3RDSPACE ?

2005年12月31日
事務長室。

事務長はふてくされ、タバコを取り出した。田中が火をつける。

「だってしょうがないよ。広告出しても、ヘンな医者ばっかだったし・・」
「例によって、真吾先生の経歴・評判は調べておきます」
「もう調査したよ。臨床経験はゼロに近い」
「え?でも経験年数・・7・8年目くらいじゃなかったですか?」
「回ってた病院が問題なんだよ!食って寝るだけ」
「食う寝る遊ぶですか。そんな病院あり?」
「それがあるんだよ」

そこへトントン、とノックが入った。

「入るぜオッサン!」
「ピート先生?どうぞ」

ピートが術衣・汗びっしょりで入ってきた。
ドカッと向かいに座る。

「はああ!これで満床になったかな!ベイベー!」
「とんでもない。まだまだ空きまっせ」
「オイオイ。みんなもうクタクタなんだぜ!」
「私もです。それはみな同じ!ノーペイン!」
「へッ・・・バカが」
「ピート先生のような素晴らしい先生がいるからこそ、私はこうやって枕を高くして・・」
「テメエのごまかしには、もう飽き飽きしてんだよ!」

事務長は内線をプッシュした。

「一般病棟の松下さん、柵原さん、三島さん・・・退院させてくれ」
壁に貼ってある一覧表を見て、あれこれ指図する。
「すると大部屋が丸まる1つ空く・・・ここを個室。2名分になるだろうが3人個室として使ってくれ。以上だ。情報はピート先生から。アーハン!」
「3人で個室・・・?そんなの個室とは言わないぜ」
「ま・・・そんなに<固執>しなさんな。情報を、どうも!」
「チッ!このオカチメンコが!」

ピートは拳をバンとテーブルに当て、救急室へ戻っていった。

みんなイライラしている。

引き続き事務長は外線を取る。
「働いてもらわなきゃ・・」

電話はすぐつながった。

「救急隊。そちらはどうですか?こちらはいけます。いつでも。アーハン!」
ガチャンと勢いよく受話器が叩き落された。

田中は大きく礼をした。
「冬の時代ですね」
「外はね。でも病院としては1年で最大の稼ぎ時なんだ。頑張ってもらわないと!」
「私らも、何か予定ありませんでしたっけ・・・」
「?」
「あ・・あれ。今日じゃなかったですかね?あれ」
「あれじゃ分からん!」
「あれですよ。あれ」
「だから。何!」
「あれ・・ここまで出掛かってるんですが」
「なんだよもう。キムチ悪いなあ!」
「ああ不快不快!」

田中はまだ用事が思い出せなかった。

救急室では相変わらず処置が続いている。

トシキ医長は内視鏡で患者の胃を確認中。
「マーゲン(胃)からの出血・・・!」
視界は真っ赤だが、吸い出しにより少しずつ視野が明けてくる。

胃角部中心に潰瘍が多発。

「露出血管はない。クリッピングせずにいけるか・・・!」
「あまり手がかからないですね!」ザッキーが横目で画面を見る。
「とは限らない!ザッキー押さえろ!」
「はい!先生。見えにくいとこありますね。胃内をもっと膨らませたら・・」
「出血を助長したくない。だから配慮してるんだ。僕の手技が下手なわけじゃない」
「先生。ムキにならないでくださいよ!」
ザッキーは患者の体を抑制。医長はカメラを進める。

その横では僕が悪戦苦闘している。高齢男性はマスク呼吸。
「酸素飽和度は。上がらないか・・」
僕はおそるおそる酸素を増量。モニター画面のSpO2はまだ92%。
「レントゲンできたよ!」
技師のフィルムを受け取る。右の広範な肺炎。

多発性骨髄腫。以前波多野じいの向かいに入院していた頑固なじいさんだ。

異常な抗体が増え続け、感染を合併している。
「ううこら!いつ帰れるんや!いつ!」
「何言ってます。入院ですよ!」
「もうよくなったって!さあ!帰る帰る!」
「アカンって言うのに!」

僕は入院時指示を記入した。

「病棟の準備は?」
「まだコールないです!」近くのナースが叫ぶ。
「かまうか!もう行けよ!」
手伝いに来た眼科医にベッドを託す。

眼科医は救急の勉強希望で手伝いをしていたが、相変わらずへタレだった。
「オレだけで行くのか?誰かいっしょに!」
「今日はオペないんだろ?」
「だけど・・」
「ならやれよ!」僕は突き放した。

眼科医はまだためらっていた。

「安定してるかな?」
「安定してないから入院なんだよ!」
「待とうか?」
「誰をだよ?サッサと行け!」

次の患者に取り掛かる。

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