3RDSPACE ?

2005年12月31日
僕はCOPDの波多野じいを回診していた。
「波多野さん。二酸化炭素が80mmHgだな。いつもより10高い」
「人工呼吸器はいやですぞ。ハーヒー」
「肺炎で呼吸が悪化してるんです。肺炎も手ごわい」
「いやや。このままにしてくれ」
「しかし・・・」

じいには身よりはいるが、その家族からは絶縁宣言されている。
電話の呼び出しにも応じなくなった。法的効力はない。
じいの呼吸が悪くなれば、挿管することになる。あらかじめの
希望を聞くことは当然、この国ではできない。

「ハアハア!またお前かっ!」
向かいの堺じいが週刊誌ごしに睨んだ。
「じじいよ!今度こそ危ないんとちゃうんか!」
「お前も今日までちゃうんか!はあはあ」
2人の言い合いが始まった。

ミチル婦長が入ってきた。
「なんですか!騒々しい!」

とたん、2人は黙って僕を指差した。

「は?なんでオレ?」
「先生!あんまり刺激しないで!」
ミチルは眉間にシワを寄せた。

僕は2人部屋へ移動。
人工呼吸器がついている患者2人。
先日ここから緑膿菌の耐性が出てしまった。
どの抗生剤も効いてないようで高熱が続く。

リーダーの若いナースが入ってきた。
「ユウキ先生。2人ともIVHはいつ入れられますか?
「え?いつって?先月入れなおしただろ?」
「昨日の当直の先生が、カテーテルで熱が出てるんだろうと」
「昨日の当直・・・眼科医か!あいつ勝手に!」

詰所でナースらとだべっている眼科医を見つけた。
「おいこら!」
「それでな。ユウキの奴がコーヒーで股を濡らして・・・うわっ?噂をすればハゲ?」
「オレのどこが、ハゲてんだ!」
「すまんすまん」
「オレのこと、何か言ってたな?」
「いやいや。ユウキ先生にいろいろ教わって楽しいな、と・・」

僕は眼科医の腕を引っ張った。

「どど、どうしたんだよ?」
「こっち来い!夜中にIVHを抜くかよ?普通」
「あああれか!熱のもとはあれかなと!」
「見ろよ!」

彼を部屋に入れた。

「なあ眼科医。この患者さんらは四肢も浮腫がひどくて、中心静脈を確保するのも大変なんだ」
「どれどれ。熱は・・まだ下がってないな」
「だからおい、お前が入れなおせよ!」
「どうして僕が?」
「IVH抜いて、カテ先培養も出さずに・・」
「とと、当直の指示に文句があるなら、ユウキが当直すればいいじゃないか?」
「大学からの名義引き上げが影響して、週2回は当直してんだ。
これ以上できるか!さ!やれ!」

眼科医はオドオドしていた。

「まま、ま、今度は気をつけるわ。すまん・・おっとオペがもうすぐ」
「今日はないだろ?ピートから聞いたぞ!」
「IVHはしたことが・・・」
「救急の勉強希望したのはお前だろ?しっかりしろよ。じゃ、今日はオレがしとく」
「ホントすまんな」
「オレに謝るな!患者に謝れ!」
「何と言ったらいいか・・・」
「ああ、スーッとした。でもないな」

眼科医は出て行こうとした。

「手伝えよ!」

IVHの介助を手伝わせ、再施行。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索