サンダル医長 火曜日 ? サビ痰!へいへい!
2006年6月22日「ブヒブヒ。次は心臓超音波」オークナースはレントゲン、心電図を用意する。
「腹部の人を優先しなよ。空腹で来てるんだろ?」
「ブヒブヒ。次の腹部エコーの人は、小便に行きました」
「だる・・・膀胱・前立腺、分からんじゃないか」
68歳男性、心房細動でワーファリン内服中。一過性の意識消失が先日あった。
TIAだったのか、心房細動の徐脈によるものなのか・・正直はっきりしていない。
いずれにしても今後も予防投薬は必要だ。
「ユウキ先生!医長になったんですね!」酒屋をやってるおじさん。
「え、ええ」
「こりゃあ、お祝いせにゃいかんな!」
「いやいや。さ、左を横にして!」
患者の背中から右から回りこむようにプローブを胸骨部に当てる。
腹部超音波と違って、見落としいう機会自体あまり縁はないが(癌の発生することが稀な臓器のため)、見た印象と計算した結果のつじつまが合わないと泣きを見ることになる。
たとえば左心房を計測して、違った角度から計算したのにどちらも全くかけ離れた数値だったり・・とかだ。
「LAD(左心房径)はと・・・52mmか。前回は・・・」
前回の記録を参照。トシキがしてる。
「50mmか。あんまり変わらないか」
次、体積を測定。左心房内の血栓の有無観察。
「可視範囲、血栓の所見はなしか。もやもやエコー含めて」
「?ないんでっか?」
「ない・・・んじゃないですかね」つい、安易な言い方が。
「ということは、あるかもしれんってことやね?」
「いや、ない傾向だと」
「でも、あるともいえる?」
しつこいな・・だが痛いところを突かれた。
患者は着替え始めた。
「じゃあもうちょっと、長生きできますかな?」
「できるできるって!」
「でも、長生きできないとも言える」
「だる・・・人がせっかく。では食道エコーを近々」
「えっ?あの胃カメラの大きいの?それは遠慮!」
患者は逃げるように出て行った。
98歳男性。肺気腫に狭心症に糖尿病・・・などなど。
これらを20年あまり合併しながらも、独歩で通院している。
当院の最高齢でマスコット的存在だった。
以前「サンダル先生」で何度も同じことを喋っていた、あの人だ。
「変わりはないんだなあ、これが」
「タバコは・・」
「吸っとるよお!」
「じゃ座って。酒は」
「飲んどるよお!だからな先生。もう、いつでも死んでええんだ」
「よくないよくない。さ、痰出るなら出しといて」
「カカ。痰出んな。あの世で待っとるバアサンが寂しがっとる!ゲホゲホ」
心臓超音波で確認。トシの割りに丈夫だ。心機能は良好。
定期的に調べているが、拡張障害が軽度ぐらいしか所見がない。
「なあ先生。明日の朝・・」
「なんですか。ベッドから起起きたら天国やったらええのにってそんな贅沢なこと言うたらいけませんよはい終わり!」
「わはは!カアッ!ペッ!」
適当に吐いた痰が、僕の右肩の上を通り越し・・・
「カアッ!」
「くっ!」
手を振り回し、またよけた。<マトリックスかわし>!
しかし痰の色は見逃した。
すると部屋の仕切りのカーテンの向こうから・・・
「ザビタン!へいへい!」例の看護士だ。胃カメラのサポート中だ。
「なんでザビタンだよ?関係ないだろ?」
看護士は、うれしそうにカーテンにへばりついた痰を指差した。
「この色!へいへい!」
「まともに喋れよ!」
「鉄サビ色!」
「は?ああ、そうだな。肺炎球菌?だから?」
「サビタン(錆び痰)!へいへい!」
「くるし・・・」
患者が帰ったことを確認し、看護士に歩み寄った。
「おい。お前・・・言いふらしただろ?」
「何を?へいへい」
「シッ!オレの机の上の!」
「ゆうき?へいへい!」
「バカ!タイトル言うな!」
「え?私は先生の名前呼んだだけですよ?へいへい!」
僕らは廊下へ出た。オークは次の患者を招きいれた。
「なあ頼む。もう言いふらすなよ」
「手遅れ!へいへい!」
「それと!オレの車に落書きしただろ?」
「知らない。へいへい!」
看護士はとぼけて、カーテンにまた消えた。
僕は気持ちを切り替え、57歳女性の腹部超音波。多発性腎のう胞。
前回はトシキが検査して・・のう胞8個のサイズ、すべて測定している。
「ここまでするか・・・」
で、今回の依頼主はトシキだ。伝票に彼は・・・
『前回とのサイズ比較お願いします』
「どあるう!そんな時間などあるか!」
などといいつつ、のう胞を1個ずつせっせと追いかけた。
「増えてないだろな・・ぶつぶつ!」
64歳のOMI(陳旧性心筋梗塞)男性。2回繰り返し、DCMさながらに心臓は巨大化。
「利尿剤、少し足しましょうかね・・・前回よりサイズは大きい」
「そうでっか」
「体重は増えました?」
「よく食ったからなあ。最近は」
「測定してないか・・塩分が多い?」
「そうでんな。酒も最近やりだしたし」
「それって・・」
こりゃ指導が必要だな。病識が足りないとはこのことだ。
ふと伝票に目をやると・・依頼主は慎吾だ。あいつ主治医か。
ここで指導しておくか。
しかし伝票にはこう書いてあった。
『検査のみお願いします』
この男・・失礼なヤツ!
「腹部の人を優先しなよ。空腹で来てるんだろ?」
「ブヒブヒ。次の腹部エコーの人は、小便に行きました」
「だる・・・膀胱・前立腺、分からんじゃないか」
68歳男性、心房細動でワーファリン内服中。一過性の意識消失が先日あった。
TIAだったのか、心房細動の徐脈によるものなのか・・正直はっきりしていない。
いずれにしても今後も予防投薬は必要だ。
「ユウキ先生!医長になったんですね!」酒屋をやってるおじさん。
「え、ええ」
「こりゃあ、お祝いせにゃいかんな!」
「いやいや。さ、左を横にして!」
患者の背中から右から回りこむようにプローブを胸骨部に当てる。
腹部超音波と違って、見落としいう機会自体あまり縁はないが(癌の発生することが稀な臓器のため)、見た印象と計算した結果のつじつまが合わないと泣きを見ることになる。
たとえば左心房を計測して、違った角度から計算したのにどちらも全くかけ離れた数値だったり・・とかだ。
「LAD(左心房径)はと・・・52mmか。前回は・・・」
前回の記録を参照。トシキがしてる。
「50mmか。あんまり変わらないか」
次、体積を測定。左心房内の血栓の有無観察。
「可視範囲、血栓の所見はなしか。もやもやエコー含めて」
「?ないんでっか?」
「ない・・・んじゃないですかね」つい、安易な言い方が。
「ということは、あるかもしれんってことやね?」
「いや、ない傾向だと」
「でも、あるともいえる?」
しつこいな・・だが痛いところを突かれた。
患者は着替え始めた。
「じゃあもうちょっと、長生きできますかな?」
「できるできるって!」
「でも、長生きできないとも言える」
「だる・・・人がせっかく。では食道エコーを近々」
「えっ?あの胃カメラの大きいの?それは遠慮!」
患者は逃げるように出て行った。
98歳男性。肺気腫に狭心症に糖尿病・・・などなど。
これらを20年あまり合併しながらも、独歩で通院している。
当院の最高齢でマスコット的存在だった。
以前「サンダル先生」で何度も同じことを喋っていた、あの人だ。
「変わりはないんだなあ、これが」
「タバコは・・」
「吸っとるよお!」
「じゃ座って。酒は」
「飲んどるよお!だからな先生。もう、いつでも死んでええんだ」
「よくないよくない。さ、痰出るなら出しといて」
「カカ。痰出んな。あの世で待っとるバアサンが寂しがっとる!ゲホゲホ」
心臓超音波で確認。トシの割りに丈夫だ。心機能は良好。
定期的に調べているが、拡張障害が軽度ぐらいしか所見がない。
「なあ先生。明日の朝・・」
「なんですか。ベッドから起起きたら天国やったらええのにってそんな贅沢なこと言うたらいけませんよはい終わり!」
「わはは!カアッ!ペッ!」
適当に吐いた痰が、僕の右肩の上を通り越し・・・
「カアッ!」
「くっ!」
手を振り回し、またよけた。<マトリックスかわし>!
しかし痰の色は見逃した。
すると部屋の仕切りのカーテンの向こうから・・・
「ザビタン!へいへい!」例の看護士だ。胃カメラのサポート中だ。
「なんでザビタンだよ?関係ないだろ?」
看護士は、うれしそうにカーテンにへばりついた痰を指差した。
「この色!へいへい!」
「まともに喋れよ!」
「鉄サビ色!」
「は?ああ、そうだな。肺炎球菌?だから?」
「サビタン(錆び痰)!へいへい!」
「くるし・・・」
患者が帰ったことを確認し、看護士に歩み寄った。
「おい。お前・・・言いふらしただろ?」
「何を?へいへい」
「シッ!オレの机の上の!」
「ゆうき?へいへい!」
「バカ!タイトル言うな!」
「え?私は先生の名前呼んだだけですよ?へいへい!」
僕らは廊下へ出た。オークは次の患者を招きいれた。
「なあ頼む。もう言いふらすなよ」
「手遅れ!へいへい!」
「それと!オレの車に落書きしただろ?」
「知らない。へいへい!」
看護士はとぼけて、カーテンにまた消えた。
僕は気持ちを切り替え、57歳女性の腹部超音波。多発性腎のう胞。
前回はトシキが検査して・・のう胞8個のサイズ、すべて測定している。
「ここまでするか・・・」
で、今回の依頼主はトシキだ。伝票に彼は・・・
『前回とのサイズ比較お願いします』
「どあるう!そんな時間などあるか!」
などといいつつ、のう胞を1個ずつせっせと追いかけた。
「増えてないだろな・・ぶつぶつ!」
64歳のOMI(陳旧性心筋梗塞)男性。2回繰り返し、DCMさながらに心臓は巨大化。
「利尿剤、少し足しましょうかね・・・前回よりサイズは大きい」
「そうでっか」
「体重は増えました?」
「よく食ったからなあ。最近は」
「測定してないか・・塩分が多い?」
「そうでんな。酒も最近やりだしたし」
「それって・・」
こりゃ指導が必要だな。病識が足りないとはこのことだ。
ふと伝票に目をやると・・依頼主は慎吾だ。あいつ主治医か。
ここで指導しておくか。
しかし伝票にはこう書いてあった。
『検査のみお願いします』
この男・・失礼なヤツ!
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