3RDSPACE 51.

2006年1月4日
 救急車が到着。ストレッチャーが入る。リザーバーマスクがついている。

真吾にそれが手渡される。彼は必死に換気を始めた。

「救急車ではSpO2 100%!酸素10リットルで!」
「そこまで悪いのか・・・?」
シローは血液ガスを採取。女性はぼってりしている。浮腫は著明だ。

「はいはい!」
ザッキーは携帯を切った。
「病棟で心停止がったので!行って来ます!」
ザッキーは消えた。

真吾はマスクが外れないよう調整、テープで止めた。

「真吾先生。リザーバーでなくふつうのマスクで十分だ!」
データを見てシローが指示した。
「聴診は・・・」
聴診しようとしたシローを、土方がどかした。
「どけ!むう・・・」
土方は聴診器を外した。
「CTやな。CTに行け!」

よろめきを正したシローは患者の他院内服を確認した。
「DMがあります。心電図を」
「内服は1種類?大したことなかろうが!CTやCT!」
土方は怒鳴った。

「大したことあります!」シローは答え、デキスターを見せた。
「388mg/dl」
「先生。血糖が上がったくらいでオドオドしたらいけませんよ!」
「ナース。インスリンを。では心電図とります!」
「CT!わしがCTと!」

真吾は心電図をチャチャッ、と取り付けた。

「記録します!」
真吾は患者に呼びかけ、じっとした体勢で記録した。

シローは記録をじっくり見た。
「R波はまだある。AMIです!」
「なにい?」土方は心電図をビリリと破り外す。

確かにV1-4が上昇している。

患者はCTへ運ばれた。

廊下でシローは携帯を鳴らす。
「すみませんが、そちらで以前カテーテルをされたことが・・・ありましたか。やはり」
他院への問い合わせだ。
「3枝病変・・・でも各々はシビアな狭窄ではない・・・?」
患者の血圧は100mmHg以上はキープ。

放射線CT室、ガラスばりの内側でCT画像が描出されていく。
土方は腕組みしている。
「胸水が両側にありますな。大量に。アテレクになっとる」
「胸水で肺が押しつぶされての無気肺ですか・・・」
技師が絶句した。

シローがあちこち電話している。
「田中くん!窪田先生を大至急!」
「落ち着きなさい先生。こんな状態ではカテはできん」土方が邪魔する。
「アンステーブルな状態で心不全起こしてて、心筋梗塞自体は起こした
ばっかりです」
「わしにも責任が来るんだから!」
「できればカテを」
「壊死はもう起こし終わってる!」
「R波は残ってる!そうは思わない!」
「胸水がこんだけあってできるか!バカが!」
「ハンプとラシックスは・・・効いたか?」

患者横のバルーンバッグに大量の尿が出てきた。真吾が確認。
「血圧はOK・・・あっ?シロー先生。あれ・・」

廊下では土方が一足先に、患者家族に説明している。

「・・・ですから、ここはまず心不全の治療に専念して、肺が拡がるのを・・」
「そうなんですか。今すぐに血管は・・」娘らしき人が肩を落とした。
「カテーテルの適応がないわけでは」とシローが横で喋っている。

土方は舌打ちした。家族はそっちに聞き入った。

「心筋は今でも壊死が続いてる状態です。胸水はかなりの勢いで
減少していますが・・・危険は大きいですがカテーテルの選択の余地はあるかと」
「あのねえ、この先生はまだ経験が」土方が遮る。

家族はシローに何かを感じた。
「せ、先生!先生が心臓の先生なんですよね!」
「そうです」シローは答えた。
「先生はどのようにお考えを?」
「僕が家族なら、そのまま看るには賛同できません!」

真吾は呼ばれ、病棟へ。

一瞥し指でサインし、シローは続けた。
「この院長先生は呼吸器の権威です」
「先生!望みがあるなら先生!お願いします!」
シローは任され、同意書を差し出した。
「ではここにサインを・・・総統はまだなのかい?」

土方はドスドスと大きな足音を立てつつ、病棟へ向かった。

ナースらが走っていく方角へ向かう。モニター音など騒がしく聞こえてきた。
やがて心臓マッサージしている真吾が見えた。

「真吾先生。肘が曲がっとる!」
「え?はい」
確かにやや曲がっていた。真吾は反省し、また始めた。

ザッキーがIVHを入れている。

「今さらIVHですか。もう・・助かりませんな」
土方は患者の足元から見ていた。
ナースらが周囲を動き回る。

ミチルが土方にぶつかった。
「いたた・・すみません。先生、ここでのサポートをお願いできますか・・」
「わし?わしはまたすぐ降りる!」
「5分だけでも・・」
「それ以前に、この患者がもたんでしょう」

「ボスミン2アン!」
ザッキーが注入したボスミンに引き続き、真吾はマッサージを行う。
別ナースが小刻みにアンビューを押す。

「あかんやろな・・」
土方が呟いたとたん、モニターに脈が戻った。
「ふーん・・・ま、ワイドQRSですかな」
「もともと脚ブロック波形。現在はサイナス!」
ザッキーは聴診器を首にかけた。

呼吸器がつながれ、点滴調整。
ザッキーがもと主治医だったらしく、真吾に礼をしてる。
「ありがとう!すまないな!」
「総統閣下が来られたようです。では今度はカテのヘルプを!」
真吾は血のついた白衣を脱いだ。

真吾が出る間際、土方は足踏みした。
「ま、持ってもこの患者は長くはないわな」
「主治医の言うことですか!」
「なに?」

真吾はそのまま廊下へ走った。

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