3RDSPACE 48.

2006年1月4日
奈良の病院。猛吹雪。

黒いベンツが3台到着、ドアがバタンバタンと開けられては閉められた。

白衣を着たスキンヘッド男を先頭に、10余名の集団が早足でやってきた。

僕らの待つ詰所へ、そのまま入ってくる。

「きさまら、本気で?」
その声、顔には見覚えがあった。僕は立ち上がった。

「ハカセ?お前、ハカセじゃないか!」
僕は数年ぶりに再会した。
「そっか。お前の救急病院、真珠会と合併したんだったな・・・」

「ほう。まだ医者をやってたか」
ハカセは自信たっぷりに威厳も備えていた。

「アパムに会わせてやろうか?なんだったら」
「おい・・一応オレより年下だろ」
「患者を連れ帰られたら困るからね」
「今さら・・・ジロー」
「ここからは我々が早めに対応する。諸君にはもう用はない」

トシキ、事務長は黙って片付けにかかった。

ハカセは何食わぬ顔で、そこらの書類をチェックしはじめた。
「真田病院は繁盛してるそうだな。ユウキ先生よ」
「お前も、染まったんだな。髪はなくとも」
「余計なお世話だ。あのあと俺たちがどれだけ苦労したか・・・」
「松田と同じだな」
「誰だそれ?」
「洗脳されて、自分を見失って・・・」
「アンタこそ、そこの事務長のいい道具じゃないか」
「道具?よくそんな言い方・・・」
「まだヘタクソな野球やってるのか?」
「てめえ・・・」

しかしもう、怒る気力はなかった。このあと真田病院でもうひと頑張りしないといけない。たぶん土方と争う。そのパワーは捨てられない。

「八百長野球に乗せられて」
「誰が八百長だ!」
「隣町の噂は、すぐに飛び込んでくるものだぞ」

「(一同)はっはっははは!」

「ははは・・・自分の力で勝てたと思ったら大間違いだ」
「誰がそんなことしたって?」
「今、駐車場で荷造りしてる事務長さんだよ!」
「品川?」
「今さら知ったのか?全てあいつの金で仕組まれた猿芝居だったんだぞ?」
「そっか・・・まあそういう奴だったのかもな」
「自分の力で成し遂げたことがありますか?ドンキホーテさん!」

ハカセは病棟から運ばせたカルテを1冊ずつ確認していった。

「・・・ほう・・・なかなかやるようになったな。ユウキ先生とやら」
「理解は大丈夫か?」
「アンタの病院は大学から乗っ取られて・・・世も末だな」
「残念。それは事務長が阻止した」
「いや。土方先生がまだいる。彼によってあの病院は革命を行う」
「革命?」
「土方先生は僕らの仲間だ。あそこは土方先生主導の、正式な大学関連病院になるんだ」
「ウソこけ・・・」
「大学はナメられている風潮がある。今こそそれを覆したいという、土方先生のお考えだ」

しかしどうやら本当のようだった。
ハカセは容赦ない。

「今度こそ、君は行く病院を見失うんだ。なんだったら・・・」
「死んでも、お前らのとこに行くか!」
「来ないよ!君らは大学で再教育を受けるんだ!」

僕は荷物を背負って、寒い外へ出た。
2台の車は、出発の準備が整ったようだ。

事務長が運転席のウインドウから顔を出した。
「こっちへ乗ってくれませんか?」
「るさい」
僕は片方の事務員の車に乗り込んだ。

『自分の力で成し遂げたことがありますか?ドンキホーテさん!』
あの言葉が響く。

『自分のちちかから・・ででで成し遂げげげたた・・・たことがあり・・りりままますす・・かかか(多重エコー)』

あの野郎・・・。

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