ES-MEN 4

2007年8月29日
 小さな有床病院の外で、刑事の上司は病院を振り返った。夕陽がまだ完全に隠れてない。

「これ以上営業妨害したら、日本の医療が成り立たん。これくらいにしとこか。わしら警察も、退職したらパチンコ業界のお世話になる身やしの・・・波風立たずが一番や」

 ザッ、ザッ、と歩くと・・・2台のワゴン車が横付けで待っていた。錆びたドクターカーと普通車ワゴン。前に4人ほど立っている。

刑事上司と、品川事務長が向かい合った。

「ども。事情聴取は終わりましたとさ!」
「では、入ってもいいでしょうか」
「まだ治ってないみたいやで、あの先生。事務長さん。そんなに焦って営業せないかん事情があるのですか?」
「・・・・・」
「あんたの病院の前身も、いろいろあったよな。も、ヤバいことはしてませんか?」
「するわけないでしょう。私の代になってからは!失礼な!」
「・・ホンマ?」
「・・・・・」
「ライバル病院の真珠会とは、大阪でイヌザルの関係。そしてまた奈良で勢力争い・・・やれやれヤクザと変わらんな。で、結局迷惑するのは患者さん。正義か何のためか知らんけど。新聞で読んだで」

 上司はそのまま歩き続け、部下が従った。部下は事務長を一瞥し、一言だけかけた。

「過疎地の医療って、そこまで深刻なんですか?・・・えっ?」

事務長は不機嫌が治らなかった。
「キタノか、お前は・・・!」

 ゆっくり走っていく覆面パトを見送って、事務長は1歩踏み出した。

 3人があとに続く。その中で白衣を着ているのは・・・慎吾医師だった。基礎系医学→ドクターバンク→脱退しわが病院へやってきた。しかしまだ修業は浅い。教える立場にはまだ程遠い。

「医長は。いや、近い未来の院長代理は大丈夫だよな。な、大丈夫だよな」
 言い聞かせ、最後尾で歩いた。誰も答えない。

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