『 「何やっとんだコラア!患者をほったらかして!まだ寝てるのか!」オーベンの声だ 』

Y「一目もはばからず、容赦なく降り注ぐオーベンの咆哮!ズドンズドン!」
N「厳しい上司ほど、思いやりがあると?」
Y「今思えばそうだ。しかしやはりショックは受ける」
N「その後のプラスに?」
Y「なったと思う。オーベンはコベンの成長を願って愛のムチを叩いたのだ」
N「そっちの方は興味ないな・・・」
Y「おい。で、最近の社会を見てると、なってないヤツがよく指導者でいたりする」
N「現場を知らない人間だったりね」
Y「イエス。しかし労働者はチンチン、いや賃金を握られており逆らえない。指導者は労働者にはお構いなしで能力以上のムチを叩く」
N「そこに愛は・・・」
Y「ないんだ。なので後には何も残らない。ペンペン草すら生えないさ。いつの間にこうなってしまった?」
N「病院でもそれはある?」
Y「かなり増えてきたと思う。上に立つ人間は学ぶべきだと思う」
N「どうやって学べば?」
Y「チヤホヤされると向上心は持たないのが人間だ。だから他の意見を聞く」
N「つまり?」
Y「読書だよ。偉人たちの残した教訓から学ぶのだ」
N「歴史ものとか?」
Y「そのために<サーガ>があるんだよ」
N「・・・・・・・」

『 君を見て心配に思うのは、その気のゆるみとやらだ。いつかその油断が、取り返しのつかないことになるよ 』

Y「オーベンの言葉で印象に残ったものは、必ず手帳に書き留めた」
N「なにか暗示するような言葉だね」
Y「取り返しのつかないこと・・たしかにその後、いろいろあった。しかしこれは誰にでも言える」
N「油断は誰でもするものだろう?」
Y「ああ。しかし心構えによって回避できる油断もある。その心構えのテンションを途切れないように・・」
N「君は手帳に書きとめ、ヒマあるごとに読んだ」
Y「これはかなり勇気がいることだ。人間、年をとるほど耳が遠くなるからね」
N「?」

『 主治医が諦めたら、患者は終わりだ 』

Y「この言葉も手帳からの引用だ」
N「当たり前のことのような・・」
Y「これの意味は・・・例えば誰にでも専門とか得手不得手はあるもので」
N「アーハン」
Y「途中で壁に突き当たることはあるんだ」
N「だね」
Y「悩んで悩んで・・分からなくてもそれでも悩んで。恋をしているときとかそうだろう?」
N「私は見合い婚でして・・」
Y「とんだジーザス野郎だな。例えは悪いが、例えば恋をして相手がどうなってどんなこんなで・・」
N「何かあったので?」
Y「で、もうそこから逃げ出したいくらい混乱したりいきずまって・・・人間の真価が問われるのはそこなんだ」
N「患者から逃げたらいかんでしょう?」
Y「そうなんだが。もうお手上げじゃないか?って思うことがあるのは事実だ」
N「それがオーベンの・・・<諦める>ってこと?」
Y「そうだ。そうして諦めたのはあくまでも主治医であり、真実ではないんだ。しかし患者にとって主治医は真実」
N「患者は主治医に命を託すからね」
Y「その主治医もやはり人間だ。その自分の弱い部分と闘うんだ!」
N「自分との戦いでもあるんだね?」
Y「そうだ。すぐ治る病気は誰が受け持っても治せる(とは限らないが)。人生、いかに闘ったかだ!ノーペイン!」
N「ノーペイン!」

『 僕は思わず叫んだ。「来た!」マトリックスのスミスばりに、スーツ姿の長身が何人も外来へ押し寄せてきた 』

Y「正確には<マトリックス・リローデッド>」
N「学会終了から、急遽スタッフ達が君のために・・」
Y「駆けつけた」
N「オーベンの愛人が裏で糸を引いていたというオチだね?」
Y「愛人って、よせよ。そのナースはマイオーベンとしきりに連絡を取っていた。実際にはオーベンたちは新幹線で連絡を受け、そのまま新大阪で解散せずそのままタクシーで病院へ向かったわけだ」
N「彼らはヒーローだね」
Y「誇らしかった。しかしあの後いろいろと問題はあった」
N「公開してない内容が?」
Y「外来のナース軍団が仕返しに、病院長に報告した。研修医と身動きできない常勤2人を置き去りにして、通常の運営をしていたと」
N「通常の運営・・・救急への対処とか?」
Y「そうだ。部長は処罰を食らった」
N「そんなこともあるんだね。密告屋はいるんだね。先日も話題が出たが」
Y「公的病院ではよくある。上層部の連中が、院長室へ直接泣きを入れに行くのはよくある光景なんだよ」
N「上層部が。それはやはり自分の身を守るため?」
Y「この社会、言ったもん勝ちの世界だろ。それと同時に自分をアピールできるのさ」
N「特に病院ではそれが顕著なんだね・・・」
Y「こういうイエスマンが妙に鼻についた。大学病院と<体臭的>には変わらない」
N「理想の職場って難しいね」
Y「ミスチルも歌っている。<さあ、次の医局をノックしよう・・・>」
N「そんな歌詞が?」
Y「<終わりなき、旅・・・・>」

『 ドミノ倒しになった点滴台は、救急カートの上に倒れこんでいった 』

N「混乱ぶりを一生懸命描写してる」
Y「これはね。狭い外来に寝かされてベッド・・・ストレッチャーを、そのまま360度旋回させたんだ」
N「ベッドを1回転?そのまま出たらいいのでは?」
Y「外来の奥、患者の頭側にいた人間がついそうした。ベッドの搬送は、ふつう頭側を先頭にして進むんだ」

『 いきなり左の肩に激痛が走った。砕けたような感じだ。僕は衝撃で前のめりになり、右手のひらを地面に叩きつけた。右手首にも衝撃が走った 』

Y「おそらく<サーガ>で最も衝撃的な場面の1つだ」
N「患者の家族にこっそり殴られた」
Y「殴られたという事実もそうだが、それも誰も見ていないところでそれが起こったこと」
N「みな、ユウキ先生の前方にいたので・・」
Y「賛否を問う内容ではないが・・・ダメだ。これ以上は語れない」
N「その後も、業務が待っている」
Y「そうだ。感傷に浸っている場合などない。反省にしても時間は十分取れない」
N「まさに自分との戦いだ」
Y「後悔とは、次に生かせるためのものなのだ・・・」

『 「・・休むってことか」「治療に・・専念します」僕は車で出かけた 』

N「いきなり病院を休養する場面だね。非常識だとクレームがあちこちから」
Y「もちろん反省はしてる」
N「ホワイトベースから脱出ですか・・・」
Y「この頃は休みが1日もなく、プレッシャーも多かった。まあ全て言い訳だが」
N「精神的にも弱かった?」
Y「イエス。それと・・・あれだな。医局に仲間が何人もいたとしても・・・心から通じ合う人間はいなかった」
N「遠距離恋愛の相手さえもね」
Y「周囲がいけないという意味ではなく、僕自身がオープンでなかったのだ」
N「自閉症?」
Y「とは思ってないが、誰でもそういう部分はあるんじゃないかな。それをネガティブに解釈するのもどうかと思うが」
N「そういう時期も必要?」
Y「必要というか、悩むのは誰もだろ。しかしいつかは抜け出ることはできる。抜け出て誰の指図も受けなくなったとき、どういう人間でいるかだ」
N「抜け出るっていうのは・・例えば偉くなったり?」
Y「イエス。医者の場合、年さえ取れば自然と上に立てるからだ(特に大学人事の場合)」
N「悩んだ経験がなければ?」
Y「傲慢なままなら、ソイツは傲慢なまま。成人して、体のどこが成長する?」
N「寝てる間に育つとか?」
Y「三つ子かよお前は?それとも睡眠学習機か?」
N「ありましたね、そういうの」
Y「あれってどうなんだ?マジなのか?SAS(睡眠時無呼吸)の患者はどうなんだ?」
N「ユウキ先生が休息したその後の数日間は、意味があったわけだね」
Y「こうして活字で語れるのが嬉しい!シーユーネックストウイーク!」
N「バイバーイ!」

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索