国家試験直前特集 ? 生活習慣と肝臓病 (参照:内科学会雑誌)
2007年2月7日 BMI=Body Mass Index(1m2あたりの体重)が25を越えた時点で肥満、とわが国では称される(米国では30以上となってる)。肥満に合併しやすいものとして、糖尿病・高脂肪血症・高血圧が挙げられるのは今や常識だが、最近では肝臓疾患、特に「非アルコール性脂肪肝疾患=Non-alcoholic fatty livet diseases = NAFLD」が注目されている。
これはつまり肝疾患≒アルコール性肝疾患+非アルコール性肝疾患であり、前者がいわゆる<アルコール性肝障害>、後者が「NAFLD」という内訳というか位置づけとなる。これ以外の肝臓疾患も多くはあるが、ウイルス・自己免疫疾患が除外できればたいていはこの2者が原因である。
アルコール肝障害は、酒を飲むのが悪いので同情の余地は無い・・・しかし一方のNAFLDは「酒を飲んでないのに酒飲みみたいな肝臓の病態」となる。具体的には脂肪肝から始まり、それにとどまらず肝硬変、ひいては肝癌にすら発展しかねない病態なので侮れない。
10年ほど前では、超音波検査で脂肪肝があっても「悪いものではない」と説明して罪はなかったが、現在その認識は変わってきている。様子見でよかったのが、実は「癌の合併がありうる」疾患なのである。今の医者にさえも、その新しい常識は浸透してない。
脂肪肝は脂肪が肝臓にたまるというものだが、肝硬変は全然違う。肝硬変は肝臓がガチガチに硬くなって萎縮した状態。ガチガチに固めているのが<線維>に化けた肝細胞。その<線維>はゆっくり時間をかけて肝臓を埋め尽くしたものである。この<線維化>というのが重要で、脂肪肝→肝硬変までの過程を進めるものである。しかしいきなり線維化の変化が始まるのではなく、まずは炎症細胞が肝組織に出現してくる。それに伴い線維化が進行してくる(この一連の変化をNASH=非アルコール性脂肪肝炎という)。この病理過程は、奇しくもアルコール性肝障害に類似したものである。つまり酒を飲んでもないのに酒を飲んだような肝臓になってしまう。
混乱するが、NAFLDという症候群の中で、最も進んだ病態がこのNASHということになる。NASHには診断基準があり、
? 非飲酒者
? 病理像で脂肪性肝炎(脂肪沈着、炎症、線維化など)の所見
? 他の肝疾患の否定
という内容で納得できる。
しかし、病理組織となると当然肝生検が必要なわけで、胃カメラ生検のような簡単なものでないだけにそうホイホイとはできないのが難点である。
今さらだが、これまで原因不明だった肝硬変・肝癌の犯人であった可能性が出てきたわけである。
順番からいうとまず肝細胞に脂肪が沈着(第一段階)。これの引き金に肥満・糖尿病・高脂血症などがある。次に炎症が起こる、すなわち脂肪性肝炎(第二段階)。この第二段階の機序が最重要なのだがよく分かっておらず、そのうち、脂肪酸蓄積によりDNAレベル障害→癌化をもたらすという<酸化ストレス>が注目されている。
肝心な治療だが、従来の脂肪肝に対しての運動療法・食事療法のほか、内服治療(フィブラート系:高脂血症治療薬の1つ、メトホルミン、ピオグリタゾン:糖尿病治療薬の一部など)が中心となる。病態の詳細がまだ解明されておらず、特異的な治療の開発がまだできていない。ただ重要な機序である<酸化ストレス>を阻害するための研究は進められている。その名も「抗酸化ストレス療法」。そのままやないか!具体的には瀉血、UDCAといった薬剤などだが、大規模な報告はまだない。
むすび。脂肪肝は以前うたわれていたような、良性疾患ではない。悪性になるかもしれない疾患である。だからといって脂肪肝全員に肝臓の生検を勧めるのは現実的ではない。だったらせめて、脂肪肝自体を未然に防ぐことである。できれば腹部超音波検査を受けて、そのような病態にならぬよう指導を受けてもらおう。
※ また情報があれば付け足します。
これはつまり肝疾患≒アルコール性肝疾患+非アルコール性肝疾患であり、前者がいわゆる<アルコール性肝障害>、後者が「NAFLD」という内訳というか位置づけとなる。これ以外の肝臓疾患も多くはあるが、ウイルス・自己免疫疾患が除外できればたいていはこの2者が原因である。
アルコール肝障害は、酒を飲むのが悪いので同情の余地は無い・・・しかし一方のNAFLDは「酒を飲んでないのに酒飲みみたいな肝臓の病態」となる。具体的には脂肪肝から始まり、それにとどまらず肝硬変、ひいては肝癌にすら発展しかねない病態なので侮れない。
10年ほど前では、超音波検査で脂肪肝があっても「悪いものではない」と説明して罪はなかったが、現在その認識は変わってきている。様子見でよかったのが、実は「癌の合併がありうる」疾患なのである。今の医者にさえも、その新しい常識は浸透してない。
脂肪肝は脂肪が肝臓にたまるというものだが、肝硬変は全然違う。肝硬変は肝臓がガチガチに硬くなって萎縮した状態。ガチガチに固めているのが<線維>に化けた肝細胞。その<線維>はゆっくり時間をかけて肝臓を埋め尽くしたものである。この<線維化>というのが重要で、脂肪肝→肝硬変までの過程を進めるものである。しかしいきなり線維化の変化が始まるのではなく、まずは炎症細胞が肝組織に出現してくる。それに伴い線維化が進行してくる(この一連の変化をNASH=非アルコール性脂肪肝炎という)。この病理過程は、奇しくもアルコール性肝障害に類似したものである。つまり酒を飲んでもないのに酒を飲んだような肝臓になってしまう。
混乱するが、NAFLDという症候群の中で、最も進んだ病態がこのNASHということになる。NASHには診断基準があり、
? 非飲酒者
? 病理像で脂肪性肝炎(脂肪沈着、炎症、線維化など)の所見
? 他の肝疾患の否定
という内容で納得できる。
しかし、病理組織となると当然肝生検が必要なわけで、胃カメラ生検のような簡単なものでないだけにそうホイホイとはできないのが難点である。
今さらだが、これまで原因不明だった肝硬変・肝癌の犯人であった可能性が出てきたわけである。
順番からいうとまず肝細胞に脂肪が沈着(第一段階)。これの引き金に肥満・糖尿病・高脂血症などがある。次に炎症が起こる、すなわち脂肪性肝炎(第二段階)。この第二段階の機序が最重要なのだがよく分かっておらず、そのうち、脂肪酸蓄積によりDNAレベル障害→癌化をもたらすという<酸化ストレス>が注目されている。
肝心な治療だが、従来の脂肪肝に対しての運動療法・食事療法のほか、内服治療(フィブラート系:高脂血症治療薬の1つ、メトホルミン、ピオグリタゾン:糖尿病治療薬の一部など)が中心となる。病態の詳細がまだ解明されておらず、特異的な治療の開発がまだできていない。ただ重要な機序である<酸化ストレス>を阻害するための研究は進められている。その名も「抗酸化ストレス療法」。そのままやないか!具体的には瀉血、UDCAといった薬剤などだが、大規模な報告はまだない。
むすび。脂肪肝は以前うたわれていたような、良性疾患ではない。悪性になるかもしれない疾患である。だからといって脂肪肝全員に肝臓の生検を勧めるのは現実的ではない。だったらせめて、脂肪肝自体を未然に防ぐことである。できれば腹部超音波検査を受けて、そのような病態にならぬよう指導を受けてもらおう。
※ また情報があれば付け足します。
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