サンダル医長 月曜日 ? ケッタイな奴
2006年6月8日「どんどんいきまっせ!」看護士は積み重なったカルテを1冊、バンと机の上に置いた。
「呼吸困難が、夜間からあるそうです!32歳男性!」
「・・・さ、座って」
患者はダルそうだ。肩で呼吸。
カルテをさかのぼると・・・喘息の治療が途中で中断。3ヶ月たつ。
「主治医は、医長・・いや、トシキ先生か」
「もうやめていいかなと思って」
「薬のいきなりの中断は、カンベンしてほしいなあ」
「なあ。すぐ治してよ」
「ステロイドの点滴を・・」
「なんかさ、もう何でもいいから。とにかく!ムチャクチャきついヤツ!」
話すたび、喘鳴がかすかに聞こえてくる。聴診。ウィーズは著明。
患者はハイテンションだ。
「なあ先生。思いっきりキツイのやってよ!」
「思いっきりなんてそんな・・・」
サクシゾン点滴の指示。
「終わる前に酸素飽和度測定。次!」
「77歳女性!老人性痴呆!」看護士は張り切る。
「そんな病名、張り切っていうなよな・・・」
高齢女性はゆっくりと腰掛けた。横のご主人が代弁する。
「ユウキ先生なあ。あかんわ。さっぱり!」
「物忘れは相変わらず?」
「アリセプトかな。あれたしかにええ薬のようじゃが、いっこうに効かん!」
「困ったな。アリセプトが効きにくいとなると・・」
なかなかネタがない。
「なあ先生。夜は家の中でウロウロして、あちこち汚しまくるんや!」
「便で・・でしたよね?」
この患者は精査加療目的で入院させたことがあったのだが・・。その日さっそく徘徊して詰所夜勤が大変だった。
抑制帯をすると叫び、周囲への迷惑を伴った。仕方なくご主人を呼び、ついてもらったのだが。
婦長らのクレームもあり、とうとう家に連れて帰ってもらうことになったのだ。
こんな状況だと施設で面倒を見てもらうわけにもいかず、家族の苦労は大変なはずだ。
精神科受診は本人が承諾していない。
「気分を落ち着けるための薬ってことで・・・ソラナックスを処方しましたよね」
「あああれか!あれで、このまえ大変だったよ!」
「何が?」
「飲んだら、そのあと歩いてて・・階段から落ちそうになったりしてな!」
「あいたたた・・・」
「どこが痛いんか?」
「いやいや」
高度難聴の患者は、僕の前で澄ましている。
「すまんな、ばあさん・・・」
将来(2011年)、療養病棟がなくなる。短期間治療または重症管理が必要という条件の一般病棟、それと老健施設のみとなる。
こういった患者はいったいどこへ行くのだろう。こんなに老人が増えて、寿命が延びて。でも同居は減って。
在宅介護が積極的になるわけだ。
ジリリンと内線が鳴る。
「はい。ユウキです!」
『おうひへあふああ・・ぶつぶつ』
「遠藤先生か!どうした?」
『はふぬるぶきこひ・・・』
「ダメだ。分からん。行ってくる!」
席をはずしたとたん、後ろから看護士につかまった。
「は、はなせよ!」
「先生どこどこ?どこ行きよる?」
「救急だよ救急!」
「この山積みのカルテは?」
僕はタタタ、と進み、振り向いた。
「お前にやる!なんてウソウソ!」
「もう〜!なんだかなぁ〜!」看護士はヘナヘナうずくまった。
救急室では、遠藤先生が心電図を記録中。のようだった。
「しし、心電図のとりかたが・・・」
「それでオレを呼んだのか?」
「電話でそう言ったのに・・」
「ナースとか技師とか!近くにいないのか?」
「とにかく雑用など分からないことは、医長先生に聞けって」
「雑用係で悪かったな!」
「そんなん怒らんでも・・・ぶつぶつ」
「どけ。じゃま・・じゃま!」
どかして、心電図を記録。
「VPC(心室性期外収縮)か・・・1分に5回」
「あ。1回おきに出た。2段脈」遠藤先生はうしれそうにつぶやく。
「初診か?」
救急隊の持ってきたメモでは・・・松田クリニックで受診中とある。
受診中に、不整脈が出だした。他院をすすめられ、搬送、か。
相変わらずだな。
遠藤君はまたダラダラと心電図を記録。
「お。今度は3段脈」
「もういい。記録しすぎだ!」
スイッチを止め、40代男性患者に呼びかけ。
「松田クリニックで・・何を?」
「心臓が大きいから、超音波してもらって。そしたら利尿剤という飲み薬が始まって・・」
「何か説明を?」
「いや、なにも。松田先生に返事、書いてといてくださいね!」
紹介状、来てないのに・・・。
レントゲンでは確かに心拡大はある。
超音波では・・中隔・後壁が厚い。HCMか。
「ぶつぶつ・・・キシロカインは準備したので」
「待てって。緊急性ありか?低酸素はないか?」
「ていさん・・?誰」
「だる・・・採血結果を待とう」
「低血糖?」
「適当に考えずに!」
部屋を出る前に、採血データが戻ってきた。さっきの看護士だ。
「はいユウキ先生!行こう!」
「待てよ。見せろ」
「行きまっせ!」彼は強い腕で引っ張る。
カリウム 2.6 じゃないか・・・。利尿剤、飲ませすぎなんだろう。血糖は正常で貧血なし。
なぜか隅でモジモジしている遠藤君に近寄った。
「遠藤先生。低血糖でファイナルアンサー?」
「ふぁいなる・・・あんさん?」
「だる・・・お前テレビ見んのか?」
「テレビ、持ってない」
「趣味は?」
「寝ることかな・・ぶつぶつ別にいいじゃんぶつぶつ・・」
かみ合わない人間関係は、つらい・・・。
電解質輸液指示・カリウム製剤処方・再診予定とし、当院外来へ来るよう命じた。
だが開業医の信者だ・・・来るかどうか。
しかし患者に病院を品定めしろというのは、無理な話だ。
この頃からか。「セカンドオピニオン」が流行し始めたのは。
「呼吸困難が、夜間からあるそうです!32歳男性!」
「・・・さ、座って」
患者はダルそうだ。肩で呼吸。
カルテをさかのぼると・・・喘息の治療が途中で中断。3ヶ月たつ。
「主治医は、医長・・いや、トシキ先生か」
「もうやめていいかなと思って」
「薬のいきなりの中断は、カンベンしてほしいなあ」
「なあ。すぐ治してよ」
「ステロイドの点滴を・・」
「なんかさ、もう何でもいいから。とにかく!ムチャクチャきついヤツ!」
話すたび、喘鳴がかすかに聞こえてくる。聴診。ウィーズは著明。
患者はハイテンションだ。
「なあ先生。思いっきりキツイのやってよ!」
「思いっきりなんてそんな・・・」
サクシゾン点滴の指示。
「終わる前に酸素飽和度測定。次!」
「77歳女性!老人性痴呆!」看護士は張り切る。
「そんな病名、張り切っていうなよな・・・」
高齢女性はゆっくりと腰掛けた。横のご主人が代弁する。
「ユウキ先生なあ。あかんわ。さっぱり!」
「物忘れは相変わらず?」
「アリセプトかな。あれたしかにええ薬のようじゃが、いっこうに効かん!」
「困ったな。アリセプトが効きにくいとなると・・」
なかなかネタがない。
「なあ先生。夜は家の中でウロウロして、あちこち汚しまくるんや!」
「便で・・でしたよね?」
この患者は精査加療目的で入院させたことがあったのだが・・。その日さっそく徘徊して詰所夜勤が大変だった。
抑制帯をすると叫び、周囲への迷惑を伴った。仕方なくご主人を呼び、ついてもらったのだが。
婦長らのクレームもあり、とうとう家に連れて帰ってもらうことになったのだ。
こんな状況だと施設で面倒を見てもらうわけにもいかず、家族の苦労は大変なはずだ。
精神科受診は本人が承諾していない。
「気分を落ち着けるための薬ってことで・・・ソラナックスを処方しましたよね」
「あああれか!あれで、このまえ大変だったよ!」
「何が?」
「飲んだら、そのあと歩いてて・・階段から落ちそうになったりしてな!」
「あいたたた・・・」
「どこが痛いんか?」
「いやいや」
高度難聴の患者は、僕の前で澄ましている。
「すまんな、ばあさん・・・」
将来(2011年)、療養病棟がなくなる。短期間治療または重症管理が必要という条件の一般病棟、それと老健施設のみとなる。
こういった患者はいったいどこへ行くのだろう。こんなに老人が増えて、寿命が延びて。でも同居は減って。
在宅介護が積極的になるわけだ。
ジリリンと内線が鳴る。
「はい。ユウキです!」
『おうひへあふああ・・ぶつぶつ』
「遠藤先生か!どうした?」
『はふぬるぶきこひ・・・』
「ダメだ。分からん。行ってくる!」
席をはずしたとたん、後ろから看護士につかまった。
「は、はなせよ!」
「先生どこどこ?どこ行きよる?」
「救急だよ救急!」
「この山積みのカルテは?」
僕はタタタ、と進み、振り向いた。
「お前にやる!なんてウソウソ!」
「もう〜!なんだかなぁ〜!」看護士はヘナヘナうずくまった。
救急室では、遠藤先生が心電図を記録中。のようだった。
「しし、心電図のとりかたが・・・」
「それでオレを呼んだのか?」
「電話でそう言ったのに・・」
「ナースとか技師とか!近くにいないのか?」
「とにかく雑用など分からないことは、医長先生に聞けって」
「雑用係で悪かったな!」
「そんなん怒らんでも・・・ぶつぶつ」
「どけ。じゃま・・じゃま!」
どかして、心電図を記録。
「VPC(心室性期外収縮)か・・・1分に5回」
「あ。1回おきに出た。2段脈」遠藤先生はうしれそうにつぶやく。
「初診か?」
救急隊の持ってきたメモでは・・・松田クリニックで受診中とある。
受診中に、不整脈が出だした。他院をすすめられ、搬送、か。
相変わらずだな。
遠藤君はまたダラダラと心電図を記録。
「お。今度は3段脈」
「もういい。記録しすぎだ!」
スイッチを止め、40代男性患者に呼びかけ。
「松田クリニックで・・何を?」
「心臓が大きいから、超音波してもらって。そしたら利尿剤という飲み薬が始まって・・」
「何か説明を?」
「いや、なにも。松田先生に返事、書いてといてくださいね!」
紹介状、来てないのに・・・。
レントゲンでは確かに心拡大はある。
超音波では・・中隔・後壁が厚い。HCMか。
「ぶつぶつ・・・キシロカインは準備したので」
「待てって。緊急性ありか?低酸素はないか?」
「ていさん・・?誰」
「だる・・・採血結果を待とう」
「低血糖?」
「適当に考えずに!」
部屋を出る前に、採血データが戻ってきた。さっきの看護士だ。
「はいユウキ先生!行こう!」
「待てよ。見せろ」
「行きまっせ!」彼は強い腕で引っ張る。
カリウム 2.6 じゃないか・・・。利尿剤、飲ませすぎなんだろう。血糖は正常で貧血なし。
なぜか隅でモジモジしている遠藤君に近寄った。
「遠藤先生。低血糖でファイナルアンサー?」
「ふぁいなる・・・あんさん?」
「だる・・・お前テレビ見んのか?」
「テレビ、持ってない」
「趣味は?」
「寝ることかな・・ぶつぶつ別にいいじゃんぶつぶつ・・」
かみ合わない人間関係は、つらい・・・。
電解質輸液指示・カリウム製剤処方・再診予定とし、当院外来へ来るよう命じた。
だが開業医の信者だ・・・来るかどうか。
しかし患者に病院を品定めしろというのは、無理な話だ。
この頃からか。「セカンドオピニオン」が流行し始めたのは。
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