NURSEBESIDE ? 応援
2006年5月17日白衣に着替えた新人ナースらが、救急室に続々と到着した。
低血糖でブドウ糖を静注した患者(中年女性)は頭部CT中、婦長が付き添っている。
残り5人は処置中で、2人は酸素吸入中。
当直医は部屋のあちこちをフラフラしていた。
「看護師さん!早くバイタルをとって!ひととおり!」
新人らは言われるまま、バイタル測定に向かった。
「では異常があったら、すべてこの先生に伝えるように!」
事務長が隅からメガホンを取った。
事務当直が走ってきた。
「事務長!いましたいました!」
「だれが?」
「医者ですよ医者!まともな医者が2人!」
当直医はムッとこちらを睨んだ。
病棟で申し送りが終わったシロー、慎吾が降りてきた。
シローは患者をあちこち見回し、指で数えるしぐさをした。
「・・・・・・この人!血液ガス!で、この胸痛の人は・・・CTを!」
患者横のメモに、次々と指示が記入。
「あと腹痛が1名か。お腹の・・・どこ?」
「し、知らん。とにかく、ぜぜ、全体!」
中年男性は腹をあとこち押さえた。
「検尿に緊急採血、胸部・腹部レントゲン!腹部CT!」
「たた・・いくらになるんかいな?」
「2の次です!」シローは次のベッドに向かった。
「げろげろげろ!」バケツに吐いている、中年男性。
「向こうの病院では何を?」
「し、知るか!こっちが知りたいわい!」
「病名とか・・」
「あ、あそこの病院はな!げろげろ!そんな説明なんか一切なしや!」
ナースが背中をさする。シローは脈をとる。
「緊急採血。デキスター早め!胸部腹部レントゲンに心電図!」
まるで忙しいレストランの厨房だ。
吐いている患者は興奮気味。慎吾が目の前で本をめくった。
「オレのカンでは、<ジギタリス中毒>、とみた!」
ナースがつけたモニターでは、STが下がっている。
慎吾はシローの方を見ながらモニターを指差した。
「シローくん!STが下がってる!」
「その下がり方!ジギタリス中毒の下がり方ではないですよ!」
「でも十分、疑われるだろ?」
「疑う疾患は、山ほどです!」
シローは事務当直の記録していた心電図を発見した。
「看護師さん。デキスターは?」
「<455>って出てるんですけど・・・」
慎吾はまた本を持ってきた。
「DKAか?」
「あれこれ言うのは、十二誘導を見てからにしてください!」
「?」
慎吾が見た心電図では・・・四肢誘導(うち?・?・aVF)のSTが上がっている。
「さっきはST下がってたぞ?」
「慎吾先生が見たのは、対側性の胸部誘導だったんですよ!」
「・・・ま、まだオレは修行中の身だからな。指示はオレが」
「心筋梗塞でしょうね・・・カテーテル検査の説明を。次は?」
50代男性。浅黒い。頻呼吸。
戻ってきていた看護部長が自慢げに話す。
「があ。息苦しいみたい。本人は苦しくて会話不能」
「のようですね!」
「でも酸素なしでいけてるけど」
「それは過換気で代償してるからでは?」
「があ。点滴速めに落とした!」
シローは聴診を終えた。
「腕を見てくださいよ。シャントがあるでしょう?」
「あ、ホンマや」
左手首、シャント術後の跡がある。雑音は良好だ。
「人工透析中の患者さんなんですよ!」
「があ?じゃ、わしがしたのは・・・」
裏目だった。
「心不全が悪化してる。利尿剤の指示、書きます。新人ナースは尿道バルーンを」
「かか・・・か!」患者が話を始めた。
「話はあとでいいですよ!」
「び、病院から出してくれ・・出してくれって真珠・・会の先生に・・言うたら・・・たた」
「?」
「じゃあ、だ、出してやるって」
「こんな状態にされてですか・・・?」
「水をなんぼ飲んでもええって言うから」
「なんて病院なんだ!」
シローが叫び、事務長が飛んできた。
「シロー先生!それはひどい!」
「うちじゃない!真珠会ですよ!」
「あ、そう」
慎吾がシローの肩を叩いた。
「シローくん。患者はカテを断固、拒否!」
「ならt-PAですか!薬でいくしかないですかね!」
「胃潰瘍はないかな?」
「僕に聞いても、知りませんよ!」
低血糖でブドウ糖注射後の患者がCTから戻ってきた。
中年女性患者は平気だ。
「さてさて。もう帰ってもええんかいな?」
「頭のCTはいいようですが・・・まだ帰らないで!」シローが押さえた。
「なんや?あんた、誰なの?」
「家族にも説明したいし!」
「家族はおりませんがな。家もないし。真珠会の先生たちは?」
「ここは違う病院です!」
「戻してくれ!真珠会に!」
事務長は電話を切り、中年女性にささやいた。
「真珠会は、あなた方のことを知らないって言ってる」
「うそや!なんでや!」
「うちの患者じゃないって言ってるんです!」
「戻せ!今すぐ戻せ!」
シローは首を横に振った。
「別の意味で、困りましたね・・・」
胸痛の患者のCT。肺炎+胸膜炎。胸痛は胸膜痛によるもののようだ。慎吾はフィルムを天井にかざした。
「シロー君。胸水は少量だが抜けそうだな。俺が穿刺して、取ろうか?」
「なぜ抜き急ぐんです?」
「取ってやったほうが、楽だろ?」
シローは丁寧にフィルムを読影。
「・・・スクアマスによる閉塞性肺炎の可能性がありますよ!」
「スク・・何?」
「ったく・・・!」
シローはメモに書き、渡した。
「がんばってください!先輩!」
「ここでの学年では、<後輩>だよ。ふんふん。なるほど」
メモには<肺・扁平上皮癌>と書いてあった。
慎吾は救急カートをごそごそいじくった。
「さーてと。どの針を使うかな?」
「だからシローが言ってるだろ!」
「?」
医長がやっと現れた。
「癌性胸水ってこともある!安易に抜こうとするな!」
医長は泣きはらしたような表情のまま、真っ赤な顔で診療に当たった。
「ザッキーも、もうじき来るぞ。シロー」
「ユウキ先生だけですか。あとは」シローは血液ガスなどデータの確認中。
「ああ。だが酔ってた。あてにするな」
「?」
「くそ・・・!」
「何か、あったんですか・・・?」
「なんでもない。とにかく手伝わせてもらう!」
シローは感動し、2歩下がって両手をパンパンと合わせた。
「先生。どうもありがとうございます!感謝です!」
「やや、やめないか!」
医長は僕のやったモノマネを思い出し、不快をあらわにした。
低血糖でブドウ糖を静注した患者(中年女性)は頭部CT中、婦長が付き添っている。
残り5人は処置中で、2人は酸素吸入中。
当直医は部屋のあちこちをフラフラしていた。
「看護師さん!早くバイタルをとって!ひととおり!」
新人らは言われるまま、バイタル測定に向かった。
「では異常があったら、すべてこの先生に伝えるように!」
事務長が隅からメガホンを取った。
事務当直が走ってきた。
「事務長!いましたいました!」
「だれが?」
「医者ですよ医者!まともな医者が2人!」
当直医はムッとこちらを睨んだ。
病棟で申し送りが終わったシロー、慎吾が降りてきた。
シローは患者をあちこち見回し、指で数えるしぐさをした。
「・・・・・・この人!血液ガス!で、この胸痛の人は・・・CTを!」
患者横のメモに、次々と指示が記入。
「あと腹痛が1名か。お腹の・・・どこ?」
「し、知らん。とにかく、ぜぜ、全体!」
中年男性は腹をあとこち押さえた。
「検尿に緊急採血、胸部・腹部レントゲン!腹部CT!」
「たた・・いくらになるんかいな?」
「2の次です!」シローは次のベッドに向かった。
「げろげろげろ!」バケツに吐いている、中年男性。
「向こうの病院では何を?」
「し、知るか!こっちが知りたいわい!」
「病名とか・・」
「あ、あそこの病院はな!げろげろ!そんな説明なんか一切なしや!」
ナースが背中をさする。シローは脈をとる。
「緊急採血。デキスター早め!胸部腹部レントゲンに心電図!」
まるで忙しいレストランの厨房だ。
吐いている患者は興奮気味。慎吾が目の前で本をめくった。
「オレのカンでは、<ジギタリス中毒>、とみた!」
ナースがつけたモニターでは、STが下がっている。
慎吾はシローの方を見ながらモニターを指差した。
「シローくん!STが下がってる!」
「その下がり方!ジギタリス中毒の下がり方ではないですよ!」
「でも十分、疑われるだろ?」
「疑う疾患は、山ほどです!」
シローは事務当直の記録していた心電図を発見した。
「看護師さん。デキスターは?」
「<455>って出てるんですけど・・・」
慎吾はまた本を持ってきた。
「DKAか?」
「あれこれ言うのは、十二誘導を見てからにしてください!」
「?」
慎吾が見た心電図では・・・四肢誘導(うち?・?・aVF)のSTが上がっている。
「さっきはST下がってたぞ?」
「慎吾先生が見たのは、対側性の胸部誘導だったんですよ!」
「・・・ま、まだオレは修行中の身だからな。指示はオレが」
「心筋梗塞でしょうね・・・カテーテル検査の説明を。次は?」
50代男性。浅黒い。頻呼吸。
戻ってきていた看護部長が自慢げに話す。
「があ。息苦しいみたい。本人は苦しくて会話不能」
「のようですね!」
「でも酸素なしでいけてるけど」
「それは過換気で代償してるからでは?」
「があ。点滴速めに落とした!」
シローは聴診を終えた。
「腕を見てくださいよ。シャントがあるでしょう?」
「あ、ホンマや」
左手首、シャント術後の跡がある。雑音は良好だ。
「人工透析中の患者さんなんですよ!」
「があ?じゃ、わしがしたのは・・・」
裏目だった。
「心不全が悪化してる。利尿剤の指示、書きます。新人ナースは尿道バルーンを」
「かか・・・か!」患者が話を始めた。
「話はあとでいいですよ!」
「び、病院から出してくれ・・出してくれって真珠・・会の先生に・・言うたら・・・たた」
「?」
「じゃあ、だ、出してやるって」
「こんな状態にされてですか・・・?」
「水をなんぼ飲んでもええって言うから」
「なんて病院なんだ!」
シローが叫び、事務長が飛んできた。
「シロー先生!それはひどい!」
「うちじゃない!真珠会ですよ!」
「あ、そう」
慎吾がシローの肩を叩いた。
「シローくん。患者はカテを断固、拒否!」
「ならt-PAですか!薬でいくしかないですかね!」
「胃潰瘍はないかな?」
「僕に聞いても、知りませんよ!」
低血糖でブドウ糖注射後の患者がCTから戻ってきた。
中年女性患者は平気だ。
「さてさて。もう帰ってもええんかいな?」
「頭のCTはいいようですが・・・まだ帰らないで!」シローが押さえた。
「なんや?あんた、誰なの?」
「家族にも説明したいし!」
「家族はおりませんがな。家もないし。真珠会の先生たちは?」
「ここは違う病院です!」
「戻してくれ!真珠会に!」
事務長は電話を切り、中年女性にささやいた。
「真珠会は、あなた方のことを知らないって言ってる」
「うそや!なんでや!」
「うちの患者じゃないって言ってるんです!」
「戻せ!今すぐ戻せ!」
シローは首を横に振った。
「別の意味で、困りましたね・・・」
胸痛の患者のCT。肺炎+胸膜炎。胸痛は胸膜痛によるもののようだ。慎吾はフィルムを天井にかざした。
「シロー君。胸水は少量だが抜けそうだな。俺が穿刺して、取ろうか?」
「なぜ抜き急ぐんです?」
「取ってやったほうが、楽だろ?」
シローは丁寧にフィルムを読影。
「・・・スクアマスによる閉塞性肺炎の可能性がありますよ!」
「スク・・何?」
「ったく・・・!」
シローはメモに書き、渡した。
「がんばってください!先輩!」
「ここでの学年では、<後輩>だよ。ふんふん。なるほど」
メモには<肺・扁平上皮癌>と書いてあった。
慎吾は救急カートをごそごそいじくった。
「さーてと。どの針を使うかな?」
「だからシローが言ってるだろ!」
「?」
医長がやっと現れた。
「癌性胸水ってこともある!安易に抜こうとするな!」
医長は泣きはらしたような表情のまま、真っ赤な顔で診療に当たった。
「ザッキーも、もうじき来るぞ。シロー」
「ユウキ先生だけですか。あとは」シローは血液ガスなどデータの確認中。
「ああ。だが酔ってた。あてにするな」
「?」
「くそ・・・!」
「何か、あったんですか・・・?」
「なんでもない。とにかく手伝わせてもらう!」
シローは感動し、2歩下がって両手をパンパンと合わせた。
「先生。どうもありがとうございます!感謝です!」
「やや、やめないか!」
医長は僕のやったモノマネを思い出し、不快をあらわにした。
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