ES-MEN 6
2007年8月29日 病院の門からドクターカーとワゴン車の2台が、ジャリの林道へと突き抜けていく。
タイヤの周囲と車体の底、常にジャリの細かく当たる音。
ワゴン車。田中くんが懸命にアクセルを踏んでいる。
「ユウキ先生!真田は大変なことになってますよ!」
「なに?どうなった?跡形なしか?」
「さあここで質問です!」
「ボケ!クイズの場合かよ!」
「ほらあまたすぐ怒る・・・試したんですよ。誰かさんが乗り移った乗り移った!」
「お前ら・・真田から逃げたのか?で。こんだけ?」
「めでたくクビになりました!あっ。失礼」事務長からの携帯が鳴る。
真横、錆びたドクターカーが走る。
「携帯・・・事務長からか?」
「停車しろって」
「なら止まれよ!」
「ザビタンへいへい!」
「も。やめろよ、それ・・・PTSDだよオレ。<パッとせん。だる>の意」
「つまらん」
急ブレーキで、僕はそのままダッシュボードへ叩きつけられた。
「ぎあ!」
外はもう薄暗い。
小さな公園の目立たぬパーキングで停車。
公園の隅。用意周到なのか、大きな青いテントが建てられた。
近くで鍋の蓋がカッ・・カツ・・・とめくれ上がる。風で火の勢いが強まる。
僕らは周囲で座っていた。
マグカップをすする体制で顔を隠し、田中君は打ち明けた。
「結局あのあと、職員の過労で病院が機能しなくなって・・・」
「ハカセの分流というか、手下が一時的に病院占領か。ドクターの仕事は誰が?」
「今まで通りですよ。トシキ先生らは馬車馬のように働かされてます。ました。今は体調を悪くされてて」
「宮川らが働いているのか。おい、戻ろうよ!オレ、頑張るから。あいつら追い出して」
「なりませんなりません」事務長が向かいで平然と答えた。
「なんでえ?」
「奈良の第二病院の引き継ぎ日を、こっちはなんとか電話で先延ばししたんです。あとは調印するだけ。そこを建て直してからでないと。そこのドクターはほとんどが過労で再起不能なんです!残った1人と先生たちで力を合わせて!」
「まだそんな事言ってんのか!そんな僻地、ハカセに譲ったらいいだろ!」
「先生。存続の交渉にやっとこぎ着けたんですよ?大胆な条件まで出して」
「どうせお前のことだから、裏金出して・・」
あたりが静まった。たちこめるガスで急に暗くなってきたのだ。
事務長は続ける。
「1つの過疎地域が、やばい系列の病院に支配されようとしてるんです。そこに打ち勝てば、真田を乗っ取った分流のスタッフも引き上げます」
「ウソ言うな。お前の言うことは絶対裏がある。ホントのことを言え!」
「(無視)彼らはそこを研究教育施設という名目で、そこを患者さんの<実験台>にするという噂です」
「実験?人体実験か?人造人間作るとか?大げさなこと言いやがって」
「海外での治験薬や新薬を、保険を無視してそこで実験的に始めるそうで」
「日本の薬剤認可は遅いからな。そりゃ売り上げは上がるだろ?売り上げ競ったって、うちが負けるに決まってる」
「私も、それ聞いたのつい最近なんです」
「やめよやめよ!俺はもう田舎はいやほど経験してるんだ!駄菓子屋のばあさんらには、もうコリゴリだ!網でも持って、一生餅まきやってろ!」
「なんですかもうさっきから!ネガティブな返事ばっかりで!」
(沈黙)
事務長は頭を抱えた。
「先生。使命感から医者になったんでしょうが・・」
「いつそんな事言った?ウソツキ童子が」
「いい加減、組織としての人間の自覚も持ってくださいよ!」
タイヤの周囲と車体の底、常にジャリの細かく当たる音。
ワゴン車。田中くんが懸命にアクセルを踏んでいる。
「ユウキ先生!真田は大変なことになってますよ!」
「なに?どうなった?跡形なしか?」
「さあここで質問です!」
「ボケ!クイズの場合かよ!」
「ほらあまたすぐ怒る・・・試したんですよ。誰かさんが乗り移った乗り移った!」
「お前ら・・真田から逃げたのか?で。こんだけ?」
「めでたくクビになりました!あっ。失礼」事務長からの携帯が鳴る。
真横、錆びたドクターカーが走る。
「携帯・・・事務長からか?」
「停車しろって」
「なら止まれよ!」
「ザビタンへいへい!」
「も。やめろよ、それ・・・PTSDだよオレ。<パッとせん。だる>の意」
「つまらん」
急ブレーキで、僕はそのままダッシュボードへ叩きつけられた。
「ぎあ!」
外はもう薄暗い。
小さな公園の目立たぬパーキングで停車。
公園の隅。用意周到なのか、大きな青いテントが建てられた。
近くで鍋の蓋がカッ・・カツ・・・とめくれ上がる。風で火の勢いが強まる。
僕らは周囲で座っていた。
マグカップをすする体制で顔を隠し、田中君は打ち明けた。
「結局あのあと、職員の過労で病院が機能しなくなって・・・」
「ハカセの分流というか、手下が一時的に病院占領か。ドクターの仕事は誰が?」
「今まで通りですよ。トシキ先生らは馬車馬のように働かされてます。ました。今は体調を悪くされてて」
「宮川らが働いているのか。おい、戻ろうよ!オレ、頑張るから。あいつら追い出して」
「なりませんなりません」事務長が向かいで平然と答えた。
「なんでえ?」
「奈良の第二病院の引き継ぎ日を、こっちはなんとか電話で先延ばししたんです。あとは調印するだけ。そこを建て直してからでないと。そこのドクターはほとんどが過労で再起不能なんです!残った1人と先生たちで力を合わせて!」
「まだそんな事言ってんのか!そんな僻地、ハカセに譲ったらいいだろ!」
「先生。存続の交渉にやっとこぎ着けたんですよ?大胆な条件まで出して」
「どうせお前のことだから、裏金出して・・」
あたりが静まった。たちこめるガスで急に暗くなってきたのだ。
事務長は続ける。
「1つの過疎地域が、やばい系列の病院に支配されようとしてるんです。そこに打ち勝てば、真田を乗っ取った分流のスタッフも引き上げます」
「ウソ言うな。お前の言うことは絶対裏がある。ホントのことを言え!」
「(無視)彼らはそこを研究教育施設という名目で、そこを患者さんの<実験台>にするという噂です」
「実験?人体実験か?人造人間作るとか?大げさなこと言いやがって」
「海外での治験薬や新薬を、保険を無視してそこで実験的に始めるそうで」
「日本の薬剤認可は遅いからな。そりゃ売り上げは上がるだろ?売り上げ競ったって、うちが負けるに決まってる」
「私も、それ聞いたのつい最近なんです」
「やめよやめよ!俺はもう田舎はいやほど経験してるんだ!駄菓子屋のばあさんらには、もうコリゴリだ!網でも持って、一生餅まきやってろ!」
「なんですかもうさっきから!ネガティブな返事ばっかりで!」
(沈黙)
事務長は頭を抱えた。
「先生。使命感から医者になったんでしょうが・・」
「いつそんな事言った?ウソツキ童子が」
「いい加減、組織としての人間の自覚も持ってくださいよ!」
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