サンダル医長 金曜日 ? サヨナラ模様
2006年11月11日 JRに乗り、駅で乗り換え、はたまた駅に降りる。譲ろう精神だと、大阪の環状線で座ることはまずできない(朝・夕方)。
「ひえっくしょい!」駅前でポケットティッシュを受け取り、さらに2回診。
そのまま病院へ歩くこと15分ほど。
病院前、タヌキの置物が倒れているので立て直し・・・これはいつものことだ。
タヌキの顔の頬に<バカ>と書かれている。これは最近のことだ。病院だから、恨まれるのもなくはない。
だだっ広い駐車場を、救急車専用レーンに沿って歩く。
「う?」
病院玄関前に救急車が停まっている。習慣で、入り口の隙間を覗く。中の救急室は空っぽで、処置の跡がある。
「てことは、入院前検査でみな病棟へ引き上げか・・・救急隊は控え室、と見た」
ともあれ、例の救急車ラッシュではなさそうだ。
救急隊控え室は、離れたプレハブにある。そこの電気がついていて人影がいくつかあれば、彼らだ。
搬送した患者がひょっとしたら他院へ搬送される場合など、一時的な待機所として利用される。
プレハブの中には豪華なソファー、テレビに何でも置いてある冷蔵庫。
事務当直がここで女を連れ込んだことがあり、そのオッサンはクビになった。
病院の横をすり抜け、裏へ。病院の裏に回るのは死亡退院の患者さんのお見送りのときがほとんど。
今回は、壮行会?と称してのバーベキューが託児所運動所で行われている。
僕のためとなってるが、実際はただの暴飲暴食会だ。
暗闇に目が慣れ、運動場に入る。いさり火があちこちに見える。テントもちらほら。
ほぼ等間隔に木造テーブルがあり、その周囲をスタッフが大勢で囲っている。
ほら、ヨドバシカメラの下にあるような・・・
「あ、来た来た!」手前、座っているのはヘルパーの軍団だった。ふだん地味な格好に見える彼らは、きらびやかな(←アイアム寒!)私服に彩られ、若さを欲しいままにし私の眼を遊ばせるには十分だった、と思わず赤川次郎の世界とはどういうことだ?
「主役主役!」
ジョッキを交わす、ギャル(寒)たち。ふだん見たことのない笑顔ばかりだ。
当院では・・ま、民間では多いのだが・・彼らはナースの仕事をサポートする役目で目立たぬ用(食事・入浴の介助、シーツ交換や便などの処理まで)をこなしてくれる。その量はあまりにも多く、力仕事がほとんどだ。ナースらといくら仲良くても仕事上の立場は一線引かれており、ナース側の命令に忠実であることを求められる。
僕はさっそく1発、いや1杯注がれた。
「おいおいおい!もうええって!」ビールがジョッキをあふれた。
「いけえいけえ!」
こんな可愛い子が?という子が横ではやし立てる。
「うん、まあ。ええけどな。こういう子やったら・・」とは言えず、そのまま飲む。
「(一同)おおおおお!」
ふと目を移すと、横のテーブルは静まり返っている。ヘルパーの高齢グループだ。
「おうおう、ようやるわ。あれあれ」
傍観する形で、彼らは観察していた。
「飲まない?」僕はビールびんを持っていった。すると、屈強そうなオバハンがパシッ、と一瞬で奪った。
「若いんやから!アンタは!」
「えっ?オレは今さっき」
「のまないかん!のまないかん!」険しい顔で、ビールが注がれる。
「オレとしてはゆっくり・・・」
「両親と、連絡は取っとるのか!」
「い、いやぜんぜん・・」
「ちゃんと取らんと!いかん!」
僕はまた1杯、飲み干した。しかしすぐに次が注がれていく。
頭が多少、ふらふらしてきた。
「さて、次のテーブルに」
「逃げたらいかん!逃げたらいかん!」
「は、離してくれ。ところで肉のほうは・・・」
「肉?とっくにないわい。わしらのは!」
「もうない?」
「いやいや、ホントは余ってるんだよ!」他のヘルパーが呟いた。
「?」
「ナースの人らのテーブル。あの人らは、団結して食いもせん量をとる!」
「もらったら・・」
「(一同)そんなん、くれへんくれへん!」
僕は靴のヒモをしめなおした。
「じゃ、ちょっと交渉してくる!」
と言いつつ、奥のテーブルへ。
どうやら、若手ナースのテーブルだ。ここもはじけている。
「(一同)イエイ!イエーイ!」
私服ではあるがよく見る顔であり、どこかアンバランスである。
救急室で動揺していたあの子、朝の申し送りで化粧が落ちていたあの子・・・。
中心的で大もての美野ナースが、ジーンズでふらふら酔っ払っている。
彼女はそのままこちらへよろめいた。
「ゆ〜き〜!こらあ〜!おまえ〜!こら!まて!」泥酔している。
「な、なにか?」
「おまえ〜!かのじょにあやまれ〜!こなくそが〜!」
「肉、余ってないか?ハラへって・・」
「おんなの、てきじゃ〜!」
「だいいち、彼女のいない私に対してそんな・・・」
近くの若手が2人、楽しそうに喋っている。
「お、そこ座らしてくれ!」
「(2人)どうぞ!」中に、割って入る。
「両手にハナ状態だな!わっはは!1ドルで楽しむべ!」
「先生、お元気で!」そのうち1人が笑う。
「なんだよ。ちょっとは悲しそうにしろよ!」
「あたしたちは、トシキ先生のファンだしー!」
「だるう。なんであんなヤツがもてるのか・・・つまらんぜ、アイツ」
「えっえっ・・・」もう1人が泣いている。
「ど、どした・・・」
「だってだって。もう2日も来てないし。来てないし」
「ハン!エロビデオぐらいでショック受けやがって!おかげでこっちは仕事が増えて!」
「もうユウキ先生がいけないんですよ!」涙にまみれ、そのナースは怒り出した。
するとさきほどの美野ナースが腕を引っ張った。
「ちょっと!澪センパイのとこ、来い!」
「わったた!怒るなミチルみたいに!オレがいったい何をした?」
濡れた土の上を引きずられ、中堅ナースのテーブルに連れて行かれた。もう1人のナースが加わり、頭と脚を持って抱きかかえられる形になる。
「♪だっから、ねっえねっえねっえねっえ、だ〜いてよ〜アイアム寒!」
飲み会では、あなたの叫びは誰にも届かない。
「ひえっくしょい!」駅前でポケットティッシュを受け取り、さらに2回診。
そのまま病院へ歩くこと15分ほど。
病院前、タヌキの置物が倒れているので立て直し・・・これはいつものことだ。
タヌキの顔の頬に<バカ>と書かれている。これは最近のことだ。病院だから、恨まれるのもなくはない。
だだっ広い駐車場を、救急車専用レーンに沿って歩く。
「う?」
病院玄関前に救急車が停まっている。習慣で、入り口の隙間を覗く。中の救急室は空っぽで、処置の跡がある。
「てことは、入院前検査でみな病棟へ引き上げか・・・救急隊は控え室、と見た」
ともあれ、例の救急車ラッシュではなさそうだ。
救急隊控え室は、離れたプレハブにある。そこの電気がついていて人影がいくつかあれば、彼らだ。
搬送した患者がひょっとしたら他院へ搬送される場合など、一時的な待機所として利用される。
プレハブの中には豪華なソファー、テレビに何でも置いてある冷蔵庫。
事務当直がここで女を連れ込んだことがあり、そのオッサンはクビになった。
病院の横をすり抜け、裏へ。病院の裏に回るのは死亡退院の患者さんのお見送りのときがほとんど。
今回は、壮行会?と称してのバーベキューが託児所運動所で行われている。
僕のためとなってるが、実際はただの暴飲暴食会だ。
暗闇に目が慣れ、運動場に入る。いさり火があちこちに見える。テントもちらほら。
ほぼ等間隔に木造テーブルがあり、その周囲をスタッフが大勢で囲っている。
ほら、ヨドバシカメラの下にあるような・・・
「あ、来た来た!」手前、座っているのはヘルパーの軍団だった。ふだん地味な格好に見える彼らは、きらびやかな(←アイアム寒!)私服に彩られ、若さを欲しいままにし私の眼を遊ばせるには十分だった、と思わず赤川次郎の世界とはどういうことだ?
「主役主役!」
ジョッキを交わす、ギャル(寒)たち。ふだん見たことのない笑顔ばかりだ。
当院では・・ま、民間では多いのだが・・彼らはナースの仕事をサポートする役目で目立たぬ用(食事・入浴の介助、シーツ交換や便などの処理まで)をこなしてくれる。その量はあまりにも多く、力仕事がほとんどだ。ナースらといくら仲良くても仕事上の立場は一線引かれており、ナース側の命令に忠実であることを求められる。
僕はさっそく1発、いや1杯注がれた。
「おいおいおい!もうええって!」ビールがジョッキをあふれた。
「いけえいけえ!」
こんな可愛い子が?という子が横ではやし立てる。
「うん、まあ。ええけどな。こういう子やったら・・」とは言えず、そのまま飲む。
「(一同)おおおおお!」
ふと目を移すと、横のテーブルは静まり返っている。ヘルパーの高齢グループだ。
「おうおう、ようやるわ。あれあれ」
傍観する形で、彼らは観察していた。
「飲まない?」僕はビールびんを持っていった。すると、屈強そうなオバハンがパシッ、と一瞬で奪った。
「若いんやから!アンタは!」
「えっ?オレは今さっき」
「のまないかん!のまないかん!」険しい顔で、ビールが注がれる。
「オレとしてはゆっくり・・・」
「両親と、連絡は取っとるのか!」
「い、いやぜんぜん・・」
「ちゃんと取らんと!いかん!」
僕はまた1杯、飲み干した。しかしすぐに次が注がれていく。
頭が多少、ふらふらしてきた。
「さて、次のテーブルに」
「逃げたらいかん!逃げたらいかん!」
「は、離してくれ。ところで肉のほうは・・・」
「肉?とっくにないわい。わしらのは!」
「もうない?」
「いやいや、ホントは余ってるんだよ!」他のヘルパーが呟いた。
「?」
「ナースの人らのテーブル。あの人らは、団結して食いもせん量をとる!」
「もらったら・・」
「(一同)そんなん、くれへんくれへん!」
僕は靴のヒモをしめなおした。
「じゃ、ちょっと交渉してくる!」
と言いつつ、奥のテーブルへ。
どうやら、若手ナースのテーブルだ。ここもはじけている。
「(一同)イエイ!イエーイ!」
私服ではあるがよく見る顔であり、どこかアンバランスである。
救急室で動揺していたあの子、朝の申し送りで化粧が落ちていたあの子・・・。
中心的で大もての美野ナースが、ジーンズでふらふら酔っ払っている。
彼女はそのままこちらへよろめいた。
「ゆ〜き〜!こらあ〜!おまえ〜!こら!まて!」泥酔している。
「な、なにか?」
「おまえ〜!かのじょにあやまれ〜!こなくそが〜!」
「肉、余ってないか?ハラへって・・」
「おんなの、てきじゃ〜!」
「だいいち、彼女のいない私に対してそんな・・・」
近くの若手が2人、楽しそうに喋っている。
「お、そこ座らしてくれ!」
「(2人)どうぞ!」中に、割って入る。
「両手にハナ状態だな!わっはは!1ドルで楽しむべ!」
「先生、お元気で!」そのうち1人が笑う。
「なんだよ。ちょっとは悲しそうにしろよ!」
「あたしたちは、トシキ先生のファンだしー!」
「だるう。なんであんなヤツがもてるのか・・・つまらんぜ、アイツ」
「えっえっ・・・」もう1人が泣いている。
「ど、どした・・・」
「だってだって。もう2日も来てないし。来てないし」
「ハン!エロビデオぐらいでショック受けやがって!おかげでこっちは仕事が増えて!」
「もうユウキ先生がいけないんですよ!」涙にまみれ、そのナースは怒り出した。
するとさきほどの美野ナースが腕を引っ張った。
「ちょっと!澪センパイのとこ、来い!」
「わったた!怒るなミチルみたいに!オレがいったい何をした?」
濡れた土の上を引きずられ、中堅ナースのテーブルに連れて行かれた。もう1人のナースが加わり、頭と脚を持って抱きかかえられる形になる。
「♪だっから、ねっえねっえねっえねっえ、だ〜いてよ〜アイアム寒!」
飲み会では、あなたの叫びは誰にも届かない。
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