3RDSPACE 41.

2006年1月4日
シローは自宅に帰った。本来は癒されるべき場所だ。
「ザッキーにいろいろカッコつけたけど・・・自分はどうだか」

ドアを開けて入ると・・・。置手紙がある。

『宗教の集会に出かけますので、食事は適当にしてください。
全国集会にはシローも行きましょう。子供も連れて行きます。
松田夫婦も同伴です。2週間かそれ以上』

「2週間も病院を休めるか!」

シローは当然、そんな宗教に興味はなかった。
いつものように、冷蔵庫を開ける。
何もない。

「どうしてこんな人生になってしまったんだ・・・」

ワイフが言うには、『今わたしが家事をしないのもあと10年の辛抱』
だという。精神科受診を勧めたがケンカになり、実家にまで連絡がいった。

フスマの奥から泣く声が。シローはサッと開けた。
するとそこには、グズグズという声が聞こえた。
電気をつけると、3歳の息子が・・鼻の周りがベトベトになっている。
尻の周囲も濡れており、悪臭もする。

「くそ・・・!くそ!」

シローはオムツを必死で替える。

「こんな子をほったらかして!よくも!」
思わず大声で叫んだため、子供はついに泣き出した。
「ああゴメン!ああゴメン!あああ。くそう!くそう!・・・」

「ゴメンな。なあ・・・」
話しかけるが、子供は口をパクパク小さく開けるだけだった。
「母さんは・・母さんはお前のためだって・・・言うけど・・・ん?」
子供の口に耳を近づけると・・・何か言ってる。

「つ、ついに言葉が?」
「ちちょ・・・・ちょ・・・」
「なになに?」
「・・・・・・・・」

子供はまた口を閉じてしまった。

「でも喋った・・喋った!がんばれ!」
「ち・・ち・・」
「どうしたんだ!さあ!さあ!喋ってくれよ!」
「ちち・・ち・・」
ついに言葉は出なかった。

「ごめんごめん・・・こんな親で。ごめんよ。父親はこんな遅くて、
母親はあんなんだし」
シローは子供を抱きしめた。
「どうしてゴメンしか言えないんだよ・・・!」


一方ザッキーは1人でアパートの部屋の寝室にいた。
「土方の野郎・・・!」
『先生。そんな検査はいらんのですよ!いらんのですよ!いらん・・・』
「こっちだってプライドがあらあ!誰がお前なんかに・・・!」

正直これまで好き勝手にやってきたザッキーにはうっとうしい存在だった。

しかしちょっと立ち止まって考えた。

僕の手帳のコピーを初めてめくってみた。

「教師・・反面教師か。そう思えばいい?のか・・・」

うっすらと見える天井を見つめた。
「そう思ってやるのか・・・なるほどね」

リモコンで電気は消えた。

僕らが不在の間、手帳がかなり彼らの支えになったという。

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