サンダル医長 金曜日 ? 愛しき日々
2006年10月25日 血圧測定に毎日来る、木村オバさんが座った。この人の話は長い・・・。
「ホンマにもう、待たされて待たされてよけい血圧が上がって・・」
「外の測定では・・180/90mmHgですか。これは高いな」
「病院で、病気作ってしまうわい!」
毎回、言われるセリフにはもう慣れた。
「さてと、木村さん。今日こそ採血させてもらいましょうか!」
「やあ、こわい」
「こわいって・・今さら。今日は何も食べてないんでしょう?」
「ええ。先生が食べてくるなって言うてたからねえ」
「コーヒーも飲んでない?」
「なあんも、飲んでないよ!」
「じゃあ、しましょうよ!」
おばさんはしばらく黙り、ハッと表情を変えた。
「どうしました?」
「い、いや・・・さっきな。さっき、外の待合で」
「・・・・・・・」
「アメをもらって」
「まさか・・・」
おばさんは大きな口をあけた。
「ばあ!」
「うわっ・・・!もう舐めてるじゃないかよ!」
「横に座ってる人がねえ・・」
「人のせいにしないでよ。あ、ところで」
「ふん?ああ、そう」
「あのなあ。ところで・・・自分、急きょ、転勤することになりまして」
「えっ?」
バアは目を大きく見開いた。アメが口から落ちた。
「しばらくして、戻ってくることになるとは思いますが」
「ほお・・・」
「引継ぎはきちんとしておきますので」
「ふうん・・・あれあれ」
「血圧が高いから、ちょっと休んでもう1回測定を」
看護士がその患者を廊下まで連れて・・・するといきなり看護士だけ戻ってきた。
「て〜いへんだ!ていへんだ!」
「なにが?お前か?」
「実はなあんにも聞こえてなくて!も一回最初っから説明してくれとオバサンが!」
「なんだよ。聞こえたフリしてたのかよ・・・!もういい。外で説明しといてくれ」
「へいへい!」
看護士は、ドアをめいっぱい開けた。廊下に向かって彼は・・・
「先生はねえ!今日でここをもう辞めはるんですわ!」
「おっおい!声が大きい!」制したが、もう遅かった。
待合のあちこちが、ざわめき始めた。
しかし気になるので、近くから耳を澄ました。聞こえてきた声は・・
「なんや、いきなりやな」
「何考えとんや!」
「何したんやろか?」
「悪い事?」
ちょ、ちょっと待て・・
「医療ミス?」
「殺したん?」
「誰を?」
「刑務所?」
「おおこわ」
ま、待ってマジで!
思わず走り出し、ドアの所に出た。
待合の長いす3列から、多くの人々がこちらに注目している。
看護士は、僕の尻を後ろから叩いた。
「ちゃーんと!せんかーい!」
「いたい!」
「だーれに会いたいのかにやーよいよいよい!」
ドッ!と笑いとどよめきが起こった。
「てて・・・あの。あの、皆さん」
と、尻を押さえながら持ちこたえた。
「いきなりですみません。自分も、急でして」
看護士は僕の後ろに座り込み、あちこち指を置くしぐさをした。
「きゅーきゅー!おきゅ(お灸)ーきゅー!」
「(一同)わっははははは!」
「明日から、実は奈良のほうに」
「(一同)なら?」静まった。
「そこの病院で、その・・・院長代理として」
患者のうち、魚屋っぽいおじさんが立ち上がった。
「ほう・・栄転やないか!」
「い、いや。そういう意味では」
「こりゃすげえ!わしらの主治医の先生が、出世しおったで!すげえすげえ!」
おじさんは直立のまま、拍手をし始めた。
するとまた1人、また1人と立ち上がり・・・
次第に、拍手の嵐となった。
「い、いやそ、そんな。大げさな・・・」
久しぶりの、晴れの舞台。そんな妙な雰囲気だった。
年末時代劇だったら、間違いなくこれで<前編終了>だな。
以下のような解説で。
『きたる西暦2001年の夏。出発前日に見られたその光景を、故○○は、こう記している。病院はその日、あふれんばかりの光で満ち溢れんばかりであった。その光は今も伝説となって、大阪の地を照らし続けており、その輪は環状線の高速道路となって流れ続けている(嘘嘘!)。しかしこのあと、天地をもひっくり返すような、それはもう想像を絶する戦いが待ち受けていようとは、事務長、ドクター一同、全く知る由もなかった今日このごろである・・・以下同文』
光・・・ヒカリか。たしかに<光>が見える。
待合に座っている、じいさんらの頭の光が!
『数えただけで、その数、弐拾六(二十六)!』
もうええ、もうええ!
♪いっとっしっき、ひ〜びいの・・せつ、なさ、は・・・・
き〜え、のっこる〜ゆうめ、せい、しゅんの、
ハゲ・・・。
「ホンマにもう、待たされて待たされてよけい血圧が上がって・・」
「外の測定では・・180/90mmHgですか。これは高いな」
「病院で、病気作ってしまうわい!」
毎回、言われるセリフにはもう慣れた。
「さてと、木村さん。今日こそ採血させてもらいましょうか!」
「やあ、こわい」
「こわいって・・今さら。今日は何も食べてないんでしょう?」
「ええ。先生が食べてくるなって言うてたからねえ」
「コーヒーも飲んでない?」
「なあんも、飲んでないよ!」
「じゃあ、しましょうよ!」
おばさんはしばらく黙り、ハッと表情を変えた。
「どうしました?」
「い、いや・・・さっきな。さっき、外の待合で」
「・・・・・・・」
「アメをもらって」
「まさか・・・」
おばさんは大きな口をあけた。
「ばあ!」
「うわっ・・・!もう舐めてるじゃないかよ!」
「横に座ってる人がねえ・・」
「人のせいにしないでよ。あ、ところで」
「ふん?ああ、そう」
「あのなあ。ところで・・・自分、急きょ、転勤することになりまして」
「えっ?」
バアは目を大きく見開いた。アメが口から落ちた。
「しばらくして、戻ってくることになるとは思いますが」
「ほお・・・」
「引継ぎはきちんとしておきますので」
「ふうん・・・あれあれ」
「血圧が高いから、ちょっと休んでもう1回測定を」
看護士がその患者を廊下まで連れて・・・するといきなり看護士だけ戻ってきた。
「て〜いへんだ!ていへんだ!」
「なにが?お前か?」
「実はなあんにも聞こえてなくて!も一回最初っから説明してくれとオバサンが!」
「なんだよ。聞こえたフリしてたのかよ・・・!もういい。外で説明しといてくれ」
「へいへい!」
看護士は、ドアをめいっぱい開けた。廊下に向かって彼は・・・
「先生はねえ!今日でここをもう辞めはるんですわ!」
「おっおい!声が大きい!」制したが、もう遅かった。
待合のあちこちが、ざわめき始めた。
しかし気になるので、近くから耳を澄ました。聞こえてきた声は・・
「なんや、いきなりやな」
「何考えとんや!」
「何したんやろか?」
「悪い事?」
ちょ、ちょっと待て・・
「医療ミス?」
「殺したん?」
「誰を?」
「刑務所?」
「おおこわ」
ま、待ってマジで!
思わず走り出し、ドアの所に出た。
待合の長いす3列から、多くの人々がこちらに注目している。
看護士は、僕の尻を後ろから叩いた。
「ちゃーんと!せんかーい!」
「いたい!」
「だーれに会いたいのかにやーよいよいよい!」
ドッ!と笑いとどよめきが起こった。
「てて・・・あの。あの、皆さん」
と、尻を押さえながら持ちこたえた。
「いきなりですみません。自分も、急でして」
看護士は僕の後ろに座り込み、あちこち指を置くしぐさをした。
「きゅーきゅー!おきゅ(お灸)ーきゅー!」
「(一同)わっははははは!」
「明日から、実は奈良のほうに」
「(一同)なら?」静まった。
「そこの病院で、その・・・院長代理として」
患者のうち、魚屋っぽいおじさんが立ち上がった。
「ほう・・栄転やないか!」
「い、いや。そういう意味では」
「こりゃすげえ!わしらの主治医の先生が、出世しおったで!すげえすげえ!」
おじさんは直立のまま、拍手をし始めた。
するとまた1人、また1人と立ち上がり・・・
次第に、拍手の嵐となった。
「い、いやそ、そんな。大げさな・・・」
久しぶりの、晴れの舞台。そんな妙な雰囲気だった。
年末時代劇だったら、間違いなくこれで<前編終了>だな。
以下のような解説で。
『きたる西暦2001年の夏。出発前日に見られたその光景を、故○○は、こう記している。病院はその日、あふれんばかりの光で満ち溢れんばかりであった。その光は今も伝説となって、大阪の地を照らし続けており、その輪は環状線の高速道路となって流れ続けている(嘘嘘!)。しかしこのあと、天地をもひっくり返すような、それはもう想像を絶する戦いが待ち受けていようとは、事務長、ドクター一同、全く知る由もなかった今日このごろである・・・以下同文』
光・・・ヒカリか。たしかに<光>が見える。
待合に座っている、じいさんらの頭の光が!
『数えただけで、その数、弐拾六(二十六)!』
もうええ、もうええ!
♪いっとっしっき、ひ〜びいの・・せつ、なさ、は・・・・
き〜え、のっこる〜ゆうめ、せい、しゅんの、
ハゲ・・・。
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