ダル医長 水曜日 ? 食事制限
2006年7月27日まんじゅうのコーナーを回る。
「腎臓に影響が出てるから。蛋白は減らしてほしいんだ」
「それで・・まんじゅう?」オジはまんじゅうを手に取った。
「それは糖分ということになるけど。血糖はこの手帳からするとまあまあ落ち着いてるから、まんじゅうに手を出す余裕がある」
「糖尿病やのに、糖を増やす?」
「蛋白を減らす分、糖を増やすんです」
「?」
「食べもんのうち、糖とか蛋白とかあるでしょうが?」
「うん、あるな」
「腎臓が悪くなってるから、腎臓に負担はかけたくない」
「そらそうや!」
「弱った腎臓くんは、蛋白とカリウムが大の苦手」
「はいはい、ありがとう!」
全然、何も通じない。
「蛋白を避けるとしたら蛋白の多いものを減らす。たとえば・・表3・4.この<糖尿病手帳>にあるでしょう?」
「うーん・・・チーズ・肉・魚・大豆・・・?わし魚好きなんやけど。魚を減らせっつうんですか?」
「いや・・・ではそれ以外の・・・じゃあ肉は食わんでも大丈夫?というか減らせる?」
「わしは、もともと好かんからな。でもこのバアが作ってきて困る」
「まんじゅうは、間食として・・そうだな。昼のおやつとして。3時頃にでも。毎日」
「甘いものやったら、みのもんたさんがリンゴって」
しつこいな・・・!
「果物、カリウムが多いからやめときましょうよ」
「カリウ・・・なに顆粒?」
「電解質の・・」
「デンカイ・・・?」
困った。やはりこういう説明は僕では・・・。
事務長に電話。
「すまんが、食品交換表を持ってきてくれ。スーパーへ!」
『医長先生?総回診は?業務を優先しないと!』
「食品の回診をやってて。とにかく持ってきてくれ!」
『食品回診?で、食品交換表ね・・・わかりました!』
とりあえず本を持ってきて、渡して帰ってもらおう。
「ま、また外来へいらしてください。栄養指導をまた今度」
「はいはい。今のでよう分かりました!」
「ホントかよ?」
まずいことに、スーハーしていた喘息の男性がやってきた。
コーヒーを飲み終えてやってきたのだ。
「お?お?なんでなんで?ここにおるねん?ヒュー」
「買い物の、その・・・」
「患者さん連れて、いろいろ見てまわっとるんか?」
「よ、よく分かったな・・・」
「喘息の人は、何を食べたらいいんですか?」
「く、食い物にアレルギーがなければ・・・特には」
「なんや、つまらんな・・・!あ、そうそう。あいつは?おい、あいつ連れて来い!」
連れの入院患者は・・・1人の私服を連れてきた。
尿路結石の若造だ。
「あっ!あっ!なんでここに?先生よな?」
「買い物に来てて・・」
周りに人だかりが増えてきた。
「なあ、さっきオレ大丈夫だって言ってただろ?」
「痛みだろ・・違うのか?」
「ジャーン。まだチクチク痛いでーす!でももういいでーす!」
「おい・・・あとで後悔するぞ」
喘息の男性はどうやら病院で知り合ったようだ。入院の際に知り合いが出来て、退院後も親交が続くことはよくある。
苦しい状況下で出会った人間関係は長続きするものだ。
「ヒュー。おい、この若造に何を食ったらええか指導してくだされや、兄ちゃん。いや、先生」
「え?ああ、尿酸のな」
「おい若造!よう聞いとけよ!」
若造の買い物カゴの中を見る・・・。
「ソーセージ、肉・・・」思わず1つずつ、取り出した。
「あ?なんでなんで?」
「酒も・・ダメと!」
「チョコレートはええやろ?」
「いや。甘いのもダメなんだ」
「え?でも、おもいっきりテレビで・・・」
「ホンマか?」
かごの中はほとんど何もなくなってしまった。
若造は立ち尽くす。
「先生。やっぱ野菜中心にしろってことかあ?」
「できれば、というかそうしてほしい」
「じゃあ、どうなったら肉食べてもええの?」
「尿酸が下がって・・せめてまず8以下に」
「あと運動も?」
「そうだな。血液検査を2週間後にしてみようよ。それまでの猶予期間ってことで」
「<執行猶予>やな?じゃあわし、来週は来ないでいいの?」
「キレイな姉ちゃんに会いたいんだろ?」
「おうおうそうやったそうやった!」
若造はスキップしながら、冷凍食品売り場へ向かい・・・ガラッとアイスの扉をスライドした。
「やった!今日は冷凍食品、半額や!おひとりさま5個までやって!へへへ!」
僕とオジオバは呆然と見ていた。
「ダメだな。下がらんだろな。あれじゃ・・・ではそろそろ。うっ?」
人だかりがますます増えてきた。みな話を聞きたがってるようだ。
「あの、すみませんが・・・自分はこれから」
「すっみっまっせ〜ん!」事務長が向こうから走ってきた。
「事務長?なぜ?」
「はあはあ!先生じゃないですか呼んだのは!はあはあ!」
買い物客らはみな振り向いた。
そのうちの1人のオバサンが・・・
「このネクタイスーツの人。栄養士さん?」
「はあはあ。ちが・・・ちが・・!」
事務長は息切れしてうずくまっていた。
「ま、そ、そんなとこです」僕は事務長に近寄った。
「ハアハア。医長先生、こんなとこで食事指導を・・点数取りましょうよ」
「じゃ、その食品交換表で・・あとは頼むぞ」
僕は買い物客らにおじぎをし、ステップダッシュでスーパーを出た。
「はあはあ。医長先生!誰が何をどうやって?」
「業務を優先だろ?じゃあな!」
自転車に乗っかり、点滅信号を目指す。
「もしもし病棟か?カルテの用意を!」
『さっきから、みなさんお待ちです!』師長がカンカンなのは・・別にいい。
総回診か。医長の腕の見せ所だ!
「腎臓に影響が出てるから。蛋白は減らしてほしいんだ」
「それで・・まんじゅう?」オジはまんじゅうを手に取った。
「それは糖分ということになるけど。血糖はこの手帳からするとまあまあ落ち着いてるから、まんじゅうに手を出す余裕がある」
「糖尿病やのに、糖を増やす?」
「蛋白を減らす分、糖を増やすんです」
「?」
「食べもんのうち、糖とか蛋白とかあるでしょうが?」
「うん、あるな」
「腎臓が悪くなってるから、腎臓に負担はかけたくない」
「そらそうや!」
「弱った腎臓くんは、蛋白とカリウムが大の苦手」
「はいはい、ありがとう!」
全然、何も通じない。
「蛋白を避けるとしたら蛋白の多いものを減らす。たとえば・・表3・4.この<糖尿病手帳>にあるでしょう?」
「うーん・・・チーズ・肉・魚・大豆・・・?わし魚好きなんやけど。魚を減らせっつうんですか?」
「いや・・・ではそれ以外の・・・じゃあ肉は食わんでも大丈夫?というか減らせる?」
「わしは、もともと好かんからな。でもこのバアが作ってきて困る」
「まんじゅうは、間食として・・そうだな。昼のおやつとして。3時頃にでも。毎日」
「甘いものやったら、みのもんたさんがリンゴって」
しつこいな・・・!
「果物、カリウムが多いからやめときましょうよ」
「カリウ・・・なに顆粒?」
「電解質の・・」
「デンカイ・・・?」
困った。やはりこういう説明は僕では・・・。
事務長に電話。
「すまんが、食品交換表を持ってきてくれ。スーパーへ!」
『医長先生?総回診は?業務を優先しないと!』
「食品の回診をやってて。とにかく持ってきてくれ!」
『食品回診?で、食品交換表ね・・・わかりました!』
とりあえず本を持ってきて、渡して帰ってもらおう。
「ま、また外来へいらしてください。栄養指導をまた今度」
「はいはい。今のでよう分かりました!」
「ホントかよ?」
まずいことに、スーハーしていた喘息の男性がやってきた。
コーヒーを飲み終えてやってきたのだ。
「お?お?なんでなんで?ここにおるねん?ヒュー」
「買い物の、その・・・」
「患者さん連れて、いろいろ見てまわっとるんか?」
「よ、よく分かったな・・・」
「喘息の人は、何を食べたらいいんですか?」
「く、食い物にアレルギーがなければ・・・特には」
「なんや、つまらんな・・・!あ、そうそう。あいつは?おい、あいつ連れて来い!」
連れの入院患者は・・・1人の私服を連れてきた。
尿路結石の若造だ。
「あっ!あっ!なんでここに?先生よな?」
「買い物に来てて・・」
周りに人だかりが増えてきた。
「なあ、さっきオレ大丈夫だって言ってただろ?」
「痛みだろ・・違うのか?」
「ジャーン。まだチクチク痛いでーす!でももういいでーす!」
「おい・・・あとで後悔するぞ」
喘息の男性はどうやら病院で知り合ったようだ。入院の際に知り合いが出来て、退院後も親交が続くことはよくある。
苦しい状況下で出会った人間関係は長続きするものだ。
「ヒュー。おい、この若造に何を食ったらええか指導してくだされや、兄ちゃん。いや、先生」
「え?ああ、尿酸のな」
「おい若造!よう聞いとけよ!」
若造の買い物カゴの中を見る・・・。
「ソーセージ、肉・・・」思わず1つずつ、取り出した。
「あ?なんでなんで?」
「酒も・・ダメと!」
「チョコレートはええやろ?」
「いや。甘いのもダメなんだ」
「え?でも、おもいっきりテレビで・・・」
「ホンマか?」
かごの中はほとんど何もなくなってしまった。
若造は立ち尽くす。
「先生。やっぱ野菜中心にしろってことかあ?」
「できれば、というかそうしてほしい」
「じゃあ、どうなったら肉食べてもええの?」
「尿酸が下がって・・せめてまず8以下に」
「あと運動も?」
「そうだな。血液検査を2週間後にしてみようよ。それまでの猶予期間ってことで」
「<執行猶予>やな?じゃあわし、来週は来ないでいいの?」
「キレイな姉ちゃんに会いたいんだろ?」
「おうおうそうやったそうやった!」
若造はスキップしながら、冷凍食品売り場へ向かい・・・ガラッとアイスの扉をスライドした。
「やった!今日は冷凍食品、半額や!おひとりさま5個までやって!へへへ!」
僕とオジオバは呆然と見ていた。
「ダメだな。下がらんだろな。あれじゃ・・・ではそろそろ。うっ?」
人だかりがますます増えてきた。みな話を聞きたがってるようだ。
「あの、すみませんが・・・自分はこれから」
「すっみっまっせ〜ん!」事務長が向こうから走ってきた。
「事務長?なぜ?」
「はあはあ!先生じゃないですか呼んだのは!はあはあ!」
買い物客らはみな振り向いた。
そのうちの1人のオバサンが・・・
「このネクタイスーツの人。栄養士さん?」
「はあはあ。ちが・・・ちが・・!」
事務長は息切れしてうずくまっていた。
「ま、そ、そんなとこです」僕は事務長に近寄った。
「ハアハア。医長先生、こんなとこで食事指導を・・点数取りましょうよ」
「じゃ、その食品交換表で・・あとは頼むぞ」
僕は買い物客らにおじぎをし、ステップダッシュでスーパーを出た。
「はあはあ。医長先生!誰が何をどうやって?」
「業務を優先だろ?じゃあな!」
自転車に乗っかり、点滅信号を目指す。
「もしもし病棟か?カルテの用意を!」
『さっきから、みなさんお待ちです!』師長がカンカンなのは・・別にいい。
総回診か。医長の腕の見せ所だ!
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