3RDSPACE ?

2005年12月31日
大阪。ミナミ。

黒いベンツの後部座席にゆったり座っている男が1人。面接前の彼はさほど緊張がみられない。しかし彼は少し身を乗り出した。

「大丈夫なんでしょうね。梶原さん」
「はい」

白髪だが背筋のしっかりした老人は、ていねいにハンドルを扱っていた。

「今度の病院は先生・・・まさしく先生のお眼鏡にかなうものかと」
「自信が?」
「そりゃあもう」
「だけど・・・それなりに忙しいって聞いてますよ」
「先生の希望では今回・・」
「わかってますわかってます・・そうそう。僕が希望したんだよな」
「・・・・・・・・」
「そういう病院をね」

真吾は胸を張った。

「これまでヒマな病院ばかりだったしね」
「ご自分の力をお確かめになりたいと・・いうことでしたよね?今回の理由は」
「梶原さんが情報を教えてくれたおかげですよ。前の病院の給料が下がり始めるとこだった」
「紹介できるところはいくらでもあるのですが」
「ああ。たしかに今回も、ヒマな病院でよかった。でもこのままだと・・・自分を生かせないような気がしてね」
「今度のところはコストはバッチリですよ。大阪ではかなり良いほうです」

だんだん車の速度が落ちてきた。真吾に緊張が迫る。

「梶原さん。最初は<見習い>でいいんですよね?」
「そう伝えてます」
「伝えてます?向こうの了解は?」
「向こうの事務長も喜んで了解を」
「事務長か・・・問題はそこの医者なんだけどな」

吹きすさぶ風を突っ切り、車は広大な駐車場へと入っていった。正面玄関は待合室からあふれた患者でごった返している。

「さ。ここです」
トランクを開け、大きなダンボールをいくつも出す。医学書が中心のため、どれも重い。
「これで・・・全部ですね」
リッチそうな老人は手をはたいた。

思わず2人は建物を見上げた。白くそびえる巨塔。

「今までのヘナチョコな病院とは、規模が違いますね。梶原さん」
「まあまず先生。ここでまず半年。頑張りましょうか」
「半年前も、そう言いましたね」
「はは・・・」

真吾は正面玄関から入るのを避け・・・近くの救急入り口が目に付いた。少し隙間がある。そこから入ることに。今日から自分は病院スタッフだから、自由に入っていいわけだ。

「お手並み拝見とさせてもらうか・・・!」

ドアに手をかけ、横にずらそうとすると・・・

さらにもう1つ。黒い手袋の手がガシッと手にかけられた。ドアは物凄い勢いで開く。

「うわっ!たた!」

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