ダル5 ? うどん屋
2005年11月17日「はああ!めしめし!」
僕は北野と職員食堂へ向かった。
ガラッと開けると人が少ない。医長が混じっていた。
「よう!しょくどうヘルニア君!」
「・・・?」
「字、間違えてたぞ!」
「先輩。胃カメラオーダー、多すぎます」
「すんません」
僕は今日の昼食をウインドウごしに覗いた。
とても人間の食べれるものではない・・・。
「北野。近くのうどん屋、行こう!」
「えっ?いいんですか?」
「いいって!いくぞ!いいよな?医長」
「いいでしょう」
なんでいちいちこの男の許可をもらわなくてはいかんのだ・・・!
外へ出て、8車線分の横断歩道を渡る。右へ曲がり、うどん店へ。気がつくともう昼の1時半。
食券を買い、カウンターで渡す。
「さ、5分で食うぞ!」
「そんなに速くですか?」
「2時からペースメーカーの植え込みがあるんだよ。ほら、この前夕方入院になった」
「水曜日の・・・テンポラリー(一時的ペースメーカー)入れた人ですね」
「遅れたら、総統にビンタされるぞ!」
うどんが来た。ヤケド覚悟で食べ始める。カウンターは隣の客どうしでキツキツだ。
「ユウキ先生。総統・・・窪田先生って人は、大学講師だったんですよね?」
「うん。ま、いろいろあって・・・今は民間病院の副院長だ。ずずう」
「講師になったら、次は助教授では?」
「そりゃ、狙ってたに決まってるだろ。ま、そこは大人の事情があったりで。ずずう」
「問題があったんですね・・・」
「俺らもいつどうなるか、分からんからね。ずずう」
僕はもう食べ終わり、北野を待つだけだった。
「できれば俺は、あの人にここの院長になってもらいたいんだけど」
「できる先生ですもんね」
「医長以外は賛成なんだが、事務長が難色を示してる。年齢がわりと高い(推定44歳)のと、オカマっぽいのと。何よりも医長と仲が良くないのが問題だ」
「年齢って関係あるんですか?」
「そりゃそうだ。心カテは50代になるとキツい。目がついていけない。僕はカテ年齢は40代半ば過ぎまでとみている。なので民間病院としては、まだまだ若いほうが」
事務長から聞いていた話だ。外科医にしても、雇う立場としては年齢的因子も重要だ。すぐにオペ引退されて内科のパシリに成り下がっては困るからだ。
「医長もなあ。過去のことは忘れちまえよな・・・」
「何かあったんですか?」
「トシキら研修医が一生懸命やってたのを、上の奴らがなんか放ってたらしいんだよな」
「それはひどい・・・」
有名な話だ。研修医数名が大学病院の病棟で取り残され、患者の急変など対処
させられた。たしか年末だ。ただでさえ人手不足のスタッフは旅行などを口実にほとんど
大学に姿をみせず、スタンドプレーの電話対応が中心だった。
ひどい話だ。
そこで医長はスカウトされ、いま僕らのいる病院へやってきた。大胆な奴だが、よほど追い込まれていたんだろうな・・・。それ以後この病院はただの消化器病院から、胸部内科中心の
メガヒット病院に成長した。
「大学の上の奴らは、自分の出世しか頭にないよ」
「はあ・・・」
「でも総統は反省してるよ。今はいい人。きっと民間病院で覚醒したんだ。貴重な症例だ」
「悪い人から、いい人にですか・・・」
「世の中、逆が多いのにな」
と僕は勝手に喋っていたが真偽のほどは分からず。人の真意は最後までわからない。
北野は箸をチンと置いた。
「よし、行くぞ!」
僕は振り返りダッシュした。北野も続く。
ちょうど歩行者信号は・・・青信号だ。
ポッポー、ポッポー、ポッポーの音に引き込まれながら、全力疾走。
なんとか渡りきり、すぐ後ろをバイクが通り過ぎた。たったいま赤になったようだ。
「あれ?」
振り向くと、北野は・・・。
横断歩道の向こうで立っている。
「どあるう!なにやってんだ!」
「すみませーん!お先にどうぞー!」
なにやら電話している。忙しい男だな。彼女がいるようには見えないんだが・・・。
時計を見るともう1時48分だ!急げ!
ドゥイット!ドゥイット、ババン!バン!
僕は北野と職員食堂へ向かった。
ガラッと開けると人が少ない。医長が混じっていた。
「よう!しょくどうヘルニア君!」
「・・・?」
「字、間違えてたぞ!」
「先輩。胃カメラオーダー、多すぎます」
「すんません」
僕は今日の昼食をウインドウごしに覗いた。
とても人間の食べれるものではない・・・。
「北野。近くのうどん屋、行こう!」
「えっ?いいんですか?」
「いいって!いくぞ!いいよな?医長」
「いいでしょう」
なんでいちいちこの男の許可をもらわなくてはいかんのだ・・・!
外へ出て、8車線分の横断歩道を渡る。右へ曲がり、うどん店へ。気がつくともう昼の1時半。
食券を買い、カウンターで渡す。
「さ、5分で食うぞ!」
「そんなに速くですか?」
「2時からペースメーカーの植え込みがあるんだよ。ほら、この前夕方入院になった」
「水曜日の・・・テンポラリー(一時的ペースメーカー)入れた人ですね」
「遅れたら、総統にビンタされるぞ!」
うどんが来た。ヤケド覚悟で食べ始める。カウンターは隣の客どうしでキツキツだ。
「ユウキ先生。総統・・・窪田先生って人は、大学講師だったんですよね?」
「うん。ま、いろいろあって・・・今は民間病院の副院長だ。ずずう」
「講師になったら、次は助教授では?」
「そりゃ、狙ってたに決まってるだろ。ま、そこは大人の事情があったりで。ずずう」
「問題があったんですね・・・」
「俺らもいつどうなるか、分からんからね。ずずう」
僕はもう食べ終わり、北野を待つだけだった。
「できれば俺は、あの人にここの院長になってもらいたいんだけど」
「できる先生ですもんね」
「医長以外は賛成なんだが、事務長が難色を示してる。年齢がわりと高い(推定44歳)のと、オカマっぽいのと。何よりも医長と仲が良くないのが問題だ」
「年齢って関係あるんですか?」
「そりゃそうだ。心カテは50代になるとキツい。目がついていけない。僕はカテ年齢は40代半ば過ぎまでとみている。なので民間病院としては、まだまだ若いほうが」
事務長から聞いていた話だ。外科医にしても、雇う立場としては年齢的因子も重要だ。すぐにオペ引退されて内科のパシリに成り下がっては困るからだ。
「医長もなあ。過去のことは忘れちまえよな・・・」
「何かあったんですか?」
「トシキら研修医が一生懸命やってたのを、上の奴らがなんか放ってたらしいんだよな」
「それはひどい・・・」
有名な話だ。研修医数名が大学病院の病棟で取り残され、患者の急変など対処
させられた。たしか年末だ。ただでさえ人手不足のスタッフは旅行などを口実にほとんど
大学に姿をみせず、スタンドプレーの電話対応が中心だった。
ひどい話だ。
そこで医長はスカウトされ、いま僕らのいる病院へやってきた。大胆な奴だが、よほど追い込まれていたんだろうな・・・。それ以後この病院はただの消化器病院から、胸部内科中心の
メガヒット病院に成長した。
「大学の上の奴らは、自分の出世しか頭にないよ」
「はあ・・・」
「でも総統は反省してるよ。今はいい人。きっと民間病院で覚醒したんだ。貴重な症例だ」
「悪い人から、いい人にですか・・・」
「世の中、逆が多いのにな」
と僕は勝手に喋っていたが真偽のほどは分からず。人の真意は最後までわからない。
北野は箸をチンと置いた。
「よし、行くぞ!」
僕は振り返りダッシュした。北野も続く。
ちょうど歩行者信号は・・・青信号だ。
ポッポー、ポッポー、ポッポーの音に引き込まれながら、全力疾走。
なんとか渡りきり、すぐ後ろをバイクが通り過ぎた。たったいま赤になったようだ。
「あれ?」
振り向くと、北野は・・・。
横断歩道の向こうで立っている。
「どあるう!なにやってんだ!」
「すみませーん!お先にどうぞー!」
なにやら電話している。忙しい男だな。彼女がいるようには見えないんだが・・・。
時計を見るともう1時48分だ!急げ!
ドゥイット!ドゥイット、ババン!バン!
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