<ホウチュウ>といえば・・・!
2007年8月13日 映画エキノコックス症 ・・・ この学名は、エキノ(棘のある)+コックス(球状のもの)という寄生虫の形(具体的には幼虫=包虫)が由来。トンボの羽・眼をむしったような印象(なんやそれ)。北半球の寒冷地に流行・・日本でいえば北海道だ。
人畜共通寄生虫症で、もっとも致死率が高い寄生虫病。2002年12月より厚生省からいっそうの感染防止が呼びかけられるようになった(北海道で陽性の犬が多発したのがキッカケ)。感染源である<終宿主>つまりキツネ・イヌの糞便内抗原を検出することが流行阻止の第一歩。中でも北海道キタキツネは30-60%もの陽性率だ。
この2-3mmの成虫がキツネの小腸に寄生し<六鉤条虫>となり虫卵を産み便とともに排出、野ネズミに入ると肝臓で<原頭節>という構造が作られさらにそれをキツネが食べて・・以下繰り返し。ヒトは虫卵が紛れ込んだ食べ物・水を摂取することで感染する。便を介するから糞口感染である。
この流れから、ヒトは<中間宿主>にあたるということになる。ヒトでもネズミ同様肝臓で増殖しかしそれはあくまでゆっくりで、十数年の経過がかかる。
診断まで(つまり病巣が大きくなるまで)成人の場合10年、小児では5年もかかる。放置すれば9割が死亡。肝臓の画像所見はあたかも腫瘍か膿瘍のようであり誤診されてもおかしくない。
肝臓の病巣(幼虫=包虫)が大きくなれば血管・胆管を物理的にふさぐので、肝機能低下がみられてくる。進行をほっとくと肝硬変のような病態になりしかも多臓器にわたる<転移>も起こる。なお、肺への転移は1割の患者にみられる。
検査は、好発地の北海道では徹底されていて血清診断が行われる。ところが信頼度が驚くほど低い。肝生検はかえって転移を促す危険があるという。しかし画像診断など組み合わせば診断の正確さは向上する。
早期発見(症状出てからでは治癒困難)による切除(手術)による治療が基本で、化学療法(ALB:アルベンダゾール)は手術後に行う補助的なもの。成虫をもってる終宿主に投与するのがプラジクアンテル(1回投与で100%駆除!)。混同なきよう。
北海道から本州へのペット持込みが今後の課題。海外では多発地域からの動物の移動の際には徹底した検査・駆除がされているが、わが国では法律化されていない。したがって本州で北海道出身(海外ももちろん)のペットをもらう人は、少々神経質でもいいかもしれない。ああそう、それに転校・転勤で引っ越す人!
※ 東京のムツゴロウ王国移転は、そこはきちんとチェックしたそうだ。国が積極的にしたわけでない。団体の呼び掛け。
また、スクリーニング検査の機構も確立していない。血清診断の単独ではまだまだ頼りない。では若年者の不顕性感染が多い可能性がある・・・ということだ。
わが国の危機管理は<あくまでも事故が起こってから>が多いから、こういった予測可能な危機にも関心をもっておくべき。
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