だるいやつら ? Hard To Say I’m Sorry
2007年3月5日 エビバディニドゥリィルタ〜イムエ〜ィ!
(ここだけは口ずさめるように!)
※ 五木ひろしを思い出したあなたはコア!誰か〜話をしよう!
http://www-scf.usc.edu/~osmosis/lyrics/hardToSaySorry.html
団地の真っ只中に駐車。見上げると、5つの高層ビルのような建物が、こっちに落ちてきそうに見下ろしている。
僕とナースは、タンと地面に飛び降りた。
「さ、行くか・・・」
荷物を全部持たせ、呼び鈴。
『はい』
「定岡さんですか・・・真田病院です」
『(ガチャ)』
「・・・・・・・」
即座にグーン、と開く自動ドア。中で早速待ち構えるビデオカメラ。
「すげえ、高い天井だなあ・・」
マンションだ。この頃はまだ真吾が家を買っておらず、マンションを買うかどうか話していた。
マンションがいいか、家がいいかは議論されるところだ。
マンションは駅・施設などへの利便性が(通常)図られるのが大きなメリットだ。便利な場所なら年を取っても生活は楽だろうし、子孫に資産として残す考え方もある(ただしその価値は1年で半分以下になると考えたほうがいい)。ドクターでは2・3年目にしてすでに購入する者もいる。彼らの場合、必要によっては売り払って引っ越せばいいという考えが多く、そこが並みの感覚ではない。
家は場所がいいほど土地の値段が高騰するし、たいてい一生住む責任を負うことになる。広ければ同居なども視野に入れることになる。しかしマンションのように<隣に誰がいるか分からない>不安もなく、煩わしい組合に入らなくていい。共益費もなく、立体駐車場の前で並ぶ必要もない。何よりも、<マイホーム>に住むという幸福感・充実感・達成感は何ものにも変え難い。
エレベーターを降りて・・・右。
「失礼します!」薄暗い廊下をのっし、のっしと歩く。
「どうも〜」奥で高齢のヘルパーさんが正座している。
テーブルにはご丁寧にお茶が用意。
近くの床のふとんで、じいさんは寝ていた。いや起きている。
「はらがね・・・ちょ、ちょっとはらがね」
「ええ、ええ。痛いんですね?」
ナースは血圧、脈拍、SpO2、熱を測定。
僕は眼瞼結膜、聴診、触診を。
「定岡さん。痛いのは・・ここ?」上腹部を押さえる。
「ふんむ。そこであある!」70台の和尚さんのようなじいさんだ。
「ヘルパーさん。家の人は?」
「同居なんですが、息子夫婦はお仕事で。私が変わりに」
「そっか」
「何か?」
この<何か?>はドラマ同様、やめたほうがいい言い方だ。血が通ってない。
「貧血ぎみだな。痛みは・・いきなり?」ヘルパーに聞く。
「聞いてみます。定岡さん!」
「(どある・・・聞いとけよな)」
「せんせいがね!いきなりいたくなったかって!」
「・・・・・・」
「そうかもしれない、と」
「・・・・・・」
僕らも聞いたが、そこはハッキリしなかった。
超音波で確認。採血し、ポータブル心電図を取りにいってもらう。
「超音波では胆石なし、膵臓も所見なし、心電図正常やし心臓の壁運動は異常なし心嚢液もない」
「ええ〜っと!」ヘルパーがメモを取ろうとしている。
「以上です!ヘルパーさん。便は?」
「は?はい?」どうやら、聞いてなかったようだ。
「あの・・・便は出ているかと」
「ベン?便?ああはいはい、便ね!便が、何か?」
「出たかと・・」
「さだおかさん!べんは?べんは!」
日が暮れる・・・。
便秘とのこと。
「確かに、場所からして・・・残るは胃・十二指腸かな?」
となりのFAXから、カチャカチャ・・と進む用紙。
「田中くん。早いな」
シャーッと流れた用紙を、ナースがパシッとつかまえた。
「え〜!いきますよ!・・・ぶつぶつ」
「かせ!」イライラして、奪った。
「どうですか!」図々しく、おばさんヘルパーがのぞく。ハアハア息遣いが荒い。
「ちょ、ちょっと・・!ええと、白血球がやや多め、貧血は軽度、炎症反応がこれも軽度」
「ということは、ハッキリしないと?」
「誰もそんなこと言ってません。何らかの炎症があるのは確かだと」
「はあ。それしか分からんわけやね?先生をもってしても」
「うぐぐ・・・!」
中野ナースも伝票を見つめた。
「ま、カゼかなあ?」
「安易に言うな!・・・レントゲンはないけど、腹は膨張してる。水ではないけど、便がどんなのか・・・イレウスも否定しないとな」
「病名は何?」
「だまれ考え中!既往は詳細不明だけど、喫煙歴はあるようだな。そういや心臓が見えにくかった・・・つまりそれぐらい吸ってる」
「あの。なんか頼りないんですが」おばさんヘルパーはムッと不機嫌になっていた。
「あのね。腸閉塞、それと虚血性の腸炎の疑いがありまして」
「どっちですか?」
「それは、さらに詳しく検査をして」
「結局、病院に受診ですか?あたし、都合がどうしても」
「近くの病院に行くにしても、同伴はおられたほうが」
「あたし、もうあと1時間の契約ですねん」
「そこをその・・・なんとか」
「では、うちの病院にダイレクトに入院を」
その場で携帯を押す。
「品川事務長を・・・・」
「・・・・・」ヘルパーは上目遣いで睨んでいる。
「おい!孔明!お前、どこ行ってたんだ!まあいい!ところで!」
ベッドの空き具合を確認。
「そしたら、いったんそちらへ送るから。何?いいって?」
『当院から、ドクターカー2号を送ります』
「いいのか?」
『西成の方は、ちょっとお急ぎなんですよ』
「お急ぎって・・往診に急ぎがあるのか?」
『とにかく、そちらへ1台向かわせますので』
「どれくらいで着く?ヘルパーさんはあと1時間・・・」
『間に合うともいえるし、そうでないともいえますガチャ』
僕はヘルパー、じいさんに説明。
ナースが便をほじくりだしていた。
「先生。便、これ」
手袋の指先。黒くなく、むしろ赤い。
「上部じゃなく、下部消化管か」
虚血性を含む大腸炎、大腸癌、憩室炎・・などなど。
消化管は食べ物が通るところなので、食事しながらの生活はとりあえず中止してもらう。なので入院点滴することに。
僕とナースは車に乗り込んだ。田中君がエンジン始動。
「けっこう、時間かかってましたね?」
「ああ。病気って、探せば見つかるもんだな」
「怖いこと、言わんでくださいよ!で。悪化するおそれありますか?」
素直に答えようとはせず・・・
「すう〜(吸気)・・・・そうでもあるし!そうでないとも、いえます!」
夕陽が・・・そろそろ落ちてきそうだ。
(ここだけは口ずさめるように!)
※ 五木ひろしを思い出したあなたはコア!誰か〜話をしよう!
http://www-scf.usc.edu/~osmosis/lyrics/hardToSaySorry.html
団地の真っ只中に駐車。見上げると、5つの高層ビルのような建物が、こっちに落ちてきそうに見下ろしている。
僕とナースは、タンと地面に飛び降りた。
「さ、行くか・・・」
荷物を全部持たせ、呼び鈴。
『はい』
「定岡さんですか・・・真田病院です」
『(ガチャ)』
「・・・・・・・」
即座にグーン、と開く自動ドア。中で早速待ち構えるビデオカメラ。
「すげえ、高い天井だなあ・・」
マンションだ。この頃はまだ真吾が家を買っておらず、マンションを買うかどうか話していた。
マンションがいいか、家がいいかは議論されるところだ。
マンションは駅・施設などへの利便性が(通常)図られるのが大きなメリットだ。便利な場所なら年を取っても生活は楽だろうし、子孫に資産として残す考え方もある(ただしその価値は1年で半分以下になると考えたほうがいい)。ドクターでは2・3年目にしてすでに購入する者もいる。彼らの場合、必要によっては売り払って引っ越せばいいという考えが多く、そこが並みの感覚ではない。
家は場所がいいほど土地の値段が高騰するし、たいてい一生住む責任を負うことになる。広ければ同居なども視野に入れることになる。しかしマンションのように<隣に誰がいるか分からない>不安もなく、煩わしい組合に入らなくていい。共益費もなく、立体駐車場の前で並ぶ必要もない。何よりも、<マイホーム>に住むという幸福感・充実感・達成感は何ものにも変え難い。
エレベーターを降りて・・・右。
「失礼します!」薄暗い廊下をのっし、のっしと歩く。
「どうも〜」奥で高齢のヘルパーさんが正座している。
テーブルにはご丁寧にお茶が用意。
近くの床のふとんで、じいさんは寝ていた。いや起きている。
「はらがね・・・ちょ、ちょっとはらがね」
「ええ、ええ。痛いんですね?」
ナースは血圧、脈拍、SpO2、熱を測定。
僕は眼瞼結膜、聴診、触診を。
「定岡さん。痛いのは・・ここ?」上腹部を押さえる。
「ふんむ。そこであある!」70台の和尚さんのようなじいさんだ。
「ヘルパーさん。家の人は?」
「同居なんですが、息子夫婦はお仕事で。私が変わりに」
「そっか」
「何か?」
この<何か?>はドラマ同様、やめたほうがいい言い方だ。血が通ってない。
「貧血ぎみだな。痛みは・・いきなり?」ヘルパーに聞く。
「聞いてみます。定岡さん!」
「(どある・・・聞いとけよな)」
「せんせいがね!いきなりいたくなったかって!」
「・・・・・・」
「そうかもしれない、と」
「・・・・・・」
僕らも聞いたが、そこはハッキリしなかった。
超音波で確認。採血し、ポータブル心電図を取りにいってもらう。
「超音波では胆石なし、膵臓も所見なし、心電図正常やし心臓の壁運動は異常なし心嚢液もない」
「ええ〜っと!」ヘルパーがメモを取ろうとしている。
「以上です!ヘルパーさん。便は?」
「は?はい?」どうやら、聞いてなかったようだ。
「あの・・・便は出ているかと」
「ベン?便?ああはいはい、便ね!便が、何か?」
「出たかと・・」
「さだおかさん!べんは?べんは!」
日が暮れる・・・。
便秘とのこと。
「確かに、場所からして・・・残るは胃・十二指腸かな?」
となりのFAXから、カチャカチャ・・と進む用紙。
「田中くん。早いな」
シャーッと流れた用紙を、ナースがパシッとつかまえた。
「え〜!いきますよ!・・・ぶつぶつ」
「かせ!」イライラして、奪った。
「どうですか!」図々しく、おばさんヘルパーがのぞく。ハアハア息遣いが荒い。
「ちょ、ちょっと・・!ええと、白血球がやや多め、貧血は軽度、炎症反応がこれも軽度」
「ということは、ハッキリしないと?」
「誰もそんなこと言ってません。何らかの炎症があるのは確かだと」
「はあ。それしか分からんわけやね?先生をもってしても」
「うぐぐ・・・!」
中野ナースも伝票を見つめた。
「ま、カゼかなあ?」
「安易に言うな!・・・レントゲンはないけど、腹は膨張してる。水ではないけど、便がどんなのか・・・イレウスも否定しないとな」
「病名は何?」
「だまれ考え中!既往は詳細不明だけど、喫煙歴はあるようだな。そういや心臓が見えにくかった・・・つまりそれぐらい吸ってる」
「あの。なんか頼りないんですが」おばさんヘルパーはムッと不機嫌になっていた。
「あのね。腸閉塞、それと虚血性の腸炎の疑いがありまして」
「どっちですか?」
「それは、さらに詳しく検査をして」
「結局、病院に受診ですか?あたし、都合がどうしても」
「近くの病院に行くにしても、同伴はおられたほうが」
「あたし、もうあと1時間の契約ですねん」
「そこをその・・・なんとか」
「では、うちの病院にダイレクトに入院を」
その場で携帯を押す。
「品川事務長を・・・・」
「・・・・・」ヘルパーは上目遣いで睨んでいる。
「おい!孔明!お前、どこ行ってたんだ!まあいい!ところで!」
ベッドの空き具合を確認。
「そしたら、いったんそちらへ送るから。何?いいって?」
『当院から、ドクターカー2号を送ります』
「いいのか?」
『西成の方は、ちょっとお急ぎなんですよ』
「お急ぎって・・往診に急ぎがあるのか?」
『とにかく、そちらへ1台向かわせますので』
「どれくらいで着く?ヘルパーさんはあと1時間・・・」
『間に合うともいえるし、そうでないともいえますガチャ』
僕はヘルパー、じいさんに説明。
ナースが便をほじくりだしていた。
「先生。便、これ」
手袋の指先。黒くなく、むしろ赤い。
「上部じゃなく、下部消化管か」
虚血性を含む大腸炎、大腸癌、憩室炎・・などなど。
消化管は食べ物が通るところなので、食事しながらの生活はとりあえず中止してもらう。なので入院点滴することに。
僕とナースは車に乗り込んだ。田中君がエンジン始動。
「けっこう、時間かかってましたね?」
「ああ。病気って、探せば見つかるもんだな」
「怖いこと、言わんでくださいよ!で。悪化するおそれありますか?」
素直に答えようとはせず・・・
「すう〜(吸気)・・・・そうでもあるし!そうでないとも、いえます!」
夕陽が・・・そろそろ落ちてきそうだ。
コメント