? 問題ナースをかばった医師の一例 <後編>
2007年8月9日<ER的出だし>
ドンドンドンドコ!
「血管拡張後。心不全のフォレスター?型です」
「IABPで血圧を押し上げてるけど」
「ユウキ先生の足元の伝票が、そんなにおかしい?」
「IABPで血圧を押し上げてるけど」
「対ショック!対閃光、防御!」
「IABPで血圧を押し上げてるけど」
「うれしいね」(エレベーター、閉)
「あいえー・・聞いてるのかカーター!」
(音楽、最高潮)
< 後編 ナースの逆襲
YUUKI , SHUT THE FUCK UP ! >
モニター音にぎやかなCCUでの、申し送り中。
僕を追い詰める、上司ナース。
「先生はね。新人をそうやって助けようとするけどね」
「あ、わり〜わり〜」
「聞いて。それであたしらがどんだけ迷惑してるか分かってるんですか」
「・・・・・」今度は僕が貝になった。
「これまでもそうよね。新人が分らないことがあったら先生ら、鼻の下伸ばしてホイホイ教えてたけど」
「・・・・ああ」
「そう簡単に教えたらね。彼らってね。先生。今どきの子らってね。自分で苦しんで調べようとしないんですよ」
「調べる・・そ、そうだな」
「それとね。ユウキ先生にはもう1つ、言いたいことがあります」
「なっ・・・?」
(沈黙)
「先生。この間この子がね。心不全になった腎不全を受け持ったの覚えてます?」
「ああ、この前な」
「ようやく水分制限して透析して治りかけたあと、また再発しかけましたよね」
「・・・だったかな。はいはい」
「原因はね。知ってると思うけどあの子だったんだけど。水分制限の量を間違えて」
「多めに飲ませた。あったな」
「そうよ。でね。あたし、先生のいる前でこの子のこと叱りましたよね」
「ああ。そうだった」
「そのあと先生、新人に何て言いました?なんて?」
「え〜と・・・たしか・・・」
(沈黙)
「<次からは、気をつけるように>」
「ウソ」
「いや・・・それは言ったよ?」(←以下、ちょっとコバッチュっぽく)
「その前」(←以下、アビーっぽく)
「その前?覚えてない」
「そのま〜え」
「覚えてないんだから。しょうがないだろう」
「あたし。知ってる。ユウキ先生はね、その前に・・・こう言ったの。<もういいよ>って」
「・・・。いやそれは!そういう意味じゃなくて!」
「でも言った」
「言葉のアヤだ!僕はどうでもいいって意味で言ったんじゃない!」
「あーらじゃあ何?」
「君は言い過ぎてた!だからつい言葉が出た!」
「やっぱそうじゃない」
「情けが出ることもある!」
「じゃあ患者は?」
「う!」
「患者は肺水腫という水のなかで窒息した。外は空気なのに中は水」
「彼女だって反省してる!」
「なんで分かるの?」
「君の部下だから!」
「ゴマすっても遅いわ。申し送り続ける。部外者は出て」
コバッチュ、外へ押しやられる。
「るっ!かっ!・・・・ああ」
(CM)
再び、円陣。
「強心剤と、それと?先生は黙っててくださいよ」
「うぃ・・・」僕は黙った。
新人は泣きそうな顔で見上げた。
「IABPです」
「ふ〜ん。何の略?」
「I・・・Iは・・・」
「(側近)プっ!アホやこいつ・・・」
(沈黙)
「もういいわ。時間ないから。強心剤で血圧下がるの気をつけろって、主治医の先生がのたまってたよね。スズキさん」
「はい」
「なんで?」
「え・・・」
「強心剤で血圧下がるかもって言ったら、今あんた<はい>って言ったよねー」
「は・・・」
「なんで?周りの人たちに教えてあげてよ」
「・・・・」
「なに?またユウキ先生からの愛のメッセージ待ってんの?」
「(側近のみ)ブハハハハ!」
「ほおら先生!ケケケ!ユウキ先生!笑われてるよ!キキ!」
(沈黙)
新人はまた真っ赤になっていた。
「血圧が・・・血圧が下がるのは・・・」
「血圧下がったら、悪くなるやないの。強心剤ってそんなことするお薬なの?」
「いえ。心臓の収縮力を・・・」
「ふうん。強心剤って、心臓の収縮力を強くする・・それだけなの?へえ〜」
「(側近)へ〜え!」
「あたし、教えたんだけど」
(沈黙)
上司ナースは側近を一瞥。
「(側近)バカやなあ。末梢の血管を拡げるんやろがあ!ほやから血圧下がるんや!ブヘッ!ブヘッ!」
上司ナースは新人から目をそらさず。
「あ〜あ。もう30分も経ってしまって。これ全部、だあれかさんのお陰なのよ」
「・・・・・」
「自分の能力について、どう思うの?」
「能力・・ないです」
「能力なかったら、ここ辞めないかんやん」
「いえ!いえ!その・・・」
「やるつもり。なんですか?」
「そ、そうです。やります!やります!」
「アンタ。もう半年もしたら新人がまた入ってくるのよ。今みたいに何もできなかったら、笑われるよ。あたしは別にい〜けど」
「やります。やりますやりますから・・・」
「すまないって思うんだったらね。今から1人ずつ回って。<すみません私が悪かったですこれから1からやらせてください>って謝ってちょうだい」
「は、はい!」
カンファが終わるとすぐさま、新人はあちこち走りまわった。
「すみません私が悪かったですこれから1からやらせてください!」
「(別ナース)ええっ?いいってそこまで!」
「すみません私が悪かったですこれから1からやらせてください!」
「(別ナース)がんばろがんばろ!」
「ずみまぜん私が悪がだでずこれからいひからやらへてください!ひっ!」
「(側近)ちゃんとやれちゃんと!」
「ずびばべんごれひっ!やらへひっ!くだひひっ!」
そして、新人は僕のとこにやってきた。顔は原型をとどめてなかった。
「ぜんぜずびまへ!ずびまへ!」
「あわわ・・・ああ。うんうん」
彼女の向こう、腕組みしている上司ナース。両側に側近。
「先生。あとでカテ室の奥(シネフィルム倉庫)ででも、慰めてあげたら?」
「なんだよそれ?」
「循環器の先生って、けっこうそこでイチャイチャするって聞くよ(事実)」
「あのなあ・・・」
病棟業務を終わり、病院の外へ。
「ふ〜・・・厳しくせないかんのは、分かってますって分かってますって」
すると、いきなり玄関前に止まる車。
「先生。飲みいこうや。飲み」
CCUの中堅クラスだ。さっきの輪の安全圏にいた。
「そうだな〜このまま帰るのもなんやし」
後部ドアから、入る。
「じゃ、たのんだ!」
すると正面助手席の女が、ゆっくり振り向いた。
さっきの上司ナースだ!
「先生。飲み屋で、さっきの続きやるから」
「ンノオオオオオオオオオオオッ!」
ピコーン、ピコーンとカラータイマーが鳴った。
「コバッチュ!い、いやシュワッ!」
ドカン、天井に頭を打ってそのまま気絶した。
ブウ〜、と車は闇へと消えていく。徹夜で説教・・・・僕はそのまま、フラフラで外来業務へと入った。
彼女らは・・・休みだった。
ドンドンドンドコ!
「血管拡張後。心不全のフォレスター?型です」
「IABPで血圧を押し上げてるけど」
「ユウキ先生の足元の伝票が、そんなにおかしい?」
「IABPで血圧を押し上げてるけど」
「対ショック!対閃光、防御!」
「IABPで血圧を押し上げてるけど」
「うれしいね」(エレベーター、閉)
「あいえー・・聞いてるのかカーター!」
(音楽、最高潮)
< 後編 ナースの逆襲
YUUKI , SHUT THE FUCK UP ! >
モニター音にぎやかなCCUでの、申し送り中。
僕を追い詰める、上司ナース。
「先生はね。新人をそうやって助けようとするけどね」
「あ、わり〜わり〜」
「聞いて。それであたしらがどんだけ迷惑してるか分かってるんですか」
「・・・・・」今度は僕が貝になった。
「これまでもそうよね。新人が分らないことがあったら先生ら、鼻の下伸ばしてホイホイ教えてたけど」
「・・・・ああ」
「そう簡単に教えたらね。彼らってね。先生。今どきの子らってね。自分で苦しんで調べようとしないんですよ」
「調べる・・そ、そうだな」
「それとね。ユウキ先生にはもう1つ、言いたいことがあります」
「なっ・・・?」
(沈黙)
「先生。この間この子がね。心不全になった腎不全を受け持ったの覚えてます?」
「ああ、この前な」
「ようやく水分制限して透析して治りかけたあと、また再発しかけましたよね」
「・・・だったかな。はいはい」
「原因はね。知ってると思うけどあの子だったんだけど。水分制限の量を間違えて」
「多めに飲ませた。あったな」
「そうよ。でね。あたし、先生のいる前でこの子のこと叱りましたよね」
「ああ。そうだった」
「そのあと先生、新人に何て言いました?なんて?」
「え〜と・・・たしか・・・」
(沈黙)
「<次からは、気をつけるように>」
「ウソ」
「いや・・・それは言ったよ?」(←以下、ちょっとコバッチュっぽく)
「その前」(←以下、アビーっぽく)
「その前?覚えてない」
「そのま〜え」
「覚えてないんだから。しょうがないだろう」
「あたし。知ってる。ユウキ先生はね、その前に・・・こう言ったの。<もういいよ>って」
「・・・。いやそれは!そういう意味じゃなくて!」
「でも言った」
「言葉のアヤだ!僕はどうでもいいって意味で言ったんじゃない!」
「あーらじゃあ何?」
「君は言い過ぎてた!だからつい言葉が出た!」
「やっぱそうじゃない」
「情けが出ることもある!」
「じゃあ患者は?」
「う!」
「患者は肺水腫という水のなかで窒息した。外は空気なのに中は水」
「彼女だって反省してる!」
「なんで分かるの?」
「君の部下だから!」
「ゴマすっても遅いわ。申し送り続ける。部外者は出て」
コバッチュ、外へ押しやられる。
「るっ!かっ!・・・・ああ」
(CM)
再び、円陣。
「強心剤と、それと?先生は黙っててくださいよ」
「うぃ・・・」僕は黙った。
新人は泣きそうな顔で見上げた。
「IABPです」
「ふ〜ん。何の略?」
「I・・・Iは・・・」
「(側近)プっ!アホやこいつ・・・」
(沈黙)
「もういいわ。時間ないから。強心剤で血圧下がるの気をつけろって、主治医の先生がのたまってたよね。スズキさん」
「はい」
「なんで?」
「え・・・」
「強心剤で血圧下がるかもって言ったら、今あんた<はい>って言ったよねー」
「は・・・」
「なんで?周りの人たちに教えてあげてよ」
「・・・・」
「なに?またユウキ先生からの愛のメッセージ待ってんの?」
「(側近のみ)ブハハハハ!」
「ほおら先生!ケケケ!ユウキ先生!笑われてるよ!キキ!」
(沈黙)
新人はまた真っ赤になっていた。
「血圧が・・・血圧が下がるのは・・・」
「血圧下がったら、悪くなるやないの。強心剤ってそんなことするお薬なの?」
「いえ。心臓の収縮力を・・・」
「ふうん。強心剤って、心臓の収縮力を強くする・・それだけなの?へえ〜」
「(側近)へ〜え!」
「あたし、教えたんだけど」
(沈黙)
上司ナースは側近を一瞥。
「(側近)バカやなあ。末梢の血管を拡げるんやろがあ!ほやから血圧下がるんや!ブヘッ!ブヘッ!」
上司ナースは新人から目をそらさず。
「あ〜あ。もう30分も経ってしまって。これ全部、だあれかさんのお陰なのよ」
「・・・・・」
「自分の能力について、どう思うの?」
「能力・・ないです」
「能力なかったら、ここ辞めないかんやん」
「いえ!いえ!その・・・」
「やるつもり。なんですか?」
「そ、そうです。やります!やります!」
「アンタ。もう半年もしたら新人がまた入ってくるのよ。今みたいに何もできなかったら、笑われるよ。あたしは別にい〜けど」
「やります。やりますやりますから・・・」
「すまないって思うんだったらね。今から1人ずつ回って。<すみません私が悪かったですこれから1からやらせてください>って謝ってちょうだい」
「は、はい!」
カンファが終わるとすぐさま、新人はあちこち走りまわった。
「すみません私が悪かったですこれから1からやらせてください!」
「(別ナース)ええっ?いいってそこまで!」
「すみません私が悪かったですこれから1からやらせてください!」
「(別ナース)がんばろがんばろ!」
「ずみまぜん私が悪がだでずこれからいひからやらへてください!ひっ!」
「(側近)ちゃんとやれちゃんと!」
「ずびばべんごれひっ!やらへひっ!くだひひっ!」
そして、新人は僕のとこにやってきた。顔は原型をとどめてなかった。
「ぜんぜずびまへ!ずびまへ!」
「あわわ・・・ああ。うんうん」
彼女の向こう、腕組みしている上司ナース。両側に側近。
「先生。あとでカテ室の奥(シネフィルム倉庫)ででも、慰めてあげたら?」
「なんだよそれ?」
「循環器の先生って、けっこうそこでイチャイチャするって聞くよ(事実)」
「あのなあ・・・」
病棟業務を終わり、病院の外へ。
「ふ〜・・・厳しくせないかんのは、分かってますって分かってますって」
すると、いきなり玄関前に止まる車。
「先生。飲みいこうや。飲み」
CCUの中堅クラスだ。さっきの輪の安全圏にいた。
「そうだな〜このまま帰るのもなんやし」
後部ドアから、入る。
「じゃ、たのんだ!」
すると正面助手席の女が、ゆっくり振り向いた。
さっきの上司ナースだ!
「先生。飲み屋で、さっきの続きやるから」
「ンノオオオオオオオオオオオッ!」
ピコーン、ピコーンとカラータイマーが鳴った。
「コバッチュ!い、いやシュワッ!」
ドカン、天井に頭を打ってそのまま気絶した。
ブウ〜、と車は闇へと消えていく。徹夜で説教・・・・僕はそのまま、フラフラで外来業務へと入った。
彼女らは・・・休みだった。
コメント