3RDSPACE 42.
2006年1月4日ウイニング中の人工呼吸器。
夜中にナースに呼ばれ、真吾は3時頃に出勤してきた。
土方からの命令で、夜間・休日はオンコール制→サブ主治医制となっていたのだ。
しかし真吾の場合まだ外来は当てられておらず、病棟の専念だけで済んでいた。
COPDの波多野じいは気管切開しており、徐々にウイニングが進んでいる。
主治医は土方に変えられている。
昼間の医局。真吾の携帯が鳴る。
「もしもし?はいはい・・」
彼は呼ばれた場所へ出向いた。
廊下でナースに呼び止められる。
「あとで来られますか?」
「はい。ええ」
正面玄関を出て、駐車場へ。まだ外来の終わってない患者の車が多数。
その中に紛れて立っている人影にはすぐ気づいた。
「とうちゃん・・・」
防寒着を着た妻が、スーパーの袋を片手に立っていた。
後ろで3歳くらいの女の子が恥ずかしそうに隠れた。
「とうちゃん。これ・・」
妻はその袋を差し出した。
「これ?ああ・・・」
真吾が覗き込むと、それが弁当だとわかった。
「まだ食べてない?」
妻は真吾のヨレヨレの白衣を心配そうに見る。
「もう食べてたら・・・」
「いやいや。まだまだ」
実はとっくに食べていた。
「ありがとう。わざわざ」
「とうちゃん。本気でやってるね」
「ん・・・・」
「とうちゃんは凄いよ。やっぱりとうちゃんは・・・」
「今日も帰れるかどうか・・まあそんなことばかり考えていた」
「?」
「というか、いつ逃げれるか、助けてくれるか。そんなことばかり考えていた。
それは今までの自分の生き方だったかもしれない」
「とうちゃん。そんな病院だったら、また梶原さんに相談して・・・」
「それも考えた。でもここで逃げ出したら・・」
真吾は子の頭を撫でた。
「この子に語って聞かせる話がない」
携帯が非情にもかかってくる。
「もしもし・・・?はい」
「とうちゃん。呼び出し?」
「土方先生だ。戻って来いと」
見上げると、病棟の窓から土方の仁王立ちが見える。
「じゃあな。これ、ありがとう!」
「とうちゃん!とうちゃん!」
「なに?」
「とうちゃんならやれる!」
「そうだな・・・」
複雑な思いで、病院の玄関前に立ち止まった。
「・・・・ふう。まず一息。そして・・・」
グーとパーでパシンと叩き込んだ。
「よしやるぞ!土方が・・どうした!」
その勢いで、彼は医局へ戻ってきた。
「ドカタがなんだ!」
「ヒジカタだろ?」
ザッキーが飛び起きた。真吾が生き生きと喋り出した。
「先生方が大学へ戻られるなら、僕も・・・!」
「基礎系へ?」
「いえいえ。先生の医局へお供をしてもいいですよ!」
「別にそんな・・・」
「でも先生。僕らはまだここにいるじゃないですか!」
「そうだけど・・・」
「なら最後の最後まで、やりましょうよ!」
真吾は興奮して、また出て行った。
シローが机から立ち上がった。
「ザッキー。彼、どうしたの?」
「さあ・・・薬でも切れたんでしょう」
「今なんと?」
「すいちょうけん。ははは!ユウキ先生が移った移った!おおこわ」
シローは窓をキュキュッと拭いた。冬はまだ厳しい。
「ユウキ先生。トシキ先生・・・・たちばかりに頼るばかりにもいかないな!」
「・・・・・・」
ザッキーは宙を見つめた。
「ここの病院の最後の仕事として・・・」
「?」
「何か成し遂げようじゃないか!」
「成し遂げる・・?何を?」
シローは真吾の机を指差した。
夜中にナースに呼ばれ、真吾は3時頃に出勤してきた。
土方からの命令で、夜間・休日はオンコール制→サブ主治医制となっていたのだ。
しかし真吾の場合まだ外来は当てられておらず、病棟の専念だけで済んでいた。
COPDの波多野じいは気管切開しており、徐々にウイニングが進んでいる。
主治医は土方に変えられている。
昼間の医局。真吾の携帯が鳴る。
「もしもし?はいはい・・」
彼は呼ばれた場所へ出向いた。
廊下でナースに呼び止められる。
「あとで来られますか?」
「はい。ええ」
正面玄関を出て、駐車場へ。まだ外来の終わってない患者の車が多数。
その中に紛れて立っている人影にはすぐ気づいた。
「とうちゃん・・・」
防寒着を着た妻が、スーパーの袋を片手に立っていた。
後ろで3歳くらいの女の子が恥ずかしそうに隠れた。
「とうちゃん。これ・・」
妻はその袋を差し出した。
「これ?ああ・・・」
真吾が覗き込むと、それが弁当だとわかった。
「まだ食べてない?」
妻は真吾のヨレヨレの白衣を心配そうに見る。
「もう食べてたら・・・」
「いやいや。まだまだ」
実はとっくに食べていた。
「ありがとう。わざわざ」
「とうちゃん。本気でやってるね」
「ん・・・・」
「とうちゃんは凄いよ。やっぱりとうちゃんは・・・」
「今日も帰れるかどうか・・まあそんなことばかり考えていた」
「?」
「というか、いつ逃げれるか、助けてくれるか。そんなことばかり考えていた。
それは今までの自分の生き方だったかもしれない」
「とうちゃん。そんな病院だったら、また梶原さんに相談して・・・」
「それも考えた。でもここで逃げ出したら・・」
真吾は子の頭を撫でた。
「この子に語って聞かせる話がない」
携帯が非情にもかかってくる。
「もしもし・・・?はい」
「とうちゃん。呼び出し?」
「土方先生だ。戻って来いと」
見上げると、病棟の窓から土方の仁王立ちが見える。
「じゃあな。これ、ありがとう!」
「とうちゃん!とうちゃん!」
「なに?」
「とうちゃんならやれる!」
「そうだな・・・」
複雑な思いで、病院の玄関前に立ち止まった。
「・・・・ふう。まず一息。そして・・・」
グーとパーでパシンと叩き込んだ。
「よしやるぞ!土方が・・どうした!」
その勢いで、彼は医局へ戻ってきた。
「ドカタがなんだ!」
「ヒジカタだろ?」
ザッキーが飛び起きた。真吾が生き生きと喋り出した。
「先生方が大学へ戻られるなら、僕も・・・!」
「基礎系へ?」
「いえいえ。先生の医局へお供をしてもいいですよ!」
「別にそんな・・・」
「でも先生。僕らはまだここにいるじゃないですか!」
「そうだけど・・・」
「なら最後の最後まで、やりましょうよ!」
真吾は興奮して、また出て行った。
シローが机から立ち上がった。
「ザッキー。彼、どうしたの?」
「さあ・・・薬でも切れたんでしょう」
「今なんと?」
「すいちょうけん。ははは!ユウキ先生が移った移った!おおこわ」
シローは窓をキュキュッと拭いた。冬はまだ厳しい。
「ユウキ先生。トシキ先生・・・・たちばかりに頼るばかりにもいかないな!」
「・・・・・・」
ザッキーは宙を見つめた。
「ここの病院の最後の仕事として・・・」
「?」
「何か成し遂げようじゃないか!」
「成し遂げる・・?何を?」
シローは真吾の机を指差した。
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