ダル4 ? 現実 ?
2005年11月1日8時半。
「・・・・・」
僕はジーンズで裏口から入った。しかし今は出勤がゾロゾロやってくる時間帯だ。目立つ目立つ。何が目立つかって・・?
「今日はジーンズですか?先生!」
後ろから若いPTの声。
「呼ばれてな」
僕は反射的に横向きになった。股を隠すためだ。さらに片手を前方へ。
早く白衣を着ないとな・・。
「用事が済んだら、すぐ帰るからな・・!」
医局に入ると、中年秘書さんがちょうど来たところだった。
「ユウキ先生!今日は早い!」
「今日は休みなんだけど、呼ばれたんだって」
「ジーンズで張りきって!」
「はりきってないない!」
ソファーでは当直のザッキーが寝ている。
「よく寝てるな、こいつ・・!」
白衣を着て、医局を出た。用事は早く済まして帰りたい。
歩いていくうち、ナース集団に合流した。股は白衣で隠れているから問題ない。
なんで股のことばかり気にしなくてはならんのだ・・・!
「ういっす」
詰所を入ると、日勤ナースらが看護記録などを予習していた。
「痙攣起こした人は、部屋を移ったのかな・・」
詰所内の部屋の振り分け表を確認。
「波多野じいは、重症部屋か・・」
2人とも重症部屋にいた。
「じい・・波多野さん!」
「やあやあ!」
じいは座位で座っていた。
「いきなり仕事始めるから・・・!」
「やっぱ、せんほうがよかったですな!」
「そりゃそうだよ」
「いやいや。ユウキ先生がもう仕事してもええって言うから」
「言うてない言うてない!」
「いや、言うた!この耳で聞いた!」
これから指導内容もカルテに書こう・・。
「肺の予備能力が少ないんですよ・・」
「ま、素人やから・・」
いつもそうやって逃げるな。このじいは!
「今日はもう帰ります。肺炎という印象でもないので・・・
休養の意味で入院は続けましょう」
「も、もう帰る?」
「今日は、休みでしてね。言いにくいけど」
「言うてるじゃないか?」
このじいめ・・。
「明日、また状態を確認します」
「今から退院できませぬか?」
「無理です」
「わしはかか、帰る」
じいは尿道バルーンが入ったまま、立ち上がろうとした。
「おいおいダメダメ!おいだれか!」
詰所へ叫んだが、誰も来ない。ナースコールで。
「誰か来いよ!」
若いナースがやってきた。
「申し送りが始まったんで」
「じいさんが、帰ろうとしてんだぞ!」
「申し送りの間は、先生がお願いします」
ナースはまた戻っていった。
「波多野さん。まあ待ってよ!マジで!」
「ハアハア・・・」
「ほらあ。苦しいだけだよ!」
くたびれたじいを、再びベッドに寝かせた。
育児ノイローゼの気持ちが分かる。
もう1人・・・脳梗塞後遺症でてんかん発作のおばあさんだ。
今は変わりはなさそうだな。痴呆あり、優位半球の障害のため、
失語が著明だ。誤嚥の傾向があり鼻チューブより経管栄養・内服。肺炎・尿路感染を繰り返している。
炎症・脱水を繰り返したりで、消化管も荒れたりでおそらく、薬物の血中濃度が一定してないのも発作の原因じゃないかな・・。はたまた後遺症の増悪か。
僕は申し送り中の詰所に入った。
「あの、家族は?」
おばさんナースは必死で申し送り中。
「403号の山本さん。ユウキ先生の患者さん。2日前より高熱があり抗生剤が開始。
病名はどうたらこうたら。今になっても熱はいっこうに下がっていません」
「診断がどうたらで悪かったなおい!」
僕の患者のことでもあり、思わず口に出た。
「不明熱ってカルテに書いてますが・・」
北野がナースの間に混じっていた。
「不明熱の定義は、38.3℃以上の高熱が3週間以上・・」
「うせろ。おい深夜ナース!」
「はい?」
「途中で悪いけど、家族はいつ来るんだ?」
「は?さあ・・」
「こっち、向かってるんだろ?」
「はあ・・・ちょっと!」
深夜のもう1人を呼んだ。
「アンタ、電話したんでしょ?」
若いナースはカルテを開いた。
「ここにかけたんですが。すぐ来ると」
「?・・・おい。これ・・・鹿児島じゃないか?だる・・・」
一瞬の沈黙の後、申し送りは再開された。
「これ。痙攣のときの指示。帰るからな!」
僕は医局へ戻ろうとした。エレベーターで上がろうとしたが、
近くの廊下を急速に降りてくる音。
「なに・・?」
のぞくと、降りてきた医者の1人が立ち止まった。
「ああ!いたいた!」
眼科のドクターだ。
「ドクターなら誰でもいいからって、それで呼ばれたんだけどね!」
「ま、一応そうだよな」
「な、なんて?」
「いやいや。なにか?」
「下に救急車が来たんだ」
「行けよ。俺は休みで」
「さあさあ!」
彼は僕を押しながら、階段を駆け下りた。
「・・・・・」
僕はジーンズで裏口から入った。しかし今は出勤がゾロゾロやってくる時間帯だ。目立つ目立つ。何が目立つかって・・?
「今日はジーンズですか?先生!」
後ろから若いPTの声。
「呼ばれてな」
僕は反射的に横向きになった。股を隠すためだ。さらに片手を前方へ。
早く白衣を着ないとな・・。
「用事が済んだら、すぐ帰るからな・・!」
医局に入ると、中年秘書さんがちょうど来たところだった。
「ユウキ先生!今日は早い!」
「今日は休みなんだけど、呼ばれたんだって」
「ジーンズで張りきって!」
「はりきってないない!」
ソファーでは当直のザッキーが寝ている。
「よく寝てるな、こいつ・・!」
白衣を着て、医局を出た。用事は早く済まして帰りたい。
歩いていくうち、ナース集団に合流した。股は白衣で隠れているから問題ない。
なんで股のことばかり気にしなくてはならんのだ・・・!
「ういっす」
詰所を入ると、日勤ナースらが看護記録などを予習していた。
「痙攣起こした人は、部屋を移ったのかな・・」
詰所内の部屋の振り分け表を確認。
「波多野じいは、重症部屋か・・」
2人とも重症部屋にいた。
「じい・・波多野さん!」
「やあやあ!」
じいは座位で座っていた。
「いきなり仕事始めるから・・・!」
「やっぱ、せんほうがよかったですな!」
「そりゃそうだよ」
「いやいや。ユウキ先生がもう仕事してもええって言うから」
「言うてない言うてない!」
「いや、言うた!この耳で聞いた!」
これから指導内容もカルテに書こう・・。
「肺の予備能力が少ないんですよ・・」
「ま、素人やから・・」
いつもそうやって逃げるな。このじいは!
「今日はもう帰ります。肺炎という印象でもないので・・・
休養の意味で入院は続けましょう」
「も、もう帰る?」
「今日は、休みでしてね。言いにくいけど」
「言うてるじゃないか?」
このじいめ・・。
「明日、また状態を確認します」
「今から退院できませぬか?」
「無理です」
「わしはかか、帰る」
じいは尿道バルーンが入ったまま、立ち上がろうとした。
「おいおいダメダメ!おいだれか!」
詰所へ叫んだが、誰も来ない。ナースコールで。
「誰か来いよ!」
若いナースがやってきた。
「申し送りが始まったんで」
「じいさんが、帰ろうとしてんだぞ!」
「申し送りの間は、先生がお願いします」
ナースはまた戻っていった。
「波多野さん。まあ待ってよ!マジで!」
「ハアハア・・・」
「ほらあ。苦しいだけだよ!」
くたびれたじいを、再びベッドに寝かせた。
育児ノイローゼの気持ちが分かる。
もう1人・・・脳梗塞後遺症でてんかん発作のおばあさんだ。
今は変わりはなさそうだな。痴呆あり、優位半球の障害のため、
失語が著明だ。誤嚥の傾向があり鼻チューブより経管栄養・内服。肺炎・尿路感染を繰り返している。
炎症・脱水を繰り返したりで、消化管も荒れたりでおそらく、薬物の血中濃度が一定してないのも発作の原因じゃないかな・・。はたまた後遺症の増悪か。
僕は申し送り中の詰所に入った。
「あの、家族は?」
おばさんナースは必死で申し送り中。
「403号の山本さん。ユウキ先生の患者さん。2日前より高熱があり抗生剤が開始。
病名はどうたらこうたら。今になっても熱はいっこうに下がっていません」
「診断がどうたらで悪かったなおい!」
僕の患者のことでもあり、思わず口に出た。
「不明熱ってカルテに書いてますが・・」
北野がナースの間に混じっていた。
「不明熱の定義は、38.3℃以上の高熱が3週間以上・・」
「うせろ。おい深夜ナース!」
「はい?」
「途中で悪いけど、家族はいつ来るんだ?」
「は?さあ・・」
「こっち、向かってるんだろ?」
「はあ・・・ちょっと!」
深夜のもう1人を呼んだ。
「アンタ、電話したんでしょ?」
若いナースはカルテを開いた。
「ここにかけたんですが。すぐ来ると」
「?・・・おい。これ・・・鹿児島じゃないか?だる・・・」
一瞬の沈黙の後、申し送りは再開された。
「これ。痙攣のときの指示。帰るからな!」
僕は医局へ戻ろうとした。エレベーターで上がろうとしたが、
近くの廊下を急速に降りてくる音。
「なに・・?」
のぞくと、降りてきた医者の1人が立ち止まった。
「ああ!いたいた!」
眼科のドクターだ。
「ドクターなら誰でもいいからって、それで呼ばれたんだけどね!」
「ま、一応そうだよな」
「な、なんて?」
「いやいや。なにか?」
「下に救急車が来たんだ」
「行けよ。俺は休みで」
「さあさあ!」
彼は僕を押しながら、階段を駆け下りた。
コメント