サンダル休日 木曜日 ? It’s true A but B
2006年9月12日ムンテラが終わり、出て行こうとしたらまた背後から撃たれた。
「あ、先生。思い出しました」とリーダー。
「やっとかよ・・・で?」
「64歳男性でほら、両心不全と高血糖で入院した・・・」
「あ、昨日の外来で入院して、主治医はたしか遠藤先生に」
「遠藤先生が、<ちゃんとした申し送りがなかったので、よく理解できない>って困ってました」
「ならアイツ、昨日の晩にオレに聞けばよかったのに・・・陰でいろいろ言いおって!」
重症板を確認。患者の状態と、指示内容。
「酸素吸入6リットル。これでメシを出しているのか・・?」
「今日の朝は3割でした」
「絶食だろうが。こういうときはふつう!」
「さあ、それは医長先生がきちんと彼に指導してなかったからじゃないんですか?」
「うぐ・・・!」
主治医を決めたあと、のんびり食事指導するんじゃなかった・・・。
ただ、遠藤先生も午後すれ違ったときは何も言わなかったが。
「なんだよアイツ。オレのこと避けてんのかな」
「医長先生のこと、怖がってるんですよ」
「オレが怖いのと、患者の治療は別だろう?」
ミチル師長がいたときは、こういう話ができていたのだが、若い人間との話はどこか波長が合わない。
でもむしろ合わせるべきなのか。合わせたこともあったが、ワガママをどんどん言われた。
「指示、とりあえず書き換える」
「遠藤先生の許可は・・」
「許可?いらないだろ」
点滴指示、検査指示を書き換えていく。間違ってはないが現実的でないものが多い。
「オレがいなくても、他のドクターがいるだろ。1人でやるなって・・・!」
そのとき、久しぶりにフォースらしきものが聞こえた。
『若手の医者は、指導医によってどうにでもなる』
「わかってるがな」
『指導医に必要なのは、なにも能力だけとは限らん』
「優しさか?」
『とも言えん。だが、君がそういう環境を作ったのかもしれん』
「オレが?どんな環境?第一艦橋?」
『・・・もう皇帝が勝ったも同じだな』
「ごまかすな!」
『彼のせっかくの能力を、君が引き出せないでいる。かもしれないのだ』
「引き出せてない・・・そしたら、どうすりゃいいの?」
『まず・・・相手を認めること』
「医者として?」
『学んだな』
「そうか。まず相手を認めて、そこから指摘していくんだな?」
IT’S TRUE 〜 BUT の構文だな。
『今の君のままでは、大学の人間と変わらん』
「そうかな?」
『変わるべきは、自分かも』
「るさいな・・・」
患者を回診。64歳男性は酸素マスク呼吸。マスクが呼吸のたびに白んでいる。
「昨日とくらべて、どうです?」
「フーフー。しっこが、もう出そうでんがな」
「今は、おしっこ出るとこにチューブが入ってるんで。出そうとしなくても出てます」
「たれながし?フーフー」
「ま、まあそういうこと」
「先生。ノドが渇いた。そこのポカリ取って」
「ん?」
近くの台に、ポカリのペットボトルが何本も置いてある。
「ダメですよ。水分は今は少ないほうが!」一方的に遠ざけた。
「そんなあ。フーフー・・」
ふと気づくと、詰所からの通用口が開いたと思ったら閉じた。
奥に遠藤先生の太った体が映る。
僕は詰所に入った。
「遠藤先生!」
「ふにゅ・・・・ふい」彼は振り返った。どことなくぎこちない。
「なんだよ。元気ないな」
「べつにそんなわけじゃ・・・きのうはザッキー先生らぶらぶやったらしいすね」
「そんな話。ここでするな。ところで」
さきほどの重症板を出した。
「これ!お前が出した指示。いくらなんでもこれは、というとこは直しておいた」
「ひとことひってふりゅらら・・」
「直した意味も考えて。それから次に生かしてくれよな。うっ?」
さっきのフォース指導を思い出した。
「で、でな。遠藤くん。いや、先生」
「?」
「せ、先生はまあ研修の身だけど、最近こういう症例も任せるようになった」
「ななにがいいたいんやろちゅっ」
「ひとり立ちしてもいいかな、と望みをかけれるかなって」
「ひひひ・・・」嬉しそうだ。
「だから期待してるんだよ。でも」
「ほうらあ、きた。ひひ」
遊んでやがる・・。
「でも、最初から出来るはずないだろ。最初から全部できるヤツなんて危険だよ。もしものときに弱い」
「そりゃあ、あたりまえやけどにゅるるる」
「いろいろキツイことも言われるとは思うが、言われたことってのは必ず忘れない」
「ま、ただしかったらのはなしやけっけけ!」
「・・・・・」
僕は怒りをこらえ、窓のほうを見た。閃光が走ったからだ。雨の予感がします、ヨカンがします。
「オレもいろいろ言うとは思うが。それも思いやってのことだと思えよ。雨降るな・・・おい!」
気がつくと、彼は廊下に出ていた。
「話の途中で、出て行くな!」
「昼ごはんの出前が、今医局に届いたってゅう・・」
「オレだって食ってねえよ!来い!」
彼の腕を引っ張り、詰所に戻った。
「やっぱ甘えかしたら、いかんな!」
「なにゅをひとりでひとりごと・・」
「未確認項目がいろいろ出てきたはずだ!それの確認をしとけよ!」
「それはまたあとで・・」
僕は後ろにふんぞりかえった。
「やれ。今すぐに」
一瞬だが、蛍光灯が消えた。
「(ナース一同)うわあっ!」
雷が、ズドドドドド・・・・・と近くの暗黒面に落ちた。
「あ、先生。思い出しました」とリーダー。
「やっとかよ・・・で?」
「64歳男性でほら、両心不全と高血糖で入院した・・・」
「あ、昨日の外来で入院して、主治医はたしか遠藤先生に」
「遠藤先生が、<ちゃんとした申し送りがなかったので、よく理解できない>って困ってました」
「ならアイツ、昨日の晩にオレに聞けばよかったのに・・・陰でいろいろ言いおって!」
重症板を確認。患者の状態と、指示内容。
「酸素吸入6リットル。これでメシを出しているのか・・?」
「今日の朝は3割でした」
「絶食だろうが。こういうときはふつう!」
「さあ、それは医長先生がきちんと彼に指導してなかったからじゃないんですか?」
「うぐ・・・!」
主治医を決めたあと、のんびり食事指導するんじゃなかった・・・。
ただ、遠藤先生も午後すれ違ったときは何も言わなかったが。
「なんだよアイツ。オレのこと避けてんのかな」
「医長先生のこと、怖がってるんですよ」
「オレが怖いのと、患者の治療は別だろう?」
ミチル師長がいたときは、こういう話ができていたのだが、若い人間との話はどこか波長が合わない。
でもむしろ合わせるべきなのか。合わせたこともあったが、ワガママをどんどん言われた。
「指示、とりあえず書き換える」
「遠藤先生の許可は・・」
「許可?いらないだろ」
点滴指示、検査指示を書き換えていく。間違ってはないが現実的でないものが多い。
「オレがいなくても、他のドクターがいるだろ。1人でやるなって・・・!」
そのとき、久しぶりにフォースらしきものが聞こえた。
『若手の医者は、指導医によってどうにでもなる』
「わかってるがな」
『指導医に必要なのは、なにも能力だけとは限らん』
「優しさか?」
『とも言えん。だが、君がそういう環境を作ったのかもしれん』
「オレが?どんな環境?第一艦橋?」
『・・・もう皇帝が勝ったも同じだな』
「ごまかすな!」
『彼のせっかくの能力を、君が引き出せないでいる。かもしれないのだ』
「引き出せてない・・・そしたら、どうすりゃいいの?」
『まず・・・相手を認めること』
「医者として?」
『学んだな』
「そうか。まず相手を認めて、そこから指摘していくんだな?」
IT’S TRUE 〜 BUT の構文だな。
『今の君のままでは、大学の人間と変わらん』
「そうかな?」
『変わるべきは、自分かも』
「るさいな・・・」
患者を回診。64歳男性は酸素マスク呼吸。マスクが呼吸のたびに白んでいる。
「昨日とくらべて、どうです?」
「フーフー。しっこが、もう出そうでんがな」
「今は、おしっこ出るとこにチューブが入ってるんで。出そうとしなくても出てます」
「たれながし?フーフー」
「ま、まあそういうこと」
「先生。ノドが渇いた。そこのポカリ取って」
「ん?」
近くの台に、ポカリのペットボトルが何本も置いてある。
「ダメですよ。水分は今は少ないほうが!」一方的に遠ざけた。
「そんなあ。フーフー・・」
ふと気づくと、詰所からの通用口が開いたと思ったら閉じた。
奥に遠藤先生の太った体が映る。
僕は詰所に入った。
「遠藤先生!」
「ふにゅ・・・・ふい」彼は振り返った。どことなくぎこちない。
「なんだよ。元気ないな」
「べつにそんなわけじゃ・・・きのうはザッキー先生らぶらぶやったらしいすね」
「そんな話。ここでするな。ところで」
さきほどの重症板を出した。
「これ!お前が出した指示。いくらなんでもこれは、というとこは直しておいた」
「ひとことひってふりゅらら・・」
「直した意味も考えて。それから次に生かしてくれよな。うっ?」
さっきのフォース指導を思い出した。
「で、でな。遠藤くん。いや、先生」
「?」
「せ、先生はまあ研修の身だけど、最近こういう症例も任せるようになった」
「ななにがいいたいんやろちゅっ」
「ひとり立ちしてもいいかな、と望みをかけれるかなって」
「ひひひ・・・」嬉しそうだ。
「だから期待してるんだよ。でも」
「ほうらあ、きた。ひひ」
遊んでやがる・・。
「でも、最初から出来るはずないだろ。最初から全部できるヤツなんて危険だよ。もしものときに弱い」
「そりゃあ、あたりまえやけどにゅるるる」
「いろいろキツイことも言われるとは思うが、言われたことってのは必ず忘れない」
「ま、ただしかったらのはなしやけっけけ!」
「・・・・・」
僕は怒りをこらえ、窓のほうを見た。閃光が走ったからだ。雨の予感がします、ヨカンがします。
「オレもいろいろ言うとは思うが。それも思いやってのことだと思えよ。雨降るな・・・おい!」
気がつくと、彼は廊下に出ていた。
「話の途中で、出て行くな!」
「昼ごはんの出前が、今医局に届いたってゅう・・」
「オレだって食ってねえよ!来い!」
彼の腕を引っ張り、詰所に戻った。
「やっぱ甘えかしたら、いかんな!」
「なにゅをひとりでひとりごと・・」
「未確認項目がいろいろ出てきたはずだ!それの確認をしとけよ!」
「それはまたあとで・・」
僕は後ろにふんぞりかえった。
「やれ。今すぐに」
一瞬だが、蛍光灯が消えた。
「(ナース一同)うわあっ!」
雷が、ズドドドドド・・・・・と近くの暗黒面に落ちた。
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