ダル4 ? AHHHHH!
2005年11月2日オートバックスで、カーステのコーナーを回診。
『えー、このモデルはCDチェンジャーの最新型でして、10連奏が可能です』
などと想像しながら、1つずつ機器を見ていく。
「MDチェンジャーか・・いいな!」
当時MDを録音媒体として使っていた自分には嬉しい製品だった。
『えー、このモデルは6連奏でして、あと1台しか売ってません。(カルテを畳みながら)お取り寄せになります』
「よし。これをつけてもらおう!」
独身の特権、<衝動買い>だ。しかしこのあと、店員の巧妙な話術でいろいろ<付属品>を買わされた。
「スピーカーに、アンプに・・・まるで洗脳だな」
カードで料金を一括払いし、待つことに。取り付けに2時間ほどかかるらしい。
「昼飯でも食おう・・」
独身男性は外食が基本だ。外食でよく食べるのは何か。自ずと<1人で入れる店><すぐ食べれるもの>
が基本となる。自分にとっての当時のランキングは・・
? ココイチ(CoCo壱番屋) ・・ 来たからにはトッピングを数種重ねる。トッピングは野菜重視。
? 吉野家 ・・ 朝早起きした場合は<特朝>を食べる。それ以外は牛丼(当時)+みそしる+つけもの。
? あきんど ・・ 回転寿司。にぎりの新鮮なのが置かれる席を狙う。かけうどんが安く毎回頼んでしまう。
? 中華料理店 ・・ 焼き飯とラーメン。焼き飯注文→スープが来て以降にラーメンを注文。
? うどん屋 ・・ よほど時間がないとき。立ち食いに限る。冷却水の近くに場所を確保(夏)。
? お好み焼き ・・ 匂いにつられて入るケースがほとんど。マンガ本が置いてあるのが条件。
全般的に野菜が不足する。すると便秘傾向になる。便秘は仕事の大敵だ。なのでそこは毎回注意したい。
その日はオートバックスから5分離れた<あきんど>で寿司を注文。ボタンを押して注文しなきゃならない。
「すんません。いくら、はまちを1皿ずつ」
『ブーッ』(ノイズ)
「クイズか?」
『もう一度お願いします!』
「だるう・・・いくら!と!はまち!」
『いくら、と・・・?』
「は!ま!ち!」
気がつくと、身を乗り出していた。かなり恥ずかしいものがある。
近くを見ると、かなり高齢のおばあさんが1人で来ている。
僕もこのまま結婚しなかったら(←ばあさんのことを勝手に決めつけている)、一生外食なのだろうか。
独身で一生外食する群と、結婚して外食しない群とに分けたらどうなるだろうか。有意差はでるか?なんのや?
前者はおそらく生活習慣病になるのは必須だが、今回のような衝動買いなどが楽しめる。QOLの面ではこちらがいいのではないか。
しかし後者の家庭持ちでは健康的に生活を送れそうなメリットが。となると体は伸び伸びで、ADLは保障されそうだな。しかしその分財布は握られ(←決め付け)、自由のない生活になりそうだ。これまでの医者仲間達を見ているとそう思うのだ。
7皿で腹いっぱいで、精算してもらう。
外へ出て、またいろいろ考えた。
「車のトランクも配線の関係で開けると言ってたな・・・う?」
思い出した。トランクの中は荷物で一杯だ・・!
「や、やべえ!」
僕は一目散に駈けはじめた。T-1000も真っ青だ。
メンテナンスの場所へ駆けつけると、車は2メートルほど持ち上げられていた。ついでに頼んだオイル交換だ。
トランクの荷物、荷物は・・・。
「これか!」
大きなドラム缶の中に、無造作に入れられているのがそうだ。数々の書類。
トランクに入れておいたのは、実はこれまでナアナアにしていた書類の類だったのだ。
今だから言えるが・・。
ほとんどがサマリーのコピー、文献コピーだ。サマリーコピーは認定試験などに要るかもしれないので、大事にとっておかんと。一方、文献のほうは年代的に古くなりつつあり、次々とゴミ箱へ移していった。
「これもいらん、これもいらん・・・」
ふと目を留めると、封筒が。僕は思わず座り込んだ。
「これは・・・ずっと前の学会のときの・・?」
封はすでに破っており、とうに読んだものだ。
『先生、内科学会は来るの?会える日を楽しみにしています。私はD21会場のポスター会場で発表をする予定です。宿泊先は帝国ホテル。電話番号は・・」
ここ、これは・・・。頭の中でとっくに封印したはずの思い出の人、じゃないか・・。
今思えば、僕らは当時25-26歳。若かった。今はどうだ。32だよ。女の32ってどうなんだ。やっぱりシワはできるのか。面影は変わるのか。お前はタンロンか。また会うのが怖い。
こういうものを男は大事にするものだが・・・やはり捨てるのはやめることにした。
♪み〜は〜て〜ぬ、ゆ〜めを・・・・お〜とこは振り向き、おんなは、消しさる・・・
そうだ。僕は<愚か者>だ。
ポケベルが鳴ってきた。いつもの如く、最悪のタイミングだ。感傷が台無しだ。
「・・・かけて、と。もしもし、詰所?」
『ミチルです。山ほど申し送り事項が』
「あ、そ・・どうぞ」
整備員がやってきた。
「お客さん。オイルエレメントも換えときましょうか?」
「は、はい」
『まだ何も言ってないわよ?』
「あ、ああ。どうぞ」
『先生、今どこにいるんですか?』
「いいやんか。どこでも」
『肺気腫の人、入院して今は安定してます』
「そういうことはいいから!緊急の要件だけ!」
周囲がガーガー騒がしい。方耳を手で塞ぐ。
『呼吸器のついた方。気道内圧が上がってます。医長はチューブの交換をしたほうがいいのではないかと』
「うん。医長に頼んでおいてよ」
『先生は、やっぱり来られませんかね・・』
「朝、ちゃんちと行っただだだろうが!」思わず言葉が間違う、この気持ちがわかるか。
『ほかの患者さんの家族さんが来られてて、病状はどうなっているかと・・・』
「今日は休みだから、と言ってておくれよ!」
『明日、胃カメラを受ける方が説明を聞いていないと』
「したんだけどな〜・・おかしいな・・」
これもよくある。
「明日の朝、説明するよ」
『夜食を食べると言ってます』
「食わすなよ夜食なんか!」
『え?聞こえない・・もしもーし!』
電波の状態が悪い。
「あのな・・・言うぞ・・・」
僕は思いっきり息を吸った。
「くわすなよやしょくなんかああ!はっ?」
ふと振り向くと、周囲の作業員が業務を中断、僕を注視していた。
「す、すみません・・」
『謝らなくても先生』
「お前とちゃうわ!はあ、はあ・・・」
なんとか用件を済まし、車も片がついた。
「では、あとは・・」
車に乗り込み、とりあえずラジオを聴く。アパートに戻ってMDでチェックだ。
「ダダッシュダダッシュダダッシュ、アー!」(←当時の久保田利伸のAHHHHH!より)
ポケベルがまた鳴る。
「アー?」
運転しながら携帯をかける。
「もしもし。なんだよ今度は・・・?」
『シローです。AMI(急性心筋梗塞)が入ります』
「わかった。いく」
車の進路を頭で修正し直し、加速を強めた。
頭の中で久保田の歌が、他人事のように唄う。
♪こんなよろっこびっは、かかえっきれないよききもおおいでんよぉおお〜
「アアー!」
♪そうさネーバ〜ギバアア〜ッ
『えー、このモデルはCDチェンジャーの最新型でして、10連奏が可能です』
などと想像しながら、1つずつ機器を見ていく。
「MDチェンジャーか・・いいな!」
当時MDを録音媒体として使っていた自分には嬉しい製品だった。
『えー、このモデルは6連奏でして、あと1台しか売ってません。(カルテを畳みながら)お取り寄せになります』
「よし。これをつけてもらおう!」
独身の特権、<衝動買い>だ。しかしこのあと、店員の巧妙な話術でいろいろ<付属品>を買わされた。
「スピーカーに、アンプに・・・まるで洗脳だな」
カードで料金を一括払いし、待つことに。取り付けに2時間ほどかかるらしい。
「昼飯でも食おう・・」
独身男性は外食が基本だ。外食でよく食べるのは何か。自ずと<1人で入れる店><すぐ食べれるもの>
が基本となる。自分にとっての当時のランキングは・・
? ココイチ(CoCo壱番屋) ・・ 来たからにはトッピングを数種重ねる。トッピングは野菜重視。
? 吉野家 ・・ 朝早起きした場合は<特朝>を食べる。それ以外は牛丼(当時)+みそしる+つけもの。
? あきんど ・・ 回転寿司。にぎりの新鮮なのが置かれる席を狙う。かけうどんが安く毎回頼んでしまう。
? 中華料理店 ・・ 焼き飯とラーメン。焼き飯注文→スープが来て以降にラーメンを注文。
? うどん屋 ・・ よほど時間がないとき。立ち食いに限る。冷却水の近くに場所を確保(夏)。
? お好み焼き ・・ 匂いにつられて入るケースがほとんど。マンガ本が置いてあるのが条件。
全般的に野菜が不足する。すると便秘傾向になる。便秘は仕事の大敵だ。なのでそこは毎回注意したい。
その日はオートバックスから5分離れた<あきんど>で寿司を注文。ボタンを押して注文しなきゃならない。
「すんません。いくら、はまちを1皿ずつ」
『ブーッ』(ノイズ)
「クイズか?」
『もう一度お願いします!』
「だるう・・・いくら!と!はまち!」
『いくら、と・・・?』
「は!ま!ち!」
気がつくと、身を乗り出していた。かなり恥ずかしいものがある。
近くを見ると、かなり高齢のおばあさんが1人で来ている。
僕もこのまま結婚しなかったら(←ばあさんのことを勝手に決めつけている)、一生外食なのだろうか。
独身で一生外食する群と、結婚して外食しない群とに分けたらどうなるだろうか。有意差はでるか?なんのや?
前者はおそらく生活習慣病になるのは必須だが、今回のような衝動買いなどが楽しめる。QOLの面ではこちらがいいのではないか。
しかし後者の家庭持ちでは健康的に生活を送れそうなメリットが。となると体は伸び伸びで、ADLは保障されそうだな。しかしその分財布は握られ(←決め付け)、自由のない生活になりそうだ。これまでの医者仲間達を見ているとそう思うのだ。
7皿で腹いっぱいで、精算してもらう。
外へ出て、またいろいろ考えた。
「車のトランクも配線の関係で開けると言ってたな・・・う?」
思い出した。トランクの中は荷物で一杯だ・・!
「や、やべえ!」
僕は一目散に駈けはじめた。T-1000も真っ青だ。
メンテナンスの場所へ駆けつけると、車は2メートルほど持ち上げられていた。ついでに頼んだオイル交換だ。
トランクの荷物、荷物は・・・。
「これか!」
大きなドラム缶の中に、無造作に入れられているのがそうだ。数々の書類。
トランクに入れておいたのは、実はこれまでナアナアにしていた書類の類だったのだ。
今だから言えるが・・。
ほとんどがサマリーのコピー、文献コピーだ。サマリーコピーは認定試験などに要るかもしれないので、大事にとっておかんと。一方、文献のほうは年代的に古くなりつつあり、次々とゴミ箱へ移していった。
「これもいらん、これもいらん・・・」
ふと目を留めると、封筒が。僕は思わず座り込んだ。
「これは・・・ずっと前の学会のときの・・?」
封はすでに破っており、とうに読んだものだ。
『先生、内科学会は来るの?会える日を楽しみにしています。私はD21会場のポスター会場で発表をする予定です。宿泊先は帝国ホテル。電話番号は・・」
ここ、これは・・・。頭の中でとっくに封印したはずの思い出の人、じゃないか・・。
今思えば、僕らは当時25-26歳。若かった。今はどうだ。32だよ。女の32ってどうなんだ。やっぱりシワはできるのか。面影は変わるのか。お前はタンロンか。また会うのが怖い。
こういうものを男は大事にするものだが・・・やはり捨てるのはやめることにした。
♪み〜は〜て〜ぬ、ゆ〜めを・・・・お〜とこは振り向き、おんなは、消しさる・・・
そうだ。僕は<愚か者>だ。
ポケベルが鳴ってきた。いつもの如く、最悪のタイミングだ。感傷が台無しだ。
「・・・かけて、と。もしもし、詰所?」
『ミチルです。山ほど申し送り事項が』
「あ、そ・・どうぞ」
整備員がやってきた。
「お客さん。オイルエレメントも換えときましょうか?」
「は、はい」
『まだ何も言ってないわよ?』
「あ、ああ。どうぞ」
『先生、今どこにいるんですか?』
「いいやんか。どこでも」
『肺気腫の人、入院して今は安定してます』
「そういうことはいいから!緊急の要件だけ!」
周囲がガーガー騒がしい。方耳を手で塞ぐ。
『呼吸器のついた方。気道内圧が上がってます。医長はチューブの交換をしたほうがいいのではないかと』
「うん。医長に頼んでおいてよ」
『先生は、やっぱり来られませんかね・・』
「朝、ちゃんちと行っただだだろうが!」思わず言葉が間違う、この気持ちがわかるか。
『ほかの患者さんの家族さんが来られてて、病状はどうなっているかと・・・』
「今日は休みだから、と言ってておくれよ!」
『明日、胃カメラを受ける方が説明を聞いていないと』
「したんだけどな〜・・おかしいな・・」
これもよくある。
「明日の朝、説明するよ」
『夜食を食べると言ってます』
「食わすなよ夜食なんか!」
『え?聞こえない・・もしもーし!』
電波の状態が悪い。
「あのな・・・言うぞ・・・」
僕は思いっきり息を吸った。
「くわすなよやしょくなんかああ!はっ?」
ふと振り向くと、周囲の作業員が業務を中断、僕を注視していた。
「す、すみません・・」
『謝らなくても先生』
「お前とちゃうわ!はあ、はあ・・・」
なんとか用件を済まし、車も片がついた。
「では、あとは・・」
車に乗り込み、とりあえずラジオを聴く。アパートに戻ってMDでチェックだ。
「ダダッシュダダッシュダダッシュ、アー!」(←当時の久保田利伸のAHHHHH!より)
ポケベルがまた鳴る。
「アー?」
運転しながら携帯をかける。
「もしもし。なんだよ今度は・・・?」
『シローです。AMI(急性心筋梗塞)が入ります』
「わかった。いく」
車の進路を頭で修正し直し、加速を強めた。
頭の中で久保田の歌が、他人事のように唄う。
♪こんなよろっこびっは、かかえっきれないよききもおおいでんよぉおお〜
「アアー!」
♪そうさネーバ〜ギバアア〜ッ
コメント