サンダル医長 金曜日 ? かばうもの 奪うもの (ER的タイトル)
2006年11月8日病棟患者への別れのあいさつを終えて、医局へ戻る。3時半、今日は早退して掃除など家のことをしときたい。
医局に入ると、仕事を一段終えた連中がソファと周囲にたむろっていた。
「ははは・・・なあ!」大笑いの真吾がこちらに振り向いた。
「なあ、ってなんだよオイ!」
「頑張ってくれよ!院長代理!」
僕は白衣を脱ぎ、名札やワッペンを1つずつはがした。
「明日は、誰も見送らなくていいから」
「いやいやいや!」麻酔科医のピートが横の机にいる。
「?」
「手厚く、送らせてもらいまっせえ!」
「出発は、明日土曜日の昼前、病院前駐車場だ」
「集会のあとだぜ!」
「集会の前、いつもの軍法会議か・・・」
明日は診療はいっさいせず、昼前の軍法会議からゆっくり参加。
すると、いきなり両肩を揉まれた。
「うっ?」
「あははっ!どうしよ先生!」や、弥生先生・・・。これまた大きなマスクをしている。
「ど、どうしよ、って何ですの・・・」
「みんながね〜先生。あたし達が夜を共にしたっていじめるんです〜!」
楽しそうに言いおって・・・。
真吾がまだニヤニヤしている。
「いやぁ〜。君らがそんな仲だとは!」
「違うってのに」
「またまた〜!照れおってからに〜!」
「弥生先生。ちょっと外してくれるか?」
弥生先生はちょっと驚いた様子で遠ざかった。
「あ、あたしが・・何かしたんでしょうか・・・」
「いや何も。こいつらに、ちょっと言いたいことがある」
日本女性はしぶしぶ廊下へ出て行った。
トシキ以外の医者7ー8人が立ったまま。
「オレ、今日ようやく知ったよ」
「は?」真吾は眉をしかめた。
「お前らの態度、変だったんだよそういや。なんか、オレと彼女をこう、くっつけようとしたり」
「そ、それはなあオイ、恋のキューピットは多いほうが」
「調べてビックリだ。オレよりヘタしたら2まわり年上だ!」
「うん。だろな」
「お前らは知ってたみたいだからいいけどな!」
しかし、真吾は反撃に出た。
「医長先生。それだけの理由か?」
「はい?」
「年の差がなんで?それで愛がなくなるか?」
「お、おい。オレは愛とかそんな・・」
「オレの嫁はな、オレから惚れた。そのときオレ26で嫁がOLで24。自称!」
「何の話かと思ったら。で、実際は違ったのか?」
「ピンポーン!オレより2つ上だったんだよ!」
「ちょっと待て。話をすり替え・・」
「オレたちから見ればな。医長先生。医長先生はなんかその、最近こう、不安定だったんだよ。なぜか」
みな、うなずいている。
「何がきっかけかは分からん。情緒不安定のような気がするんだな」
「おかしかったか?俺が?」
「まあまあ聞けようさぎさん。人に叱るときも、すごく怖いって評判なんだよ」
「間違ったと思ってそれを怒るのは、正常な反応じゃないか?」
「お!れ!が!い!ま!しゃ!べ!っ!て!る!」
「はいよはいよ。で?」
「確かに医長先生の判断は迅速、正確。患者に有益。それでいい」
「・・・・・」
「でもな。何かを亡くしてるんだよな。んーそうだ!心が!」
「こころ?」
「安らぐものを持っていないんじゃないかって!そういう意見が出てな!」
なんて非常識なことを言うヤツだ。と思いながらも、実は痛いところを突かれた。
「そうか。それで、彼女をオレにくっつけようとしたのか・・・」
「いやいや。小細工は何もしていない。君らならうまくいくだろうって、弥生先生に」
「吹き込んだのか。やっぱダメだろ。そんなことしたら!」
声が大きすぎて、廊下に洩れてる可能性を心配した。
ピートは机の上を片付けながら、呟いた。
「医長はここに来るまで、散々な目に遭っただろ・・・?」
「そうだけど。そんなヤラセの出会いは求めてない」
「年の差か?少し年配の澪ナースも、同じ理由か?」
「わけがわからん・・・」
噂が何やら一人歩きしている。尾びれに背びれ、モビルスーツ。
確かにそれ(年の壁)さえなかったら、僕が弥生先生と加速していた可能性があったのだと、彼は言いたいのだろう。
「ピート。違うんだって。それ以上突付くなよ」
「みんな、心配してんだぜ」
「とにかく。こういうくっつけ方は許さない」
「そっか・・・」
「オレはそんなんじゃなくて・・・もういい。お前ら、友達とちゃう」
真吾は指をくわえ、辺りはシーンとしてしまった。シローが何か喋ろうとしたが声が出ない。
荷物をまとめ、医長室へ移った。
医長室に入ると、ダンボール類はすべて引き払われていた。
机と本棚のみ。
そこの内線で、事務へ電話。
「もしもし?事務長?」
『ああ!今日はどうもお疲れ様でしたー!』
「も、帰るから!明日は11時くらいに来る!院内PHSは置いておく!」
『先生!今日の晩は病院裏で、バーベキューですから!送別の!』
「勝手にやっとけ!」
PHSの電源を切り、机の上に放った。
窓からその託児所庭を見ると・・・。
すでに準備が進められていた。50坪ほどにの庭に、ところどころ飯ごうの準備がされている。
病院から炭らしきものを運ぶリヤカーが2台ほど往復。
「オレのためにしてくれてんのか・・・困ったな」
行かないというわけにも、いかんな・・・。
「ザビタン、へいへい」
「うわっ!」振り返ると、例のマゾ看護士だった。ムキムキポーズをとって深吸気。
「ねえねえねえ!エロビデないエロビデ!」
「エロビデ・・・?ああ、トシキのDVDか?」
「コピーしてえコピーしてえ!」
「あれは、もうトシキに返したんだよ。ここだけの話、中身はエロじゃなかったよ」
というか、あとでデータを見るために僕が<預かってる>んだが・・・。
箱の中に入ってるのは、医局に適当にあったディスクだ。
「するとすると?トシキングの引き出し?」
「やめとけよ!」
「取ってきてよ〜先生!ねえ先生!」
「あのな。中身はエロじゃないんだよ。詳しくは言えないけど!あきらめろ!」
「取ってきて〜!取ってキテー!キテー!」
「うわっ?」
看護士は狂ったように、机をガタンガタン揺らし始めた。
「トッテキタッタトッテキタッタ!」
「うわわ!どうしたんだ?」
僕は、つい自分のカバンを一瞥した。
「ヒ?」
「ん?」
彼は・・・僕の持っているカバンに目がいった。
「ミセロ〜ミセロ〜」
「な?これか?」確かにこの中にディスクは入れていた。
「ミセロミセロ!」彼は突進してきた。
「うわっ!」
「キイッキイッ!」
彼と僕は、カバンの取り合いになった。
「あ、あんたら!大人気ない!よしいよ!」
掃除のおばちゃんが、止めに来た。
看護士はその強腕で引き戻され、両腕を後ろから抱えられた。
「フー!ハー!フー!ハー!」
この男・・・!やはり普通じゃない。それか何か企んでるのか。
そこまで彼を駆り立てるものとは・・・?
『信念だよ。先生・・・』
いつかの<北野>の言葉が浮かんだ。
医局に入ると、仕事を一段終えた連中がソファと周囲にたむろっていた。
「ははは・・・なあ!」大笑いの真吾がこちらに振り向いた。
「なあ、ってなんだよオイ!」
「頑張ってくれよ!院長代理!」
僕は白衣を脱ぎ、名札やワッペンを1つずつはがした。
「明日は、誰も見送らなくていいから」
「いやいやいや!」麻酔科医のピートが横の机にいる。
「?」
「手厚く、送らせてもらいまっせえ!」
「出発は、明日土曜日の昼前、病院前駐車場だ」
「集会のあとだぜ!」
「集会の前、いつもの軍法会議か・・・」
明日は診療はいっさいせず、昼前の軍法会議からゆっくり参加。
すると、いきなり両肩を揉まれた。
「うっ?」
「あははっ!どうしよ先生!」や、弥生先生・・・。これまた大きなマスクをしている。
「ど、どうしよ、って何ですの・・・」
「みんながね〜先生。あたし達が夜を共にしたっていじめるんです〜!」
楽しそうに言いおって・・・。
真吾がまだニヤニヤしている。
「いやぁ〜。君らがそんな仲だとは!」
「違うってのに」
「またまた〜!照れおってからに〜!」
「弥生先生。ちょっと外してくれるか?」
弥生先生はちょっと驚いた様子で遠ざかった。
「あ、あたしが・・何かしたんでしょうか・・・」
「いや何も。こいつらに、ちょっと言いたいことがある」
日本女性はしぶしぶ廊下へ出て行った。
トシキ以外の医者7ー8人が立ったまま。
「オレ、今日ようやく知ったよ」
「は?」真吾は眉をしかめた。
「お前らの態度、変だったんだよそういや。なんか、オレと彼女をこう、くっつけようとしたり」
「そ、それはなあオイ、恋のキューピットは多いほうが」
「調べてビックリだ。オレよりヘタしたら2まわり年上だ!」
「うん。だろな」
「お前らは知ってたみたいだからいいけどな!」
しかし、真吾は反撃に出た。
「医長先生。それだけの理由か?」
「はい?」
「年の差がなんで?それで愛がなくなるか?」
「お、おい。オレは愛とかそんな・・」
「オレの嫁はな、オレから惚れた。そのときオレ26で嫁がOLで24。自称!」
「何の話かと思ったら。で、実際は違ったのか?」
「ピンポーン!オレより2つ上だったんだよ!」
「ちょっと待て。話をすり替え・・」
「オレたちから見ればな。医長先生。医長先生はなんかその、最近こう、不安定だったんだよ。なぜか」
みな、うなずいている。
「何がきっかけかは分からん。情緒不安定のような気がするんだな」
「おかしかったか?俺が?」
「まあまあ聞けようさぎさん。人に叱るときも、すごく怖いって評判なんだよ」
「間違ったと思ってそれを怒るのは、正常な反応じゃないか?」
「お!れ!が!い!ま!しゃ!べ!っ!て!る!」
「はいよはいよ。で?」
「確かに医長先生の判断は迅速、正確。患者に有益。それでいい」
「・・・・・」
「でもな。何かを亡くしてるんだよな。んーそうだ!心が!」
「こころ?」
「安らぐものを持っていないんじゃないかって!そういう意見が出てな!」
なんて非常識なことを言うヤツだ。と思いながらも、実は痛いところを突かれた。
「そうか。それで、彼女をオレにくっつけようとしたのか・・・」
「いやいや。小細工は何もしていない。君らならうまくいくだろうって、弥生先生に」
「吹き込んだのか。やっぱダメだろ。そんなことしたら!」
声が大きすぎて、廊下に洩れてる可能性を心配した。
ピートは机の上を片付けながら、呟いた。
「医長はここに来るまで、散々な目に遭っただろ・・・?」
「そうだけど。そんなヤラセの出会いは求めてない」
「年の差か?少し年配の澪ナースも、同じ理由か?」
「わけがわからん・・・」
噂が何やら一人歩きしている。尾びれに背びれ、モビルスーツ。
確かにそれ(年の壁)さえなかったら、僕が弥生先生と加速していた可能性があったのだと、彼は言いたいのだろう。
「ピート。違うんだって。それ以上突付くなよ」
「みんな、心配してんだぜ」
「とにかく。こういうくっつけ方は許さない」
「そっか・・・」
「オレはそんなんじゃなくて・・・もういい。お前ら、友達とちゃう」
真吾は指をくわえ、辺りはシーンとしてしまった。シローが何か喋ろうとしたが声が出ない。
荷物をまとめ、医長室へ移った。
医長室に入ると、ダンボール類はすべて引き払われていた。
机と本棚のみ。
そこの内線で、事務へ電話。
「もしもし?事務長?」
『ああ!今日はどうもお疲れ様でしたー!』
「も、帰るから!明日は11時くらいに来る!院内PHSは置いておく!」
『先生!今日の晩は病院裏で、バーベキューですから!送別の!』
「勝手にやっとけ!」
PHSの電源を切り、机の上に放った。
窓からその託児所庭を見ると・・・。
すでに準備が進められていた。50坪ほどにの庭に、ところどころ飯ごうの準備がされている。
病院から炭らしきものを運ぶリヤカーが2台ほど往復。
「オレのためにしてくれてんのか・・・困ったな」
行かないというわけにも、いかんな・・・。
「ザビタン、へいへい」
「うわっ!」振り返ると、例のマゾ看護士だった。ムキムキポーズをとって深吸気。
「ねえねえねえ!エロビデないエロビデ!」
「エロビデ・・・?ああ、トシキのDVDか?」
「コピーしてえコピーしてえ!」
「あれは、もうトシキに返したんだよ。ここだけの話、中身はエロじゃなかったよ」
というか、あとでデータを見るために僕が<預かってる>んだが・・・。
箱の中に入ってるのは、医局に適当にあったディスクだ。
「するとすると?トシキングの引き出し?」
「やめとけよ!」
「取ってきてよ〜先生!ねえ先生!」
「あのな。中身はエロじゃないんだよ。詳しくは言えないけど!あきらめろ!」
「取ってきて〜!取ってキテー!キテー!」
「うわっ?」
看護士は狂ったように、机をガタンガタン揺らし始めた。
「トッテキタッタトッテキタッタ!」
「うわわ!どうしたんだ?」
僕は、つい自分のカバンを一瞥した。
「ヒ?」
「ん?」
彼は・・・僕の持っているカバンに目がいった。
「ミセロ〜ミセロ〜」
「な?これか?」確かにこの中にディスクは入れていた。
「ミセロミセロ!」彼は突進してきた。
「うわっ!」
「キイッキイッ!」
彼と僕は、カバンの取り合いになった。
「あ、あんたら!大人気ない!よしいよ!」
掃除のおばちゃんが、止めに来た。
看護士はその強腕で引き戻され、両腕を後ろから抱えられた。
「フー!ハー!フー!ハー!」
この男・・・!やはり普通じゃない。それか何か企んでるのか。
そこまで彼を駆り立てるものとは・・・?
『信念だよ。先生・・・』
いつかの<北野>の言葉が浮かんだ。
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