サンダル医長 金曜日 (最終) ? 乾杯
2006年11月14日 テーブルの上座には、真ん中に事務長。両側に女事務員(別れた事務員は退職)、さらに両側に各病棟の師長。
時代劇さながらのハーレム状態であった。
「や!やや!主役が!」事務長はすでに酔っていた。僕もだが。
「お、オレ座らんでもええから!」
事務長の両側の美女が席を空け、有無を言わさず左に座らされた。イスがひんやりと冷たくなった。当然、股・尻はまだかわいていない。
「ささ、どぞどぞ。おや?」
事務長が驚いたのも、無理はない。事務長の反対側に、今度はさっきの犬が座ったのだ。
「あらら・・・?ま、ええけど」
みんなが犬をなでているのをかまわず、僕は話しかけた。
「なんかあおい!各部署から不満がこら。出てるようだな!」
「もうちょっとダイエットせないけませんなあ!」
「あほ!肥満ちゃうわ!不満!」
「不満?ああ、そんなのしょっちゅうですがな!」
事務長は浴びるように酒を飲んでいる。
「ヒック。どうせ、ナースらが先生に言うんでしょう?やれ勤務が過酷だの、睡眠時間が少ないだの・・・」
「でも無理もないようヒック。救急車ラッシュに加え、病棟での急変。今は同時にあまり起こってないからいいが。ヒック」
「そう言いましてもね・・」
僕は続けた。
「なんとかならんのか?ヒック。人員を増やすとか・・あ、そうそうお前!真珠会と交渉したって?どうなった?」
「こうしょう・・・?はいはいはい!」放射線科医のように知ったかぶった。
「で?」
「こうしょうは、こう、しよう!あっはははは!」
「(一同)はははは!」
僕は周囲を見渡した。厚化粧の師長たち。
「師長さんらも、思うだろ?ま、あんたらは平日昼間出勤だけだから分かんないだろうけど!」酒を飲むと、言葉がどんどん湧き出る。これは危険なことだ。
「それはどういう意味?」療養の師長。
「人が足りないんだよ。このままじゃ!」
「でもねえ。事務長さんがそこをうまくやってくれるのではないの?」
事務長は諦めたようにうなずいた。
「あ。ここからわたし、言います。ふう」
みな、事務長に注目した。
「真珠会のとこに行って、いろいろと話してきたよいろんな!話、を・・・!」
「だから早く言え!」僕は焦らせた。
「これからは、仲良くやりましょうってね!」
「アホか。お前・・・」
「そしたら向こうの会長、笑いましてね」
「バカを晒しに行ってきたわけか・・・」
「でもね。心が通じましたよ。<そこまで言うならま、これから話し合ってもいい>って」
「とりあえずの救急車ラッシュは・・・」
「あ、それもうないっす」
「決まったなら、早く言え!」
「まま。ふにゃあ。当院としましてはね。ま、彼らには内緒ですけど。今のうちに防御を固めて、近くの病院を衛星化するんです」
「乗っ取りか?それじゃあ彼らと同じ・・」
「いやいや、同盟ですよ。同盟。でも、ブレインは統一するんですよん」
「わけが分からん・・・」
「そうすりゃ、どんなに忙しくなってもいけまんがな」
「今の救急の体制じゃ、ダメってことか・・・」
確かに、現代のようなネットワークは不十分なところが多すぎる。救急隊が各病院の状況を把握できたとしても、その病院が救急を断ればその病院はもう無理だ。救急を断る理由はいろいろある。当直医が手が離せない、満床、当直医自体が未熟、わがまま・・・いろいろある。
この男が言うのは、そのネットワークそのものを救急隊や行政でなく、1つの病院が支配して、複数の病院を共同体化し、効率よく救急を振り分けるというものだ。当直医、病床の事情を全て把握していれば、職員故意の理由による搬送拒否は免れる。
「・・ということか?」
「そーそー。でもね、ヘッドが大事なんですよ、ヘッドの採用が!」
「ヘッドは、その日の当直医だろ?」
「うちの常勤医にお願いして・・・」
「おいおい!」真吾がすぐさま、反対した。
「へっ?」
「オレはやだよ!せっかっくここの病院に寝だしたんだ!いや根ざしたんだ!」
「はぁ・・」
「やっと結束した俺らをバラバラにして配置するってことなんだろ?」指摘は正しかった。
「はぁ・・」事務長はとぼけた。
「それ、お前のアイデアか?」
「いえ、経営者のアイデアです。したがって・・・わたひは逆らえませぇん・・・」事務長は眠りかけた。
有力だが数少ないヘッドを隣接の場所に配置して、絶対的に統治する・・・。ローマ帝国はそうやって、何年も栄えた。うちでは1年続くかどうか・・・。
「事務長、ローマ帝国みたいだな!」
「ローマの、ていこく?なんじゃそりゃ?」
「ロマノ帝国?ロマノ帝国!おもろいな!よおしお前に褒美をやる!5年分の仕事だ好きなだけやれ言い訳は!聞かない!わかったか!もしくは永遠に!その口を閉じろ!間抜け!」
ERを見ていないほとんどの職員には、わけが分からなかった。
僕は笑い続けた。
「はっは!そっかそっか!スレッガーさん!笑え!笑えよ!あっはは!でおいおい!さっきの話だけど!」
「はぁ・・」
「もうちと、彼らの労働条件を考えてやれよ!」
「あのねえ、先生。そういう話はいつもきてるんですよ」
「でもあいつらは、話聞いてくれないって」
「おんなじ返事してますって・・・なんで医長に言うのかな。ま、そうなるか」
近くを、わざとらしく<偵察隊>が動き回る。こちらの話を盗み聞くためだ。
事務長は続けた。
「ああやって、苦言を周囲に申し立てる人種ってのはね・・はぁ・・条件を飲んで欲しいからなんですよ」
「条件・・?何か条件を出してきたのか?」
「そりゃこれでんがな。コスト!コスト!」
「給与のアップか?」
「私含め病院の経営側が、仕事内容をゆるめるわけないのは、彼ら知ってますって先生」
「でも彼ら、辞めるかもしれんぞ・・」
「今のとこ、そうはなりませんって!」
「なんで分かる?」
「だって先生。これまで交渉して、周囲の病院よりも高いコストを出してきたんです」
「コジマ電器みたいだな・・・」
「コスト出したら、仕事が増えるのは当然ですがな。ちゃんとやってもらわんと」
「しかし、忙しさが増してきたし」
「忙しくないときに文句言わずヘラヘラ遊んで、忙しくなったから、今度は給料上げろって?ウンザリですがな!」
周囲の師長らは黙っていた。しかし落ち着いている。
一般病棟の師長らは・・ナースの2-3倍もらってると思われる彼らは・・これといった不満はなさそうだ。
「事務長。ま、オレは聞いてみただけで」
「医長先生。気をつけてくださいよ!彼らは事態を混乱さすために、先生に正当化を吹聴するんです。病院のためでなく、彼らのために」
「でも病院全体のためになるんじゃ・・」
「ノーノー!バカおっしゃい!誰がハン!病院全体の心配オッパイなんか!するもんですか!フン!」
「そっか。オレは利用されたのか・・・」
「こういうのを、<パワーゲーム>って言うんですよ。気をつけてくださいな!おかわり!」
近くの師長が黙って、茶をついだ。事務長はまだ足りなかった。
「ま、私がプライド捨てて真珠会の救急搬送を食い止めたんです!それだけでも!」
「あ、ああ。それは感謝する・・・ん?」
事務長を覗き込んだとき、何かキラッとしたものが見えた。
「犬か・・・?」
犬をよく見ると、銀色に光ったものが一瞬。
「首輪か・・・?」
「あらら、首輪ね。キツイんとちゃう?」
近くの師長が立ちがあり、犬の首を触りに行った。
事務長はグラスを揺らした。
「はあはあ!ユウキ先生の今後の発展をのろって!いや、祝って!」
「(一同)カンパーイ!」
「♪フ〜フフ、フ〜フフ」事務長はハミングしだした。
「おい、その歌どっかで・・・」
周囲、炎があちこちで燃えている。パチパチ、という音。そしてこの歌。事務長は続けた。
「♪フ〜フフ、フ〜フフ!ま〜どい〜せん〜!」
「な、なんか懐かしい歌、歌うよな!」
「♪ま〜どい〜!せ!ん〜!」
「アレンジするする!」
「♪ま!どい!せ〜〜〜〜ん〜〜〜〜〜〜!」
周囲のみんなが、1人ずつついてきた。
事務長は立ち上がり、合いの手を求めた。
とおきやまに ひはおちて ほしは そらをちりばめぬ
きょうのわざを なしおえて こころかろくやすらえば
かぜはすずし このゆうべ いざやたのしき まどいせん
遠き山に日は落ちて、星は空をちりばめぬ
今日のわざをなし終えて、心軽く安らへば
風はすずしこの夕べ、いざや楽しきまどいせん・・・
まどいせん・・・・・・・
<よるのうた>
http://www1.ttcn.ne.jp/~SOUTHPEAK/scoutsongs/yorunouta.htm
「ユウキ先生もほら!」事務長は僕の肘を突付いた。
「は?あ、オレ、歌うの?もう終わったぞ?」
「主役なんだから!ほら!」
「うれしいな・・・」志村のように、手を後頭部に回した。
パッパラパッパラーパッパラーバン!
パーパッパパーパッパパーパッパパッパ!
「てれるな!・・・ってこれ逆かいな?」
誰も見ておらず、相変わらずシーンとなっていた。
いや、それはシラけたからではなく、犬の首輪を見ていた師長が叫んだからだ。
「な!なにこれ!ボイスレコーダー?」
どうやら、犬の首輪に細長いレコーダーがつながっていたようだ。
僕は皆が歌を待っているのだと思い、ちょっと歌った。
「き〜みに、しあ〜わせ・・・・・・あ!あああああ〜〜〜〜〜〜!れえええええ〜〜〜〜〜〜!」
事務長ら、みなが犬を追いかけていき、宴の夜は終わった。
「(一同)待てこら〜!待て〜!」
すると、なぜか真吾だけ僕を追っかけてきた。
「おいユウキ!お前の座ったとこ座ったら!これ見ろ!尻が!」
振り向いた彼のジーンズの尻が濡れていた。
「まずい!スレッガーたん!かわく!かわくよ!」
「待てってこら!」
僕は犬に合流し、一生懸命走った。
「ジョリィ!ジョリィ!ジョリパッパー!ダルルルルル!」
・・警察の懸命の捜索にもかかわらず、その犬が見つかることはなかったという。
時代劇さながらのハーレム状態であった。
「や!やや!主役が!」事務長はすでに酔っていた。僕もだが。
「お、オレ座らんでもええから!」
事務長の両側の美女が席を空け、有無を言わさず左に座らされた。イスがひんやりと冷たくなった。当然、股・尻はまだかわいていない。
「ささ、どぞどぞ。おや?」
事務長が驚いたのも、無理はない。事務長の反対側に、今度はさっきの犬が座ったのだ。
「あらら・・・?ま、ええけど」
みんなが犬をなでているのをかまわず、僕は話しかけた。
「なんかあおい!各部署から不満がこら。出てるようだな!」
「もうちょっとダイエットせないけませんなあ!」
「あほ!肥満ちゃうわ!不満!」
「不満?ああ、そんなのしょっちゅうですがな!」
事務長は浴びるように酒を飲んでいる。
「ヒック。どうせ、ナースらが先生に言うんでしょう?やれ勤務が過酷だの、睡眠時間が少ないだの・・・」
「でも無理もないようヒック。救急車ラッシュに加え、病棟での急変。今は同時にあまり起こってないからいいが。ヒック」
「そう言いましてもね・・」
僕は続けた。
「なんとかならんのか?ヒック。人員を増やすとか・・あ、そうそうお前!真珠会と交渉したって?どうなった?」
「こうしょう・・・?はいはいはい!」放射線科医のように知ったかぶった。
「で?」
「こうしょうは、こう、しよう!あっはははは!」
「(一同)はははは!」
僕は周囲を見渡した。厚化粧の師長たち。
「師長さんらも、思うだろ?ま、あんたらは平日昼間出勤だけだから分かんないだろうけど!」酒を飲むと、言葉がどんどん湧き出る。これは危険なことだ。
「それはどういう意味?」療養の師長。
「人が足りないんだよ。このままじゃ!」
「でもねえ。事務長さんがそこをうまくやってくれるのではないの?」
事務長は諦めたようにうなずいた。
「あ。ここからわたし、言います。ふう」
みな、事務長に注目した。
「真珠会のとこに行って、いろいろと話してきたよいろんな!話、を・・・!」
「だから早く言え!」僕は焦らせた。
「これからは、仲良くやりましょうってね!」
「アホか。お前・・・」
「そしたら向こうの会長、笑いましてね」
「バカを晒しに行ってきたわけか・・・」
「でもね。心が通じましたよ。<そこまで言うならま、これから話し合ってもいい>って」
「とりあえずの救急車ラッシュは・・・」
「あ、それもうないっす」
「決まったなら、早く言え!」
「まま。ふにゃあ。当院としましてはね。ま、彼らには内緒ですけど。今のうちに防御を固めて、近くの病院を衛星化するんです」
「乗っ取りか?それじゃあ彼らと同じ・・」
「いやいや、同盟ですよ。同盟。でも、ブレインは統一するんですよん」
「わけが分からん・・・」
「そうすりゃ、どんなに忙しくなってもいけまんがな」
「今の救急の体制じゃ、ダメってことか・・・」
確かに、現代のようなネットワークは不十分なところが多すぎる。救急隊が各病院の状況を把握できたとしても、その病院が救急を断ればその病院はもう無理だ。救急を断る理由はいろいろある。当直医が手が離せない、満床、当直医自体が未熟、わがまま・・・いろいろある。
この男が言うのは、そのネットワークそのものを救急隊や行政でなく、1つの病院が支配して、複数の病院を共同体化し、効率よく救急を振り分けるというものだ。当直医、病床の事情を全て把握していれば、職員故意の理由による搬送拒否は免れる。
「・・ということか?」
「そーそー。でもね、ヘッドが大事なんですよ、ヘッドの採用が!」
「ヘッドは、その日の当直医だろ?」
「うちの常勤医にお願いして・・・」
「おいおい!」真吾がすぐさま、反対した。
「へっ?」
「オレはやだよ!せっかっくここの病院に寝だしたんだ!いや根ざしたんだ!」
「はぁ・・」
「やっと結束した俺らをバラバラにして配置するってことなんだろ?」指摘は正しかった。
「はぁ・・」事務長はとぼけた。
「それ、お前のアイデアか?」
「いえ、経営者のアイデアです。したがって・・・わたひは逆らえませぇん・・・」事務長は眠りかけた。
有力だが数少ないヘッドを隣接の場所に配置して、絶対的に統治する・・・。ローマ帝国はそうやって、何年も栄えた。うちでは1年続くかどうか・・・。
「事務長、ローマ帝国みたいだな!」
「ローマの、ていこく?なんじゃそりゃ?」
「ロマノ帝国?ロマノ帝国!おもろいな!よおしお前に褒美をやる!5年分の仕事だ好きなだけやれ言い訳は!聞かない!わかったか!もしくは永遠に!その口を閉じろ!間抜け!」
ERを見ていないほとんどの職員には、わけが分からなかった。
僕は笑い続けた。
「はっは!そっかそっか!スレッガーさん!笑え!笑えよ!あっはは!でおいおい!さっきの話だけど!」
「はぁ・・」
「もうちと、彼らの労働条件を考えてやれよ!」
「あのねえ、先生。そういう話はいつもきてるんですよ」
「でもあいつらは、話聞いてくれないって」
「おんなじ返事してますって・・・なんで医長に言うのかな。ま、そうなるか」
近くを、わざとらしく<偵察隊>が動き回る。こちらの話を盗み聞くためだ。
事務長は続けた。
「ああやって、苦言を周囲に申し立てる人種ってのはね・・はぁ・・条件を飲んで欲しいからなんですよ」
「条件・・?何か条件を出してきたのか?」
「そりゃこれでんがな。コスト!コスト!」
「給与のアップか?」
「私含め病院の経営側が、仕事内容をゆるめるわけないのは、彼ら知ってますって先生」
「でも彼ら、辞めるかもしれんぞ・・」
「今のとこ、そうはなりませんって!」
「なんで分かる?」
「だって先生。これまで交渉して、周囲の病院よりも高いコストを出してきたんです」
「コジマ電器みたいだな・・・」
「コスト出したら、仕事が増えるのは当然ですがな。ちゃんとやってもらわんと」
「しかし、忙しさが増してきたし」
「忙しくないときに文句言わずヘラヘラ遊んで、忙しくなったから、今度は給料上げろって?ウンザリですがな!」
周囲の師長らは黙っていた。しかし落ち着いている。
一般病棟の師長らは・・ナースの2-3倍もらってると思われる彼らは・・これといった不満はなさそうだ。
「事務長。ま、オレは聞いてみただけで」
「医長先生。気をつけてくださいよ!彼らは事態を混乱さすために、先生に正当化を吹聴するんです。病院のためでなく、彼らのために」
「でも病院全体のためになるんじゃ・・」
「ノーノー!バカおっしゃい!誰がハン!病院全体の心配オッパイなんか!するもんですか!フン!」
「そっか。オレは利用されたのか・・・」
「こういうのを、<パワーゲーム>って言うんですよ。気をつけてくださいな!おかわり!」
近くの師長が黙って、茶をついだ。事務長はまだ足りなかった。
「ま、私がプライド捨てて真珠会の救急搬送を食い止めたんです!それだけでも!」
「あ、ああ。それは感謝する・・・ん?」
事務長を覗き込んだとき、何かキラッとしたものが見えた。
「犬か・・・?」
犬をよく見ると、銀色に光ったものが一瞬。
「首輪か・・・?」
「あらら、首輪ね。キツイんとちゃう?」
近くの師長が立ちがあり、犬の首を触りに行った。
事務長はグラスを揺らした。
「はあはあ!ユウキ先生の今後の発展をのろって!いや、祝って!」
「(一同)カンパーイ!」
「♪フ〜フフ、フ〜フフ」事務長はハミングしだした。
「おい、その歌どっかで・・・」
周囲、炎があちこちで燃えている。パチパチ、という音。そしてこの歌。事務長は続けた。
「♪フ〜フフ、フ〜フフ!ま〜どい〜せん〜!」
「な、なんか懐かしい歌、歌うよな!」
「♪ま〜どい〜!せ!ん〜!」
「アレンジするする!」
「♪ま!どい!せ〜〜〜〜ん〜〜〜〜〜〜!」
周囲のみんなが、1人ずつついてきた。
事務長は立ち上がり、合いの手を求めた。
とおきやまに ひはおちて ほしは そらをちりばめぬ
きょうのわざを なしおえて こころかろくやすらえば
かぜはすずし このゆうべ いざやたのしき まどいせん
遠き山に日は落ちて、星は空をちりばめぬ
今日のわざをなし終えて、心軽く安らへば
風はすずしこの夕べ、いざや楽しきまどいせん・・・
まどいせん・・・・・・・
<よるのうた>
http://www1.ttcn.ne.jp/~SOUTHPEAK/scoutsongs/yorunouta.htm
「ユウキ先生もほら!」事務長は僕の肘を突付いた。
「は?あ、オレ、歌うの?もう終わったぞ?」
「主役なんだから!ほら!」
「うれしいな・・・」志村のように、手を後頭部に回した。
パッパラパッパラーパッパラーバン!
パーパッパパーパッパパーパッパパッパ!
「てれるな!・・・ってこれ逆かいな?」
誰も見ておらず、相変わらずシーンとなっていた。
いや、それはシラけたからではなく、犬の首輪を見ていた師長が叫んだからだ。
「な!なにこれ!ボイスレコーダー?」
どうやら、犬の首輪に細長いレコーダーがつながっていたようだ。
僕は皆が歌を待っているのだと思い、ちょっと歌った。
「き〜みに、しあ〜わせ・・・・・・あ!あああああ〜〜〜〜〜〜!れえええええ〜〜〜〜〜〜!」
事務長ら、みなが犬を追いかけていき、宴の夜は終わった。
「(一同)待てこら〜!待て〜!」
すると、なぜか真吾だけ僕を追っかけてきた。
「おいユウキ!お前の座ったとこ座ったら!これ見ろ!尻が!」
振り向いた彼のジーンズの尻が濡れていた。
「まずい!スレッガーたん!かわく!かわくよ!」
「待てってこら!」
僕は犬に合流し、一生懸命走った。
「ジョリィ!ジョリィ!ジョリパッパー!ダルルルルル!」
・・警察の懸命の捜索にもかかわらず、その犬が見つかることはなかったという。
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