サンダル医長 ? 死守せよ!盗撮犬の襲撃!
2006年12月4日救急室に胸痛を搬入。部屋内はエックス字隊形が2つできている。<ダブルエックス隊形>。
弥生先生がダン、と床のペダルを踏み、円が45度回る。
僕らは空いてるとこにベッドを滑らせた。
「弥生先生!病名不明なのは?」
「えーと!んーと!この円の2名!データはこれです!ああ、あれと!」
指差された画像、採血結果などを確認。しかしトシキが確認中のようだ。
彼はひらめいたように背を伸ばした。
「1人は骨盤内の膿瘍疑い、もう1人はリンファンジャイティス!」
「リンファンジャイ・・」弥生先生はぎょっと戸惑った。
「癌性リンパ管症!勉強しろ!あ、ユウキ先生!」
としきは僕に気づいた。
「何だ!今忙しいんだよ!胸痛の原因が・・・!これ伝票か?やはり酵素の上昇はないか」
「いつから?」
「ちょくちょく、昨日から」
「持続は?」
「小さかったり大きかったりがずっと持続・・・」
「先生。ちっとも痛くないって言ってますよ!」澪ナースが不機嫌にルートを確保しなおす。
「さっきまで痛かったんだよ!」
「もう、どうもないって」
「そっか?」
「治療が効いたんじゃないんですか?」
「はあ?治療?してないよ。まだ」
トシキは別の患者を診察していた。
「先輩。所見とりばかりせず、診断ついたら治療をしてください!」
「だって診断、ついてなかった・・」
「迅速!的確!冷静に!」
「人のこと言えんのか!」
「バカッ!もうやめてよ!」澪ナースが怒って僕らの間を通り、点滴を取りに行った。
「きゃああ!あれ何?あれ!」弥生先生がCT室から戻り、そのまま屋外へ。
「遠藤くんか。ちょっと倒れてるが、大丈夫のようだが」
「ミキオちゃん!ああミキオ!」
「ミキオ?」
遠藤君の名前だった。弥生先生は持ち物を放り出し、倒れている遠藤君へと走った。
かぶさってる自転車をどかし、彼の上に覆いかぶさる。
「ごめんねミキオちゃん!ごめんごめん!うわああ!どうしよう!」
「ふっぴ〜ふっぴ〜ややよよよ・・・!」遠藤君はガシッと彼女に抱きついた。
「ごめんねごめんね!一人ぼっちにしたよね!かわいそうに!」
彼女は大きなマスクをパッと外し、顔と顔をライオンキングのように左右にすり合わせた。
頬っぺたに刻まれている3,4重のシワ。いっそうの悲しみが漂った。
「浮気なんかしてない絶対してない!」
「ほひゅ・・してるんかと思ったひゅ・・」
こいつらの精神年齢は、何歳なんだ・・・?
「胸痛は見ててくれ!トシキ!」
「先輩待ってください!超音波はしたんですか?」
「ああ!どこ置いたかな?」
「置いたかなって・・・まさか、外来に置いてた僕の?」
「さ、さあ。あ、お前のだったの?」わざと、しらばっくれた。
「ひどい!許可もなしに!」
「ひょっとして、これでっか?」療養のオークナースが、大きなゴミ箱を傾けた。
ノートパソコン型の機械が真っ二つに割れている。天板に、「TOSHIKI」。
「ひどいひどい!あんまりだ!どうしてだ!」
「さ、行くか!看護士!」
僕は自転車を抱き起こし、後ろで看護士が自転車で待機した。
「先輩!これどうしたら?」
「リーダーはお前なんだろ?だったら自分で判断・・うっ?」
救急室のスミ二箇所に、犬が入ってきた。
「先輩!僕、犬が苦手なんです!」トシキは壁に寄り添った。
「はあ?お前ひょっとしてカゲスター?」
ナースらがホウキでシッシッと追い払おうとするが、胴の長い犬たちは巧妙に交わす。
その代わり、場所をかたくなに死守している。
「あ!おいこの犬ら・・・カメラだ!カメラがついてる!」
犬の右側に、それぞれペンライト型のものがついてる。先端はレンズっぽい。
「盗聴犬の次は、盗撮犬か!」
看護士は、台所の上にモップをつき立てた。
「シュワッチシュワッチ!」
「おい看護士!犬をなんとかしろ!」
トシキは手を口にあて、床へと崩れていく。
看護士はモップを大振りでふりかぶり、犬めがけて水しぶきを放った。
「ギャワンギャワン!」
水しぶきというか、洗剤の泡の塊は、たくさん降り注いで犬の全身に打ち付けられた。
瞬く間に、犬は2匹とも泡だらけに。
僕は呆れていたが、やっと気づいた。
「なるほど!看護士。お前・・・これでカメラレンズは役立たない!ベンケイ、オマエ今日は冴えてるぜ!」
「オマエ〜は、やめてくんさい!ヘヘェー!」
看護士は、さらに振り回して洗剤をかけまくった。
「おい!もういいって!やめろ!」
胸痛患者がCTから帰還。異常は特にない。
「トシキ!動脈瘤も圧迫病変もない。場合によってはカテーテルしたほうが、いいかもしれんな!」
「用意はしますが!総統はいらっしゃいませんので、非常勤専門医をコールします!」
「お前もやっぱ、アレの疑いか?」
「アンステーブルのね!」
「同感だ!どうしてもその可能性が引っかかる!」
僕は駐車場から新たな連絡を受け、方向を定めた。
「タヌキの真っ直ぐ北方向に、残り1台!ぬかるなよお前ら!」
う・・・まるで自分の中に、猛獣が宿ったようだ。
まるで、かつてのミチル師長。
片足をステップし、自転車に乗っかる。
真後ろ、看護士がついてくる。
「さっきは、ありがとな!」
「2匹とも、ご臨終!」
「バカ!殺すことないだろ!」
「以下同文!」
「この男、オレのセリフを・・・」
ベッドが数台、次々と運ばれてくる。その中に、遠藤君の姿もあった。
指示を出しながら、真北へと向かう。
自転車を走らせ、ふと気づくと2台ほどの身の程知らずが、新たについてきていた。
「みんな、手が空いてきたな!そろそろオレ、行かせてほしいんだけど!」
そうか。最近、凶暴になったような気がするが・・・
僕はハンドルから右手を離し、石川啄木のようにぢっと手を見つめた。
ミチルさんのパワーと、僕のパワーが・・・
「一体化した!」
ドクターズカー発進まで、あと15分。
弥生先生がダン、と床のペダルを踏み、円が45度回る。
僕らは空いてるとこにベッドを滑らせた。
「弥生先生!病名不明なのは?」
「えーと!んーと!この円の2名!データはこれです!ああ、あれと!」
指差された画像、採血結果などを確認。しかしトシキが確認中のようだ。
彼はひらめいたように背を伸ばした。
「1人は骨盤内の膿瘍疑い、もう1人はリンファンジャイティス!」
「リンファンジャイ・・」弥生先生はぎょっと戸惑った。
「癌性リンパ管症!勉強しろ!あ、ユウキ先生!」
としきは僕に気づいた。
「何だ!今忙しいんだよ!胸痛の原因が・・・!これ伝票か?やはり酵素の上昇はないか」
「いつから?」
「ちょくちょく、昨日から」
「持続は?」
「小さかったり大きかったりがずっと持続・・・」
「先生。ちっとも痛くないって言ってますよ!」澪ナースが不機嫌にルートを確保しなおす。
「さっきまで痛かったんだよ!」
「もう、どうもないって」
「そっか?」
「治療が効いたんじゃないんですか?」
「はあ?治療?してないよ。まだ」
トシキは別の患者を診察していた。
「先輩。所見とりばかりせず、診断ついたら治療をしてください!」
「だって診断、ついてなかった・・」
「迅速!的確!冷静に!」
「人のこと言えんのか!」
「バカッ!もうやめてよ!」澪ナースが怒って僕らの間を通り、点滴を取りに行った。
「きゃああ!あれ何?あれ!」弥生先生がCT室から戻り、そのまま屋外へ。
「遠藤くんか。ちょっと倒れてるが、大丈夫のようだが」
「ミキオちゃん!ああミキオ!」
「ミキオ?」
遠藤君の名前だった。弥生先生は持ち物を放り出し、倒れている遠藤君へと走った。
かぶさってる自転車をどかし、彼の上に覆いかぶさる。
「ごめんねミキオちゃん!ごめんごめん!うわああ!どうしよう!」
「ふっぴ〜ふっぴ〜ややよよよ・・・!」遠藤君はガシッと彼女に抱きついた。
「ごめんねごめんね!一人ぼっちにしたよね!かわいそうに!」
彼女は大きなマスクをパッと外し、顔と顔をライオンキングのように左右にすり合わせた。
頬っぺたに刻まれている3,4重のシワ。いっそうの悲しみが漂った。
「浮気なんかしてない絶対してない!」
「ほひゅ・・してるんかと思ったひゅ・・」
こいつらの精神年齢は、何歳なんだ・・・?
「胸痛は見ててくれ!トシキ!」
「先輩待ってください!超音波はしたんですか?」
「ああ!どこ置いたかな?」
「置いたかなって・・・まさか、外来に置いてた僕の?」
「さ、さあ。あ、お前のだったの?」わざと、しらばっくれた。
「ひどい!許可もなしに!」
「ひょっとして、これでっか?」療養のオークナースが、大きなゴミ箱を傾けた。
ノートパソコン型の機械が真っ二つに割れている。天板に、「TOSHIKI」。
「ひどいひどい!あんまりだ!どうしてだ!」
「さ、行くか!看護士!」
僕は自転車を抱き起こし、後ろで看護士が自転車で待機した。
「先輩!これどうしたら?」
「リーダーはお前なんだろ?だったら自分で判断・・うっ?」
救急室のスミ二箇所に、犬が入ってきた。
「先輩!僕、犬が苦手なんです!」トシキは壁に寄り添った。
「はあ?お前ひょっとしてカゲスター?」
ナースらがホウキでシッシッと追い払おうとするが、胴の長い犬たちは巧妙に交わす。
その代わり、場所をかたくなに死守している。
「あ!おいこの犬ら・・・カメラだ!カメラがついてる!」
犬の右側に、それぞれペンライト型のものがついてる。先端はレンズっぽい。
「盗聴犬の次は、盗撮犬か!」
看護士は、台所の上にモップをつき立てた。
「シュワッチシュワッチ!」
「おい看護士!犬をなんとかしろ!」
トシキは手を口にあて、床へと崩れていく。
看護士はモップを大振りでふりかぶり、犬めがけて水しぶきを放った。
「ギャワンギャワン!」
水しぶきというか、洗剤の泡の塊は、たくさん降り注いで犬の全身に打ち付けられた。
瞬く間に、犬は2匹とも泡だらけに。
僕は呆れていたが、やっと気づいた。
「なるほど!看護士。お前・・・これでカメラレンズは役立たない!ベンケイ、オマエ今日は冴えてるぜ!」
「オマエ〜は、やめてくんさい!ヘヘェー!」
看護士は、さらに振り回して洗剤をかけまくった。
「おい!もういいって!やめろ!」
胸痛患者がCTから帰還。異常は特にない。
「トシキ!動脈瘤も圧迫病変もない。場合によってはカテーテルしたほうが、いいかもしれんな!」
「用意はしますが!総統はいらっしゃいませんので、非常勤専門医をコールします!」
「お前もやっぱ、アレの疑いか?」
「アンステーブルのね!」
「同感だ!どうしてもその可能性が引っかかる!」
僕は駐車場から新たな連絡を受け、方向を定めた。
「タヌキの真っ直ぐ北方向に、残り1台!ぬかるなよお前ら!」
う・・・まるで自分の中に、猛獣が宿ったようだ。
まるで、かつてのミチル師長。
片足をステップし、自転車に乗っかる。
真後ろ、看護士がついてくる。
「さっきは、ありがとな!」
「2匹とも、ご臨終!」
「バカ!殺すことないだろ!」
「以下同文!」
「この男、オレのセリフを・・・」
ベッドが数台、次々と運ばれてくる。その中に、遠藤君の姿もあった。
指示を出しながら、真北へと向かう。
自転車を走らせ、ふと気づくと2台ほどの身の程知らずが、新たについてきていた。
「みんな、手が空いてきたな!そろそろオレ、行かせてほしいんだけど!」
そうか。最近、凶暴になったような気がするが・・・
僕はハンドルから右手を離し、石川啄木のようにぢっと手を見つめた。
ミチルさんのパワーと、僕のパワーが・・・
「一体化した!」
ドクターズカー発進まで、あと15分。
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