サンダル休日 木曜日 ? その医長、凶暴につき
2006年10月7日コメント (2) ガラッと医局の戸を開けると・・・ソファーでテレビを見ている弥生先生。まだマスクをしたままだ。
「ここにも菌がいるのか?」
「あー先生!こんばんは!今日はホント、お疲れー!」
テレビの音がうるさいが、彼女は気にしない。僕が座ると、後ろから肩を揉んでくれた。
「うう〜、ああ〜」
「な、なんかヘン!」
「うああ〜。ええ、ええ〜!やめんといてく〜れゲバゲバァ!」
後ろからいい匂いがする。怒ろうとするタイミングを逃した。
「弥生先生。もうみんな、帰ったようだな」
「医長先生、今日は休みだったのよねー!」
「医者の休みというのは、終わってからそう感じるものだ。ララア、いや先生。トシキの言うとおり、特に<循環器は眠れない>んだよ」
番組がCMに変わり、弥生先生は僕の正面で方膝をついた。
「また、いろいろと教えてください!」
「あ、そうだ。弥生先生!今日の入院のほら!肺線維症の!」
「あ、あれ。結局なんだったんですかー?」
「なぬっ!・・すまんが、テレビ消してくれないか?」
後ろに一瞬、何かの気配を感じたが、目の前のテレビを消してもらった。
弥生先生は予測していたようで、少しシュンとなった。
「弥生先生。呼吸状態が少し悪化したからといって、大量のステロイドを即投与していたが、あれは・・・?」
「あれしかだって、今のところあれしか方法が。えっ?」
「現疾患の、純粋な増悪か?感染の合併だとか他の因子とかまで考えたのか?」
「熱は高くないと思ったし」
「37.8度でか?」
「あ、高いかな」
「家族に説明もしていないだろ?」
「緊急で・・今しとくべきですか?」
「君は研修の身だろ?誰かに相談したのか?」
黙っていた弥生先生は、目をくわっ、と大きく見開いた。女、独特のリアクションだ。
「だって!だって医長先生は診断が分からないし!トシキ先生はいないし!シロー先生も途中で帰るし!」
「人のせいにするなよ。効果が確定もしていない治療を、独断でやっていいのか?」
「先生、なんか怖い・・・」
「教訓にしなよ!」
「だって、だって・・・!」彼女は認めようとしなかった。
「あのな。オレが言いたいのは・・・」
彼女は眉間にしわを寄せたまま、黙ってしまった。
僕らが下っ端の頃は、心の底から反省させられたが・・。今は時代が違うのか。
「あの・・・」後ろからの声。
「はん?」振り向くと・・
「その、途中で帰ったシローです」
シローが私服で戻ってきたようだ。襟が汚れて疲れきっている。
「シロー・・・」
「今日はかなり大変だったようで」
「ああ。で、お前はなにか・・用事だったんだろ?家族の」
しかし、シローの動揺した表情から何かは見て取れた。
「シロー。ホントのこと言えよ」
「・・・・・」
「ホントは、また手伝いに行ってたんだろ?例のクリニック」
「・・・・・」
「で、そこで何か頼まれたのか?」
「医長先生に相談しようと思いまして。さっきこの病院にTELしたら、ちょうどおられるって」
「ああ。いるよ。ここにな」
「クリニックに。松田クリニックに今後は定期的に行かせていただきたくて」
「バカ!あんなヤブ医者、手伝うなってあれほど言っただろ!」
「週に1回ででも!」
「なんでシロー!お前・・・」
なぜこんな素直な青年が、ヤブ医者の援助をするのか・・・まったく分からなかった。
事情が何かあるのだろうが。
「シロー。お前まさか、あの松田の、変な宗教に入ってないだろな?」
「そ、それは大丈夫です!」
「ま、オレは奈良にしばらく飛ばされるし、今後の決定権はトシキのほうに行くから。オレには権限など」
「トシキ先生は、してもいいって」
「そっか。なら・・・すれば?もう三つ子じゃないんだぜ」
僕は疲れ果て、医長室へ向かった。
「ドイツもコイツも・・・・!はあ、だるだる!」
今度は精神的にもダルかった。僕は自分のオーベン動揺、後輩らのことを思っていろいろアドバイスしたり、注意したりしてきたが・・
「拙者。何も、変わらなかったようでござるな・・・!」
今のはどことなく、シンエモンっぽかった。
医長室に入り、郵便はがきなどを確認。
「トシキの奴、明日は来るのかな・・・!」
すると、コンコン、と叩く音。
扉に思いっきり耳を当てた。
「コンコン、何の音?」
すると・・・
『越後の、いなかジジイでございます』
事務長の合言葉だ。
「なんだお前か。入れよ」
内側から開けた。
事務長がニヤニヤしながら入ってきた。
「いやあ、長い出張だったあ」
「ウソっぽいんだよおのれは!そこ座れ!」
イスでなく、床に<お座り>させた。
「ここにも菌がいるのか?」
「あー先生!こんばんは!今日はホント、お疲れー!」
テレビの音がうるさいが、彼女は気にしない。僕が座ると、後ろから肩を揉んでくれた。
「うう〜、ああ〜」
「な、なんかヘン!」
「うああ〜。ええ、ええ〜!やめんといてく〜れゲバゲバァ!」
後ろからいい匂いがする。怒ろうとするタイミングを逃した。
「弥生先生。もうみんな、帰ったようだな」
「医長先生、今日は休みだったのよねー!」
「医者の休みというのは、終わってからそう感じるものだ。ララア、いや先生。トシキの言うとおり、特に<循環器は眠れない>んだよ」
番組がCMに変わり、弥生先生は僕の正面で方膝をついた。
「また、いろいろと教えてください!」
「あ、そうだ。弥生先生!今日の入院のほら!肺線維症の!」
「あ、あれ。結局なんだったんですかー?」
「なぬっ!・・すまんが、テレビ消してくれないか?」
後ろに一瞬、何かの気配を感じたが、目の前のテレビを消してもらった。
弥生先生は予測していたようで、少しシュンとなった。
「弥生先生。呼吸状態が少し悪化したからといって、大量のステロイドを即投与していたが、あれは・・・?」
「あれしかだって、今のところあれしか方法が。えっ?」
「現疾患の、純粋な増悪か?感染の合併だとか他の因子とかまで考えたのか?」
「熱は高くないと思ったし」
「37.8度でか?」
「あ、高いかな」
「家族に説明もしていないだろ?」
「緊急で・・今しとくべきですか?」
「君は研修の身だろ?誰かに相談したのか?」
黙っていた弥生先生は、目をくわっ、と大きく見開いた。女、独特のリアクションだ。
「だって!だって医長先生は診断が分からないし!トシキ先生はいないし!シロー先生も途中で帰るし!」
「人のせいにするなよ。効果が確定もしていない治療を、独断でやっていいのか?」
「先生、なんか怖い・・・」
「教訓にしなよ!」
「だって、だって・・・!」彼女は認めようとしなかった。
「あのな。オレが言いたいのは・・・」
彼女は眉間にしわを寄せたまま、黙ってしまった。
僕らが下っ端の頃は、心の底から反省させられたが・・。今は時代が違うのか。
「あの・・・」後ろからの声。
「はん?」振り向くと・・
「その、途中で帰ったシローです」
シローが私服で戻ってきたようだ。襟が汚れて疲れきっている。
「シロー・・・」
「今日はかなり大変だったようで」
「ああ。で、お前はなにか・・用事だったんだろ?家族の」
しかし、シローの動揺した表情から何かは見て取れた。
「シロー。ホントのこと言えよ」
「・・・・・」
「ホントは、また手伝いに行ってたんだろ?例のクリニック」
「・・・・・」
「で、そこで何か頼まれたのか?」
「医長先生に相談しようと思いまして。さっきこの病院にTELしたら、ちょうどおられるって」
「ああ。いるよ。ここにな」
「クリニックに。松田クリニックに今後は定期的に行かせていただきたくて」
「バカ!あんなヤブ医者、手伝うなってあれほど言っただろ!」
「週に1回ででも!」
「なんでシロー!お前・・・」
なぜこんな素直な青年が、ヤブ医者の援助をするのか・・・まったく分からなかった。
事情が何かあるのだろうが。
「シロー。お前まさか、あの松田の、変な宗教に入ってないだろな?」
「そ、それは大丈夫です!」
「ま、オレは奈良にしばらく飛ばされるし、今後の決定権はトシキのほうに行くから。オレには権限など」
「トシキ先生は、してもいいって」
「そっか。なら・・・すれば?もう三つ子じゃないんだぜ」
僕は疲れ果て、医長室へ向かった。
「ドイツもコイツも・・・・!はあ、だるだる!」
今度は精神的にもダルかった。僕は自分のオーベン動揺、後輩らのことを思っていろいろアドバイスしたり、注意したりしてきたが・・
「拙者。何も、変わらなかったようでござるな・・・!」
今のはどことなく、シンエモンっぽかった。
医長室に入り、郵便はがきなどを確認。
「トシキの奴、明日は来るのかな・・・!」
すると、コンコン、と叩く音。
扉に思いっきり耳を当てた。
「コンコン、何の音?」
すると・・・
『越後の、いなかジジイでございます』
事務長の合言葉だ。
「なんだお前か。入れよ」
内側から開けた。
事務長がニヤニヤしながら入ってきた。
「いやあ、長い出張だったあ」
「ウソっぽいんだよおのれは!そこ座れ!」
イスでなく、床に<お座り>させた。
コメント
私も、循環器内科医のDr. Iと申します。
井関さんの所から来ました。
はじめてきたんですが、全く他人とは思えません。
若い女医の話とか。
中堅の循環器内科医は、みんなこんなもんかと思ってしまいました。
また来ますので、よろしくお願いします