ダル3 ? 総回診?
2005年10月11日僕は北野に向かって言った。
「<これ以上何もしない>っていうのは・・・血圧上げたりとか、呼吸を補助するとか、やたらバイタルを支えるためのイタズラな治療を追加しないっていう意味・・だとオレは取ってるんだけど」
「でもこの重症板・・・」
重症板をみると、抗生剤の変更追加、免疫グロブリン製剤の追加などが行われている。点滴ばかりだが、重症でこうも重なってくると副作用の出現率も高い。こうなると救命的な意味が強い治療となっていく。
「いちおう治療は、するんですね・・しかし家族の希望は」
「家族がもういいですって言ってもね。いったん始まった治療の流れは・・なかなか止められないんだよ」
「なんか、そこが・・・?」
たしかに延命治療を投げ出しておいて、薬剤による保存的治療に必死になるのはおかしいような気もする。家族が<これ以上の治療は希望しない>と言うのであれば、もはや現時点での治療の変更は意義を持たないだろう。だがそれでも、許せる範囲で何かできるのでは、という主治医の妙なプライドが働いてしまう。
COPDの波多野じいさんはまだ咳き込んでいた。
「ニップネーザル、効果ありだ」
僕は医長に説明。
「呼吸リハビリなどもして、退院は週明けだな」
「よかったですね」
トシキは作り笑顔風に患者を見下ろした。
「おかげさんで。店はまた始めてもいいかいな?」
じいさんは早く仕事に復帰したいようだった。だが無理がある。
あのカラオケ店は2階立てで、じいさん1人が階段を上り下りして切り盛りしている。
「波多野さん。バイトを雇うとか・・」
「もう1人雇う?やっていけんよ!」
「階段はキツイよ」
「いやいや!やらんといかん!」
じいさんのやる気を押さえ込むわけにもいかず、週明け退院での営業再開が確定した。
向かいの仲の悪いじいさんは退院。
次は60歳のステント挿入後患者。
「傷ももう、キレイになって・・」
患者は右腕を何度もクルクル回した。ステント挿入して3日後。胸痛らしきものもあったが心電図変化はなく、今後大部屋へ移動する予定。
僕らは廊下へ出た。
僕は医長に近寄った。
「医長。この6人枠っていう増員は・・事務長のアイデアか?」
「ええ」
「緑膿菌感染症患者と、若年(60歳)患者を同室にするのは・・」
「そんな余裕があればいいんですが・・」
「経済的な問題なんだろな」
ミチル婦長からも聞いたが、ベッドの割り振りで一番気を使うところだという。しかし婦長だけの独断ではいかず、経営する側の意見も重要視される。
最近では病院経営者の意向がかなり反映されるので、患者への配慮はますます減っていくのだろう。
しかし目をつぶるしかない点だった。
廊下を歩く途中、医長はPHSに出た。
その間、シローが寄ってきた。
「ユウキ先生。すみません」
「なんだよオレに謝るなんて。『患者に謝れ』よ」
「それグッド!でも笑えない・・」
「どしたんだ?」
「ザッキーにそろそろ言いましょうか。気づいてないみたいだし」
「アレの可能性か?」
「ええ」
実はザッキーは・・・2週間ほど前に内視鏡を手荒く扱いすぎたことがあった。手技はかなりの腕前が期待できそうなのだが、嘔吐反射に激しい患者で、鎮静剤の量が少なかったのか、なかなか内視鏡が入らなかった。
挿入するまでの間、患者の喉の奥は少量だが出血してしまった。
「僕はもう代われ、と言ったんですが・・」
「外来婦長から聞いたよ。逆ギレして、それでもやりますって言ったんだろ?」
「・・・・・」
「教習所だったら、再講習だぞ」
補助ブレーキがあれば、いいんだが。
遠まわしだが、つまりはその際にできた傷が今回の頸部の膿瘍に関係しているのではないかという考えだ。というか、それ以外原因が考えられない。
「そうだな、シロー。今日、指摘しておけ。なんなら説教してもかまわん」
僕がしようと思ったことだが、ついでにとシローにあてつけた。
医長はPHSを切った。
次は2人部屋の重症部屋。慢性疾患で、人工呼吸器が2つついてる部屋だ。
「<これ以上何もしない>っていうのは・・・血圧上げたりとか、呼吸を補助するとか、やたらバイタルを支えるためのイタズラな治療を追加しないっていう意味・・だとオレは取ってるんだけど」
「でもこの重症板・・・」
重症板をみると、抗生剤の変更追加、免疫グロブリン製剤の追加などが行われている。点滴ばかりだが、重症でこうも重なってくると副作用の出現率も高い。こうなると救命的な意味が強い治療となっていく。
「いちおう治療は、するんですね・・しかし家族の希望は」
「家族がもういいですって言ってもね。いったん始まった治療の流れは・・なかなか止められないんだよ」
「なんか、そこが・・・?」
たしかに延命治療を投げ出しておいて、薬剤による保存的治療に必死になるのはおかしいような気もする。家族が<これ以上の治療は希望しない>と言うのであれば、もはや現時点での治療の変更は意義を持たないだろう。だがそれでも、許せる範囲で何かできるのでは、という主治医の妙なプライドが働いてしまう。
COPDの波多野じいさんはまだ咳き込んでいた。
「ニップネーザル、効果ありだ」
僕は医長に説明。
「呼吸リハビリなどもして、退院は週明けだな」
「よかったですね」
トシキは作り笑顔風に患者を見下ろした。
「おかげさんで。店はまた始めてもいいかいな?」
じいさんは早く仕事に復帰したいようだった。だが無理がある。
あのカラオケ店は2階立てで、じいさん1人が階段を上り下りして切り盛りしている。
「波多野さん。バイトを雇うとか・・」
「もう1人雇う?やっていけんよ!」
「階段はキツイよ」
「いやいや!やらんといかん!」
じいさんのやる気を押さえ込むわけにもいかず、週明け退院での営業再開が確定した。
向かいの仲の悪いじいさんは退院。
次は60歳のステント挿入後患者。
「傷ももう、キレイになって・・」
患者は右腕を何度もクルクル回した。ステント挿入して3日後。胸痛らしきものもあったが心電図変化はなく、今後大部屋へ移動する予定。
僕らは廊下へ出た。
僕は医長に近寄った。
「医長。この6人枠っていう増員は・・事務長のアイデアか?」
「ええ」
「緑膿菌感染症患者と、若年(60歳)患者を同室にするのは・・」
「そんな余裕があればいいんですが・・」
「経済的な問題なんだろな」
ミチル婦長からも聞いたが、ベッドの割り振りで一番気を使うところだという。しかし婦長だけの独断ではいかず、経営する側の意見も重要視される。
最近では病院経営者の意向がかなり反映されるので、患者への配慮はますます減っていくのだろう。
しかし目をつぶるしかない点だった。
廊下を歩く途中、医長はPHSに出た。
その間、シローが寄ってきた。
「ユウキ先生。すみません」
「なんだよオレに謝るなんて。『患者に謝れ』よ」
「それグッド!でも笑えない・・」
「どしたんだ?」
「ザッキーにそろそろ言いましょうか。気づいてないみたいだし」
「アレの可能性か?」
「ええ」
実はザッキーは・・・2週間ほど前に内視鏡を手荒く扱いすぎたことがあった。手技はかなりの腕前が期待できそうなのだが、嘔吐反射に激しい患者で、鎮静剤の量が少なかったのか、なかなか内視鏡が入らなかった。
挿入するまでの間、患者の喉の奥は少量だが出血してしまった。
「僕はもう代われ、と言ったんですが・・」
「外来婦長から聞いたよ。逆ギレして、それでもやりますって言ったんだろ?」
「・・・・・」
「教習所だったら、再講習だぞ」
補助ブレーキがあれば、いいんだが。
遠まわしだが、つまりはその際にできた傷が今回の頸部の膿瘍に関係しているのではないかという考えだ。というか、それ以外原因が考えられない。
「そうだな、シロー。今日、指摘しておけ。なんなら説教してもかまわん」
僕がしようと思ったことだが、ついでにとシローにあてつけた。
医長はPHSを切った。
次は2人部屋の重症部屋。慢性疾患で、人工呼吸器が2つついてる部屋だ。
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