NURSEBESIDE ? キタ酒場
2006年5月8日 公園の駐車場。立ちションを終え、じいさんは僕らのほうへ歩いてきた。
僕はドアを開いたまま、婦長の車のエンジンをかけた。動きは問題なさそうだ。
「じゃ、オレ。これ運ぶよ」
「ゆっくり走らせて、病院まで来いや」
婦長はシローの車から見ていた。
じいは、僕ら2台の間に立ち尽くした。
「わしはどこに乗ったら・・・」
「じい。いつからや?」婦長は横目でギラッと睨んでいた。
「・・・・・」
「あんた、パチンコ屋で・・・話してたやろ?」
「き、聞いとったんか・・・」
じいは諦めたようにうなだれた。
「金、もらいよったよな」
「ごご、ごめん!ごめん!」じいは急に土下座した。
「なに?なにする?」
「ふ、婦長が。<婦長が今からここに来て新地に向かうだろうから、そのままその動きを教えてくれ>って!」
「なんであたしが来ること、知ってたんや?」
「そ、それは・・・死んでも。死んでも言わん」
どうやら内部に、内通者が1人いるようだ。コナン君に頼みたいところだ。
「でもな。わし、メールで教えただけやねん。それだけやねん。なのになんで追われて・・」
じいは地面から顔を離さなかった。
「じいさん。真珠会に買われたのか・・・」僕は半分同情した。
「まさかそういうこととは!そういうこととは!」
「内通者は誰だ?」
「だからそれは言えませんって!堪忍してくださいや!」
「じいさん。そいつはそんな価値のある人間なのか?」
じいは、とうとう口を割らなかった。
婦長は時計を見て、即アクセルをふかして国道に合流していった。
この時間帯なら道はすいており、病院到着までせいぜい10分くらいだ。
じいはゆっくりと立ち上がった。
「ユウキ先生。主治医として、助けてくださいや!」
「じいさん。オレが治すのは病気だよ」
「最近の医者は、病気を診て患者は診んって」
「誰がそんなことを?」
「たしか、みのもんたさんが」
「あんな番組!うさんくさい医者ばかり!」
「なあ反省する!反省するから!」
「でもな。俺らは。じいさんのせいで危ない目に遭った」
「すんまへん!すんまへん!」
「じいさんはいい人だとは思うんだ。でもじいさん・・・」
「はああ!なんでも聞く!うんうん!」
「主治医として。じいさんに退院を命ずる」
じいの顔が青ざめた。
「わ!わしはよその病院では入院できなくて!」
「知ってる。入院して酒飲んだら、どこでも断られるよ」
「もう先生のとこしか入院できんねや!」
「それも知ってる」
じいはポケットから数万円出した。
「なな!これ!な!」
じいは両手にヒラヒラの札をのっけた。
「これ!あいつらからもらった金!返す返す!」
「オレに返して、どうすんだよ!」
僕はパワーウインドウをかなり上まで上げた。
「な!せめて病院まで乗せてって・・・!」
「そしたら。退院してくれるのか?」
「する。する。しゃあない」
「いや、でもダメだ。許せない」
僕は理性を取り戻し、アクセルを踏んだ。
じいが一瞬にして、視界から消える。
「慈善事業じゃないんだし!」
時々カクカクとはなりながら、白いクーペは走り出した。
が、カクカクは次第に強くなり・・・走り出してものの数秒で停車した。
ハンドルが硬くなる。
「げげ・・・!最悪!」
あきらめて車を出ると、じいが後ろから走ってきた。
「先生!ありがとう!ホントにありがとう!」
「・・・・・」
「優しい先生や!わしの主治医や!」
「じ、じいさん。うん。じいさんを乗せようとは思うんだが」
「ほうほう?」
「事故車だし、危険だ。だから・・・」
「だから?」
僕は数秒考えた。
「いっしょに、歩こうか」
「うい」
僕らは暗闇の中、狭い歩道を心細くスゴスゴと歩き続けた。タクシーも通らない。電話したとしても、場所が細かく言えない。
「じいさん。なんか歌おうか?」
「そうやな。じゃ、わしが1曲」
「?」
「♪きたあの〜」
「北野?」
「♪さかばどおりには〜」
「それか。キタはもうたくさんだ!」
僕らは2人で歌った。時々トラックの轟音にかき消されながら。
♪キタの〜酒場通りには〜男を〜泣かせる歌が、だる〜
ホントに泣きそうになった。
その頃、真珠会から6台の救急車がいきなり飛び出した。
目標ヤマト・・いや、真田病院。
僕はドアを開いたまま、婦長の車のエンジンをかけた。動きは問題なさそうだ。
「じゃ、オレ。これ運ぶよ」
「ゆっくり走らせて、病院まで来いや」
婦長はシローの車から見ていた。
じいは、僕ら2台の間に立ち尽くした。
「わしはどこに乗ったら・・・」
「じい。いつからや?」婦長は横目でギラッと睨んでいた。
「・・・・・」
「あんた、パチンコ屋で・・・話してたやろ?」
「き、聞いとったんか・・・」
じいは諦めたようにうなだれた。
「金、もらいよったよな」
「ごご、ごめん!ごめん!」じいは急に土下座した。
「なに?なにする?」
「ふ、婦長が。<婦長が今からここに来て新地に向かうだろうから、そのままその動きを教えてくれ>って!」
「なんであたしが来ること、知ってたんや?」
「そ、それは・・・死んでも。死んでも言わん」
どうやら内部に、内通者が1人いるようだ。コナン君に頼みたいところだ。
「でもな。わし、メールで教えただけやねん。それだけやねん。なのになんで追われて・・」
じいは地面から顔を離さなかった。
「じいさん。真珠会に買われたのか・・・」僕は半分同情した。
「まさかそういうこととは!そういうこととは!」
「内通者は誰だ?」
「だからそれは言えませんって!堪忍してくださいや!」
「じいさん。そいつはそんな価値のある人間なのか?」
じいは、とうとう口を割らなかった。
婦長は時計を見て、即アクセルをふかして国道に合流していった。
この時間帯なら道はすいており、病院到着までせいぜい10分くらいだ。
じいはゆっくりと立ち上がった。
「ユウキ先生。主治医として、助けてくださいや!」
「じいさん。オレが治すのは病気だよ」
「最近の医者は、病気を診て患者は診んって」
「誰がそんなことを?」
「たしか、みのもんたさんが」
「あんな番組!うさんくさい医者ばかり!」
「なあ反省する!反省するから!」
「でもな。俺らは。じいさんのせいで危ない目に遭った」
「すんまへん!すんまへん!」
「じいさんはいい人だとは思うんだ。でもじいさん・・・」
「はああ!なんでも聞く!うんうん!」
「主治医として。じいさんに退院を命ずる」
じいの顔が青ざめた。
「わ!わしはよその病院では入院できなくて!」
「知ってる。入院して酒飲んだら、どこでも断られるよ」
「もう先生のとこしか入院できんねや!」
「それも知ってる」
じいはポケットから数万円出した。
「なな!これ!な!」
じいは両手にヒラヒラの札をのっけた。
「これ!あいつらからもらった金!返す返す!」
「オレに返して、どうすんだよ!」
僕はパワーウインドウをかなり上まで上げた。
「な!せめて病院まで乗せてって・・・!」
「そしたら。退院してくれるのか?」
「する。する。しゃあない」
「いや、でもダメだ。許せない」
僕は理性を取り戻し、アクセルを踏んだ。
じいが一瞬にして、視界から消える。
「慈善事業じゃないんだし!」
時々カクカクとはなりながら、白いクーペは走り出した。
が、カクカクは次第に強くなり・・・走り出してものの数秒で停車した。
ハンドルが硬くなる。
「げげ・・・!最悪!」
あきらめて車を出ると、じいが後ろから走ってきた。
「先生!ありがとう!ホントにありがとう!」
「・・・・・」
「優しい先生や!わしの主治医や!」
「じ、じいさん。うん。じいさんを乗せようとは思うんだが」
「ほうほう?」
「事故車だし、危険だ。だから・・・」
「だから?」
僕は数秒考えた。
「いっしょに、歩こうか」
「うい」
僕らは暗闇の中、狭い歩道を心細くスゴスゴと歩き続けた。タクシーも通らない。電話したとしても、場所が細かく言えない。
「じいさん。なんか歌おうか?」
「そうやな。じゃ、わしが1曲」
「?」
「♪きたあの〜」
「北野?」
「♪さかばどおりには〜」
「それか。キタはもうたくさんだ!」
僕らは2人で歌った。時々トラックの轟音にかき消されながら。
♪キタの〜酒場通りには〜男を〜泣かせる歌が、だる〜
ホントに泣きそうになった。
その頃、真珠会から6台の救急車がいきなり飛び出した。
目標ヤマト・・いや、真田病院。
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