3RDSPACE 56.

2006年1月5日
集会場に、みな集まる。

マスターダブルに事務長は立った。

『少し暖かくなってくるそうだ。冬の時代はもう去る!』
「(一同)ははははは」
『笑いますか。そこで・・・』

真吾はギリギリまで考えていた。
言いたいことが言えるようになった。これは進歩だ。
まさか30代半ばになって、新しい自分を発見するとは。

大学のクラウンがやってきて、島が降りてきた。
犯罪したわけでもないのに、土方は隠れるように車に飛び込む。
島は無念そうにドアを閉めた。

「(一同)土方先生!どうもありがとうございました!」
車は国道へと出て行った。

遅れて、病院玄関からハタじいと堺じいが走ってきた。
2人とも酸素を吸っていない。

「ハタじい。呼吸器外れてるじゃないですか!ユウキ先生!」事務長が叫んだ。
「いや。あれは・・・土方のとっつあんがしてくれた」
「堺じいも」
「全部、とっつあんが治した」
「凄い先生だったんですね」
「ああ。それは認める」
「雇いなおそうかな・・」
「おい!それでええのか?」
「ええか〜ええのんか〜最高かあ〜!」
「ふざけるな!ん?」

じいさん2人は、大学の車を見送った。ハタじいが涙する。
「一目、見たかった・・・わしを治してくれた先生を」

じい2人はすごすごと病院内に戻っていった。

しばらくして、大型のベンツが病院駐車場に入ってきた。

「あれは・・・?」
事務長が台の上で振り向いた。
「ドクターバンクの」

車はキキッと集団の横で停まった。

降りてきたのは、やはり初老の・・梶原だ。
「真吾先生!シンゴ先生!」
彼には真吾しか見えていない。

真吾は集団の最前列にいた。
事務長に目で合図する。

「真吾先生!」
梶原は真吾のところにやってきた。
「真吾先生。よくぞ半年!ご苦労様でした!はああ!」

真吾は他人のようにのけぞった。
「どうしたんです?」
「大変でしたでしょう!」
「多少はね!」
「はあ多少は!なるへそ!でもね!今度は!」

梶原はパンフを1枚取り出した。

「ここが快適だと思います!年収は今のまま!」
「・・・・・・」
「住居費も交通費も出る!街中でナースも若い!こことは違う!」

オークらはそれを聞きつけ、ジリジリと歩み寄ってきた。
しかし梶原は気にしない。

「どうですか?こことの契約は今日で・・」
「知ってるよ」
「さ、行きましょう。話はいつもどおり、私が・・」
「すまない。これからは自分が・・」
「なんですと?」
「自分で生きることにした」
「自分で?とは?」
「これまであなたには世話になった。おかげで・・・」
真吾は受け取ったパンフを、真ん中から破り裂いた。

「ああ。どうして?」
「気づいたんだ」
「どうして?何を吹き込まれたんです?彼らが何を?」
「気づいた。彼らには僕が必要だし・・・」

周囲の僕らはウンウン、とうなずいた。

「僕にもここが必要だ!」

「(一部一同)おおおおおお!」

梶原氏は膝をガクッとついた。
「くう・・・なぜだ・・・」

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