3RDSPACE ?

2005年12月31日
手の空いた医長とザッキーが、真吾を引っ張っていく。
医長は真吾の右腕を引っ張った。

「そうか。じゃあさっそく。ここを手伝ってくれ」
「仕事はいくらでもあるからね!」
ザッキーが悪戯っぽい。

真吾は患者の横に座らされた。

「IVH,やっといてくれ!鎖骨下静脈から!それが終わったらこっちへ!」
言い残し、医長は去った。ザッキーが見守る。

「はやいとこ、してくれ!1時間前に入院した人だ。落ち着いているが、入院のたびに血管が確保しにくい!」
「よ、よく入院なさる人で・・?」
「鋭いな。おいこいつ、鋭いよ!あっはは!」

ザッキーは周囲に叫び倒す。整形のじじいは不快そうに去った。

ベッドに横たわったじいさんは疲労して、うつろうつろしている。
「肺気腫のハタ(波多野)じいは、これで入院がもう・・・10回目くらいだよ!」
「10・・・」
「今年での話。さ!やれよ!最初はイソジンか?」

真吾が見回すと、周囲はもう誰もいない。みな病棟へ上がった。
死亡した患者は部屋の隅に。

「さあ先生!頼むよ!もうみんなクタクタで!」
「IVHは・・・自分はまだ」
「はっはっはそうか・・・うそお!」
茶髪のザッキーは後ずさった。

「失礼だけど、君は何年目・・・」
「平成5年卒です・・・」
「あ。すみません。僕より先輩だったか」
「き、気は使わないでいいです」
「てことは、1、2・・・はは、8年目?ユウキ先生よりも上ってこと?」
「・・なんですかね。はい」
「ウソお・・・IVHってふつう2年目でも当たり前・・・頼むよ!」
「で、でも・・・」
「<気は使わなくていい>んだろ?」

肺炎の堺じいを、医長らは病棟へ上げてくれた。

詰所の前を通ったとたん、ミチル婦長が遮った。
「待ってよ!」
「どいてくれ!」
医長がストレッチャーを引っ張る。婦長はブレーキを止めた。

「うわ!何をするんだ!」
「まだ準備できていない!勝手に上げないで!」
「僕の命令だ!医長命令だ!」
「勝手なことしないで!」
婦長は怒り心頭だった。

医長はブレーキを解除、強引に部屋へと向かった。
「僕の命令だ!」

病棟で指示を出し、僕は医長と廊下を歩いた。

「医長。堺じいはミエローマ診断から2年・・・厳しい状況になってきたな」
「在宅で抗生剤もいってましたが」
「今回はMRSA肺炎も想定。それとバクタもいるな」

医長はモバイルで病棟状況を整理した。

「先輩。波多野じいはまた向かいのベッドですか?」
「部屋がないんだ。仕方ない」
「耐性菌が出たら、部屋替えがまた大変ですね」
「波多野じいはニップネーザルしていたが・・これももう限界になってきた」
「タバコまた吸ってたらしいじゃないですか」
「お前も今のうちにやめとけよ!」

僕はポケットの検査伝票を確認し、即電話した。
「検査室?MAPとFFPの取り寄せを。CPK高い人はそうそう、分画を提出。喀痰培養はテーベーも追加」

なにかとやることがある。

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