? スタッフを甘やかした開業医の一例 (前編)
2007年8月9日「ムウウ・・くそ〜っ。今日は患者が来んな・・・」
開業医をオープンして数か月。客はいっこうに増えず。しかし従業員への風当たりは厳しかった。
事務員2人が、パソコンと睨めっこ(たぶん寝ている)。
ナース1人もリハビリで電気治療中。
暇ではあるが、院長の緊迫した視線がかなりストレスだった。
残業代や時給アップの要請があったが、院長はほったらかし。
1人、患者が到着。
「ほ、ほら来た!コラッ!ボケボケす、すんな!」
診察室へ戻る院長。しばらく待つと、若い方の事務員がカルテを持参。
「風邪だそうです。院長先生」
「わわ、わしが診てもないのに、しし!診断なんかすっな!」
若い男性が入室。
「咳と痰が出て。風邪だと思うけど」
「いやいや、分からんぞ」
喉、胸を診察。
「う〜ん・・・」
「風邪でしょう?」
「いや、扁桃炎だな・・・それも急性の」
「同じじゃないんですか?」
「ち、ちがうわいっ。げ、厳密には!」
「じゃ、薬を・・」
院長は、最近の収益が少ないのを思い出した。
「て、点滴していかんか?」
「時間ない。あんなの、してもおんなじだろ?」
「お、おんなじではないよう!」
「何、入ってるの?どうせブドウ糖くらいだろ?」
「うぬぬ・・・!で、では去痰剤の吸入。ついでに咽頭の培養をば」
「痰は出せるよ。ペッ!」ティッシュ丸める。
「そ、その痰を培養にをば・・・!」
「あ、捨てたよ。今」ゴミ箱へ。
「おぬし、検診は?」
「受けてない。めんどくさいしね」
「若造でも何かあるやもしれんぞ。レントゲンを・・」
「あ、いいよ。そういうのは<ちゃんとした病院>で受けるから」
「うぬう・・・!」
患者に交わされ、カルテははやくも事務室で処理された。
暇なので、若いナースのとこへ。
「あの、先生」
「む?」
「当院は、忘年会などのイベントは・・」
「ふん。そんなことか。ウン千万の借金して、全然返せてないんだ。余裕がない。それに人件費やら電気代やらでフン!そんな余裕などないわい!」
ところが、たまたま来た患者に院長はあることを教わった。
新衛門さん風の患者。
「先生。儲かろうと思うのなら、まず周囲を取り込むことですぞ」
「ハーレムを?」
「そうではない。ゴージャスに一度ふるまってはどうか。器の大きさを見せつければ、あたかも大きな船に乗った気分になるものですぞ。そうすれば彼ら自身が頑張って、患者をどんどん引っ張ってくれるかもしれぬ!」
「そ、そうか・・・では一度やってみるか。そもさん!」
「せっぱ!」
神戸の料亭の写真を刷った招待状を回す。
「み、みな・・その。全員、来てもらえんかの?」
目が点になった3人の前で頭を下げる。中年女性事務員が見入る。
「こんな高いところ・・・いいんですか?」
「オッホン!わしに任せておけ!これタクシー代!」
諭吉を1枚ずつ渡す。
「先生。でもどうして・・」若いナースが訊ねた。
「ん?いやいや、君らと本音で話がしたくなってな!」
「本音で・・・ですか。あたしたちは何も隠してなど」
「かまわんかまわん!何でも言いなさい!広い心で受け止めてみせるわ!」
タクシーを呼ぶ前、玄関前でナースに呼ばれた。雨が降ってて傘をさす。
「なんじゃね?」
「先生。楽しいひとときの前になんですが。あの事務員たち、実は患者さんに入れ知恵してるんです」
「なぬを?」
「門前払いです。手のかかりそうな人が来ると、そこで断ってるんです」
「ぬうう・・・・」
まだ傘持ってタクシー待ち。今度は事務員2人。中年のほうが眉間にシワ寄せる。
「先生。ナースのあの子」
「うむ?」
「いつもおとなしい顔してるんですけど、患者さんにいつも先生の悪口言ってます」
「なにぃ?たとえば?」
「診断がおかしい、治療が間違ってる、足がくさい」
「くおおおらあああああ!」
「(2人)きゃああああ!」
放り投げられた傘は、見事な放物線を描いていった・・・・。
<しかし院長。今が耐える時ですぞ!>
侍の言葉が、理性をなんとか保たせた。
開業医をオープンして数か月。客はいっこうに増えず。しかし従業員への風当たりは厳しかった。
事務員2人が、パソコンと睨めっこ(たぶん寝ている)。
ナース1人もリハビリで電気治療中。
暇ではあるが、院長の緊迫した視線がかなりストレスだった。
残業代や時給アップの要請があったが、院長はほったらかし。
1人、患者が到着。
「ほ、ほら来た!コラッ!ボケボケす、すんな!」
診察室へ戻る院長。しばらく待つと、若い方の事務員がカルテを持参。
「風邪だそうです。院長先生」
「わわ、わしが診てもないのに、しし!診断なんかすっな!」
若い男性が入室。
「咳と痰が出て。風邪だと思うけど」
「いやいや、分からんぞ」
喉、胸を診察。
「う〜ん・・・」
「風邪でしょう?」
「いや、扁桃炎だな・・・それも急性の」
「同じじゃないんですか?」
「ち、ちがうわいっ。げ、厳密には!」
「じゃ、薬を・・」
院長は、最近の収益が少ないのを思い出した。
「て、点滴していかんか?」
「時間ない。あんなの、してもおんなじだろ?」
「お、おんなじではないよう!」
「何、入ってるの?どうせブドウ糖くらいだろ?」
「うぬぬ・・・!で、では去痰剤の吸入。ついでに咽頭の培養をば」
「痰は出せるよ。ペッ!」ティッシュ丸める。
「そ、その痰を培養にをば・・・!」
「あ、捨てたよ。今」ゴミ箱へ。
「おぬし、検診は?」
「受けてない。めんどくさいしね」
「若造でも何かあるやもしれんぞ。レントゲンを・・」
「あ、いいよ。そういうのは<ちゃんとした病院>で受けるから」
「うぬう・・・!」
患者に交わされ、カルテははやくも事務室で処理された。
暇なので、若いナースのとこへ。
「あの、先生」
「む?」
「当院は、忘年会などのイベントは・・」
「ふん。そんなことか。ウン千万の借金して、全然返せてないんだ。余裕がない。それに人件費やら電気代やらでフン!そんな余裕などないわい!」
ところが、たまたま来た患者に院長はあることを教わった。
新衛門さん風の患者。
「先生。儲かろうと思うのなら、まず周囲を取り込むことですぞ」
「ハーレムを?」
「そうではない。ゴージャスに一度ふるまってはどうか。器の大きさを見せつければ、あたかも大きな船に乗った気分になるものですぞ。そうすれば彼ら自身が頑張って、患者をどんどん引っ張ってくれるかもしれぬ!」
「そ、そうか・・・では一度やってみるか。そもさん!」
「せっぱ!」
神戸の料亭の写真を刷った招待状を回す。
「み、みな・・その。全員、来てもらえんかの?」
目が点になった3人の前で頭を下げる。中年女性事務員が見入る。
「こんな高いところ・・・いいんですか?」
「オッホン!わしに任せておけ!これタクシー代!」
諭吉を1枚ずつ渡す。
「先生。でもどうして・・」若いナースが訊ねた。
「ん?いやいや、君らと本音で話がしたくなってな!」
「本音で・・・ですか。あたしたちは何も隠してなど」
「かまわんかまわん!何でも言いなさい!広い心で受け止めてみせるわ!」
タクシーを呼ぶ前、玄関前でナースに呼ばれた。雨が降ってて傘をさす。
「なんじゃね?」
「先生。楽しいひとときの前になんですが。あの事務員たち、実は患者さんに入れ知恵してるんです」
「なぬを?」
「門前払いです。手のかかりそうな人が来ると、そこで断ってるんです」
「ぬうう・・・・」
まだ傘持ってタクシー待ち。今度は事務員2人。中年のほうが眉間にシワ寄せる。
「先生。ナースのあの子」
「うむ?」
「いつもおとなしい顔してるんですけど、患者さんにいつも先生の悪口言ってます」
「なにぃ?たとえば?」
「診断がおかしい、治療が間違ってる、足がくさい」
「くおおおらあああああ!」
「(2人)きゃああああ!」
放り投げられた傘は、見事な放物線を描いていった・・・・。
<しかし院長。今が耐える時ですぞ!>
侍の言葉が、理性をなんとか保たせた。
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