ダル6 ? 独立記念日
2005年12月3日『当時主治医の宮川先生(その後解雇)によりますと・・・これはかなり無理をしている。入院が必要だと。相談を受けましたが妻は・・』
当時をしのんだのか、事実を知っている何人かはすすり泣きし始めた。
『妻はそれでも私と、その料亭を支えてくれました。でも本当に私たちを支えてくれのは・・・』
彼は言葉を失った。
『・・・くれたのは、昨日訪ねていただきました、たくさんの看護婦さんの方々でした。あ、お医者さんも何人か』
オーク軍団はこのじいさんのために、その店を選んだ、というのは考えすぎか・・・?
事務長は思わず股間を隠した。
『私も失礼ながら、ここの病院の看護婦さんたちだと気づいたのはしばらく後でして・・・』
彼は大きく長い発泡スチロールを指差した。地面に1ダースほどある。
『亡き妻にも、すでに報告してきたところです。それで今回、なんですがこれを』
部下らしき人間が箱のフタを開けた。中に巨大な魚が氷に埋もれているのが見えた。
「(一同)おおおおおおおお!」
『先日日本海にてとれたてのマグロでございます。北海のカニも用意してございます。さらに・・・』
説明が終わり、事務長は握手した。事務長はマイクをもらう。
『私もまあ昨日は大変だったわけですけど・・・あちこち汚したりしてお店の人に悪いなあと』
主人は心が広いようで、笑顔で応えていた。
『じゃあその・・・これらはすべて・・・いただいていいってことで?』
主人は<みなさんに>と手を差し伸べた。
『みなさん、自由にもら・・』
とたん、オーク軍団をはじめ全職員が一斉に飛びかかった。途中、倒れた者は踏まれた。
何か見たような光景だった。<ピンポンパン>の終盤、<おもちゃへ行こう!>のコーナーだったか。うらやましい思いをしたものだが。大人の場合はなんともまあ・・・見苦しい。
すさまじい攻防の中、やはり中年オーク軍団が大半をゲットした。中でもカニの人気がダントツだった。
僕ら医者軍団は圧倒され、その場で立ち尽くしていた。
『ああ、それと!』
事務長は笑顔でマイクを再び手にした。
『ユウキ先生!』
「は?」
『昨日の費用は・・・』
主人はウンウンと笑顔でうなずいている。ひょっとして・・・
『タダにしてくださると!』
「い、いやったああああああ!」
僕は思わずバンバンザイした。興奮が収まらず、前へ飛び出した。
「やった!やったぞ!」
僕と事務長はトップガンの空母のシーンのごとく、お互いガチッと肩を組んだ。
「やだ!キモ!」
ナースの最前列がなにやらまくしたてた。魚がゲットできず機嫌が悪い。
事務長はうれしそうに僕を見ている。
『ユウキ先生。アレ、やっていいですかね。ユウキ先生』
「なんだよ・・・勝手にやれよ」
僕はまだ多少は腹立たしかったので、彼には合わせなかった。
事務長は息を呑む。
『我々は、屈してはいけない!』
彼の興奮ぶりに、みな後ずさり気味になった。
『手に手を取って、立ち上がろう!』
事務長が夢見ていた、熱い演説だ。
『トゥデーイ、イズ!』
「(一同)?」
『な・・・なんちゃらこうちゃら、イ、インデペンデンス・デイ!ですよねユウキ先生!』
「オレまで巻き込むな!」
場はしらけた。誰もウけず。
「事務長。アレ忘れてるぞ。言うの」
僕は助けた。
『・・・?あ、そうそう。ちょっと早い話だがみんな聞いて』
みな耳がダンボになった。
『いよいよこの病院創立以来・・・・・・出るよ出るよ!』
「(一同)???????」
『この冬!ボーナスが!』
「(一同)いやったあああああああああ!」
僕は事務長の背中を押した。
「さ!やれよ!」
『と、トゥデーイ!な・・・なんちゃらこうちゃら、イ、インデペンデンス・デイ!』
「(一同)おおおおおおおお!」
駐車場は大盛り上がりで、近くを通る通行人はみな足を止めていた。
スタッフはみな肩や手を叩きあい、感動の渦に飲まれていた。
事務長はマイクを片付け、大きく手をたたいた。
「解散ーーーー!」
しかしみな感動はおさまらない。大賑わいは続いていた。
ヒーロー気取りの事務長に続き、僕は玄関へ向かった。
「おい待てよ。事務長!」
「はい?」
「さっきから言うの忘れてたが・・・」
「いいんですよ。謝らなくても」
「はあ?何をだ?スカポン!」
「では・・何を?」
「社会の窓!窓!」
「?ああっ!」
事務長はあわてふためき、ジッパーを上げた。
「せっかくカッコイイ演説だったのに・・・!」
「前の奴らはみんな笑ってたぞ」
「くそ!どうして言ってくれなかったんですよ。もう・・・」
「灯台、もと暗し!」
待合室に何人か座っている。事務から呼ばれるのを待っている。
午前中の薬待ちの人々・・だけではなかった。
不気味に微笑む少年が1人。こっちを見てるようなので、
こっちも向くことにする。
「はっ・・・・北野!」
次回、完結。
当時をしのんだのか、事実を知っている何人かはすすり泣きし始めた。
『妻はそれでも私と、その料亭を支えてくれました。でも本当に私たちを支えてくれのは・・・』
彼は言葉を失った。
『・・・くれたのは、昨日訪ねていただきました、たくさんの看護婦さんの方々でした。あ、お医者さんも何人か』
オーク軍団はこのじいさんのために、その店を選んだ、というのは考えすぎか・・・?
事務長は思わず股間を隠した。
『私も失礼ながら、ここの病院の看護婦さんたちだと気づいたのはしばらく後でして・・・』
彼は大きく長い発泡スチロールを指差した。地面に1ダースほどある。
『亡き妻にも、すでに報告してきたところです。それで今回、なんですがこれを』
部下らしき人間が箱のフタを開けた。中に巨大な魚が氷に埋もれているのが見えた。
「(一同)おおおおおおおお!」
『先日日本海にてとれたてのマグロでございます。北海のカニも用意してございます。さらに・・・』
説明が終わり、事務長は握手した。事務長はマイクをもらう。
『私もまあ昨日は大変だったわけですけど・・・あちこち汚したりしてお店の人に悪いなあと』
主人は心が広いようで、笑顔で応えていた。
『じゃあその・・・これらはすべて・・・いただいていいってことで?』
主人は<みなさんに>と手を差し伸べた。
『みなさん、自由にもら・・』
とたん、オーク軍団をはじめ全職員が一斉に飛びかかった。途中、倒れた者は踏まれた。
何か見たような光景だった。<ピンポンパン>の終盤、<おもちゃへ行こう!>のコーナーだったか。うらやましい思いをしたものだが。大人の場合はなんともまあ・・・見苦しい。
すさまじい攻防の中、やはり中年オーク軍団が大半をゲットした。中でもカニの人気がダントツだった。
僕ら医者軍団は圧倒され、その場で立ち尽くしていた。
『ああ、それと!』
事務長は笑顔でマイクを再び手にした。
『ユウキ先生!』
「は?」
『昨日の費用は・・・』
主人はウンウンと笑顔でうなずいている。ひょっとして・・・
『タダにしてくださると!』
「い、いやったああああああ!」
僕は思わずバンバンザイした。興奮が収まらず、前へ飛び出した。
「やった!やったぞ!」
僕と事務長はトップガンの空母のシーンのごとく、お互いガチッと肩を組んだ。
「やだ!キモ!」
ナースの最前列がなにやらまくしたてた。魚がゲットできず機嫌が悪い。
事務長はうれしそうに僕を見ている。
『ユウキ先生。アレ、やっていいですかね。ユウキ先生』
「なんだよ・・・勝手にやれよ」
僕はまだ多少は腹立たしかったので、彼には合わせなかった。
事務長は息を呑む。
『我々は、屈してはいけない!』
彼の興奮ぶりに、みな後ずさり気味になった。
『手に手を取って、立ち上がろう!』
事務長が夢見ていた、熱い演説だ。
『トゥデーイ、イズ!』
「(一同)?」
『な・・・なんちゃらこうちゃら、イ、インデペンデンス・デイ!ですよねユウキ先生!』
「オレまで巻き込むな!」
場はしらけた。誰もウけず。
「事務長。アレ忘れてるぞ。言うの」
僕は助けた。
『・・・?あ、そうそう。ちょっと早い話だがみんな聞いて』
みな耳がダンボになった。
『いよいよこの病院創立以来・・・・・・出るよ出るよ!』
「(一同)???????」
『この冬!ボーナスが!』
「(一同)いやったあああああああああ!」
僕は事務長の背中を押した。
「さ!やれよ!」
『と、トゥデーイ!な・・・なんちゃらこうちゃら、イ、インデペンデンス・デイ!』
「(一同)おおおおおおおお!」
駐車場は大盛り上がりで、近くを通る通行人はみな足を止めていた。
スタッフはみな肩や手を叩きあい、感動の渦に飲まれていた。
事務長はマイクを片付け、大きく手をたたいた。
「解散ーーーー!」
しかしみな感動はおさまらない。大賑わいは続いていた。
ヒーロー気取りの事務長に続き、僕は玄関へ向かった。
「おい待てよ。事務長!」
「はい?」
「さっきから言うの忘れてたが・・・」
「いいんですよ。謝らなくても」
「はあ?何をだ?スカポン!」
「では・・何を?」
「社会の窓!窓!」
「?ああっ!」
事務長はあわてふためき、ジッパーを上げた。
「せっかくカッコイイ演説だったのに・・・!」
「前の奴らはみんな笑ってたぞ」
「くそ!どうして言ってくれなかったんですよ。もう・・・」
「灯台、もと暗し!」
待合室に何人か座っている。事務から呼ばれるのを待っている。
午前中の薬待ちの人々・・だけではなかった。
不気味に微笑む少年が1人。こっちを見てるようなので、
こっちも向くことにする。
「はっ・・・・北野!」
次回、完結。
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