サンダル医長 金曜日 ? パンドラの黒箱
2006年11月1日昼はMRによる薬の説明会だったが、会議室での僕はひたすらパソコンを打ち続けていた。
「来てるかな、来てるかな・・・?はてはてうう〜?」
メールが3件届いていた。うち1件だけがマトモなやつ。
数少ない心を許せる後輩、以前のもとコベンに依頼していた内容・・に対する返事だ。女医だがかなり太っており、その時点で僕の対象からは除外されていた。
『 ユウキ先生御侍史
お久しぶりです。私の友人に聞いた話では・・・先生の行かれる病院は歴史的に非常に古い病院で、以前ははやったそうなんですが今は風前のともし火です。 』
・・・いきなり失望させる話だな。
『 そちらの事務長さんが知り合いを通じて引き継ぐことになったらしく、以前そちらの病院を裏切りました病院と競合させるとの噂です』
それは、ま、知ってる。事務長も、いくらそこまでせんでも・・・。
『 町長としては、大きな病院を1つに絞りたいらしく、数ヶ月の売り上げなどでどちらかの存続を決めるとのこと 』
しょせんは、売り上げか・・・。
『 当大学からは、先生のもとお友達である助手のハカセ先生が院長として、またOBの宮川先生、その他大勢が支援に行かれてます・・・ 』
こりゃ、負けだな・・・。
『 ご指摘の通り、弥生先生はうちの大学のかなり古いOBでして、医師歴としては20年ほどのベテランです。開業に備えての準備期間中でしたが、院生の頭数欲しさで教授から頼まれ、大学に戻った形です。論文はもちろんハカセ先生が 』
弥生先生、やっぱりな。これで納得だ。しかし相変わらず、大学医局は腐ってるんだな・・・。
『 以上です。頑張ってください。 チュッ ミタライより 』
げええ・・・!なにが「チュッ」だスカタン!弁当、食う気なくした・・・!
いきなり跳ね上がりそうになった。
誰かがわき腹を指でツンツンしたからだ。
「ザビタン、へいへい・・」横で看護士が小さくささやいた。
「うわっ・・・?なんでお前がここに?」
「余りの弁当取りに来た。へいへい!」横で中腰になったまま、3つほど抱えている。
「スレッガーさん・・セコイ。セコイや!チョコレート!」
MRは、長々と説明を続けている。が、皆疲れきっていて聞くどころではない。
腹を満たしたら、今度は眠くなる。
PHSが鳴る。
「はいな?」
『スーハー、の喘息患者さん。点滴終わりまして。<今日はこれぐらいで許してやる>とのことです』
「あっそ・・・はいはい」
「なにか、質問などは・・・?」新人っぽいMRは、ギョロ目で獲物を探した。
「(一同)・・・・・・・・・・」
「医長先生!」
「当てるのか?いや、俺は別に・・・」
「どうか、ご採用を!」
「はいはいわかった!じゃ、お開きでな!」
「ヤッチイ!」MRはガッツポーズした。
みなガラガラと会議室を引き上げ、僕1人が残・・いや、宅急便の業者が来ていた。
「先生・・・さっきわし、間違えて医局の机、片付けてしもて」
「どの?」
医局へ。
「おじさん。そこの古い机の荷物は、ぜんぶ医長室に移したんだよ?あるはずが・・」
おじさんが指差したのは僕の古い机だった。と思ったら反対側の机だった。
「おじさん、そこヤバイよ。トシキってヤツの机だよ?」
「あらら!」
「さわらぬトシキにたたりなしって言うだろ?」
おじさんは、秘書さんが指差した机を間違えて、トシキの机の荷物をすべてダンボールに入れていた。
「じゃ、戻さないとな。悪かったなあ」おじさんは箱を開けて、物品を1つずつ適当にしまいだした。
みな、興味本位に集まってきた。アダルトDVDのほかに何か出てこないか、と勘ぐって。
「セロテープ、書類、ファイル・・」おじさんは1個ずつ整然と片付けた。怪しいものは何も出てこない。
「あ。おじさん。それ?」
この前トシキにみんなで<包装>して渡したDVDだった。
「へへへ、アダルトやなあ先生」
「うわっ?それは!まだここに?」
「お医者さんも、こんなん見るんやなあ。へへへ」
「ちょっ!貸して!これはオレのじゃなくて!」パシッと奪い取った。
「うちの息子もなあ、先生。友達と貸し借りしてんねん」
「時代が変わったもんねえ・・」
「わしらの頃は、カセットの音声でいきよったもんなあ。今はもう!刺激が強すぎて!」
「僕の時代は・・・」そこまで古くはなかった。
思わずパカッ、と初めて開けてみた。
「はれ・・・?」
そのディスクは・・・そこらに売ってるコピー用(無地)の地味なものだった。
「なんだあ?フツーのディスクじゃないか?」
何かデータでも入ってるのか。それともアダルトのコピーか・・・。
宅急便は荷物をガラガラ台車で運んでいった。
医局のパソコンを開く。みな集まってきた。
「ちち!ちがうちがう!オレは別にアダルトが見たいとか、そんなんじゃなくって!」
ディスクを挿入し、待つこと10秒。
一瞬エクセルが開いたが、パスワード画面にすぐ切り替わった。
「パスワード?そんなの分かるわけ・・」
みな興味をなくし、散らばっていく。
試しに、パッケージの表紙、裏・・・
「ここか!間抜けなヤツめ!」
裏に書いてあった。これが本当の裏ビ○オだアイアムサム!
パスワード番号を入れると、そこには数字の羅列がずらっと並んだ。方眼紙の網目にぎっしり、という具合に。
縦軸の項目を1つずつ読んでいくと・・・。
「トシキ、ユウキ、シロー、ザッキー・・・売上表かこれ!第一位は・・・トシキか。ダントツだな」
こういう表はどこの事務でも作ってる。珍しくもなんともない。
「で、このリストは・・・病院名がずらっと?」
病院名のリスト。横に病床数など。さらにその横に日付、ABCなどの記号・・・。
これはおそらく・・・まさかとは思っていたが、うちの病院。ひょっとして。
あとでゆっくり見ようと思い、パソコンを終了した。ディスクをポケットにしまい、そこらにあるカラっぽいディスクを代わりに入れた。
「で、ケースは引き出しに戻して、と・・・」
まるで国防総省にアクセスした、小学生の気分だった。
「さて、病棟のみんなに別れを告げるか!」
廊下へまたズドーン、と自分を射出した。
「来てるかな、来てるかな・・・?はてはてうう〜?」
メールが3件届いていた。うち1件だけがマトモなやつ。
数少ない心を許せる後輩、以前のもとコベンに依頼していた内容・・に対する返事だ。女医だがかなり太っており、その時点で僕の対象からは除外されていた。
『 ユウキ先生御侍史
お久しぶりです。私の友人に聞いた話では・・・先生の行かれる病院は歴史的に非常に古い病院で、以前ははやったそうなんですが今は風前のともし火です。 』
・・・いきなり失望させる話だな。
『 そちらの事務長さんが知り合いを通じて引き継ぐことになったらしく、以前そちらの病院を裏切りました病院と競合させるとの噂です』
それは、ま、知ってる。事務長も、いくらそこまでせんでも・・・。
『 町長としては、大きな病院を1つに絞りたいらしく、数ヶ月の売り上げなどでどちらかの存続を決めるとのこと 』
しょせんは、売り上げか・・・。
『 当大学からは、先生のもとお友達である助手のハカセ先生が院長として、またOBの宮川先生、その他大勢が支援に行かれてます・・・ 』
こりゃ、負けだな・・・。
『 ご指摘の通り、弥生先生はうちの大学のかなり古いOBでして、医師歴としては20年ほどのベテランです。開業に備えての準備期間中でしたが、院生の頭数欲しさで教授から頼まれ、大学に戻った形です。論文はもちろんハカセ先生が 』
弥生先生、やっぱりな。これで納得だ。しかし相変わらず、大学医局は腐ってるんだな・・・。
『 以上です。頑張ってください。 チュッ ミタライより 』
げええ・・・!なにが「チュッ」だスカタン!弁当、食う気なくした・・・!
いきなり跳ね上がりそうになった。
誰かがわき腹を指でツンツンしたからだ。
「ザビタン、へいへい・・」横で看護士が小さくささやいた。
「うわっ・・・?なんでお前がここに?」
「余りの弁当取りに来た。へいへい!」横で中腰になったまま、3つほど抱えている。
「スレッガーさん・・セコイ。セコイや!チョコレート!」
MRは、長々と説明を続けている。が、皆疲れきっていて聞くどころではない。
腹を満たしたら、今度は眠くなる。
PHSが鳴る。
「はいな?」
『スーハー、の喘息患者さん。点滴終わりまして。<今日はこれぐらいで許してやる>とのことです』
「あっそ・・・はいはい」
「なにか、質問などは・・・?」新人っぽいMRは、ギョロ目で獲物を探した。
「(一同)・・・・・・・・・・」
「医長先生!」
「当てるのか?いや、俺は別に・・・」
「どうか、ご採用を!」
「はいはいわかった!じゃ、お開きでな!」
「ヤッチイ!」MRはガッツポーズした。
みなガラガラと会議室を引き上げ、僕1人が残・・いや、宅急便の業者が来ていた。
「先生・・・さっきわし、間違えて医局の机、片付けてしもて」
「どの?」
医局へ。
「おじさん。そこの古い机の荷物は、ぜんぶ医長室に移したんだよ?あるはずが・・」
おじさんが指差したのは僕の古い机だった。と思ったら反対側の机だった。
「おじさん、そこヤバイよ。トシキってヤツの机だよ?」
「あらら!」
「さわらぬトシキにたたりなしって言うだろ?」
おじさんは、秘書さんが指差した机を間違えて、トシキの机の荷物をすべてダンボールに入れていた。
「じゃ、戻さないとな。悪かったなあ」おじさんは箱を開けて、物品を1つずつ適当にしまいだした。
みな、興味本位に集まってきた。アダルトDVDのほかに何か出てこないか、と勘ぐって。
「セロテープ、書類、ファイル・・」おじさんは1個ずつ整然と片付けた。怪しいものは何も出てこない。
「あ。おじさん。それ?」
この前トシキにみんなで<包装>して渡したDVDだった。
「へへへ、アダルトやなあ先生」
「うわっ?それは!まだここに?」
「お医者さんも、こんなん見るんやなあ。へへへ」
「ちょっ!貸して!これはオレのじゃなくて!」パシッと奪い取った。
「うちの息子もなあ、先生。友達と貸し借りしてんねん」
「時代が変わったもんねえ・・」
「わしらの頃は、カセットの音声でいきよったもんなあ。今はもう!刺激が強すぎて!」
「僕の時代は・・・」そこまで古くはなかった。
思わずパカッ、と初めて開けてみた。
「はれ・・・?」
そのディスクは・・・そこらに売ってるコピー用(無地)の地味なものだった。
「なんだあ?フツーのディスクじゃないか?」
何かデータでも入ってるのか。それともアダルトのコピーか・・・。
宅急便は荷物をガラガラ台車で運んでいった。
医局のパソコンを開く。みな集まってきた。
「ちち!ちがうちがう!オレは別にアダルトが見たいとか、そんなんじゃなくって!」
ディスクを挿入し、待つこと10秒。
一瞬エクセルが開いたが、パスワード画面にすぐ切り替わった。
「パスワード?そんなの分かるわけ・・」
みな興味をなくし、散らばっていく。
試しに、パッケージの表紙、裏・・・
「ここか!間抜けなヤツめ!」
裏に書いてあった。これが本当の裏ビ○オだアイアムサム!
パスワード番号を入れると、そこには数字の羅列がずらっと並んだ。方眼紙の網目にぎっしり、という具合に。
縦軸の項目を1つずつ読んでいくと・・・。
「トシキ、ユウキ、シロー、ザッキー・・・売上表かこれ!第一位は・・・トシキか。ダントツだな」
こういう表はどこの事務でも作ってる。珍しくもなんともない。
「で、このリストは・・・病院名がずらっと?」
病院名のリスト。横に病床数など。さらにその横に日付、ABCなどの記号・・・。
これはおそらく・・・まさかとは思っていたが、うちの病院。ひょっとして。
あとでゆっくり見ようと思い、パソコンを終了した。ディスクをポケットにしまい、そこらにあるカラっぽいディスクを代わりに入れた。
「で、ケースは引き出しに戻して、と・・・」
まるで国防総省にアクセスした、小学生の気分だった。
「さて、病棟のみんなに別れを告げるか!」
廊下へまたズドーン、と自分を射出した。
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