3RDSPACE 35.
2006年1月3日真田病院。
医局のフライパンに、野菜が投げ込まれる。
「うちのグループでは、時々こうしておかずを作るんだ」
僕は真吾に料理の指導をしていた。
「波多野じいは、君の素早い対処のおかげで一命をとりとめ・・」
「いえ。僕の手柄では・・・」
「おかげでウイニングにもっていけそうだ」
「気管切開を?」
「した。今後は穴は確保しておこうかなと」
「IVHの手ほども、ありがとうございます」
「手技は一通り、なんとかついていけてるようだな!」
「先生方のお陰です・・!」
「なんだ?君にやる気を起こさせたのは・・・」
真吾はうつむき微笑んだ。
「ユウキ先生たちのようにはまだまだ・・」
「いやいや、すぐに追いつくよ」
「精神力が大事ですね・・・」
「たしかに、体力は2の次って言うんだよな。最初の頃は」
料理を皿に移し、準備がほぼ完了した。
みな小皿に取り、食べていく。
「医者にとって一番大事なのはまあアレだな。ハフハフ・・・君だけに聞きたいが」
「?ズルズル」
「<庶民性>って以前、ある学生にだけ教えたことがある。ズズズ・・・これって変かな?チュルチュル」
「・・・?貧乏人?パクパク」
「そういう意味じゃないって。あちち。真意はもっと深いところにあるよ」
「意味がよく・・」
「はいはいもういいよ。もぐもぐ・・・。誰にも言うなよ!笑われるから!」
近くにいつの間にか事務長代理の太田くんがやってきている。
寝かけの土方院長に何やら報告している。
「しゃかしゃか・・」
「うん?うおわ!」
土方はジャバのごとく、ビックラ飛び起きた。
「いや、その、それで」
若い太田くんは頭を掻き続けた。
「あの、その」
「なんだよ?男らしく言えよ」食べ終わったザッキーは、つまようじでつついた。
「ピート先生と眼科の先生は過労で、もうじき帰ってくるそうで。その代わりが必要です」
「過労?もう出たの?医者不在だろ?いいの?」
「できれば4人ほど・・・今すぐ」
土方はタバコを吸い始めたが、すぐ灰皿にグリグリ押し付けた。
「そんなに必要はないでしょうが!」
土方は小さく怒鳴った。なにかあわてている。
「太田君!そんなに医者を派遣したら、この病院の機能が麻痺しますよ!」
「す、すみません・・」
「ここはわしが仕切りますわ。ユウキ先生!トシキ先生!」
「(2人)はい!」
「先生ら2人、行ってきて。わしが他のメンバーを指導するから」
真吾はスープの火を止め、振り向いた。嫌な予感がしたのだ。
僕はトシキに向かった。
「知ってるか?手に追えないらしい」
「救急も来てますかね?」
「みたいだぞ」
土方はパンパン!と大きく手を打った。
「さあさ!仲間が苦しんでる!今のうちに行きなさい!
行くんですよ!」
僕とトシキはうなずき、廊下へ出た。
「土方先生ならば、安心して任せられるよなトシキ!」
「はい!」
「よかった。今日は機嫌良さげだな!」
「そんなとこです」
「真吾に指導して、あの頃の自分に戻れたか?」
「ですかね」
「って、なんでお前の機嫌を心配しなくてはいかんのだ!」
僕らは病院玄関を出た。
他の事務員が運転する、別の外車。
出て行く車を、土方は窓から見送った。見えなくなるまで。
医局のフライパンに、野菜が投げ込まれる。
「うちのグループでは、時々こうしておかずを作るんだ」
僕は真吾に料理の指導をしていた。
「波多野じいは、君の素早い対処のおかげで一命をとりとめ・・」
「いえ。僕の手柄では・・・」
「おかげでウイニングにもっていけそうだ」
「気管切開を?」
「した。今後は穴は確保しておこうかなと」
「IVHの手ほども、ありがとうございます」
「手技は一通り、なんとかついていけてるようだな!」
「先生方のお陰です・・!」
「なんだ?君にやる気を起こさせたのは・・・」
真吾はうつむき微笑んだ。
「ユウキ先生たちのようにはまだまだ・・」
「いやいや、すぐに追いつくよ」
「精神力が大事ですね・・・」
「たしかに、体力は2の次って言うんだよな。最初の頃は」
料理を皿に移し、準備がほぼ完了した。
みな小皿に取り、食べていく。
「医者にとって一番大事なのはまあアレだな。ハフハフ・・・君だけに聞きたいが」
「?ズルズル」
「<庶民性>って以前、ある学生にだけ教えたことがある。ズズズ・・・これって変かな?チュルチュル」
「・・・?貧乏人?パクパク」
「そういう意味じゃないって。あちち。真意はもっと深いところにあるよ」
「意味がよく・・」
「はいはいもういいよ。もぐもぐ・・・。誰にも言うなよ!笑われるから!」
近くにいつの間にか事務長代理の太田くんがやってきている。
寝かけの土方院長に何やら報告している。
「しゃかしゃか・・」
「うん?うおわ!」
土方はジャバのごとく、ビックラ飛び起きた。
「いや、その、それで」
若い太田くんは頭を掻き続けた。
「あの、その」
「なんだよ?男らしく言えよ」食べ終わったザッキーは、つまようじでつついた。
「ピート先生と眼科の先生は過労で、もうじき帰ってくるそうで。その代わりが必要です」
「過労?もう出たの?医者不在だろ?いいの?」
「できれば4人ほど・・・今すぐ」
土方はタバコを吸い始めたが、すぐ灰皿にグリグリ押し付けた。
「そんなに必要はないでしょうが!」
土方は小さく怒鳴った。なにかあわてている。
「太田君!そんなに医者を派遣したら、この病院の機能が麻痺しますよ!」
「す、すみません・・」
「ここはわしが仕切りますわ。ユウキ先生!トシキ先生!」
「(2人)はい!」
「先生ら2人、行ってきて。わしが他のメンバーを指導するから」
真吾はスープの火を止め、振り向いた。嫌な予感がしたのだ。
僕はトシキに向かった。
「知ってるか?手に追えないらしい」
「救急も来てますかね?」
「みたいだぞ」
土方はパンパン!と大きく手を打った。
「さあさ!仲間が苦しんでる!今のうちに行きなさい!
行くんですよ!」
僕とトシキはうなずき、廊下へ出た。
「土方先生ならば、安心して任せられるよなトシキ!」
「はい!」
「よかった。今日は機嫌良さげだな!」
「そんなとこです」
「真吾に指導して、あの頃の自分に戻れたか?」
「ですかね」
「って、なんでお前の機嫌を心配しなくてはいかんのだ!」
僕らは病院玄関を出た。
他の事務員が運転する、別の外車。
出て行く車を、土方は窓から見送った。見えなくなるまで。
コメント