします!」
彼はメモを取る体制でやる気満々だ。
「わかった。でもその前に一言」
「ええ!どうぞ!」
「だる・・・」
明日、ザッキーに一言・・・言ってやろう。
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