3RDSPACE ?

2005年12月31日
後ろから押された勢いで、ドターンと両手を床につくと背後からストレッチャーが運ばれてきた。

「どいてください!」
救急隊が3人、心肺蘇生?をしながら走っている。受け止めるようにある医師がストップする。

「レスピつなぐぞ!」「IVH介助!ボスミン引け!」「モニター出てないぞ!」「DC300で!」「離れろって!」ズドン!とすでに処置中の患者が浮く。「脈は脈!」

 四方八方から聞かれる、罵りのような声。7〜8のベッドがひしめき合う。各ベッドに1〜2名の医師、またナースらが従うが、とても人手が足りていない。

「喘息重責で喉頭浮腫・・・。多分、ふつうの挿管は無理だ。気管支鏡を使用する。電源!」
ゴーグル、マスクなど完全防備の医師が、冷蔵庫の半分ほどの台のスイッチを押す。
「マイ気管支鏡を!」

ナースがアンビューを中断。

「チューブ!」
白衣背中の穴に突き刺していた挿管チューブを抜き出す。
「マッサージは続けて!」
「はい!」別のナースが大汗でマッサージを続ける。

チューブはすぐに入った。

「固定する!」
腕に止めていた多数のテープから1つ取り出し、固定。
「レントゲン呼んで!どいて!」
完全防備の医師はぶつかり、真吾は突き飛ばされた。

「ああ、すみません。家族の方は控え室に!」
ゴーグルを外すと、裏腹に優しそうな目が現れた。

真吾は膝のホコリを払った。
「自分は家族ではありません。本日より配属の・・・」
聞くまでもなく完全防備の医師は呼ばれ、近くの患者へ走りかかった。

モニター画面に食い入る。中年男性患者は苦悶様。

「HR 30台!硫アト硫アト!」
そう言いながらも助けはなく、その医師は自分で注射に液を吸う。ラインから注射。点滴を流す。また見るモニター。

「ザッキー!シローだ。こっちの患者は?度ブロック!透視は空いたかい?」
どうやら携帯で会話している。
「まだ?でももう待てない!運ぶよ!」
ストレッチャーのブレーキを外し、シローはストレッチャーを動かした。

「あ・・・!」
真吾も思わず走り、ついていった。後ろから手で押す。
「あ?どうも!誰?」
ベッドは透視室へ。

スーツ姿の真吾はそのまま透視室に入りかけた。
「出てください!」
真吾は技師に押し出され、廊下へ。

「・・・・・・」
立ち尽くしていると、台車にダンボールをいくつも載せた事務員がやってきた。
「これは、そちらの荷物ですか?」
「え?はい」
「シンゴ・・・真吾先生?」
「そうです」

事務員は握手を求めた。

「田中です。大きな声では言えませんが、実は事務のナンバー2」
「真吾です。よろしくお願いします」
「事務長事務長!」
田中は携帯で事務長を呼び出した。

「写真とったのかよ〜!」「言っただろー!」「あのバカが!」
ドップラー効果で行き来する医師やスタッフ。もう誰がなんだか
分からない。予想いていた忙しさを、遥かに超えていたようだ。

こんなところで働けるのだろうか・・・。

「すみませ〜ん!」
廊下の向こうからイケメンの事務長が走ってきた。彼のことは油断するなと梶原から聞いている。

「はあ、はあ、はあ」
「真吾です。よろしくお願いします」
「はあ・・・事務長の品川です。大変でしたでしょう。こちらへはどのように・・」
「梶原さんの車で」

田中は台車でエレベーターに入りかけた。

「では、荷物は医局へ。よろしいでしょうか」
「はい。あの!パソコンがあるので!くれぐれも・・」
「かしこまりました!気をつけます!事務長!」

「はあ。ん?」
「バンクの梶原さん・・・受付ですよ。たぶん」
「ああ。行く。チンゴ先生はこちらへ!」
「シンゴです」
「すみません・・・」

真吾は応接室へ。

事務長が入り口で立ち止まった。
「田中。相手はてごわいぞ!」
「事務長。贅沢を言う暇はありません」
「まええか。ええか〜ええのんかぁ〜」
「・・・・・・・」

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