サンダル医長 土曜日 ? 謎の胸痛!暴力医者の追跡!
2006年12月3日 救急車の間、隙間を3台の自転車がジグザグに、縫うように走る。
「重症だな?まずそっち行く!」連絡を受け先頭の僕が急停車。
「マッサージ、変わってください!」後輩のザッキー医師が、大汗で心マッサージ。
挿管はすでにしてあり、ナースがアンビューして呼吸はキープ。
救急車の中で処置が行われていた。外が雨という理由がある。
事務長はよそから聞こえる声に耳を傾けた。
「・・・わたし、ちょっと行きます!ベッドの調整もあるんで!」
「しゃあないな!行け!」
僕は処置中のザッキーに振り向いた。
「な、なんとか救急口に運べんのか?ザッキー!」
「今さっき中心静脈確保して、カテコラミン確保して・・!5分前ボスミン!カタボンをつないだとこで!」
「そっか。運ぶのにはもう1人いるかな・・・遠藤くん!連絡せよ1人差し向け!」マッサージを代わり、垂直に上下。
「きゅ、きゅうきゅうひち、なんばん、でで、でんわばんごお」
看護士が彼の頭をしばき、連絡した。
「応援頼みますわ!中心タヌキより東北30度遠位中間!」
「よし!いいぞ!その!呼び方で!ザッキー!ボスミン!もう1回!何なんだ!原因は・・・!」
「知りませんよ!」ザッキーは注射を用意。
「おい!ナース!もっと!過換気!ぎみに!押さ!ないか!」アンビュー係に注意。
「はいっ!」一生懸命の若手ナース。
「おっ・・・?」
手を止めると・・・・
「出た出た!」脈を確認、遅れてつけられたDC用モニターにも頻脈の波型が。
「DC、遅れました。すんません!」シローが息切れしていた。
「遅かったな。だが助かったようかな?」
「あっちで処置が終わったばっかで・・はあはあ」
「助かった?その人は」
「ええ。瞳孔が左右不同。アポ(脳卒中)ですかね」
「知りませんよ!」
ザッキーのセリフを残し、僕らは一斉にベッドを救急車から押し出した。
こうしてる間に、2件の履歴。
「ええっとこれは・・・」
履歴どおりに連絡。
『もしもし?トシキ!』
「ああ!そっちは?」
『シローと蘇生して、1人は救急室へ!あとはピートらが!』
「今、お前は?」
『大丈夫です!』
「ちゃう!お前はいいんだってどうでも!どの患者にとりかかって・・・!」
後ろの遠藤くんの横から、キックが見舞われた。水色白衣の・・・暴力医師だ。
「何をコラ!自転車なんか乗りよんじゃあボケ!」
「ふっひゃあ!」遠藤君はそのまま水たまりに落ちた。
「貸せや!貸さんか!」
「ひゅいいい!」
僕と看護士は見ていられず、ダッシュした。その間に、もう1件の履歴先に連絡。別のPHSで通信を終わった。
いっそのこと、耳に携帯をテープで貼り付けたい。
「トシキ!南西45度!胸部痛!ポータブル心電図背負ったスタッフ向かってる!」
『AMIですか?』
「だから!知りませんよ!」電話を切った。
まだ診てもないのに、知るかよ・・・?
僕と看護士は停車し、さっきのように救急車のバックから入った。
ポータブル心電図を記録中・・いや、まだだった。
「何やってんだ!ナース!」
「ブヒブヒ・・・!」療養のオークナースだ。しかし今は人材だけでも貴重だ。
「録り方、知らんのか!」
「ブヒブヒ!電源、電源!」
患者は苦しそうに胸を押さえている。老人だ。さっきも老人だった。
看護士は救急車内の酸素をつなぎ、バイタルを確認中。
「代われ!出ろ!」
「ブヒン!」どかす。
「でも待て!ここを出るな!」ビフのように、人差し指。
「あの、ここ病院!分か・・らんよね。胸の痛みは一番ひどいのが10!なら今は?3?7?」
「くく・・・わ。わ!」
「ちょっと?すこし?かなり?」
「わし。わし。耳が遠いですけえ・・!」
心電図が記録された。
「頻脈ぎみ・・それだけっすね先生!」看護士はいぶかった。
「酸素飽和度は正常。過換気代償かもしれんがな。超音波は?ちょうおんぱ!」
振り向くと、救急入り口が近い。何人かが突っ立っている。
「PHSは・・・つながらない!看護士!取りに行ってくれるか?あ!つながった!」
『こちらピート。3人が入院。ベッドがもうないぜ先生!』反射的に手帳を取り出す。
「大部屋の今からいう人を退院。もしものときのムンテラはすんでる。言うぞ!・・・・さん、・・さん」
『ラザー!』
「おいそれより!そっち入れないか?そっか。じゃ、超音波もって来てくれ!」
『ポータブルのやつな?方角は?』
「入り口からみえるとこだ!看護士!ライトを!」
看護士は救急車の大きな懐中電灯を、何度も点灯させた。
ピートらしき奴が走ってくる。
僕は循環器の医者らしくイライラ足踏みした。
「はやくはやくはやく!もうもうもう!看護士!血圧高めでもあるし、ニトロ舌下!いや待て!すまん落ち着けってんだよもう!」
落ち着く必要があるのは、僕だった。
「あ、あれは!」
遠藤君が泣きながら、ずぶ濡れで前を横切っていく。その後ろ、自転車がジグザグ飛行で立ちこぎしている。
さっきの暴力医者が追っかけているのだ。これではイジメだ。
「オラオラオラ!」
「やああ!やよいさああん!やよいさああああん!」
遠藤君はズボンがずり下がり、2人3脚のようにぎこちなく走っていた。
ピートの持ってきた超音波、ベッドの上にセット。
即、観察。
「いや・・・動きは正常だ。肺病変かな?」
肺と胸壁との位置関係を観察。
肺は、離れて見えない。呼吸の変動も確認できた。
「なんなんだ?これといったものが・・・」体のあちこちを目視。
「オペの跡もなさそうやしねえ!先生!」看護士がDVTについて言及。
「動脈瘤はなさそうだが、乖離がないか・・・CTで何か器質的なものを見ないとな!」
「狭心症!」
「心電図は正常だぞ!トロポニンTもほら!陰性だ!」
「ニトロはつかう?」看護士が珍しく真剣。
「今は根拠がないだろ!」
ダッシュで、ベッドを救急室へ一直線。雨だけでなく、風が顔を左右、上下から叩きつける。
遠藤君は僕の自転車にしがみついていた。横目でちょっと、追う。
後ろから暴力医者。容赦なく迫ってくる。
僕は片手でベッドを押しながら、連絡した。
「遠藤くん!後ろうしろ!」
『こちら、えんどお・・・これ以上、もうはたけまひん・・・!何回もやられて』
「そこから離れて!救急室戻るか!も、帰れ!」
『しつこく追ってきやがふ・・・』
チュドーン、と彼は自転車ごと吹っ飛んだ。
ああ・・・。
「重症だな?まずそっち行く!」連絡を受け先頭の僕が急停車。
「マッサージ、変わってください!」後輩のザッキー医師が、大汗で心マッサージ。
挿管はすでにしてあり、ナースがアンビューして呼吸はキープ。
救急車の中で処置が行われていた。外が雨という理由がある。
事務長はよそから聞こえる声に耳を傾けた。
「・・・わたし、ちょっと行きます!ベッドの調整もあるんで!」
「しゃあないな!行け!」
僕は処置中のザッキーに振り向いた。
「な、なんとか救急口に運べんのか?ザッキー!」
「今さっき中心静脈確保して、カテコラミン確保して・・!5分前ボスミン!カタボンをつないだとこで!」
「そっか。運ぶのにはもう1人いるかな・・・遠藤くん!連絡せよ1人差し向け!」マッサージを代わり、垂直に上下。
「きゅ、きゅうきゅうひち、なんばん、でで、でんわばんごお」
看護士が彼の頭をしばき、連絡した。
「応援頼みますわ!中心タヌキより東北30度遠位中間!」
「よし!いいぞ!その!呼び方で!ザッキー!ボスミン!もう1回!何なんだ!原因は・・・!」
「知りませんよ!」ザッキーは注射を用意。
「おい!ナース!もっと!過換気!ぎみに!押さ!ないか!」アンビュー係に注意。
「はいっ!」一生懸命の若手ナース。
「おっ・・・?」
手を止めると・・・・
「出た出た!」脈を確認、遅れてつけられたDC用モニターにも頻脈の波型が。
「DC、遅れました。すんません!」シローが息切れしていた。
「遅かったな。だが助かったようかな?」
「あっちで処置が終わったばっかで・・はあはあ」
「助かった?その人は」
「ええ。瞳孔が左右不同。アポ(脳卒中)ですかね」
「知りませんよ!」
ザッキーのセリフを残し、僕らは一斉にベッドを救急車から押し出した。
こうしてる間に、2件の履歴。
「ええっとこれは・・・」
履歴どおりに連絡。
『もしもし?トシキ!』
「ああ!そっちは?」
『シローと蘇生して、1人は救急室へ!あとはピートらが!』
「今、お前は?」
『大丈夫です!』
「ちゃう!お前はいいんだってどうでも!どの患者にとりかかって・・・!」
後ろの遠藤くんの横から、キックが見舞われた。水色白衣の・・・暴力医師だ。
「何をコラ!自転車なんか乗りよんじゃあボケ!」
「ふっひゃあ!」遠藤君はそのまま水たまりに落ちた。
「貸せや!貸さんか!」
「ひゅいいい!」
僕と看護士は見ていられず、ダッシュした。その間に、もう1件の履歴先に連絡。別のPHSで通信を終わった。
いっそのこと、耳に携帯をテープで貼り付けたい。
「トシキ!南西45度!胸部痛!ポータブル心電図背負ったスタッフ向かってる!」
『AMIですか?』
「だから!知りませんよ!」電話を切った。
まだ診てもないのに、知るかよ・・・?
僕と看護士は停車し、さっきのように救急車のバックから入った。
ポータブル心電図を記録中・・いや、まだだった。
「何やってんだ!ナース!」
「ブヒブヒ・・・!」療養のオークナースだ。しかし今は人材だけでも貴重だ。
「録り方、知らんのか!」
「ブヒブヒ!電源、電源!」
患者は苦しそうに胸を押さえている。老人だ。さっきも老人だった。
看護士は救急車内の酸素をつなぎ、バイタルを確認中。
「代われ!出ろ!」
「ブヒン!」どかす。
「でも待て!ここを出るな!」ビフのように、人差し指。
「あの、ここ病院!分か・・らんよね。胸の痛みは一番ひどいのが10!なら今は?3?7?」
「くく・・・わ。わ!」
「ちょっと?すこし?かなり?」
「わし。わし。耳が遠いですけえ・・!」
心電図が記録された。
「頻脈ぎみ・・それだけっすね先生!」看護士はいぶかった。
「酸素飽和度は正常。過換気代償かもしれんがな。超音波は?ちょうおんぱ!」
振り向くと、救急入り口が近い。何人かが突っ立っている。
「PHSは・・・つながらない!看護士!取りに行ってくれるか?あ!つながった!」
『こちらピート。3人が入院。ベッドがもうないぜ先生!』反射的に手帳を取り出す。
「大部屋の今からいう人を退院。もしものときのムンテラはすんでる。言うぞ!・・・・さん、・・さん」
『ラザー!』
「おいそれより!そっち入れないか?そっか。じゃ、超音波もって来てくれ!」
『ポータブルのやつな?方角は?』
「入り口からみえるとこだ!看護士!ライトを!」
看護士は救急車の大きな懐中電灯を、何度も点灯させた。
ピートらしき奴が走ってくる。
僕は循環器の医者らしくイライラ足踏みした。
「はやくはやくはやく!もうもうもう!看護士!血圧高めでもあるし、ニトロ舌下!いや待て!すまん落ち着けってんだよもう!」
落ち着く必要があるのは、僕だった。
「あ、あれは!」
遠藤君が泣きながら、ずぶ濡れで前を横切っていく。その後ろ、自転車がジグザグ飛行で立ちこぎしている。
さっきの暴力医者が追っかけているのだ。これではイジメだ。
「オラオラオラ!」
「やああ!やよいさああん!やよいさああああん!」
遠藤君はズボンがずり下がり、2人3脚のようにぎこちなく走っていた。
ピートの持ってきた超音波、ベッドの上にセット。
即、観察。
「いや・・・動きは正常だ。肺病変かな?」
肺と胸壁との位置関係を観察。
肺は、離れて見えない。呼吸の変動も確認できた。
「なんなんだ?これといったものが・・・」体のあちこちを目視。
「オペの跡もなさそうやしねえ!先生!」看護士がDVTについて言及。
「動脈瘤はなさそうだが、乖離がないか・・・CTで何か器質的なものを見ないとな!」
「狭心症!」
「心電図は正常だぞ!トロポニンTもほら!陰性だ!」
「ニトロはつかう?」看護士が珍しく真剣。
「今は根拠がないだろ!」
ダッシュで、ベッドを救急室へ一直線。雨だけでなく、風が顔を左右、上下から叩きつける。
遠藤君は僕の自転車にしがみついていた。横目でちょっと、追う。
後ろから暴力医者。容赦なく迫ってくる。
僕は片手でベッドを押しながら、連絡した。
「遠藤くん!後ろうしろ!」
『こちら、えんどお・・・これ以上、もうはたけまひん・・・!何回もやられて』
「そこから離れて!救急室戻るか!も、帰れ!」
『しつこく追ってきやがふ・・・』
チュドーン、と彼は自転車ごと吹っ飛んだ。
ああ・・・。
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