3RDSPACE ?
2005年12月31日入院適応の患者が続く。救急隊がまた患者を運んでくる。
僕は事務長へ連絡した。
「すまんが、またベッド空けてくれ」
『はいはい、いくらでも!』
回転が激しいときの事務長はご機嫌だ。
別のベッドでは少女が過換気。整形の頑固じじいが紙袋呼吸。
「ユウキか。過換気は分からん。これでいいのか?」
「続けてください!」
「足の交通事故で来て、それでわしが呼ばれたが・・・来てみたらこれだ」
「ショック的なものかと・・・お願いします」
バイタルの異常なきを確認。
「過換気、わしは専門外だ。悪いが代われ!」
「先生。過換気くらい診てくれ!」
「内科は分からん!」
「頑張れ!」
僕は代わらず、別のベッドへ。
心マッサージ、人工呼吸管理が行われているが・・・。モニターは変わらないようだ。
「よし、代わる!」
ピートが交代し、マッサージを始める。ボスミンのアンプルが台に何本も置いてある。
ナースらが台にぶつかり、使用済みのアンプル・備品が床に散乱し、一部は割れていく。僕らの靴がさらにそれを打ち砕く。ガラスの砂を噛む音だ。
「ピート。DC、するか?」僕は声をかけた。
「やったが反応なかった・・・じゃ、もう1回するか!」
「300Jでやる!さがれ!」
ズドンと体が震えた。モニターは・・・依然フラットのままだ。
この患者は・・・カルテでは72歳の女性。一人暮らし。家族は遠方。ヘルパーが訪問するも1日1食。松田クリニックの往診で20%TZ 50mlの注射のみ。
「くそっ!またあいつかよ!松田!」
「死亡確認・・・」
ピートが死亡確認。すぐさま死亡診断書が渡された。
「病名・・なんだろな?」ピートは僕に問いかけた。
「松田因性症候群、だろ」僕は手袋を外した。
ゴーグルを外したシローが入ってきた。
「ザッキーによるテンポラリー挿入は順調で、患者は病棟に上がりました!」
「そっか。ザッキーも上手くなったな」
僕はレントゲンを天井にかざし、確認した。
喘息で喉頭浮腫→挿管して入院、房室ブロック→ペースメーカーが入院、堺じいが肺炎で入院。あと外傷が数名入院。過換気も
一泊入院になりそうだ。
事務長は廊下から救急室を見回した。田中も覗き込む。
「かなりバテてる様子だな。重症もある程度たまった」
「では・・・」
「満床の通達を救急隊へ」
「ははっ!」
田中は事務室へ引き上げた。
僕らは処置に追われたまま。
そのとき廊下から、キレイな白衣を着た男性がやってきた。
「おい。あれ・・・だれ?」
みな処置しながら見入っていた。
不審者には警戒する習慣がついていた。<北野事件>以来、みな神経質になっている。学生と自称していた<実習生>が、どうやらドクターだったという情報までは分かっていた。
白衣を着た男性は、キョロキョロと自分の居場所を探しているようだ。あっちのベッド行ったり、こっちへ来たり・・・。みな真吾のことは知らない。
手のあいた僕は、じっと彼を凝視した。
「記憶喪失か?」
医長だけ胃カメラに没頭していた。
「十二指腸だ。実はここからの出血だったんだ。あとは消化器外科に頼もう」
「ラジャー!」
ザッキーが顔を上げると、ウロウロ医師がいた。
「え?だれ?」
「いや、その・・・」
「この人・・見たことないよ!あんたドロボー?」
「し、真吾です。真吾・・・」
事務長がやってきた。
「すんませんすんません!紹介紹介!蒋介石!」
冷ややかな視線を浴びつつ、事務長は真吾の前に立った。
「今日から勤務の、蒋介石さん・・ちがったちがった!」
それでもウケない。意地の悪い空床造りで悪評が高い事務長は、
みんなの嫌われ者だった。
「真吾先生!胸部内科の増員第1号として!」
みな一瞬凝視した・・かと思うと、またザワザワ処置にとりかかった。
僕は事務長へ連絡した。
「すまんが、またベッド空けてくれ」
『はいはい、いくらでも!』
回転が激しいときの事務長はご機嫌だ。
別のベッドでは少女が過換気。整形の頑固じじいが紙袋呼吸。
「ユウキか。過換気は分からん。これでいいのか?」
「続けてください!」
「足の交通事故で来て、それでわしが呼ばれたが・・・来てみたらこれだ」
「ショック的なものかと・・・お願いします」
バイタルの異常なきを確認。
「過換気、わしは専門外だ。悪いが代われ!」
「先生。過換気くらい診てくれ!」
「内科は分からん!」
「頑張れ!」
僕は代わらず、別のベッドへ。
心マッサージ、人工呼吸管理が行われているが・・・。モニターは変わらないようだ。
「よし、代わる!」
ピートが交代し、マッサージを始める。ボスミンのアンプルが台に何本も置いてある。
ナースらが台にぶつかり、使用済みのアンプル・備品が床に散乱し、一部は割れていく。僕らの靴がさらにそれを打ち砕く。ガラスの砂を噛む音だ。
「ピート。DC、するか?」僕は声をかけた。
「やったが反応なかった・・・じゃ、もう1回するか!」
「300Jでやる!さがれ!」
ズドンと体が震えた。モニターは・・・依然フラットのままだ。
この患者は・・・カルテでは72歳の女性。一人暮らし。家族は遠方。ヘルパーが訪問するも1日1食。松田クリニックの往診で20%TZ 50mlの注射のみ。
「くそっ!またあいつかよ!松田!」
「死亡確認・・・」
ピートが死亡確認。すぐさま死亡診断書が渡された。
「病名・・なんだろな?」ピートは僕に問いかけた。
「松田因性症候群、だろ」僕は手袋を外した。
ゴーグルを外したシローが入ってきた。
「ザッキーによるテンポラリー挿入は順調で、患者は病棟に上がりました!」
「そっか。ザッキーも上手くなったな」
僕はレントゲンを天井にかざし、確認した。
喘息で喉頭浮腫→挿管して入院、房室ブロック→ペースメーカーが入院、堺じいが肺炎で入院。あと外傷が数名入院。過換気も
一泊入院になりそうだ。
事務長は廊下から救急室を見回した。田中も覗き込む。
「かなりバテてる様子だな。重症もある程度たまった」
「では・・・」
「満床の通達を救急隊へ」
「ははっ!」
田中は事務室へ引き上げた。
僕らは処置に追われたまま。
そのとき廊下から、キレイな白衣を着た男性がやってきた。
「おい。あれ・・・だれ?」
みな処置しながら見入っていた。
不審者には警戒する習慣がついていた。<北野事件>以来、みな神経質になっている。学生と自称していた<実習生>が、どうやらドクターだったという情報までは分かっていた。
白衣を着た男性は、キョロキョロと自分の居場所を探しているようだ。あっちのベッド行ったり、こっちへ来たり・・・。みな真吾のことは知らない。
手のあいた僕は、じっと彼を凝視した。
「記憶喪失か?」
医長だけ胃カメラに没頭していた。
「十二指腸だ。実はここからの出血だったんだ。あとは消化器外科に頼もう」
「ラジャー!」
ザッキーが顔を上げると、ウロウロ医師がいた。
「え?だれ?」
「いや、その・・・」
「この人・・見たことないよ!あんたドロボー?」
「し、真吾です。真吾・・・」
事務長がやってきた。
「すんませんすんません!紹介紹介!蒋介石!」
冷ややかな視線を浴びつつ、事務長は真吾の前に立った。
「今日から勤務の、蒋介石さん・・ちがったちがった!」
それでもウケない。意地の悪い空床造りで悪評が高い事務長は、
みんなの嫌われ者だった。
「真吾先生!胸部内科の増員第1号として!」
みな一瞬凝視した・・かと思うと、またザワザワ処置にとりかかった。
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