サンダル医長 火曜日 ? サンダルたちがやってきた! ヤアヤアヤア!
2006年6月28日みな次々と会議室の長イスに腰掛けた。薬の説明会だ。
僕やトシキ、慎吾らが1列に並び、後ろにその他の科が並ぶ。
「本日は貴重な時間を頂き、誠にありがとうございます」
張りきった若いMRが黒スーツで背筋を伸ばした。
「この度は、本抗生剤も発売10周年記念となりまして・・・・!」
僕の横・・その空いている席に、弥生先生の細い体が腰掛けた。
機嫌の悪かった僕を警戒しているのが分かる。
僕は正面を見たまま、弁当を開けた。
「だる・・・またウナギかよ?」
贅沢は言ってはならないが、うな重2段重ねだった。
「ま、でもいいか・・・でも野菜が欲しいな」
ザッキーが遠くからこちらを見て、悪戯っぽくささやいた。
「MRさん!」
「そうしますとこのように・・・はい?」
「医長先生がね」
「ははっ!なんでございましょうか!」
MRは説明を中断した。
「医長先生が怒ってるよ。オレ知らねー」
「ええっ?ええっ?」MRは意味が不明だった。
「医長先生が、野菜がないって怒ってるよ」
「おいザッキー!お前何を!」
「医長先生がお怒りになりますよ!」
「だる・・・」
MRの上司が後ろから現れた。
「誠に申し訳ございません!ただいますぐに・・・!」
上司の手が弥生先生のお茶缶に当たり・・・茶が彼女の顔めがけて飛び散った。
「きゃああ!」
「ああ!ああ!い、医長先生は!」上司MRは僕のほうを気にした。
「おい!オレは股だけだからいいけど!彼女が!」
「あ!はい!ですが!」
どうやらMRは僕のほうに重点を置いているようだった。
後ろからピートがホーキで片付けにかかる。
「へっへ。そ〜ら怒るぜ。医長先生の彼女の顔に・・」
「ええっ?そうとはつゆ知らず!」上司MRは真っ青になった。
「なんせ、薬の採用を決めるのは医長と相場が決まってるからなあ!」
「あわわ・・・!」
弥生先生はハンカチで顔を押さえた。泣いているようにも見えた。
僕は自分のハンカチを取り出した。
「弥生先生。髪のほうまで濡れてしまって」
「さわらないで!」
バシッとはたかれ、その勢いで僕は横の大きなバケツに足を突っ込んだ。
「弥生先生!」
彼女は気にもとめず、ズダダと物すごい勢いで走っていった。
「顔を押さえたまま・・・よほどイヤだったのか」
僕以外のスタッフは、半笑いで僕を見つめた。そして・・
「♪ふ〜られた〜ふ〜られた〜」
「うるさい!」
「♪ど〜しましょ〜ど〜しましょ〜」
「でや!たあ!」
足を振り上げ、そのバケツは長椅子の足に命中した。
「ううっ?」
長椅子は瞬く間に傾き、流れるようにトシキ、シロー、慎吾らが弁当とともに床に崩れた。
「おおっと・・・ここまでとは」僕はしばらく立ち尽くした。
ピートがホーキを持ったまま、僕の肩に手をかけた。
「追いかけろよ。ユウキ」
「追いかける?って、どこへ・・」
「彼女、たぶん事務長室だぜ」
「事務長室?」
「知らないのか?ドンカンだな。さすがサンダル先生だ。へへへ!」
「事務長が・・また手を出したのか?」
「それはないと思うが。彼女、落ち込むと事務長室にお茶しに行くんだぜ」
「そうなのか?じゃあ、今は」
「そこに向かってらあ!さあ急げ!」
トシキらはズルズルと、イスの上に這い上がった。
「まだ、ぜんぜん食べてなかったのに・・」
「すまん、トシキ。泣くなよ」
「先生、無茶ばかりするもん」
「すまんすまん」
「無茶するもん。無茶するもん!」
「おいおい・・・」
トシキは子供のようにすすり泣いた。
それとは裏腹に、あのナースの言葉を思い出した。
『ユウキ先生・・彼女・・待ってますよ』
「うっ?」
『待ってますよ待ってますよ待って待ってまま・・・てててまますててまますてて・・・!』
「医長先生!どうかこれでお許しを!」
上司MRが差し出したのは・・ローソンのサラダだった。先ほどやってきた部下から取り上げた。
「なに、これ?」
「と、とりあえずこの野菜でご勘弁を!」
「いやいや。ここまでしなくても」
「どうか、どうか!」
「ん?」
「は?」
僕は、サラダをゆっくりMR上司につき返した。
「何か気づいたか?」
「え?何か・・虫でも?」
「ダメだな。まだまだだ」
「?」
彼はよく見ているが・・分からない。
僕は白衣をバアッ、と羽織った。
「甘いんだよ!」
「辛口がよろしいでございますか!」
「じゃなくて。ドレッシングがついてない!」
「ええっ?あホントだ!」
「ドレッシングは別売りなんだよ!ガッデメ!」
僕は早足で長椅子の間を駆け出した。
「医長先生!どうか今後も本商品を!」
「考えておく!やあ!」
ドカン、とドアを開け、階段を駆け下りた。
後ろから何人か降りてきた。サンダルの音がパタパタせわしく響く。
「な、なんだお前ら?心カテの準備は?」
「もうできてます!まだ30分ある!」シローがやってきた。
「だる・・来るなよ?」
「なんだか面白そうだから!ついていく!」シローの後ろにザッキー。慎吾も続く。
「ちゃんと働いてんのか?料金分!」
「さいきん、面白いことないし!」シローは必死で追いついてきた。
僕らは非常階段をカンカンカン、と駆け下りた。
「事務長の奴・・!」
なぜかあの歌が口をついてくる。
「♪い〜まからいいっしょに!これからいいっしょに!なっぐりにいこうかあ〜〜〜!」
ズドン、と事務室に突入したところ、事務長がコーヒーを飲んでいた。
「うむ?いったい・・」
「はあはあ、だる!」僕は息が落ち着くまで、その場でうずくまった。
「ああそうそう。昨日はお見苦しいところをお見せしまして・・」
「はあはあ。そういや、お前の彼女、来てたな」
「彼女?どの?」
「事務員だよ」
「ああ、あの子ね・・どの子?」
「だる・・」
僕らはみな事務長を取り囲んだ。弥生先生は・・部屋の隅で向こうを向き、メイクをしている。
「チアキさんだよ」
「チアキ・・あ。今日来てないや」
「ほらな・・・」
「な、何かしましたか?私が?」
「いやいや・・」
「おお、教えて!」
事務長は僕のほうにすがりそうになったが、かわした。
「チアキさんがな。せっかく見舞いに来たのに・・ダメだ。ここからは言えない」
「どうして!どうして!」
「ところでお前こそ、弥生先生を引っ張り込んで何やってんだ」
「ま、それは相談をいろいろと・・」
ザッキーが歩み出た。
「そんでな。事務長。聞きたかったんだけどな」
「合コンは撃墜?」
「うるさい。でな、ユウキ先生から聞いたけど。ユウキ先生を奈良に飛ばすってのは本当か?」
「え?なぜそれを?」
「お前が全部喋ったんだよ。その夜」
「きよし、この夜?」
「まともに聞け!では続きを。シロー先生」
シローも歩み寄った。
「引継ぎに失敗した病院に対しての報復に、そんなことするのかい?」
話はこうだ。以前・・僕らが引き継いで療養型病院にするはずだった病院が・・実はすでに真珠会が乗っ取っていて・・そうそう。話はあの通りだ。
事務長は裏切られ、プライドを傷つけられた。で、今度はどこかの病院に僕が院長代理?として出向き、対抗させ潰す?というもの。
僕は事務長を追い詰め、顔の横の壁に手を押し当てた。
「なんで院長代理なのかはまあいいとして。オレは絶対イヤだからな。奈良なんて!」
「な、奈良といいましても」
「あそこはおい、病院と小さい田舎町以外、なんにもないとこだぞ!」
「そう長くはないです。期間は。せいぜい2ヶ月から半年」
「半年?2ヶ月?ぜんぜん違うじゃないか!」
こういう人事異動にも口を出せるのが、大学派遣でない僕らの強みだ。
事務長は交渉人らしくあたってきた。
「わ、わたしに権限はありまへん。すべては経営者の・・」
「その経営者な。会わせてくれよ1回!」
「い、隠遁生活を送ってまして。詳しいことは・・」
「電話でしか話せないのか?へっ。まるで・・・おい、ザッキー!まるであれだな!あれ!」
「チャーリーズ・エンゼル?」
「エンジェルだろうが!スカポン!でな。事務長。繰り返すが・・オレは絶対に行かん!なあシロー!」
「そうですよ。人手が減りますもん!」
「だる・・・」
大学が次々と植民地(関連病院)を開拓しようとするように、民間のイケイケ病院も、各地に支店を置こうとする。
必ずしも景気がいいという意味とは限らず、銀行から資金を次々と調達するための口実でもある。年末になるとほら、道路を掘り返したり埋めたりする事業があるだろう。あれは役所が国からの予算を確保するために行ってることが多い。ただし病院や企業の場合・・利益を生み続ける期待をもたせないと、銀行も出資を続けてはくれない。でもおかしなことに、事業が進む見込みがあれば将来赤字だとしても、銀行は金を貸し続ける。まあそのやり方がバブル崩壊の一因となってしまったわけだが。
事務長は額の汗をぬぐった。
「やれやれ・・とんだ口軽・尻軽男だな。私は。気をつけようっと」
「じゃあ、今日<マイちゃん>とのホテルはキャンセルか?」
「あそっか・・な、なんでそこまで?」
事務長の顔がどんどん青ざめていった。
「何?僕はそんなことまで喋った?」
「暗証番号とかも漏らしてたぜ」
「や、やべ。暗号変えなきゃ」
「大忙しだな。よしみんな!」
僕は振り返り、みなと手を握り1列でウェーブを作り・・・・劇の終幕のように礼をした。
「じゃ、カテの準備!慎吾は準備の確認!」
「うい!」慎吾はダッシュした。
「シローは記録係!」
「はい!」ダッシュ。
「トシキは介助で・・ザッキーは術者!」
「よっしゃあ!」ダッシュし、事務長と僕と弥生先生だけとなった。
僕は遅ればせながら、タン、と駆け出した。
「弥生先生!悪いが今回も見学ということで!時間があれば穿刺の練習!」
「は、はいっ!」弥生先生も僕に続いた。
「ついてこい!」
「はいっ!」
とまではならなかった(このセリフがわかった人は凄い!)。
僕やトシキ、慎吾らが1列に並び、後ろにその他の科が並ぶ。
「本日は貴重な時間を頂き、誠にありがとうございます」
張りきった若いMRが黒スーツで背筋を伸ばした。
「この度は、本抗生剤も発売10周年記念となりまして・・・・!」
僕の横・・その空いている席に、弥生先生の細い体が腰掛けた。
機嫌の悪かった僕を警戒しているのが分かる。
僕は正面を見たまま、弁当を開けた。
「だる・・・またウナギかよ?」
贅沢は言ってはならないが、うな重2段重ねだった。
「ま、でもいいか・・・でも野菜が欲しいな」
ザッキーが遠くからこちらを見て、悪戯っぽくささやいた。
「MRさん!」
「そうしますとこのように・・・はい?」
「医長先生がね」
「ははっ!なんでございましょうか!」
MRは説明を中断した。
「医長先生が怒ってるよ。オレ知らねー」
「ええっ?ええっ?」MRは意味が不明だった。
「医長先生が、野菜がないって怒ってるよ」
「おいザッキー!お前何を!」
「医長先生がお怒りになりますよ!」
「だる・・・」
MRの上司が後ろから現れた。
「誠に申し訳ございません!ただいますぐに・・・!」
上司の手が弥生先生のお茶缶に当たり・・・茶が彼女の顔めがけて飛び散った。
「きゃああ!」
「ああ!ああ!い、医長先生は!」上司MRは僕のほうを気にした。
「おい!オレは股だけだからいいけど!彼女が!」
「あ!はい!ですが!」
どうやらMRは僕のほうに重点を置いているようだった。
後ろからピートがホーキで片付けにかかる。
「へっへ。そ〜ら怒るぜ。医長先生の彼女の顔に・・」
「ええっ?そうとはつゆ知らず!」上司MRは真っ青になった。
「なんせ、薬の採用を決めるのは医長と相場が決まってるからなあ!」
「あわわ・・・!」
弥生先生はハンカチで顔を押さえた。泣いているようにも見えた。
僕は自分のハンカチを取り出した。
「弥生先生。髪のほうまで濡れてしまって」
「さわらないで!」
バシッとはたかれ、その勢いで僕は横の大きなバケツに足を突っ込んだ。
「弥生先生!」
彼女は気にもとめず、ズダダと物すごい勢いで走っていった。
「顔を押さえたまま・・・よほどイヤだったのか」
僕以外のスタッフは、半笑いで僕を見つめた。そして・・
「♪ふ〜られた〜ふ〜られた〜」
「うるさい!」
「♪ど〜しましょ〜ど〜しましょ〜」
「でや!たあ!」
足を振り上げ、そのバケツは長椅子の足に命中した。
「ううっ?」
長椅子は瞬く間に傾き、流れるようにトシキ、シロー、慎吾らが弁当とともに床に崩れた。
「おおっと・・・ここまでとは」僕はしばらく立ち尽くした。
ピートがホーキを持ったまま、僕の肩に手をかけた。
「追いかけろよ。ユウキ」
「追いかける?って、どこへ・・」
「彼女、たぶん事務長室だぜ」
「事務長室?」
「知らないのか?ドンカンだな。さすがサンダル先生だ。へへへ!」
「事務長が・・また手を出したのか?」
「それはないと思うが。彼女、落ち込むと事務長室にお茶しに行くんだぜ」
「そうなのか?じゃあ、今は」
「そこに向かってらあ!さあ急げ!」
トシキらはズルズルと、イスの上に這い上がった。
「まだ、ぜんぜん食べてなかったのに・・」
「すまん、トシキ。泣くなよ」
「先生、無茶ばかりするもん」
「すまんすまん」
「無茶するもん。無茶するもん!」
「おいおい・・・」
トシキは子供のようにすすり泣いた。
それとは裏腹に、あのナースの言葉を思い出した。
『ユウキ先生・・彼女・・待ってますよ』
「うっ?」
『待ってますよ待ってますよ待って待ってまま・・・てててまますててまますてて・・・!』
「医長先生!どうかこれでお許しを!」
上司MRが差し出したのは・・ローソンのサラダだった。先ほどやってきた部下から取り上げた。
「なに、これ?」
「と、とりあえずこの野菜でご勘弁を!」
「いやいや。ここまでしなくても」
「どうか、どうか!」
「ん?」
「は?」
僕は、サラダをゆっくりMR上司につき返した。
「何か気づいたか?」
「え?何か・・虫でも?」
「ダメだな。まだまだだ」
「?」
彼はよく見ているが・・分からない。
僕は白衣をバアッ、と羽織った。
「甘いんだよ!」
「辛口がよろしいでございますか!」
「じゃなくて。ドレッシングがついてない!」
「ええっ?あホントだ!」
「ドレッシングは別売りなんだよ!ガッデメ!」
僕は早足で長椅子の間を駆け出した。
「医長先生!どうか今後も本商品を!」
「考えておく!やあ!」
ドカン、とドアを開け、階段を駆け下りた。
後ろから何人か降りてきた。サンダルの音がパタパタせわしく響く。
「な、なんだお前ら?心カテの準備は?」
「もうできてます!まだ30分ある!」シローがやってきた。
「だる・・来るなよ?」
「なんだか面白そうだから!ついていく!」シローの後ろにザッキー。慎吾も続く。
「ちゃんと働いてんのか?料金分!」
「さいきん、面白いことないし!」シローは必死で追いついてきた。
僕らは非常階段をカンカンカン、と駆け下りた。
「事務長の奴・・!」
なぜかあの歌が口をついてくる。
「♪い〜まからいいっしょに!これからいいっしょに!なっぐりにいこうかあ〜〜〜!」
ズドン、と事務室に突入したところ、事務長がコーヒーを飲んでいた。
「うむ?いったい・・」
「はあはあ、だる!」僕は息が落ち着くまで、その場でうずくまった。
「ああそうそう。昨日はお見苦しいところをお見せしまして・・」
「はあはあ。そういや、お前の彼女、来てたな」
「彼女?どの?」
「事務員だよ」
「ああ、あの子ね・・どの子?」
「だる・・」
僕らはみな事務長を取り囲んだ。弥生先生は・・部屋の隅で向こうを向き、メイクをしている。
「チアキさんだよ」
「チアキ・・あ。今日来てないや」
「ほらな・・・」
「な、何かしましたか?私が?」
「いやいや・・」
「おお、教えて!」
事務長は僕のほうにすがりそうになったが、かわした。
「チアキさんがな。せっかく見舞いに来たのに・・ダメだ。ここからは言えない」
「どうして!どうして!」
「ところでお前こそ、弥生先生を引っ張り込んで何やってんだ」
「ま、それは相談をいろいろと・・」
ザッキーが歩み出た。
「そんでな。事務長。聞きたかったんだけどな」
「合コンは撃墜?」
「うるさい。でな、ユウキ先生から聞いたけど。ユウキ先生を奈良に飛ばすってのは本当か?」
「え?なぜそれを?」
「お前が全部喋ったんだよ。その夜」
「きよし、この夜?」
「まともに聞け!では続きを。シロー先生」
シローも歩み寄った。
「引継ぎに失敗した病院に対しての報復に、そんなことするのかい?」
話はこうだ。以前・・僕らが引き継いで療養型病院にするはずだった病院が・・実はすでに真珠会が乗っ取っていて・・そうそう。話はあの通りだ。
事務長は裏切られ、プライドを傷つけられた。で、今度はどこかの病院に僕が院長代理?として出向き、対抗させ潰す?というもの。
僕は事務長を追い詰め、顔の横の壁に手を押し当てた。
「なんで院長代理なのかはまあいいとして。オレは絶対イヤだからな。奈良なんて!」
「な、奈良といいましても」
「あそこはおい、病院と小さい田舎町以外、なんにもないとこだぞ!」
「そう長くはないです。期間は。せいぜい2ヶ月から半年」
「半年?2ヶ月?ぜんぜん違うじゃないか!」
こういう人事異動にも口を出せるのが、大学派遣でない僕らの強みだ。
事務長は交渉人らしくあたってきた。
「わ、わたしに権限はありまへん。すべては経営者の・・」
「その経営者な。会わせてくれよ1回!」
「い、隠遁生活を送ってまして。詳しいことは・・」
「電話でしか話せないのか?へっ。まるで・・・おい、ザッキー!まるであれだな!あれ!」
「チャーリーズ・エンゼル?」
「エンジェルだろうが!スカポン!でな。事務長。繰り返すが・・オレは絶対に行かん!なあシロー!」
「そうですよ。人手が減りますもん!」
「だる・・・」
大学が次々と植民地(関連病院)を開拓しようとするように、民間のイケイケ病院も、各地に支店を置こうとする。
必ずしも景気がいいという意味とは限らず、銀行から資金を次々と調達するための口実でもある。年末になるとほら、道路を掘り返したり埋めたりする事業があるだろう。あれは役所が国からの予算を確保するために行ってることが多い。ただし病院や企業の場合・・利益を生み続ける期待をもたせないと、銀行も出資を続けてはくれない。でもおかしなことに、事業が進む見込みがあれば将来赤字だとしても、銀行は金を貸し続ける。まあそのやり方がバブル崩壊の一因となってしまったわけだが。
事務長は額の汗をぬぐった。
「やれやれ・・とんだ口軽・尻軽男だな。私は。気をつけようっと」
「じゃあ、今日<マイちゃん>とのホテルはキャンセルか?」
「あそっか・・な、なんでそこまで?」
事務長の顔がどんどん青ざめていった。
「何?僕はそんなことまで喋った?」
「暗証番号とかも漏らしてたぜ」
「や、やべ。暗号変えなきゃ」
「大忙しだな。よしみんな!」
僕は振り返り、みなと手を握り1列でウェーブを作り・・・・劇の終幕のように礼をした。
「じゃ、カテの準備!慎吾は準備の確認!」
「うい!」慎吾はダッシュした。
「シローは記録係!」
「はい!」ダッシュ。
「トシキは介助で・・ザッキーは術者!」
「よっしゃあ!」ダッシュし、事務長と僕と弥生先生だけとなった。
僕は遅ればせながら、タン、と駆け出した。
「弥生先生!悪いが今回も見学ということで!時間があれば穿刺の練習!」
「は、はいっ!」弥生先生も僕に続いた。
「ついてこい!」
「はいっ!」
とまではならなかった(このセリフがわかった人は凄い!)。
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