NURSEBESIDE ? 奇襲
2006年4月26日女泣きした医長は、再び襖を開けにかかった。
「医長待て!ごめんごめん!なあとにかくなんか、させてくれ!」
「笑えるんですか?」
「さあ!リクエストを!」
「じゃ、じゃあ・・・」医長は周囲をキョロキョロ見回した。
「窪田先生の・・・」
「クボタ?ああオカマの先生ね!かんたんかんたん!かん・たん・すい!」
周囲から拍手が沸いた。
「わかった。オカマ先生のね。そうだな・・・あの人のあだ名はデスラー総統だから・・・」
「・・・・・」医長は少し笑みを浮かべた。
「よし。いくぞ!」僕はクールに構えた。
「ヤマトの諸君。私は・・デスラーです、らー・・・」
誰も笑わない。
「わ、私の補助をしてくれるには、補佐官。頭がタラン、相当・・・これわかる?」
「さあ・・・」医長はまた固まり、落ち込んだ。
「やめやめ!やめろ!」座布団が投げられるだけでなく、みな座布団で直接たたき始めた。
「わかったわかった!次!次!医長!次のリクエスト!」
「次っていっても・・・」
「もっと身近なヤツがいいんだよ!」
「じゃ、じゃあ先輩。ラストですよ」
「ああ」
「じゃ、そうだな。僕のをやっていただけます?」
「?」
「先輩って、僕にあまり個性がないとか陰で言ってたそうじゃないですか」
「な、なんでそれを?」
「事務長から聞きました」
「この、しゃべりが!」
僕の投げた座布団を、事務長はヒョイとかわした。
「でね。僕に個性がないのなら、マネするのはかなり難しいはずですよね」
「いかにも、だな。でもな医長。お前はムチャクチャ濃い・・いやいや、個性に溢れてるんだって!」
「そうですか。では見せてください、先輩」
「お前のマネを?」
「はい。今すぐ」
「みんなに受けたら?」
「受けたら・・・そうですね」
「・・・・・・」
「とりあえず、トイレに行かせてください」
みな少しずっこけた。
「わかったわかった・・・・えーと。えーと」
こんなカタブツのマネなど。命令口調しか聞いたことがない。受けるはずもない内容だ。
「うーん、うーん・・・」
「さ!あと1分待とうか!」事務長は時計を見た。
それにしても、トイレにいったん行った奴らはどこへ・・・。
「うーん・・・・うーん・・・。む!」
僕の脳裏に何かがひらめいた。
「う・・ぷ!ぷぷ!」
「?」医長は腕組みした。
「うわっはっはっははは!」僕はいきなり倒れ、笑い転げた。
「先輩、気でも狂って」
「わあっはははははは!」
「早くやってみてくださいよ!」
「ひ〜!ひ〜!」
「いったいどれだけの内容なのか知りませんけど!もしくだらないものだったら許しませんよ!」
「ひ〜!腹いて、腹・・・!」
僕はゆっくり起き上がった。僕が思い出したのは、以前大学のスタッフから聞いた内容だ。
「さて・・・ザッキー。こっち来い!」
「え?僕が?」酒でずぶ濡れのザッキーがグラス片手にやってきた。
「お前な。ノナキー役」
「ノナキーって・・・医長先生の研修医時代のオーベンじゃないですか?」
「そうだよ。でもお前はな。ここで言うんだよ」
「なんて言いましょうか?」
「<俺だって人間だ。帰って休むことにする>」
「えっ?それだけ?」
「あとは俺が医長のモノマネするから」
「え、ええ・・・」
ザッキーはあぐらをかき、医局の机のつもりで演じた。
「と、トシキ。俺だって人間だ。家に帰って休むことにする」
「はい!」僕は医長のつもりで返事。ザッキーはゆっくり遠ざかっていった。
しかし僕は下を向いたまま。
「そうですよね。オーベンはここずっと実験実験ばかりで、眠る時間さえなかったですから」
当然、ノナキーは帰ってもうそこにいない設定。
「そうだ、オーベン。実は質問が86個ほどあるんです。まず1番から。オーベン・・・」
僕はわざとらしく顔を上げた。一瞬驚く顔を見せたが、すぐに悟り・・。
<気をつけ>をし、両手をお賽銭のごとくパンパン、と2拍子。
「オーベン!お疲れ様でした!今日はよーく休んでください!」
すると・・
周囲が洪水のように、いっせいに笑い出した。一部のものは、食べてるものまで吐き出した。
「(一同)あああっはっはっははははは!」
事務長ら数人はその場に倒れ、ラジオ体操らしきガニマタ運動を始めた。
「そ、そんなによかったか?な、医長!」
医長は顔を見せず嗚咽し、襖を大きくガラッと開けて出て行った。
「おい医長!待て!受けただろ?」
引き続き、数人が襖をまた開けていった。笑いすぎてトイレで吐くためだ。みな笑いが止まらない。
気がつくと、僕と事務長、あと若いナースが1人立っているだけだった。
このナースもなかなかのキレイどころではあった。ナースはガクンとひざをついた。
「あ〜。笑いすぎて、気持ちわる・・・」
彼女はそのまま近くの僕のほうに寄りかかってきた。
僕も疲れ、そのまま正座した。
「ね。先生。もたれていいですかぁ・・・」
「は?どうぞ・・・」
「寝たらスカートのぞかれるんで・・」
「ははあ。そうですか」
僕の背中にナースはもたれ、事務長と向かい合う構図になった。ナースはスヤスヤと寝息を立て始めた。背中に頭の当たっている感触があった。
「あのなあ。事務長。俺の失恋の話なんか、いいだろが?」
「いやいや。先生のことは私、研究済みなので」
「笑えない話ばっかなんだよ!」
「でも先生。さっきのギャグだってそうでしょう?」
「他人には面白いんだろな!」
するといきなり事務長の顔がこわばった。
「なに?事務長?」
事務長は僕の後方、襖の方を向いている。驚愕したような表情だ。親にエロ本を見つかったような心境というべきか。
「か・・・か・・・」
「は?」
僕が振り向いたとたん、いきなり真っ暗闇になった。
「おわっ?」
何かが僕の左を通り過ぎ、目の前でゴツン、と音がした。
そして、事務長だと思うが、それはズルズルと後ろへ下がって、いや引きずられていったように思えた。
僕の背中には相変わらず重みがかかっている。
もたれたナースは熟睡してしまっているようだ。
「お・・・おーい!だだ、だれか?うわっ!」
不安定になり、転倒した。体勢を立て直す。
なにも返事がない。
「誰だよ?俺への嫌がらせか?医長!」
目を閉じたり開けたりすると、だんだん視界が慣れてきた。
「ナース。悪いけど、いつまでもオレの背中にもたれ・・・」
背中に手をやると・・・
それは頭ではなかった。
「医長待て!ごめんごめん!なあとにかくなんか、させてくれ!」
「笑えるんですか?」
「さあ!リクエストを!」
「じゃ、じゃあ・・・」医長は周囲をキョロキョロ見回した。
「窪田先生の・・・」
「クボタ?ああオカマの先生ね!かんたんかんたん!かん・たん・すい!」
周囲から拍手が沸いた。
「わかった。オカマ先生のね。そうだな・・・あの人のあだ名はデスラー総統だから・・・」
「・・・・・」医長は少し笑みを浮かべた。
「よし。いくぞ!」僕はクールに構えた。
「ヤマトの諸君。私は・・デスラーです、らー・・・」
誰も笑わない。
「わ、私の補助をしてくれるには、補佐官。頭がタラン、相当・・・これわかる?」
「さあ・・・」医長はまた固まり、落ち込んだ。
「やめやめ!やめろ!」座布団が投げられるだけでなく、みな座布団で直接たたき始めた。
「わかったわかった!次!次!医長!次のリクエスト!」
「次っていっても・・・」
「もっと身近なヤツがいいんだよ!」
「じゃ、じゃあ先輩。ラストですよ」
「ああ」
「じゃ、そうだな。僕のをやっていただけます?」
「?」
「先輩って、僕にあまり個性がないとか陰で言ってたそうじゃないですか」
「な、なんでそれを?」
「事務長から聞きました」
「この、しゃべりが!」
僕の投げた座布団を、事務長はヒョイとかわした。
「でね。僕に個性がないのなら、マネするのはかなり難しいはずですよね」
「いかにも、だな。でもな医長。お前はムチャクチャ濃い・・いやいや、個性に溢れてるんだって!」
「そうですか。では見せてください、先輩」
「お前のマネを?」
「はい。今すぐ」
「みんなに受けたら?」
「受けたら・・・そうですね」
「・・・・・・」
「とりあえず、トイレに行かせてください」
みな少しずっこけた。
「わかったわかった・・・・えーと。えーと」
こんなカタブツのマネなど。命令口調しか聞いたことがない。受けるはずもない内容だ。
「うーん、うーん・・・」
「さ!あと1分待とうか!」事務長は時計を見た。
それにしても、トイレにいったん行った奴らはどこへ・・・。
「うーん・・・・うーん・・・。む!」
僕の脳裏に何かがひらめいた。
「う・・ぷ!ぷぷ!」
「?」医長は腕組みした。
「うわっはっはっははは!」僕はいきなり倒れ、笑い転げた。
「先輩、気でも狂って」
「わあっはははははは!」
「早くやってみてくださいよ!」
「ひ〜!ひ〜!」
「いったいどれだけの内容なのか知りませんけど!もしくだらないものだったら許しませんよ!」
「ひ〜!腹いて、腹・・・!」
僕はゆっくり起き上がった。僕が思い出したのは、以前大学のスタッフから聞いた内容だ。
「さて・・・ザッキー。こっち来い!」
「え?僕が?」酒でずぶ濡れのザッキーがグラス片手にやってきた。
「お前な。ノナキー役」
「ノナキーって・・・医長先生の研修医時代のオーベンじゃないですか?」
「そうだよ。でもお前はな。ここで言うんだよ」
「なんて言いましょうか?」
「<俺だって人間だ。帰って休むことにする>」
「えっ?それだけ?」
「あとは俺が医長のモノマネするから」
「え、ええ・・・」
ザッキーはあぐらをかき、医局の机のつもりで演じた。
「と、トシキ。俺だって人間だ。家に帰って休むことにする」
「はい!」僕は医長のつもりで返事。ザッキーはゆっくり遠ざかっていった。
しかし僕は下を向いたまま。
「そうですよね。オーベンはここずっと実験実験ばかりで、眠る時間さえなかったですから」
当然、ノナキーは帰ってもうそこにいない設定。
「そうだ、オーベン。実は質問が86個ほどあるんです。まず1番から。オーベン・・・」
僕はわざとらしく顔を上げた。一瞬驚く顔を見せたが、すぐに悟り・・。
<気をつけ>をし、両手をお賽銭のごとくパンパン、と2拍子。
「オーベン!お疲れ様でした!今日はよーく休んでください!」
すると・・
周囲が洪水のように、いっせいに笑い出した。一部のものは、食べてるものまで吐き出した。
「(一同)あああっはっはっははははは!」
事務長ら数人はその場に倒れ、ラジオ体操らしきガニマタ運動を始めた。
「そ、そんなによかったか?な、医長!」
医長は顔を見せず嗚咽し、襖を大きくガラッと開けて出て行った。
「おい医長!待て!受けただろ?」
引き続き、数人が襖をまた開けていった。笑いすぎてトイレで吐くためだ。みな笑いが止まらない。
気がつくと、僕と事務長、あと若いナースが1人立っているだけだった。
このナースもなかなかのキレイどころではあった。ナースはガクンとひざをついた。
「あ〜。笑いすぎて、気持ちわる・・・」
彼女はそのまま近くの僕のほうに寄りかかってきた。
僕も疲れ、そのまま正座した。
「ね。先生。もたれていいですかぁ・・・」
「は?どうぞ・・・」
「寝たらスカートのぞかれるんで・・」
「ははあ。そうですか」
僕の背中にナースはもたれ、事務長と向かい合う構図になった。ナースはスヤスヤと寝息を立て始めた。背中に頭の当たっている感触があった。
「あのなあ。事務長。俺の失恋の話なんか、いいだろが?」
「いやいや。先生のことは私、研究済みなので」
「笑えない話ばっかなんだよ!」
「でも先生。さっきのギャグだってそうでしょう?」
「他人には面白いんだろな!」
するといきなり事務長の顔がこわばった。
「なに?事務長?」
事務長は僕の後方、襖の方を向いている。驚愕したような表情だ。親にエロ本を見つかったような心境というべきか。
「か・・・か・・・」
「は?」
僕が振り向いたとたん、いきなり真っ暗闇になった。
「おわっ?」
何かが僕の左を通り過ぎ、目の前でゴツン、と音がした。
そして、事務長だと思うが、それはズルズルと後ろへ下がって、いや引きずられていったように思えた。
僕の背中には相変わらず重みがかかっている。
もたれたナースは熟睡してしまっているようだ。
「お・・・おーい!だだ、だれか?うわっ!」
不安定になり、転倒した。体勢を立て直す。
なにも返事がない。
「誰だよ?俺への嫌がらせか?医長!」
目を閉じたり開けたりすると、だんだん視界が慣れてきた。
「ナース。悪いけど、いつまでもオレの背中にもたれ・・・」
背中に手をやると・・・
それは頭ではなかった。
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