だるいやつら ? 恐怖の3輪トラック!
2007年2月20日ドクターカーは吸い込まれるように前方の路地に突っ込み、やがてスレスレの塀に両側を挟まれた。
「進まないと、ぶつかるでしょうが後ろの自転車が!」運転手が興奮する。
「いや・・もういないぞ?」
「え?ほんと?うそやホンマか!」
右側がガシュ、と擦れた音がし、車は停車。その間さらにずズ、ズズズ、ズシ〜とさらに擦った。
「あ〜!あ〜!どうしよ〜!クビだ〜!クビや絶対クビやあ〜!」
「落ち着けよ!田中君!」
「ああ〜!なんで俺いっつもこうなんやぁ女運はついてないし失敗ばかりやし!」
「バックせないかんな・・・後ろハッチから降りようかな」
「くそ〜!しっかりせんかぁ!俺!はっはっ。はっはっ」
笑っているのではなく過換気。紙袋を習慣的に取り出す。
「はぁはぁ。ふぅふぅ」
彼は、ちょっとパニックっぽいところがあった。当院にカルテがあり、みな知っている。
僕はハッチを中から開けて、外に出た。
「バックするしかないな。左はまだ余裕ある。おい!ボケッとすんな!」
横になっている中野ナースを起こすためだ。
「ふげ?ずるずる。もう着いた?」
「どある・・・あんたも手伝えよ!」
それにしても、物音1つしない町だ・・・。
両側は木でできた塀がはるか高く・・・?
「おっと・・・」
見上げると、両側アパートの全窓から住民の怒ったような顔。
非常階段から見つめる親子。みな表情がない。次々と人数が増えてくる。
「こりゃ、早く引き上げないとな。それかSOSを・・」
携帯を取り出すが、受信できてない。
するとドクターカー前方から、ガラガラガラ・・・とエンジンのような音が聞こえてきた。
「ふんげげげ!トラックトラック!」
「なに?」
車に乗りあがってみると、確かに・・・あれは今は懐かし、三輪トラックだ。
「塀を押しのけながら来てるぞ!バックバック!田中くん!」
「はぁはぁひぃひぃふぅふぅ」まだ紙袋している。
「アカンなこりゃ・・代われ!うっ?」
コンコンコン!と助手席を叩くナース。
「誘導しまっせ!後ろは何もなし!」
「アホ!降りるなよ!乗らんか!」
音は次第に大きくなる。止まる気配がない。
ナースはゆっくり乗った。
「手伝えいうたり、乗れいうたり、わっけ分からんわ・・」
ペダルを踏んだと思ったら、ガクンと車体が前後に揺れた。
「な・・・!これマニュアル車だったのか!」
マニュアル車なんて、もう5年以上乗ってない。
エンジンをかけ直し、クラッチ徐々に解除。ぎこちないが、ブウンブウンとバックし始めた。
ナースは天井に腕をぶらさげた。
「あらら。運転のへたなこと!今、左すったで」
「そんな場合じゃない!」
延々とバックして、交差点とはいえないような小さな通りに出た。
「中野さん!両側から来てないか?見てくれ!」
「あたしゃ視力が悪ぅて・・・」
「急げ!わあ!」
振動で運転席までバックし、足がペダルから離れた。
車はかまわず交差点へ突っ込んだ。
「あわわわ!」思わず握ったハンドブレーキで、これまた大きく揺れ止まった。
交差点を通り過ぎ、即座に右折の準備。トラックはもうそこまで来てる。
3輪トラックの顔が怒って見える。
「とあ!」ハンドルをきり、とにかく右の電柱がぶつからないように・・なんとか避けれた。左は見てなかったが大丈夫のようだ。
「よし!よし!」
そのまま、緩やかなカーブの道を進む。当然一車線分だ。しかもナビの登録地点に近づいてる。なるほど、大きな一軒家が見えてきた。そこと見た。
なんで往診でここまで苦しまんといかんのだ・・・!
「横に広い公園があるな。ここに止めて・・うっ?」
なんと、救急車がもう1台止まってるではないか!ハザードが点滅している。
<なにや救急病院>とある。当時のライバル病院だ。
白衣を着た数人が、横の大きな一軒家に向かって堂々と歩いている。
そうか。もう1病院往診をお願いしたってことだもんな。先を越されたか。
田中君はやっと紙袋を離した。
「ひぃふぅ・・やっと落ち着きました」
「もうちょっと休んだら?どうせ往診は先を越されたし」
「い、いや!まだです!」
「はあ?」
「この大きな一軒家は3階建てですよね?電話では2階建てって」
「じゃ・・あいつらが間違ってるのか?」
「すると、2階建てであっそうだ。茶色の建物・・」
「ちゃいろ?」
「あっ!あれだ!」
それは、確かにあった。右側に。木造で、かなり年月を感じさせるものだった。
障子が所々見えるが、ことごとく破れている。
僕ら3人は、とりあえず降りた。
誰も歩かない。
「お、おい。歩け!歩けったら!ここなんだろ田中くん!」
「そうだともいえるし、そうでないともいえます」
僕の嫌いな、彼の口癖だった。しかし医療関係者には、よくいる。
「進まないと、ぶつかるでしょうが後ろの自転車が!」運転手が興奮する。
「いや・・もういないぞ?」
「え?ほんと?うそやホンマか!」
右側がガシュ、と擦れた音がし、車は停車。その間さらにずズ、ズズズ、ズシ〜とさらに擦った。
「あ〜!あ〜!どうしよ〜!クビだ〜!クビや絶対クビやあ〜!」
「落ち着けよ!田中君!」
「ああ〜!なんで俺いっつもこうなんやぁ女運はついてないし失敗ばかりやし!」
「バックせないかんな・・・後ろハッチから降りようかな」
「くそ〜!しっかりせんかぁ!俺!はっはっ。はっはっ」
笑っているのではなく過換気。紙袋を習慣的に取り出す。
「はぁはぁ。ふぅふぅ」
彼は、ちょっとパニックっぽいところがあった。当院にカルテがあり、みな知っている。
僕はハッチを中から開けて、外に出た。
「バックするしかないな。左はまだ余裕ある。おい!ボケッとすんな!」
横になっている中野ナースを起こすためだ。
「ふげ?ずるずる。もう着いた?」
「どある・・・あんたも手伝えよ!」
それにしても、物音1つしない町だ・・・。
両側は木でできた塀がはるか高く・・・?
「おっと・・・」
見上げると、両側アパートの全窓から住民の怒ったような顔。
非常階段から見つめる親子。みな表情がない。次々と人数が増えてくる。
「こりゃ、早く引き上げないとな。それかSOSを・・」
携帯を取り出すが、受信できてない。
するとドクターカー前方から、ガラガラガラ・・・とエンジンのような音が聞こえてきた。
「ふんげげげ!トラックトラック!」
「なに?」
車に乗りあがってみると、確かに・・・あれは今は懐かし、三輪トラックだ。
「塀を押しのけながら来てるぞ!バックバック!田中くん!」
「はぁはぁひぃひぃふぅふぅ」まだ紙袋している。
「アカンなこりゃ・・代われ!うっ?」
コンコンコン!と助手席を叩くナース。
「誘導しまっせ!後ろは何もなし!」
「アホ!降りるなよ!乗らんか!」
音は次第に大きくなる。止まる気配がない。
ナースはゆっくり乗った。
「手伝えいうたり、乗れいうたり、わっけ分からんわ・・」
ペダルを踏んだと思ったら、ガクンと車体が前後に揺れた。
「な・・・!これマニュアル車だったのか!」
マニュアル車なんて、もう5年以上乗ってない。
エンジンをかけ直し、クラッチ徐々に解除。ぎこちないが、ブウンブウンとバックし始めた。
ナースは天井に腕をぶらさげた。
「あらら。運転のへたなこと!今、左すったで」
「そんな場合じゃない!」
延々とバックして、交差点とはいえないような小さな通りに出た。
「中野さん!両側から来てないか?見てくれ!」
「あたしゃ視力が悪ぅて・・・」
「急げ!わあ!」
振動で運転席までバックし、足がペダルから離れた。
車はかまわず交差点へ突っ込んだ。
「あわわわ!」思わず握ったハンドブレーキで、これまた大きく揺れ止まった。
交差点を通り過ぎ、即座に右折の準備。トラックはもうそこまで来てる。
3輪トラックの顔が怒って見える。
「とあ!」ハンドルをきり、とにかく右の電柱がぶつからないように・・なんとか避けれた。左は見てなかったが大丈夫のようだ。
「よし!よし!」
そのまま、緩やかなカーブの道を進む。当然一車線分だ。しかもナビの登録地点に近づいてる。なるほど、大きな一軒家が見えてきた。そこと見た。
なんで往診でここまで苦しまんといかんのだ・・・!
「横に広い公園があるな。ここに止めて・・うっ?」
なんと、救急車がもう1台止まってるではないか!ハザードが点滅している。
<なにや救急病院>とある。当時のライバル病院だ。
白衣を着た数人が、横の大きな一軒家に向かって堂々と歩いている。
そうか。もう1病院往診をお願いしたってことだもんな。先を越されたか。
田中君はやっと紙袋を離した。
「ひぃふぅ・・やっと落ち着きました」
「もうちょっと休んだら?どうせ往診は先を越されたし」
「い、いや!まだです!」
「はあ?」
「この大きな一軒家は3階建てですよね?電話では2階建てって」
「じゃ・・あいつらが間違ってるのか?」
「すると、2階建てであっそうだ。茶色の建物・・」
「ちゃいろ?」
「あっ!あれだ!」
それは、確かにあった。右側に。木造で、かなり年月を感じさせるものだった。
障子が所々見えるが、ことごとく破れている。
僕ら3人は、とりあえず降りた。
誰も歩かない。
「お、おい。歩け!歩けったら!ここなんだろ田中くん!」
「そうだともいえるし、そうでないともいえます」
僕の嫌いな、彼の口癖だった。しかし医療関係者には、よくいる。
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