3RDSPACE 55.
2006年1月5日土方は両腕を頭に回し、横の事務長を覗き込んだ。
「さ。大学側はいつここに補充したらいいんかな?」
「・・・・・経営者の意向により、決定事項をお伝えします」
「おうおう、早く言え言え!」
「大学からの派遣医師に関しては・・・今後当院による調査の上での、厳密な上での契約とし」
「なに?なにを言うとるんやお前は?意味が!意味が分からん!」
「現職の大学派遣医師にも、今回引き上げの形をとっていただきます!」
「わしが?引き上げ?このわしが?なに?ん?お?うっ?」
「以上です!」
あちこちで小さな拍手が聞こえた。
「代わりの補充は、大学との改めての協議あるいは私ら独自で探します」
「ええんか?ええんか?」
「・・・・・」
みんなの冷たい視線が土方に注がれた。
「この病院がどこのお陰で機能すると思っとる?大学が入れば夜間の当直とかそれこそ・・」
「引き上げても大丈夫。今後もうちの常勤がすればいいでしょう」
そう言ったのは真吾だった。
「真吾って、いつの間にあんな自信過剰なんだ・・・?」
僕は半ば呆れていた。
「第3次性徴か?」
事務長は咳払いし、続けた。
「私は経営者の言葉をそのまま伝えているだけなので・・」
「だれじゃそれは?そんな大物なんか?ここにつれて来い!」
「土方俊夫先生。本日付で退職とさせていただきます!」
「誰に向かってものを言うとる?お?」
「先生はもう・・・ここの誰でもありません!」
「やった!」とは言わなかったが、僕は真吾の肩を叩いた。
しかしスッキリした気持ちにはなれない。人を傷つけた
あとのような、なんとも言いようのない不快感。
「すごいな。真吾」
「私は先生方と母局は違いますし・・」
「医長になれよ。将来」
「それは・・」
「そっか。半年で引き上げるんだったか?」
「ええ。これまでは・・・・・」
真吾は何か、考えているようだ。
土方は無言のまま去っていく。
医長は事務長のところへ歩いてきた。
「では、私は医長に復帰?」
「すべて、元通りです」
「そうですか」
医長は喜びを押しこらえ、出て行った。たぶんトイレで号泣するつもりだ。
真吾とザッキーは喜び合っている。
シローは何か別の考え事。
しかしやはり・・・何か失った気がせんでもない。
なぜなら、あの先生が教えたことで、結構気づかされたものも
多かったからだ。今後僕らが怖いものなしになっていくのが・・
それが怖い気もした。
今回は僕らが僕らの身を守った。ただそれだけだ。なら本当にこの病院のために尽くさないと。
土方はより年老いた面持ちで、ガタッと肩を落とした。
「さ。大学側はいつここに補充したらいいんかな?」
「・・・・・経営者の意向により、決定事項をお伝えします」
「おうおう、早く言え言え!」
「大学からの派遣医師に関しては・・・今後当院による調査の上での、厳密な上での契約とし」
「なに?なにを言うとるんやお前は?意味が!意味が分からん!」
「現職の大学派遣医師にも、今回引き上げの形をとっていただきます!」
「わしが?引き上げ?このわしが?なに?ん?お?うっ?」
「以上です!」
あちこちで小さな拍手が聞こえた。
「代わりの補充は、大学との改めての協議あるいは私ら独自で探します」
「ええんか?ええんか?」
「・・・・・」
みんなの冷たい視線が土方に注がれた。
「この病院がどこのお陰で機能すると思っとる?大学が入れば夜間の当直とかそれこそ・・」
「引き上げても大丈夫。今後もうちの常勤がすればいいでしょう」
そう言ったのは真吾だった。
「真吾って、いつの間にあんな自信過剰なんだ・・・?」
僕は半ば呆れていた。
「第3次性徴か?」
事務長は咳払いし、続けた。
「私は経営者の言葉をそのまま伝えているだけなので・・」
「だれじゃそれは?そんな大物なんか?ここにつれて来い!」
「土方俊夫先生。本日付で退職とさせていただきます!」
「誰に向かってものを言うとる?お?」
「先生はもう・・・ここの誰でもありません!」
「やった!」とは言わなかったが、僕は真吾の肩を叩いた。
しかしスッキリした気持ちにはなれない。人を傷つけた
あとのような、なんとも言いようのない不快感。
「すごいな。真吾」
「私は先生方と母局は違いますし・・」
「医長になれよ。将来」
「それは・・」
「そっか。半年で引き上げるんだったか?」
「ええ。これまでは・・・・・」
真吾は何か、考えているようだ。
土方は無言のまま去っていく。
医長は事務長のところへ歩いてきた。
「では、私は医長に復帰?」
「すべて、元通りです」
「そうですか」
医長は喜びを押しこらえ、出て行った。たぶんトイレで号泣するつもりだ。
真吾とザッキーは喜び合っている。
シローは何か別の考え事。
しかしやはり・・・何か失った気がせんでもない。
なぜなら、あの先生が教えたことで、結構気づかされたものも
多かったからだ。今後僕らが怖いものなしになっていくのが・・
それが怖い気もした。
今回は僕らが僕らの身を守った。ただそれだけだ。なら本当にこの病院のために尽くさないと。
土方はより年老いた面持ちで、ガタッと肩を落とした。
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