サンダル医長 土曜日 ? 傷だらけの脱出
2006年12月5日脈は・・・
「サイナスだ!やったぜ!」喜ぶピートだが、近くを通った自転車がDCのコードにからみ、器械は上空を舞った。
「あ!バカ!こわれ・・・」
みな呆然とし、予想通りDCは着地、バラバラに粉砕された。
「老人に一生懸命費やして、何になるんだ!」蹴飛ばしたのは、さっきの暴力医者だ。まだ生きていた。
「てめえこの!弁償しろ!」
「助けてみろ!うらあ!」向こうでDCを抱えたもう1台が突き飛ばされ、事務員が転倒した。
脈はまた、速くなってきている。
「あのDC!取ってくる!」
自転車まで走り、起こす。
「チャージ!最大パワー!」
『みなさん、誰か注文しましたか!』事務当直のオジサンだ。土曜の昼なのでやってきていた。
チュイーン、という音を聴きながら、自転車はベッドへ向かった。
『中華料理のおじさんら見えてますが!外来の看護師さんたちでしょう?どこ?』
彼らはすでに、逃げている。
ふと横に目をやると、自転車のじいさんが3人も、錆びた自転車でゆっくり漕いでいる。
ガンガン、と救急車にハンドルをぶつけてるが、彼らには平気だ。
「てっ!」
何か左肩に当たった。暴力医者が壊れた部品をポイポイ投げてくる。
瞬時、ポケットから取り出した傘。
押すとバッと開いた。
「よっしゃあ!真吾も役に立つぜ!」
暴力医者の投げる破片は、1つ1つはじき返された。
その向こう、ドクターズカーが急ブレーキでストップした。
いつの間にか運転に戻った看護士が窓をスライド。
「先生!もう時間ないない!チルチルチビル!」
しかしそのドアの前、白衣のドクターが5人ほど、ガードした。
「あいつら!行かせないつもりか!」
手放し運転で、両パッドを握り締め・・・
ベッドの脇に来た。モニターはやはりVT。マッサージ、アンビューの手が離れる。
「みな、どけ!チャージ完了!」
パッドを押し付け、ズドンと一発。
「はぅ〜!」
大きな深吸気。
「サイナスだ!今度は安定!」DCを置き、自転車を反転。
「あと!自分が診ます!」シローが舵を取った。
ドクターズカーへ向かった。時間はもう1分もない。
北方面、国道に面したところへ向かう。背後は中華料理の自転車軍団が玄関へ向かう。
キ・・! という金属音が背後から。
「それ今だ!」両手放し、両人差し指で両耳をふさいだ。
<キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!>
「(一同敵味方問わず)うわああああああああああ!」
誰もが、その場に倒れこんでいるようだった。
ありがたいことに、遮っていた連中もみなうずくまった。
「それそれ!やあ!」
自転車から早走りで飛び降り、スライドした後部座席にそのまま飛び込んだ。
自転車は何人かを巻き込んだ。
「看護士!出してくれ!車!」
「ヤッチー!」
看護士は、ペダルを思いっきり踏んだ。
閉めに向かうドアのスライドを見届けながら、PHSで連絡。
「救急室?救急室?」
『シローです。脈は今もサイナスです!』
「言い忘れたが、生食の準備を。かなりのハイペースで」
『ええ。高カリウムでしょうから。しかしなぜそんなに速く・・?』
「シロー。あれだよたぶん。クラッシュ・シンドローム」
シローは間を置いた。
『なるほど・・・!外傷はないが、打撲らしき跡はある』
「震災からまだそんなに経ってないが、気づかないといかんだろ」
しかし、トモダチの証言があったから分かったようなものだ。
『ミオグロビン尿見て、採血も確認します。医長先生。気をつけて!』
「お前もな・・・」
閉まったと思われたドアが、今度は急に開けられた。血の滲んだ指とともに。
「どあるう!もう戦う気力ない!」
「うらあ〜!」暴力医者じゃない。これは・・髪の乱れた美少年。
「宮川先輩!」
「大学の!大学の先輩に刃向かうような事を!・・・・・お前は平気でできるのか!ああ?」
看護士が気づき、徐行に切り替えた。車はもう国道に出ている。街路樹スレスレに走る。
「お、落ちますよ。先輩・・・!看護士!止めるか?」
「どのみち、助からんでもいい高齢者だあんなの!それはいい!おいところで!」
「は、はい!」しかし、手は差し伸べなかった。
「仲間になれよ!俺たちの仲間に・・・ぐあ!だんだんだんだん!」
宮川先生の背中に街路樹が連続して当たり、そのまま彼は後部へとはじき飛ばされた。
ドアは、何事もなかったように電動でスラ〜、ガチャンと閉まった。
「はあ、はあ・・・どあるう!植え込みに入ったようかな?」
PHSに連絡。
『トシキです。カテ中ですが、血栓を左前下行枝に認めました!閉塞寸前!さっきの胸痛の人!』
「そっかあ・・・やっぱさっきの胸痛はアンステーブル(不安定狭心症)だったんだな・・」
『ステント拡張しました。胸痛は改善』
心電図が正常なのに、胸痛だけ。しかし実は心筋梗塞の手前だった、という症例をこのとき初めて経験した(実際、ある)。
『先輩。お元気で。事務長と相談しましたら、超音波は、天引きということで』
「どある・・天引きは堪忍してえな!」
『先輩。DVD、すり替えられてたようなんです。知りませんか?』
「さ、さあな・・・貴重なデータでもあったのか?」
『病院の勢力図や、今後の計画が載ってますが・・内緒ですよ!』
ポケットをさぐった。割れてない。これは奈良でじっくり見ることにしよう・・・。
ふと、右側に影を感じた。
「ぐわあ!」右横にいきなりガマガエルの大きな口。
「わあっ!まだいたか!」
あくびをした、看護部長だった。
<次回、完結>
「サイナスだ!やったぜ!」喜ぶピートだが、近くを通った自転車がDCのコードにからみ、器械は上空を舞った。
「あ!バカ!こわれ・・・」
みな呆然とし、予想通りDCは着地、バラバラに粉砕された。
「老人に一生懸命費やして、何になるんだ!」蹴飛ばしたのは、さっきの暴力医者だ。まだ生きていた。
「てめえこの!弁償しろ!」
「助けてみろ!うらあ!」向こうでDCを抱えたもう1台が突き飛ばされ、事務員が転倒した。
脈はまた、速くなってきている。
「あのDC!取ってくる!」
自転車まで走り、起こす。
「チャージ!最大パワー!」
『みなさん、誰か注文しましたか!』事務当直のオジサンだ。土曜の昼なのでやってきていた。
チュイーン、という音を聴きながら、自転車はベッドへ向かった。
『中華料理のおじさんら見えてますが!外来の看護師さんたちでしょう?どこ?』
彼らはすでに、逃げている。
ふと横に目をやると、自転車のじいさんが3人も、錆びた自転車でゆっくり漕いでいる。
ガンガン、と救急車にハンドルをぶつけてるが、彼らには平気だ。
「てっ!」
何か左肩に当たった。暴力医者が壊れた部品をポイポイ投げてくる。
瞬時、ポケットから取り出した傘。
押すとバッと開いた。
「よっしゃあ!真吾も役に立つぜ!」
暴力医者の投げる破片は、1つ1つはじき返された。
その向こう、ドクターズカーが急ブレーキでストップした。
いつの間にか運転に戻った看護士が窓をスライド。
「先生!もう時間ないない!チルチルチビル!」
しかしそのドアの前、白衣のドクターが5人ほど、ガードした。
「あいつら!行かせないつもりか!」
手放し運転で、両パッドを握り締め・・・
ベッドの脇に来た。モニターはやはりVT。マッサージ、アンビューの手が離れる。
「みな、どけ!チャージ完了!」
パッドを押し付け、ズドンと一発。
「はぅ〜!」
大きな深吸気。
「サイナスだ!今度は安定!」DCを置き、自転車を反転。
「あと!自分が診ます!」シローが舵を取った。
ドクターズカーへ向かった。時間はもう1分もない。
北方面、国道に面したところへ向かう。背後は中華料理の自転車軍団が玄関へ向かう。
キ・・! という金属音が背後から。
「それ今だ!」両手放し、両人差し指で両耳をふさいだ。
<キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!>
「(一同敵味方問わず)うわああああああああああ!」
誰もが、その場に倒れこんでいるようだった。
ありがたいことに、遮っていた連中もみなうずくまった。
「それそれ!やあ!」
自転車から早走りで飛び降り、スライドした後部座席にそのまま飛び込んだ。
自転車は何人かを巻き込んだ。
「看護士!出してくれ!車!」
「ヤッチー!」
看護士は、ペダルを思いっきり踏んだ。
閉めに向かうドアのスライドを見届けながら、PHSで連絡。
「救急室?救急室?」
『シローです。脈は今もサイナスです!』
「言い忘れたが、生食の準備を。かなりのハイペースで」
『ええ。高カリウムでしょうから。しかしなぜそんなに速く・・?』
「シロー。あれだよたぶん。クラッシュ・シンドローム」
シローは間を置いた。
『なるほど・・・!外傷はないが、打撲らしき跡はある』
「震災からまだそんなに経ってないが、気づかないといかんだろ」
しかし、トモダチの証言があったから分かったようなものだ。
『ミオグロビン尿見て、採血も確認します。医長先生。気をつけて!』
「お前もな・・・」
閉まったと思われたドアが、今度は急に開けられた。血の滲んだ指とともに。
「どあるう!もう戦う気力ない!」
「うらあ〜!」暴力医者じゃない。これは・・髪の乱れた美少年。
「宮川先輩!」
「大学の!大学の先輩に刃向かうような事を!・・・・・お前は平気でできるのか!ああ?」
看護士が気づき、徐行に切り替えた。車はもう国道に出ている。街路樹スレスレに走る。
「お、落ちますよ。先輩・・・!看護士!止めるか?」
「どのみち、助からんでもいい高齢者だあんなの!それはいい!おいところで!」
「は、はい!」しかし、手は差し伸べなかった。
「仲間になれよ!俺たちの仲間に・・・ぐあ!だんだんだんだん!」
宮川先生の背中に街路樹が連続して当たり、そのまま彼は後部へとはじき飛ばされた。
ドアは、何事もなかったように電動でスラ〜、ガチャンと閉まった。
「はあ、はあ・・・どあるう!植え込みに入ったようかな?」
PHSに連絡。
『トシキです。カテ中ですが、血栓を左前下行枝に認めました!閉塞寸前!さっきの胸痛の人!』
「そっかあ・・・やっぱさっきの胸痛はアンステーブル(不安定狭心症)だったんだな・・」
『ステント拡張しました。胸痛は改善』
心電図が正常なのに、胸痛だけ。しかし実は心筋梗塞の手前だった、という症例をこのとき初めて経験した(実際、ある)。
『先輩。お元気で。事務長と相談しましたら、超音波は、天引きということで』
「どある・・天引きは堪忍してえな!」
『先輩。DVD、すり替えられてたようなんです。知りませんか?』
「さ、さあな・・・貴重なデータでもあったのか?」
『病院の勢力図や、今後の計画が載ってますが・・内緒ですよ!』
ポケットをさぐった。割れてない。これは奈良でじっくり見ることにしよう・・・。
ふと、右側に影を感じた。
「ぐわあ!」右横にいきなりガマガエルの大きな口。
「わあっ!まだいたか!」
あくびをした、看護部長だった。
<次回、完結>
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